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投稿者:ころり - この投稿者のレビュー一覧を見る
「思ひの止まる紅入の友仙は可憐しき姿を空しく格子門の外にと止めぬ。」
このセンテンスに至って、それまで読みながら積もり積もった感情がどっと堰を切って溢れ出た。たけくらべは名作である。この作品には、心の内奥の過ぎ去りし日々の記憶を、鮮やかに喚起させる、ノスタルジア誘発的芳香がただよっている。
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一葉の没した24歳すぎて再度読み返した。「たけくらべ」の美登利は「ええ厭々、大人になるは厭やな事…」と彼女ら吉原遊郭周辺に暮らす子供達に「思春期」「青春期」モラトリアムという猶予期間はない。子供の時間を終えたら、大人になり職につく。酉の市を境に「子供、子供である時間」を終えて遊女としての身の哀しさを知ったか、少女美登利は憂いて沈み、水仙の造花を懐かしい想いで眺める…手に入らない清き男性をそのはるかに見つつ…美しい美登利の姿に終焉する物語に、私は耽美といいきれないリアリズムを感じる。
20歳大学一年、英語の教授が夏休みに、日本語で評せよと謎の課題としての扱いで読んだ記憶…妙な思い出とともに、時代の先端を生きつつも、家を守る古風な明治の女性一葉の存在を感じるに、自立、の意識が私にはまだ足りないか。?
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遊郭の周辺に生きる人々を舞台にした小説です。一葉自身がそのような場所に住んでいたからこそのりありてぃーがあります。現代語に訳したら魅力が消えてしまう。ぜひ原文で読んで欲しいです。明治は古典じゃなくて近代ですから。
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夜中にAUDIOカセットで聞いていたら寝てしまったので翌朝もう一度聞いた。
文体が旧態なので、本ではじめに読むとしんどいと思う。テープでよかった。
朗読の幸田弘子さんもすごくよかった。
樋口一葉を中心に朗読活動を続けている女優さんでH.8に紫綬褒章を受章している人らしい。
源七の息子の太吉の声なんて、びっくりするほど上手だった。
話の内容も、銘酒屋(置屋のこと)の看板娘お力へ入れ込んだ源七のやるせなさや
それを夫にもってしまったお初のなさけなさ、それでも離縁してくれるなとせがむ哀しさ
太吉から鬼、鬼、と呼ばれるお力の人生(家族、恋)など盛りだくさんでありながらするすると
物語に吸い込まれるような文体でとてもよかった。
どちらかというとやはりお初に感情移入してしまって、10年連れ添って我慢しつづけたのに
たったいっぺんその愚痴をこぼしたからといって「そんなことが妻のすることか」と罵られ
離縁をつきつけられるなんてひどすぎると思った。昔の妻ってほんと忍耐だったんだなあ。
蒲団やをつぶしてしまい働かなくなった源七のかわりにたった2畳の長屋でせっせと休むことなく
内職をつづける姿ははっきりと想像できて、痛ましすぎて悲しかった。
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8/3
軽妙洒脱。
焦点移動の巧みさと流麗な文体に、悔しいかな男性作家じゃかなわない。
川上未映子のはるか上を行っている。気がする。
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五千円札の柄も一葉になったし、必読の近代文学だと思って購入した
リズミカルな文体で、結構読みやすい
儚げで美しい物語で、それぞれの場面が脳内で勝手に映像化された
女性であり、家長であり、吉原界隈で育った一葉にこそ書けた話だということがわかった
装丁もすごく好きだ
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「にごりえ」だけ読みました。難しかった。
私は、お力よりも、お初に感情移入してしまいました。旦那の源七が風俗?にはまって、子どもはほったらかし・・・切ない!
