1920年代から70年代に活躍した作家、古屋信子氏の「女学生のバイブル」とまで言われた不朽の名作です!
2020/05/25 10:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、1920年代から70年代前半にかけて活躍した小説家、古屋信子氏の少女小説です。同書は、同氏が20代の頃に執筆した短編連作集で、一編ごとに花にちなんだ表題を掲げ、独特の美文調で綴られているのが特徴です。同書に登場する少女たちは、様々な事情で実の母とは距離を置かざるを得ない状況にあるのですが、女学校や寄宿舎などの女性しかいない環境下で、実の母以外の女性と「母娘にも似た深い関わり」を構築していきます。相手となる少女や女性は、少女と置かれている環境の違いはあっても孤独を感じている設定であることが多く、友愛関係を築くことによって互いに孤独から開放されるというストーリーです。また、そのような友愛関係の延長として同性愛に発展することもあり、それが異性愛と同格にとらえて描かれています。同書の発表当時、多くの少女から大絶賛を受け、「女学生のバイブル」とまで呼ばれた不朽の名作です。
投稿元:
レビューを見る
上巻から徐々に妖しさを増した乙女の世界。ただ続けて読んでいるとまったく自然な感情と行動に思えるから不思議。人死にが多すぎる様な気もするけれど、時代的には普通なのか。
投稿元:
レビューを見る
上巻同様、表紙がかなり素敵です。
下巻でも感想を一編ずつ徐々に書いていきたいなと思います。
<アカシヤ>
棚島さんの気持ちが切ない・・・。
何て言うか、魅力溢れすぎているが故に、目を逸らしてしまう相手っていますよね。
そんな哀しい話は無い方が良いのだけども、現実にあるんですよね・・・。
<桜草>
桜草に込められた罪の意識。
違う形で会っていたかった、違う形であれば同じ学び舎で友情を育んでいられたかもしれないのに・・・。
<日陰の花>
エス、と言うよりは百合ですね・・・。
しかし、環と言う名前は常に私にとって魅力ある人物として目の前に現れるなあ・・・。
二人のその後がとても気になる話でした。
きっと二人は日陰で寄り添い続けるのかな・・・。
<浜撫子>
何という哀しい三角関係・・・。
誰も結ばれることなく、夜の闇に消えてしまった浜撫子の恋物語。
・・・ただひたすらに哀しい物語。
<黄薔薇>
黄薔薇と言えば江利子さま、流石に話の中で思い浮かぶことはなかったですがw
先生と生徒の禁断の切ない百合物語。
下巻の方はエスよりも百合が多い感じですね。
サッフォの虚しさと葛城さんの虚しさが重なってしまいおおいに心哀しい物語でございました・・・。
<合歓の花>
大和田さんが格好良くて素敵でした。
乙女のまま亡くなった順子さんの哀しく切ない恋の詠・・・。
一言話しかけていたなら、未来は違う道を示していたのかも知れない。
大和田さんも酒井さんも、美智子さんも想ったことでしょうに・・・。
<向日葵>
お互いを想っていながら、通じ合うことの出来なかった哀しい二人の物語。
潮さん、明らかにツンデレです本当にありがとうございました。
潮さんは向日葵だけど、イメージは櫻子だなあ・・・。
櫻子みたいに自覚のないツンデレは、想いを上手く表に出せないまま、
哀しい結末を迎えてしまう・・・。
潮さんは自覚あったっぽい可能性もあるけども。
向日葵ちゃんと櫻子ちゃんにはそういう結末の無いよう、
結ばれることを切に願います・・・。
<竜胆の花>
マリみての不器用姫を思い出す・・・。
