活字のエロスを楽しむ
2016/11/09 07:46
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本文学の名作にリスペクトを払いつつ、悩ましい官能の世界を描いた短編に仕上げた官能小説家花房観音の文庫オリジナル短編集。
作品の下地となった名作は、芥川龍之介「藪の中」、川端康成「片腕」。谷崎潤一郎「卍」、夏目漱石「それから」、三島由紀夫「仮面の告白」の5作品である。
川端や谷崎はもともと耽美的な嗜好があるから官能作品にしやすいが、漱石の「それから」ともなればどのような香料を振りかければそうなるのか、作品にあたってもらいたい。
ヒントといえば、百合の香り。確かに漱石の作品でも百合の花はうまく使われていたはずだ。
そういうところをうまくすくいとった花房観音はこの本の「あとがき」で少女時代の読書体験を綴りながら、「文学と呼ばれる小説は、私にとってはエロ本みたいなものであった」と告白している。
そういえばと思い出してみれば、谷崎の「痴人の愛」とか三島の「潮騒」にもどきどきしながら読んだ記憶がない訳ではない。
少年少女時代の読書には他人には聞かせられない秘めやかな罪の匂いのようなものがあるのも事実だ。
花房観音のこれらの短編を読みながら、幼い頃の読書体験を思い出していたのも妙な話ではあるが。
花房観音は「あとがき」の最後に「妄想をかき立てる活字のエロの楽しみ」という言葉を記しているが、官能小説を単に「いやらしい」という一言で蔑視するのは活字の楽しみの幅を狭めているといえる。
花房観音の作品は読めなければ、せめて谷崎潤一郎を読むのもいいのではないかしらん。
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官能短編集w
『藪の中の情事』『片腕の恋人』『卍の女』『それからのこと』『仮面の記憶』・・・どっかで聞いたことのあるようなタイトルだなーと思っていたら「文豪官能」だとかw
文豪の名作のエロい部分を膨らませて書いた妄想短編?w
面白そうでしょ~?www
っつっても、原作は読んでないので、探して読んでみなくちゃですね!w
それにしても・・・『それからのこと』は別のアンソロジーで読んでるはずなのに、ぜんっぜん覚えてなかった・・・花房さん、読みすぎて麻痺しちゃってるのかしらん?www
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5つの短編官能小説。
それぞれが夏目漱石や芥川龍之介など昔の文豪が書いた小説を題材に書かれているとの事。
官能小説はあまり読みませんがもっとドギツイ表現があると思っていました。
通常の小説に少しエロい部分があるなぁくらいの感じ。
もろに表現するよりわざと読み手に想像させるように書かれているように思います。
個人的に昔の文豪と言われている方々の作品はあまり好きではないので原作を知らない分面白さが半減したのかな。
花房花音さんの作品は初でしたが読みやすかったので他の作品も読んでみようと思います。
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文豪の本を官能小説に?
興味本位で手にした、初めての作家さん。
うーん
びっくりする程の新鮮さは無かったです。
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2017年、18冊目は、主に隙間読書用にしていた花房観音の短編集。全5編収録。
今回もタイトルだけ紹介。
藪の中の情事
片腕の恋人
卍の女
それからのこと
仮面の記憶
「文豪官能」というコトで、文豪の作品を現代設定の官能にアレンジ、remix。コレはコミック『谷崎万華鏡』のレビューでも記したが、自分、文学音痴の読書好き。したがって、元ネタはほぼ知らずに読みました。
そんな、元ネタ知らずの文学音痴は「卍の女」が最も好み。次いで「それからのこと」以下は僅差で「藪の中の情事」「片腕の恋人」「仮面の記憶」の順かな。いずれにせよ、全5編、どれも及第点超え。
花房観音の丁寧な作りと描写で、(短編のためもあるが、)少ない登場人物を鮮明に描けている。また、官能のバリエーションも豊富。ただし、個人的には、官能としては(解説にある「本来の効用」としては)「卍の女」位しか機能しなかった。隙間読書として、主に外で読んだからかもしれないが……。えっ?屋外で官能読むな、って。
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「近代文学を代表する文豪たちが書いた名作を元に、私の妄想をくわえて官能小説にしたものを集めたのが本書である。」(あとがきより)
芥川の「藪の中」、川端の「片腕」、谷崎の「卍」、漱石の「それから」、三島の「仮面の告白」に材を取った短篇集。
*****
「藪の中の情事」…夫の告白が最も新鮮だった。なぜなら、著者の作品に登場する男は女の手のひらの上で転がされているのが大半だが、この夫はそうではなく、冷淡で支配権を握っているから。
