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今年(2016)になって興味を持ち始めたテーマである「地政学」ですが、近隣の図書館の、新着コーナーでこの本を見つけました。
近代史について、多くの地図を用いて解説されています。見れば納得するのですが、多くの出来事が起きたときの国境・領土は、現在私が見慣れている世界地図とはかなり異なります。また、同じ地形であっても、普段見慣れている日本中心のものから視点を変えるだけでも、新たな気づきがあります。
特に、p156にある、中国大陸から見た日本は、中国が海洋進出するとしたら日本が目の前に立ちはだかっているのが、よくわかりました。世界の多くの場所で起きている事件に触れたときには、地図・地形をイメージしながら理解することの重要性を感じました。
以下は気になったポイントです。
・北京郊外で起こった事件から発展した日中戦争は、1937年から8年間続く大規模なものであったが、両国が正式な戦争としないほうが都合がよい(第三国に中立義務が生じて軍事支援が受けられない中国、孤立を避けたい日本)と考え宣戦布告しなかったので、当時の日本では「支那事変」と呼ばれていた(p22)
・琉球処分(1879)以降も沖縄をめぐる日中両国の対立は継続、日清戦争後に、清が沖縄全域を日本領と認めることで決着(p26)
・1271年に後継者争いに勝利したフビライは、都をモンゴル高原のカラコルムから、大都(北京)に移して、華北を中心に元を成立させた(p38)
・明の北側では、中国から「女真族」と呼ばれていた満州族が頭角を現してきた、明の支配を脱してヌルハチが後金(後に、清と改称)を建国した。当初は、瀋陽に首都を置いていたが、第三代順治帝の時代に北京へ遷都した。第六代乾隆帝のときに最大版図を実現、満州・中国・台湾を直轄、それ以外の藩部(モンゴル、東トルキスタン、チベット)は自治が認められていた(p41)
・宦官の鄭和は、東アフリカ沿岸まで到達したが、永楽帝の死後、遠征を支持する宦官勢力と、海洋貿易に反対する官僚との対立が起きて、優位に立った官僚側により、艦隊の船は解体、公開の記録さえ処分された(p42)
・1900年義和団事件において、清朝政府は当初列強に宣戦布告するが、日本・ロシアを中心とした八か国連合軍が派遣されると、一転して事件を鎮圧する側に回った、その後列強(ロシア、ドイツ、イギリス、フランス、日本)により半植民地化された(p44)
・1700年、ロシアはデンマーク・・ポーランドと連合して、北方戦争を開始、バルト海を領有するスウェーデン・オスマン帝国と戦った。21年間の後に、ロシアが勝利。バルト海沿岸に、新都・ペテルブルクを建設。ロシアはスウェーデンに代わって欧州の大国として台頭することになる(p50)
・1922年に、旧ロシア帝国に、白ロシア(ベラルーシ)、ウクライナ、ザカフカース(アゼルバイジャン、アルメニア、クルジア)が加わって、ソ連が成立(p61)
・1861年、アメリカ南部諸州が合衆国から離脱して連合国��して独立するが、独立を認めない合衆国との間に、南北戦争が起きた。1865年勝利した合衆国により南北アメリカは再統合(p64)
・1804-1828年において、南米大陸の国(18)が、スペイン・ポルトガル・フランスから独立した(p68)
・太平洋航路も確立されず、パナマ運河もない時代であったので、ペリー艦隊は、大西洋からインド洋経由で日本に来ている(p70)
・イギリスが欧州大陸に領土を広げたことで生まれたフランスとの摩擦は、14世紀半ばから100年かけての長い戦争(百年戦争)となった(p78)
・1652年からの三度にわたる、英蘭戦争によりイギリスが勝利して以降、世界各地のオランダの海上覇権をイギリスが奪う(p80)
・英露協商の内容は、1)イランは両国で分割、2)ロシアは、アフガニスタンがイギリスの保護国であると認める、3)チベットは相互不干渉(p85)
・世界のチョークポイントは10か所ある、ジブラルタル海峡、イギリス海峡、ボスポラス海峡、スエズ運河、パナマ運河、喜望峰、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、マゼラン海峡等(p90)
・ドイツ統一は、プロイセン領邦の拡張であった、1871年にドイツ帝国を成立させた(p98)
・1955年に、米英仏ソ首脳によるジュネーブ巨頭会談が行われ、同年分割占領されていたオーストラリアは、ドイツのように分割されることなく、まとまって独立が認められた(p112)
・独立国家共同体(CIS)は、1993年に12か国でスタート、2005年にトルクメニスタンが準加盟国、2009年にクルジアが、2014年にウクライナが脱退した(p125)
2016年11月19日作成
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●カラーで図説を多用しており、その時代の国々の勢力や外交政策の意図などがわかりやすくまとめられている。
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図解で地政学を分かりやすく解説した本。本書では、どこか歴史的なところに重点が置かれているところは否めないが、地政学というものを捉える入門書といえよう。
日本の取り巻く世界事情を、地政学という観点はもはや省くことのできないことであることを、日本人こそが知らなければならない。
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●読んで得たもの
地政学の基礎知識
●感想
説明されているとおり内容は超初歩的。
なので子供でも読める。
各章が国又は大陸別に分かれていて、
概ね歴史の順に書かれているため理解しやすい。
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確かに図が多くてわかりやすかったけれど、これは地政学というよりは、世界史。
地理や地形が、どう、政治や歴史に関わったのかの説明が弱い。
中高生を対象にしているのなら、余計にそこを丁寧に説明しないと、なぜそうなったのかが分かりにくいのではないかと思いました。
ただ歴史といっても、年号を覚えるのではなく流れを説明しているので、世界史が苦手な私でもついて行くことはできました。
第二次大戦後のアジアやアフリカの独立について、詳しく説明されていてよかった。
やっぱり多くの世界紛争の発端は、イギリスのワガママと二枚舌なんだな。
なるほど。
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一時期流行った地政学も最近は下火か。高校の頃の地理の知識とその後の報道による知識でしかない自分の地政学。世界史を合わせることで,事件の背景を理解できそうだ。人間の歴史や行動はほんとうに興味深い。これからもこんなことを繰り返していくのだろう。
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最近「地政学」ってよく目にするような気がして流し目で。じっくり読めば、つながりが把握できて面白いんだろうなと思う。シベリア鉄道が通っている位置が何となく思っていたより南寄りだったことを知る(バイカル湖より南側とか)。シベリア鉄道の意義を考えるとそりゃそうか。ウラジオストクの重要性を認識した。各国の国境線の主張を見ると南沙諸島をみんな欲しがるのも頷ける。距離的には中国が一番不利に見えるけれど。中国の自治区で内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、チベット自治区以外にも自治区があることを知る。普段よく目にする地図がメルカトル図法ではなくミラー図法だと知る。