村上春樹テイストへの嫌悪感
2016/12/30 23:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白いのに、何か異物感があり、全面的に好きになれないと思っていたが、解説の大森望氏の「村上春樹ミーツニール・スティーブンス」という評価に納得。大好きなスティーブンスと、大嫌いな村上春樹のテイストが、拮抗、いや、ややハルキテイストが強い上での嫌悪感だったと理解できた。ハルキ的な描写に嫌悪感のない人は絶賛できると思う。俺はやっぱり再読できない。
もう少し盛り上がってほしかった
2017/04/29 21:15
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディックによる「高い城の男」の世界観を再構築した作品です。
ドイツと日本が第二次世界大戦で勝利した未来という最も大事な点は変わらず、
テクノロジーがより進歩しており、巨大ロボットも登場します。ストーリーもよりワクワクハラハラさせられるようになっていました。
ただ、個人的にはもう少し盛り上がってほしかったので、これからの期待の意味も込めて星四つです。
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陸軍検閲局大尉・石村紅功,通称ベンと特高課員・槻野昭子(作者的にはこっちが主人公らしい)は憲兵に追われる身となる。非合法ゲーム『USA』を制作し、アメリカ人レジスタンスの手助けをしているらしい六浦賀将軍の首級を挙げてこの窮地を脱することを目指す。向かう先はレジスタンスと激しい戦闘がなされ壊滅状態にあるサンディエゴ。
片腕マシンガンガール、命がけのゲーム対戦、巨大ロボ「メカ」戦、キッチュな展開が実に大まじめに進むところがすごい。
大日本帝国治下のアメリカはディストピアには違いなく、ところどころで滅びてしまったアメリカの「自由」の理念が語られるが、そのアメリカも日系人を強制収容所で人権蹂躙したことはプロローグで触れられているほか、理念と現実の解離はしっかり見定められている。他方、大日本帝国の掲げた理想にも言及され、USJの世界とUSAの世界は徹底して相対化されたある種の公平さに作者のアメリカのアジア人という位置をみる。
作者もディックと自己の資質の違いに言及しているようだが、確とした価値観がいまだあるなかで現実の崩壊を描いたディックに対して、もはや1つの世界ではなくなってしまった現代におけるディック的世界を楽しむのもよかろう。
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面白いような気がする、という状態が延々と続いて、ある瞬間にふっと終わってしまった。もう少し面白そうだと思ったんだけれど、面白いような気がする止まりだったのが残念。
起伏を感じられなかった。
161110
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これは、プロモーションによるミスリードだと思う。
いい意味でも、悪い意味でも。
しかし、それぐらい大声をあげて喧伝すべき小説だと思うのです。
ニッポンオタクの韓国系アメリカ人でアメリカ在住の著者が、「日本が戦争に勝ち、以来アメリカは日本に支配されている」という世界を今、この時代に描いたという、その側面こそもっと、スキャンダラスに取り上げられてもいいはず。
著者の出自や物語の舞台設定に垣間見える「無国籍感」こそが、この小説の最大の特徴だと思う。
やはり翻訳小説には翻訳小説の文体というのがどうしても存在してしまって、日本文学のそれとは仕方なく乖離してしまうのだと私は思う。それは言葉を「置き換える」という作業が発生してしまう以上どうしようもないことであって、だからその文体こそがある意味「翻訳小説らしさ」であったりするのだと思う。
その翻訳小説の文体に、漢字カタカナまじりの名前が載って、日本統治下のアメリカ内地で物語が進んでいくというこの違和感。
これは「外国文学」とか「日本文学」とかではなくて、「無国籍文学」というべきなのではないか、と思う。
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(上・下巻全体のレビュー・感想)
第二次世界大戦で枢軸国が勝利し、アメリカ西海岸は大日本帝国が統治し、日本合衆国(USJ)となっている世界(時代は1988年が中心)。
表紙から推察して、メカがもっと活躍するかと思って読んでいたけれど、予想に反してメカの登場シーンは少なかった(上・下巻を並べると表紙絵がつながるのは嬉しい感動。)。
設定はとっても面白いし、翻訳者さんが漢字を上手く使いこなされているお陰で、現実世界の日本ではなく”大日本帝国”が存続している感じが上手く伝わってきました。(解説を読んで、本書で必要不可欠な”電卓”は原文ではportable calculatorを縮めた"portical"という造語だっただったのか、と納得。)