「片腕の恋人」…ある意味最もロマンティックな一篇だが、片腕が万能すぎてついていけない。
「卍の女」…京都弁がたまらない。ただ読むのではもったいなく、声に出して楽しみたい一篇(ただし小さな声で…)。
「それからのこと」…本作の中で、最も女の本性を炙り出した一篇。著者は、恋という地獄に魅せられているのだと思っていたが、もっと言えば、男の激情を受け止める刹那の喜びに魅せられているのかもしれない。
そして、「卍の女」もそうだが、夢のような喜びは程なく色褪せ、愚かな愛人を見下すところまで描かれるのがいい。
著者の作品を読むと、自分の中にもそんな「女」が住んでいることに気付いて不安になるが、同時に満ち足りた幸福の中にいることにも気付いて安堵する。
「仮面の記憶」…著者初めての男同士の物語。肉体の描写が目立ち、柏木の首から上が想像できないので、どうも現実味がない。
*****
それにしても、原典を1つも読んだことがないのが恥ずかしい。しかし今読むと、確実に本作に引きずられてしまうので、来年読もうかしら。
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女と男の心の中にあるものを自己中心的に表現しています。それぞれのもとになる近代文学読みたいと思います。
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花房観音さん、初読み作家です。「花びらめくり」(2016.10 文庫」を手にとりました。5話が収録されています。官能作品を書かれる女性作家なんですね。藪の中の情事、片腕の恋人の2編を読みました。官能作品、嫌いではないのですが、著者の作風は肌に合わない気がしました。
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日本文学の短編名作のパロディ集。
と言って仕舞えばそれまでだが、それが「性」を題材にした官能小説的手法となると、これまたそれまでな感じがする。
とはいえ、なんだろう、結構面白かった。
短編集なので、読みやすいし、なによりライトな感じに収まっているところが、なんだか気に入ったようである。
つまり、なんで面白かったのか、自分でもよくわからないらしい。
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芥川龍之介「藪の中」→「藪の中の情事」
川端康成「片腕」→「片腕の恋人」
谷崎潤一朗「卍」→「卍の女」
夏目漱石「それから」→「それからのこと」
三島由紀夫「仮面の告白」→「仮面の記憶」
文豪作品を本歌取りしながら、
官能小説に仕立てる試み。
この5作品はどれも読んだ記憶がうっすらある。
こんなシーンあったと思い出される。
官能的かと問われれば、確かに。
ただそれぞれ本歌も、
官能的なものを内包している。
秘匿されたものを明らかにし、
隠されたものを白日に晒す。
小さな炎に薪をくべ、団扇であおぎ、
高々と天へと育てる。
いい作品と呼ばれる物語は、
少なかれ多かれ官能的な一面を持つ。
どこにインスピレーションを受けるか。
どういう物事に官能的なものを感じるかは、
人によって大きく異なる。
良い作品ほど、様々で複雑な
インスピレーション・ポイントを持つ。
ただ物語を読むのではなく、
妄想を膨らませるのが、
読書の魅力の一つでもある。
自分の好きな物語、気になる物語。
そこにも官能的な部分があるか探してみたり、
官能小説に仕立て上げられるか、
考えてみるのも面白い。
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『片腕の恋人』他人から見たらグロテスクでしかない状況だけれど、愛する人の左腕さえあれば、しかもその腕が感情を持ってるかのように愛してくれ、ずっと一緒にいてくれるとするならば、これ以上の幸せはないだろう。妄想をかき立てられる物語だ。川端康成の原作も読んでみたい。 『それからのこと』の三千子は感じ悪い女だけど、わからなくもない。女の嫌な部分に心が支配されてくると自己嫌悪に陥って、自分の事が嫌で仕方なくなったりするけど、花房さんの作品を読んでると、誰しもそういうところはあるんだよと少し救われる気がする。
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今まで読んだ官能小説の中で一番好きかも知れない。
関係性や心情、行為それぞれに表現の豊かさを感じました。男女だけではなく、同性愛も含まれていたのも面白かったです。花房観音はいいぞ
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文学的な香りはするがそれでもいわゆる官能小説だろうか。昭和の文豪のような世界観や文体。江戸川乱歩や谷崎潤一郎を読んでいるような気分になる。妙に心に残る読み応えのある小説だった