皆さんのレビューを読んで、たけくらべにも挑戦したいです。もうちょっと後で・・・
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「言文一致体ではないけれども、これは近代文学なんだ・・・」なんてことを昔教えられたと思いつつ、夢中になって読み終えた。
『にごりえ』では物憂げな酌婦のお力、そして『たけくらべ』では快活な少女美登利がそれぞれ主人公である。
両者は当時の男尊女卑の風紀から外れた吉原界隈の人間である。しかし、自由はあれど所詮は「籠の中の鳥」、彼女たちの存在と未来は予め運命付けられている。そして、実はこうした運命付けは主人公以外の登場人物にも当てはまるのであり、坊主の子は坊主に、高利貸しの子は高利貸しになる未来がそれぞれ暗示される。
樋口一葉による登場人物の嬉々とした心情変化の繊細な描写は、将来に対する彼らの不安をも克明に写し出していた。
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文章の美しさもさることながら、キャラメイキングがたまらんですよ。気が強くてめんどくさい女性、大好きです。
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いわずと知れた明治の文学。いつかは読もうと思いつつ、55歳を超えてはじめて読む。だからこそかもしれない。「たけくらべ」はせつなく、悲しく、十代の淡い思いがよみがえる。さらに悲しくもある。
これからは何度も繰り返し読むことになるだろう。
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鎌倉の鶴が岡八幡宮近くの鏑木清方の美術館で一葉の墓に美登利の幻が佇む絵を見たことがある。その時から、いつかは読まなければと思っていた。
「たけくらべ」で思い出すのは、魔法使いサリーちゃん。40年ぐらい前の小学生の頃、春休みか夏休みの再放送で見た。(本放送中は男の子向けマンガを見ていたんだろう。)魔法使いは小説を読むと、物語の中に惹き込まれてしまう。本を読んだサリーちゃんが小説世界の中で美登利になってしまうという話だった。父親の大魔王の魔法で助け出されるのだが、話自体は大した盛り上がりも無く、変な違和感があった。
「たけくらべ」自体、短くて淡々とした物語。美登利と信如の間には何も起こらない。ある日、少女と少年の日が終わる。読み終えて堪らない寂寥感につまされた。
雅俗折衷体の文体は、かなりてこずったが、言文一致体で書かれたら、ピンとこないんだろうなあ。
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NHKのテレビ番組のJブンガクを見ています。
2010年の8月に にごりえを紹介していたので読み直しました。
相手はいくらもあれど一生を頼む人が無いのでござんす
というくだりを
Sure, I have loads of admires - but no one I can trust my life to.
と訳していました。 最後のtoは思い至りませんでした。
へー,そう訳すんだと
にごりえ の中身と英語の勉強になりました。
英語にしてみるとにごりえ の良さと日本語の良さを再認識できることが分かりました
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慣れるとするする読めてしまう美文。テンポが心地いい。子供たちが大人になっていく切なさと戸惑いが瑞々しく描かれている。授業でとりあげてもらえてよかった。
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少女マンガかと思った。
明治以降子女への教育が盛んになり、裕福な家庭の子女による教養というか娯楽としての文学が出るようになった一方で、古文を勉強した経歴から古典的な仏教文化に基づいた、それでいてそこまで裕福でなく吉原の近くで生活環境のよくないところで暮らした過去が作品に特徴を与えている。らしい。
ひらがな中心とかはそうだけども、現代でもありそうなレベルの人の表裏の複雑な感情と生活が描かれていて、正直すごいと思った。
まあ少し少女漫画的な恥ずかしさに悶絶したけども。
時代が時代だからスラスラは読みにくいけども、おすすめ。
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思わずため息をついてしまうくらい清廉として、そしてどこかほの暖かい日本語で書かれているなと感じました。
ろうそくの光のような雰囲気を持った日本語。
柔らかく、どこか輪郭のぼやけた先には深い闇もあって…はっきり見えない霞の向こうを知りたいような、知らずにいた方がいいような…曖昧さが心地よく、そして物悲しい。
『にごりえ』はストーリーがよく分かったのに、『たけくらべ』はイマイチお話についていけなかったのは何故かしら?