フランス作家ミシェル・ウエルベック氏による未来の予言書とも言うべき驚愕の一冊です!
2020/05/24 09:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『闘争領域の拡大』や『素粒子』、さらに『プラットフォーム』など数々の話題作を提供し続けているフランスの作家ミシェル・ウエルベック氏の作品です。同書は、2022年仏大統領選を舞台にした物語で、投票所テロや報道管制の中、極右国民戦線のマリーヌ・ルペンを破り、穏健イスラーム政権が誕生するというストーリーです。同書の解説をしている佐藤優氏は、「『服従』を読むと、人間の自己同一性を保つにあたって、知識や教養がいかに脆いものであるかということがわかる。それに対して、イスラームが想定する超越神は強いのである」と述べています。フランスに限らず、現代の日本にも当てはまる驚愕の予言書です!
本当にあるかも知らない未来
2022/09/06 10:25
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの「服従」とは、何を意味しているのだろうか、政権を握ってしまったイスラームへの服従を意味しているのであろうか、主人公もソルボンヌへの復職のためにイスラームへ改宗しようとしている、はたまた、人生そのものは・・・といった哲学的な意味も込められているのかもしれない。ルペンの国民戦線が政権を握るよりはましと、フランス国民がイスラームに政権をゆだねるという可能性がどれだけあるのかは私にはわからない、「シャルリー事件」だけを通して見ていると、イスラーム政権より国民戦線を選ぶ国民が多い気がするが、インテリ層が本当は何を考えているのかわからないのは、この作品のとおりだと思う、「自分にとって何が利益か」しか考えない彼らは怖い、右傾化か左傾化かはたまた第3の選択しか、この小説の問いかけは鋭い
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単行本が出た時からかなり話題になっていたウエルベックの最新作が文庫化……といっても、4月のことなので、随分と時間が経っているw ついつい後回しになってしまった。
あらすじや社会情勢に対応させた話は色々なところでされているだろうから置いておくとして、終盤で『O嬢の物語』が象徴的に使われているところがとても印象に残った。
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近未来を描くディストピア小説。
フランスの国民戦線とイスラーム党の政権抗争と、その帰結、およびそこから描かれる影響が表されている。視野狭窄と他者への寛容性を失った社会の起こり得る帰結と、そうした非日常が日常化していく中で作られていく新たな「当たり前」が描かれていく中で、現在の持つ特異性や良さ、改善点に改めて気付かされた。
著者の白人男性としての価値観も少々感じることがあった、ムスリムへのある種のぬぐいきれない固定観念みたいなものもところどころ感じたり。
自分はディストピア小説に割と心動かされることが多いのかな。ただ一方で、物語の大筋と個人の世俗的な欲望がどのようにリンクしているのか見えにくい部分があったことと、描写の直接性には少し違和を覚える場面もあったので、
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2017年の現実もル・ペンさんの敗北。
しっかしこれ、中年独身男が服従したのはイスラムではなく寂しさじゃないですか。
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だらだらごちゃごちゃゆってるな感はあるけど笑それも含めておもしろかった。何となくの村上春樹感ある。絶対的な幸福は服従にある。イスラーム世界は創造主による創世は完璧、称賛と法への服従。人間主義とインテリは弱く脆い。
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読書会の課題本ということで読んでみた。言葉の端々に見られる女性蔑視・イスラム蔑視・ユダヤ蔑視がすごすぎて、眩暈がしそうになる。この話のキモであるはずのイスラム教徒大統領誕生後の流れも安直で非論理的な偏見に満ちており、何度も途中で読み捨てそうになった。「こんなのが流行るとはフランス社会も相当病んでいるな」という以上の感想が出ない。
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主人公に共感できない。イスラムが政権を取ってからの描写は、女性の身から読むと、恐ろしくなるほど不安な IF の世界が描かれているが、ある意味男性にとっては、これってもしかしてユートピアなのか?それとも、この結末は大学教授のような知的エリートの人々が、政治に関しても宗教に関しても、あまり関心が高くないことに対する皮肉なのだろうか?