さりげなく、私にはこう言う作風こそが少女小説特有の華と思われて、愛しくてたまらないのです・・・。
<沈丁花>
お姉さんが綾乃ちゃん、妹が会長で再生されました。
憧れの君は先生か・・・。
花物語の中で今のところ一番哀しい話でした。
お姉さんの想いが切ない。
お姉さんの死後の妹の心の内を想うと更に切ない・・・。
<ヒヤシンス>
お姉さまの境遇が自分の境遇と重なることもあって、
非常にもの悲しい想いで読みました。
どうしたらこういうキチガイでクズ野郎な人間が消えてなくなるか、
毎日考えます(笑)
正しい心根を持った人間は不当な攻撃をされるというのは、もう人生において、何度も経験し、呆れ返るぐらい当たり前に、つまらない事実としていつもそこにあります。
<ヘリオトロープ>
ポンペイと書いて���ったし、内容的にもそうなのですが、
NGライフを想わせるなあと思いました。
関東大震災の頃の話みたいですね。
少女の想いが哀しい話。
<スイートピー>
すれ違いまくりの哀しい三角関係。
一時騒がれてもあっという間に忘れられると言う流れは少女の世界の現実。
神のもとに天に召された少女を愛する二人の少女は、ただ二人泪を共にするしか術はないのです・・・。
<白木蓮>
虚しさと哀しさの残る寂しい話でした・・・。
願わくば少女にはこのような悲しみの日が永劫に訪れることのなきように・・・。
<桐の花>
こちらも寂しい話・・・。
年月を越えて流れ行くが少女の宿命なら、その宿命それそのものを、私は罪と呼ぼう。
<梨の花>
儚なき 梨の花 まして その花の上の夕月―― あわれ されど 儚なきは 悲しきは 亡き友のまぼろしをおいて みずからもその花陰に入るとみし かの塔の乙女。
この話はやばいですね。
短い中にエス・百合の一つの究極型を描いています。
私の中ではこの二人は京子ちゃんと綾乃ちゃんですね。
だって、綾乃ちゃんは京子ちゃんがもし死んでしまったとしたら、
この世界に生きていくことはできないでしょう・・・。
<玫瑰の花>
スイートピーの真弓さん再登板、とは言え過去話ですが。
今回は袴田めらさんの絵で再生された(笑)
スイートピーは倉田嘘さんだったのに不思議だ・・・。
恋にも憧れにも満たない、朧気な儚い友情の話。
形になる前に散り行きた、ああ玫瑰の花、我が心よ。
<睡蓮>
まためらさんだ、何故だ(笑)
哀しいと言うか寂しい話。
失った少女の時の友情を忘れ得ぬ為に、人形にその面影を重ねる人。
寛子さんの気持ちを知りたいところです。
<心の花>
長崎・大浦来た!!!
何という美しいカトリック小説でしょうか・・・。
心の花、皆様も大切に育てあげてください。
この世の中は彼女の両親・兄弟のようなキチガイのクズ人間が大半を占めています。
だからといって、そこで諦めてはいけません。
そいつらの方がこの世に不要な存在なのですから、
自らを貶めずに生きて行きましょう、生きていきたいものです。
・・・といいつつ、私はこの両親・兄弟を八つ裂きにして焼き殺す展開の方がはるかに燃えますけどね(笑)
<曼珠沙華>
最後にちょっと毛色の違った話ですね。
彼岸の花、曼珠沙華はその美しさ故に人の命を操るとかの昔より思われてきました。
曼珠沙華、寄り添いて眠る2人の姉妹に永遠の安息を与え給え・・・。
一番心に残ったのは「梨の花」と「心の花」でした。
幻想的すぎるその話と、永遠の信仰の物語。
投稿元:
レビューを見る
上巻よりこいです。スイートピーが好きです。
あ、上巻とつなげると一枚絵になるのですね。ロザリオ…?
