リアリズムがある世界史
2016/10/05 23:59
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ryou - この投稿者のレビュー一覧を見る
混迷する21世紀の行く末を考察する上で非常に示唆に富む一冊である。キッシンジャー氏の著作は、外交の第一線で活躍した経験があるので、歴史の考察にリアリズムが光る。高坂正堯氏の著作と併せて読むときっと、確かな未来を視る眼が養われるはずだ!
投稿元:
レビューを見る
キッシンジャーの広範に及ぶ視点から見た壮大な世界史観。ヴェストファーレン(ウェストファリア)条約が現在の国際法の基盤となっているという点、さらにドイツが強くならないように周辺国による力の均衡が組まれていたなどの描写は実に興味深い。
投稿元:
レビューを見る
著者はニクソン大統領の大統領補佐官、レーガン大統領の国務長官を務めたキッシンジャー。本書は古代ローマ時代から現代まで世界秩序どのように形作られてきたのかキッシンジャーによる壮大な歴史書である。
本書からはキッシンジャーの徹底的なリアリズムがうかがえる。現在の国際法はヴェストファーレン的な原則が基礎となっているが、ヴェストファーレン体制は戦争の抑止力とはならない。ここで矛盾が生じてくる。第二次大戦後の冷戦は長期化し、国連は無力であった。アメリカは中東など世界の警察の役割を果たしてきたが、さらなる混乱を生むだけであった。アメリカの正義を世界に売り込む時代は終焉したのである。
新たな国際秩序の枠組みが必要に時代に於いて、まさに中国が世界の覇権を握ろうと拡大主義をとろうとしている。地政学的に日本の果たす役割は大きくなってきているのだ。
投稿元:
レビューを見る
内容は、やや読み取るに難しい。
翻訳がヒドイと感じたので、ネットの評判を調べてみたところ、同じような批評が多数見受けられたので、やはりヒドイのだろう。特に、前半戦は、"直訳しました"という文章が多すぎて、読みづらい。しかしこれを、原文で読むとなると、相当な英語力を、要求されるであろうから、改定翻訳版を望む。
投稿元:
レビューを見る
[大画の大河]シンプルな題名そのままに,国際社会を形作る世界秩序について語り尽くした作品。歴史的にどのような秩序が作られ,現代はその秩序がいったいどこへ向かおうとしているのか......。著者は,『外交』,『回復された世界平和』等の著作を有する元米国務長官のヘンリー・キッシンジャー。訳者は,幅広い分野の翻訳を手がける伏見威蕃。原題は,『World Order』。
国際政治界における「横綱」による一冊だけあり,どっしりと構えて外交の世界について考えるためにはうってつけの作品。世界史や外交史だけでなく,軍事や哲学も援用しながら導き出されるキッシンジャー氏の慧眼ぶりは,やはり読書後の満足感の違いに感じられるかと。
〜自由のない秩序は,つかのま隆盛になって,しばらくつづいたとしても,やがてそれと均衡するものを生み出す。しかしながら自由は,平和を維持する秩序の枠組みなしでは,護ることも維持することもできない。秩序と自由は,表面的な知識では両極端のようにいわれることがあるが,ほんとうはたがいに依存していると解釈されるべきなのだ。〜
老舗の一品を味わった気分☆5つ
投稿元:
レビューを見る
テクノロジーがいくら進歩しても、人類が発明した核兵器の威力の恐ろしさや、その使用を抑制している均衡がそれと比べて脆弱であることに、代わりないのだ。核兵器が通常の軍事的手段になるようなことを許していはならない。そのような重大な局面が訪れれば、国際秩序は既存の核保有国間に、不拡散を堅守する合意を求めるだろう、さもないと秩序は核戦争の惨禍を担うはめになる。歴史のほとんどを通じて、テクノロジーの変化は数十年、数隻という単位で、斬新的に進歩してきた。既存のテクノロジーを磨いたり、組み合わせたりして、それが進められた。急激なイノベーションもやがては、従来の戦術的・戦略的ドクトリンにあてはめられることがあった。現在が過去と大きく異なっているのは、コンピューターの処理能力の進歩の速さとITがあらゆる面にまで拡大しているという点だ。コンピューターは小さくなり、コストが下がり、指数的に処理速度が速くなって、先進的なCPUがほとんど全てのものに組み込まれた。革命的な影響は、人間の仕組みのあらゆるレベルにまで広がる。スマートフォンを駆使する個人は推定約10億人。人世代前の多くの情報機関の限界をしのぐ情報と分析を保有している。こうした個人がやりとりするデータを集めたり、モニターしたりする企業は、現代の国家の多くや、従来の勢力をはるかにしのぐ影響力と監視能力を発揮する。そして、国家は新分野を競合する国に割譲されることを懸念し、指針や自制もほとんどなしに、サイバーの領域に投げ込まれる。どんなテクノロジーのイノベーションでも同じだが、この領域もやはり、戦略的優位を手に入れるための戦場とみなされがちになるだろう。
投稿元:
レビューを見る
これまでに読んだ国際情勢に関するあらゆる本の中で群を抜いて素晴らしい。キッシンジャーはフォード政権で国務長官を努めた外交のプロであり、ベトナム和平を実現してノーベル平和賞を受賞したほどの大物である。その言葉は重く、優れた歴史観と洞察力を以って、国際情勢を地域別に開設している。
1916年 サイクス・ピコ協定を以って、中東はイギリスとフランスによって分割されることとなった。それは、歴史的根拠が何もないものであり、その後の紛争や戦争の火種を内包したものとなった。
イスラム世界にとっての世界は、ヴェストファーレン体制は世界秩序の考え方として対極にある。国家は世俗的なものであり。国際システムの出発点ではなく、宗教統一への道筋への通過点にすぎない。
アラブの春は、広場に群衆を集めるのには成功したが、独裁政権を倒したその後にどういうものが来るかという考えが欠落していた。
投稿元:
レビューを見る
「ダーウィンの呪い(千葉聡著)」からの流れ読み、図書館で借りた。
ヴェストファーレン和平条約(1648年)により世界秩序の基礎がつくられた。それは国家主権という概念を確立し、加盟国がそれぞれの国内体制と国教を選ぶ権利について内政干渉されないことも規定された。とは言え、それはヨーロッパでの話、その後、超大国アメリカ、ロシア(ソ連)、中国、イスラム世界、そしてアジア、和平条約から数世紀経た世界の枠組みは大きく広がるとともに大きく変わった。
著者はニクソン政権とフォード政権で要職を務めた、いずれも共和党政権だ。まっそれはいいとして、政権のなかの様子をサラッと描いているところがむしろすごいと言いますか。たいしたものです。