ただ、ストーリー自体は期待が大きすぎたのか、ちょっと拍子抜けしたように感じました。
石村大尉がゲーム「USA」の制作・配信などにどの程度かかわっていたのかが、一読しただけではわかりにくかったです(私の理解力が足りないだけかもしれませんが…)。
エピローグで描写されている石村大尉が両親を告発した経緯が切なかった。このエピソードを知ったうえで、改めて上巻の石村大尉の初登場シーンを読むと、「石村紅功が死を考えない日はなかった。」という言葉の重みが増してきました。
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下巻もメカの戦闘シーンは少なめ。パシフィックリムを観た時のようなテンションにはたどり着けなかった。
ただ、ストーリー自体は思っていたよりも楽しめた。なかなか深い結末だ。日本人が同じ設定で小説を書いたら全然違う現状を描いていた気がする。
オマージュとも言われたディックの『高い城の男』を未読だったので、俄然興味が出てきた。
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下巻もダラダラと読んできたが、本も半ばに来て、慣れてきたというか、太平洋戦争に日本が勝ったという設定をしたゲームの世界だと思うことにした。
皇国や特高や憲兵や八紘一宇も神道もそれらしく見せるためのアイテムに他ならず、それ以上の意味がないと思えば、気にもならず、結局は“だれもが信じられる国・USA”を讃えているように読めた。
表紙が凄くかっこ良かっただけに、めっちゃ肩透かしでした。
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大東亜戦争で枢軸国側が勝利(日本は米国本土に原爆を投下)し、北米は西側を日本が、東側はナチスに占領されている。そんな世界の1988年、人々は「電卓」と呼ばれる携帯端末を駆使し、軍事ロボットが闊歩するハイテク世界となっている。日本は天皇制管理国家を昇華させ、占領政策を行うが、ジョージワシントン団という、反占領軍組織が北米中に浸透し、「USA」というアメリカが戦勝国となった非合法架空戦記ゲームが地下で広まっている。このゲームを作成した首謀者六浦賀将軍を捜索する、帝国陸軍検閲局のロートル大尉石村と特高警察の昭子。
世界観は楽しめたが、もっと対憲兵や対レジスタンス戦とかが繰り広げられることを想定していた。
著者が日本通であることは十分判るが、だからこそ話の展開や広がりが中途半端だと感じる。
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なんかこう、別の世界線という感じすらしない。日本という国名が出てくるけど、俺の知ってる日本ではないというような感じが最後まであった。
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んー下巻は期待してたほどじゃなかった。なんかもっとこの世界観を上手に活かしてほしかったんだけど、ロボットバトルもそう盛り上がらないし主人公のスーパーハッカーとしての技術も活かされきってないし、不本意なラストだった。ここまで大風呂敷広げたならエンターテイメントに徹し切るべきだったんじゃないかな。エピローグ的な章もあのラストの後だと蛇足に過ぎないなと思った。しかし訳がとにかく秀逸なので、訳書だと意識せずに読めたのが本当に新鮮な体験だった。
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メカって。
WW2で日独が勝利したIF世界での物語。ディックの『高い城の男』の精神的続編だとか。日本が巨大ロボでアメリカを統治してる話。
ディックの話と同じように、史実をそこそこ知ってる状態で読んだ方がより楽しめると思う。作者が日本文化、日本のエンタメが好きな方みたいで、ディックよりもとっつきやすい日本感。
なんだろう、なんか、こう、天皇陛下がどうとか、現人神だとか、八百万の神とか、思想についてはIFの世界だしまあいいんだけど、いろいろ置いといて、面白かったんだよ。
適度なエログロ。エロはそんなになかったかな。グロがちらほら。工匠のとこのシーンとかすげー好きですわ。ああいうグロ好き。
なんか、いや、うん、めっちゃネタバレしますけど、なんでベン、死んじゃったんだよ……。
ゲームの中でメカ出してきたシーンとか、すげー滾ったのに。「これこれ! こういうチート待ってました!」って興奮したのに。最後、最後さぁ……。両親を告発した行動の本当の意味とかさぁ。これ、きっつい。きつい。ほんと。もう少し、ベンの心の内側を知りたかったよ。両親を犠牲にして生きのびた彼は、どんな理想を抱いていたんだろうね。それを考えると苦しくなってくる。