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フランスの政治状況について全然知識がないため、読むのが難しかったです。もっと知識があれば、もっとこの本の魅力を味わえるのだろうなと思います。
フランス大統領選挙で、国民戦線とイスラーム同胞党が決選投票に挑み、イスラーム同胞党が勝利します。イスラーム同胞党は、フランス人の子弟がイスラーム教の教育を受けられる可能性を持たなければならないとしています。イスラーム教育は男女共学はあり得ず、ほとんどの女性は初等教育を終えた時点で家政学校に進み、できるだけ早く結婚することが理想とされます。教師もイスラーム教徒でなければなりません。
そんな社会になっても、思っていたよりは反乱、暴動が描かれていないように思いました。もちろん銃撃戦があったり、人が殺されていたりする場面もあったのですが、想像していたよりも少なく、報道管制の恐ろしさも感じました。最終的に主人公もイスラーム教に改宗を決めてしまい、そうやってどんどんイスラーム教が受け入れられていくのも恐ろしくなりました。
主人公については、孤独な人、という印象を持ちました。その場その場で誰かと付き合ってはいても、誰かと深く関わることはないのではないかと思ってしまったからです。
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書店にて「文庫になってる!」と手に取り、そのままレジ直行。
イスラム教にヨーロッパが支配されたらどうなるのか、という挑戦的な内容の小説だということをテレビで知り、興味を持っていました。
ある程度哲学、文学、政治への素養がないと厳しいかもしれません。でも新聞の海外欄を読み通せるくらいの知識があれば問題ないと思います。
あとフランス人の作家のせいか(それは偏見でしょうか)ベッドシーンが多用されています。特に前半は。
読んでるときはちょっとくどく(っていうか主人公何してるんだよと)思っていましたが、あとから考えると、ヨーロッパの生命力を欲望として表現していたのかもしれないとも思えます。
ラストに非常に前時代的な結論が受け入れられてしまう様子は、何が正しいのかわからなくなる、足元が落ちていくような感じがしました。
失業者増加、賃金低下、出生率低下はすべて、イスラム教に基づき、女性が必要以上の教育を受けないこと、仕事につかないこと、一夫多妻制とすることによって一発解決してしまうという。
複雑です。
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ウェルベック・ミーツ・イスラム教。
フランス大統領選の話だけど、政治ネタは3割くらい。セックスと食事の話が楽しい。
宗教やユイスマンスの話は、よく分からないなりに楽しい。
最近「一夫多妻制って制度化されてないだけで日本も実質そんなもんじゃ?結局、所得が高いやつが愛人とか囲ってるわけで」
って事を知っちゃって、せちがらい。
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主人公の研究対象であるユイスマンスのことをわからないとわからないんだろうな。。。と読みながら思った。これまで読んできた「闘争領域の拡大」「プラットフォーム」「ある島の可能性」とはなんか違う感じ。消化不良。
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この小説のことはユイスマンスを読んでから考えよう。というわけでKindleで「さかしま」を。(17.11.20)
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フランスにて極右政党とイスラム穏健派政党が首班を争うことになったら、
という設定のもとに、
大学で教授を務める主人公の姿が描かれる。
政治の動きを実名政治家も用いながら説明しており、
フランス人にとってはかなりリアリティの高い作品なのだろうと思わされる。
正直なところ、読後感はすっきりしない。
これが実際に起きる出来事なのか、
といわれるとかなり確率が低いのでは、とも思う。
しかし本題は、その政治・社会的な混乱の中、
「服従」を選択するエリート層に対する批判なのではないだろうか。
日本だとここまでの思考実験は難しいのだろうな、とも思う。
左だ右だという形式にとらわれて、
本質的な危機があることに気付けない。
申し訳ないが、エンタメ・純文学を望むのであればお勧めしない。
ヨーロッパ圏での危機感やイスラムに対する不安感を感じたい方に教養の本としてお勧めする。
フィクションながらもノンフィクションのように感じさせる、
なんとも言えない小説。
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これはただのSF小説ではない。個人・国家・自由といった概念がこれからどのような変貌を遂げるのか、ウェルベック独自の視点で読者に提示する傑作である。私の理解では、この作品のテーマは先進国における個人主義・自由主義の未来であると考える。重要なのは「服従」というタイトルで、多様性の中で自由を謳歌していた個人がその自由によって疲弊し自己を見失い、共同体的なしがらみに「服従」することで「自由疲れ」からの解放と生の実感を得るという筋書きになっている。
「フランスにイスラーム政権が誕生!」「社会をリードする知的エリートがイスラームに服従!」という設定はセンセーショナルだが、よく読むと服従する先は何もイスラームに限った話ではなく、それこそ伝統的なキリスト教でもよかったことがわかる。その証拠に、「中世キリスト教文明が1000年も続いたこと」が、「近代文明が高々200年しか続いていないこと」と対比して描かれ、「近代社会に対する中世キリスト教文明の偉大さ」が賞賛される場面が多くある。本書の主人公はキリスト教の聖地を訪れ心の平安を求めようとするが、上手くいかず修道院を後にする。ウェルベックが「服従先」としてあえてイスラームを設定したのは、人々の思想や行動に対する拘束力・人々が進んで身を委ねようとする求心力を、今のキリスト教に見出せなかったからに相違あるまい。
個人的に尊敬する佐藤優氏が解説を寄せているが、「イスラームによるヨーロパの統合がウェルベックの作業仮説であり、知的エリートはとかく権威に服従するものだ」という氏の見立てはどこか的が外れているように感じる。 私は、本書はヨーロッパ統合の問題ではなく個人の生きかたを問いかけているのだと考える。より正確に言うと、「このままでは本書のような社会がやってきますよ、読者の皆さんはそれでいいんですか?」といった感じだろうか。本書で描かれる世界がすべて現実のものとなるということはないとは思うが、本書を構成する様々な要素は現実社会に大きな影響を与えることとなる気がしてならない。