投稿元:
レビューを見る
ああ、綾子さん、幾度呼ぶとても永劫に返る日のなき、その俤よ! 真弓は悲しみに打ち倒れようとした、その時、つとその肩を支えて、『伴さん! 私も御一緒に泣かせて下さいませ』かく言いて、つとより添う人影、窓越しの雪の反射に見返れば、おお、佐伯さん、その人……
2013/08/09-09/04
2023/08/10-08/11(中断)2023/08/17-08/25
投稿元:
レビューを見る
年頃の女の子は自我の芽生えで多少なりともトゲトゲしいヤマアラシのような状態っていうのがデフォルトだと思う。それは勿論、普遍的なレベルでそうだと私は信じてる。だからこそ、ふわふわと女の子同士が敬意や憧憬をお互いに抱いてそれを素直に出せているっていうのにモヤモヤ。…昔は居たのだろうか、こういう女学生。
投稿元:
レビューを見る
上巻に比べて切ない話の多いことよ…。
片方が少女から女性に成長すると残酷な結末になるんだな。
梨の花が儚くて美しくて好きです
投稿元:
レビューを見る
大正時代に発表された吉屋信子の連作短編集「花物語」もいよいよクライマックスへ。クライマックスと言っても上巻と変わらぬ素晴らしいクオリティで繊細な砂糖菓子のような美しき乙女たち儚い世界が展開されております。ヒロインの乙女ふたりと比べると周囲は書き割りじみていていっそ清々しいです。抑圧の強い家父長制度が長く続いた大正年間に、頁をめくる乙女たちはどんな心持ちだったのでしょうか。名作。
投稿元:
レビューを見る
「ええ、日陰の花なのね・・・・・・けれどいいわ、わたし達、日の光には咲かずとも、月の青白い光に濡れて、咲けばねえ・・・・・・」(日陰の花)
上巻よりもずっと慎重に読みました。と言うのも、「ああ、もう少しで読み終わってしまう・・・」という名残惜しい気持ちと、胸がぎゅっと潰されちゃいそうな、得も言われぬ気持ち(『花物語』は完結に向かって悲愴な女の子のお話が多くなるんですよね)が膨らんで膨らんで・・・・・・。『日陰の花』、『沈丁花』はずっと好きですし、『曼珠沙華』の終わり方も、やっぱりすごく儚くて素敵です。
ああ、あわれ、『花物語』の前ではだらだらと感想を書くのも無粋というもの。そうだ、今日はこの本を枕元に置いて寝ましょうか。そうして、夢の中で馨しい花の匂いを辿りながら、床しく微笑むお姉様に手を伸ばしてみましょう。さて、お姉様はどんな花をその華奢な手に携えているのでしょうか。私はお姉様の胸に飛び込んで、こう言うのです。「お姉様。その素敵なお花、わたくしにも頂戴な」
投稿元:
レビューを見る
最高の百合小説。「女性はかくあるべし」という強い価値観があった時代背景を思うと、この物語に登場する女性たちの強い生き方に励まされた方達は相当多かっただろうなと思いました。
上巻では女性同士の友愛を、下巻では恋愛に近い感情を描いていましたが、こちらは悲しい結末の作品が多かったこともあり、どちらかというと上巻の方が好みかも知れません。中でもお気に入りは下記の短編。どれも読んだ後に本を一旦閉じ、ほうっと嘆息してしまうような素晴らしい作品でした。
<上巻>
・福寿草
兄の妻に思いを寄せる主人公。一度は別れながらも、大切な福寿草をきっかけに再開する展開が非常に美しい。
・ダーリヤ
突如訪れた輝かしい道を選ばず、自ら選んだやりがいある、けれど茨の道を選ぶ過程がなんとも言えない。最後の句が胸を打つ。
<下巻>
・浜撫子
あまりにも悲しい結末の三角関係もの。かなり好みの作品だが、下巻はこういった悲しい話が多くて、カロリーを非常に消費する。
・竜胆の花
ちょっとした復讐劇になっている作品。また誰か死ぬのではと構えていたので、終盤の展開には胸がスカッとした。
・スイートピー
これも三角関係ものだが、浜撫子とは異なる展開。愛に大小はないけれど、当事者たちにとってはそう単純な話ではない。
投稿元:
レビューを見る
上巻よりも、同性愛を扱った作品が多め。ほぼ全て悲恋に終わり、どちらかが夭折する終わり方をしたりもする。ほんの刹那の女性同士の恋愛。だがそれぞれの触れ合いを花に見立てて愛おしみ慈しみ書かれた作品が、多くの女学生の胸を打ち続けてきたのは、当時は悲恋に終わるしかなかった同性愛を胸の奥に秘めながら涙と共に振り切った少女たちが数多いたのだろう、ということだと気付かされ慄然とする。刹那の愛に終わったのは彼女たちのせいではなく社会のせいだ。これからの世にそんな悲恋が繰り返されないよう、我々にはすべきことがたくさんある。
投稿元:
レビューを見る
上巻と比べて百合要素が濃くなり個人的にはこちらの方が好み。ただ悲しい結末の話が多く、幸せな話も間に挟んでくれると肩の力を抜いて読めたかも。しかし当時の読者である少女達はこうした切ない物語を好んで読んだのだろう。