そんなベンに生かされた昭子はこれからどうするんだろうね。
巨大ロボが「メカ」って呼ばれてるのがちょっとどうだろう、って思ったんだけど、ガンダムとは呼べないし、モビルスーツもガンダム用語? なんか、もちっとかっこいい呼称が良かったな。
抜粋。いろいろ好きな部分はあったけどね。メカパイロット久地樂のセリフより。
「名誉なんぞ、気分ようなるための言葉遊びや」
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エグイ話にえげつない話の連続(ほめ言葉)
一度決定すると引き返しができないという本質を、露骨に描いていて、ただのオマージュでは終わらない内容。
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かつてサンディエゴで起きたことを回想する石村。一方、ワシントン団に拷問された昭子は憲兵から、国賊の謗りを受ける。一体何が起きているのか。助けにきた石村と共に、昭子はキーマンである六浦賀がいるらしき泥沼の紛争地帯、サンディエゴを目指す。
このあらすじたと、ロボット出てこないじゃん!て話になるんですが、出てくるんだけど割と、本筋と関係ないんですよね。出てくるし暴れるけどね。
昭子が最後に自分自身の不安、恐怖、トラウマを素直に告白できるようになるまでの監視社会の恐ろしさの描かれ方が無理なくて良いです。石村の正体?本心?がわかると、冒頭の「死を考えない日はなかった」がようやく効いてきます。
最後はちょっと残念な気持ち。昭子はどうなるのか。基本素直な人だと思うので、信念を持ってやってくれると信じたい。
ちょっと全体にチグハグな印象も受けるのですが、まあまあ面白かったです。
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第二次世界大戦で枢軸国側が勝利し、日本が北米の西側を、ナチス・ドイツが東側を支配している世界。「皇国」と自称する日本は、ロサンゼルスを中心に「日本合衆国」を建国し、日系混血人を中心とした圧政を敷いている。
皇国への叛逆を目論んだ両親を告発して現在の地位を得た軍人・石村紅功は、かつての上司である六浦賀将軍から、自死した娘クレアの死の真相を探って欲しいとの極秘の命令を受ける。ほぼ同時期に石村の前に現れる「特高」の女工作者・槻野昭子もまた六浦賀を追っていた。時は今しも、息詰まる監視社会の中で密かに流行するゲーム「USA」。現実の歴史とは異なり、連合国側が枢軸国側に勝利した世界を舞台にした戦争シミュレーション・ゲームを作ったのは、他ならぬ六浦賀では無いかとの噂が流れていた。異形の日本的社会の中、巨大ロボが治安を守る日本合衆国で謎を追い求める石村と槻野の戦いが、今ここに幕を開けるーー。
うーーーーーーーむ・・・・・・
下巻まで読み切って、作者がこの作品で表現したいこと、伝えたいことは、わかった気がします。両親を裏切って生き抜いてきた石村の人生の真相、サディスティックに見えて実は自分への恐怖を克服し切れていない槻野の人間的な弱さが最後に明かされ、暴力的な圧政の元でささやかな信念を胸にサバイバルする個人の魂の遍歴を描きたかったのだろうな、と鴨は読み取りましたし、その視点で読むとこのラストはなかなかの出来映えだと思います。
ただ、そうした人間模様をテーマにする作品であれば、人間を描く深みが必要です。それがないと、ストーリーが上滑りして、求心力を失います。
この作品では、主に登場人物の台詞の応酬で人間性や置かれた環境、ものの考え方を表そうとしています。が、この台詞がいちいちカッコ付け過ぎていてリアリティが無く、地に足の着いた会話になっていないため、キャラ造形に深みが無くステレオタイプなキャラ設定しか印象に残らない結果になっています。
ここで誤解のないように申し上げておくと、キャラ造形に深みなんぞなくても立派に成立するSFはあります。舞台設定の面白さ、SFとしてのアイディアの秀逸さ、それだけでSFは勝負できますし、過去にそうしたベクトルで成功した古典SFはたくさんあります。でも、この作品は、そういたベクトルで勝負しようとした作品ではないよなー、と鴨は感じています。だったら、巨大メカとか相撲レスラーとか人体改造とかゲーム対決とか、そうした派手なガジェットを売りにするのはちょっと違うんじゃないかなー、と。派手なガジェットが面白さを付加しているならまたそれはそれで評価できますけど、残念ながら昔からあるありがちなガジェットの焼き直しばかりで、あまり面白くありませんし。
というわけで、鴨のこの作品に対する評価は、「ちょっと方向性間違えちゃったかなぁ・・・」との残念な感じ。人物描写も世界観もどちらも中途半端で新鮮味がなく、ストーリー自体の求心力が今ひとつ。ぱっと見の面白さだけで星雲賞取っちゃったか?
どちらかの針に振り切れれば、面白いSFを書ける作者なのだと思います。今後の精進に期待!ですねー。