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北方の一家が、それぞれ悲しみや不幸に打ち勝つでも避けるでもなく、ただ耐えながら生き抜いていく語。読み終えてみると、表題に付く“旅”という単語に前向きな意味合いが含まれていない事が分かる。
大転換がある訳でもない、約700pに及ぶある種冗長にも感じるボリュームは、本作に込められた主題をよく表現している。
白夜の様な世界に耐えながら、生きる事を辞めない家族に胸を打たれる。
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三浦哲郎 「 白夜を旅する人々 」
どのシーンも「白さ」「静寂さ」が印象に残る。風景の色彩や人物の躍動感を排除することで、生きることの厳しさや人間の内面の悲しみにスポットをあてたいのかもしれない
私小説だけに、著者が小説を書く原点や決意を 綴った本だと思う。小説を書くことで、医者に治せない病気や遺伝への不安、自殺した家族の虚無感を 取り除き、自分や家族の生きる力を取り戻す というメッセージを感じる
タイトル「白夜を旅する」は 「白くて静かな世界〜生と死の境界のない静寂の世界〜を生きていく」ということであり、死んだ家族と一緒に、その世界で生きていく
ということだと思う
著者の芸術観や人生観を示す言葉がセリフに現れている
*平凡なのが、いっとう自然
*人は死ぬときにならないと、自分がしあわせだったか〜わからないものだ
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六人きょうだいのうち、二人の兄が失踪、そして二人の姉が自殺する。生きつづけたのは三姉と末弟の哲郎のみだった。
創作の初期から一貫した家族のテーマと向き合い続けた作者が、体験した当事者としてでなく、ひとりの作家として書き切った小説なのだとよくわかる。初期の作品はもっと等身大で、作中に出てくる兄弟のように、他の兄姉の死に影響されている姿が作品の中に良くも悪くも表れていた。死んだ兄姉をひとりの他者として見つめたからこそ、このような小説が生まれたのだと思う。
この作品は、三浦哲郎と思しき〈羊吉〉という男の子が生まれてから六年間にわたる話である。
公平叔父として出てきた母の弟と三浦哲郎がどんな関わりを持っていたのかが気になった。というかかならず調べる。