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藪の中
2016/07/30 07:57
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2016年)上半期の経済界のニュースで、セブン&アイ・ホールディングの鈴木敏文会長の退任劇がもっとも衝撃的だったかもしれない。
退任を発表したのが4月7日。それからわずか2カ月足らずにその事情も含め一冊の本にしてまとめるのであるから、日本経済新聞社の取材網はさすがだ。
本書は三部構成になっていて、一部で今回鈴木会長が退任に至るまでをドキュメンタリーとして描き、二部で「コンビニの父」と呼ばれる鈴木氏の足跡をまとめている。この単元では日本のコンビニがどのように変化をしていったのかがよくわかるようになっている。
そして、三部で鈴木氏の退任のあとのセブン&アイの展望をみていく。
もちろん、もっとも面白いのは第一部であることは間違いない。
今回のこの出来事が何故多くの人の耳目を集めたのだろう。
まずはカリスマとまで呼ばれた鈴木氏が退任をしたという事実。そもそもカリスマと呼ばれた多くの経営者は独断専行で物事の舵取りをしてきたはずで、今回の人事をめぐる騒動も以前ならばすんなりと鈴木氏の意向通り決まっていただろう。
しかし、それに横やりをいれたのは指名報酬委員会の社外の2名の委員。
この出来事のあと2人の委員の判断を日本の経営もやっとここまで来たと評価されたが、本書を読むとこの委員会の権限はどうなっているのかと思いたくなる。
できればこの委員会の権限を定めた規則なりが付記されていた方がよかった。
次に、もの言う株主サード・ポイントの存在である。
本書にはサード・ポイントがセブン&アイに出した文書も収録されている。また報酬委員の委員に宛てた文書も同じように載っている。
サード・ポイントが問題視した鈴木氏の次男の存在であるが、彼は現在取締役の一人でもある。取締役であれば将来この次男が経営トップに立つ可能性も否定できない。
ならば、この次男が取締役にまでなった事情ももっと追跡すべきではなかっただろうか。
取締役会での発言も鈴木氏と井阪氏の間で食い違っている。
どちらかが嘘をついているはずなのに、出席した取締役への取材はない。
これでは「臭いものにはフタ」である。
つまり、今回の退任劇で日本の経営スタイルが大きく変化したのではなく、実はほとんどその体質は変わっていないという方が正しいような気がする。
真実は語られないまま、歴史に委ねられたということか。
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