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10日ほど前、インフルエンザに罹患。もともと、4歳の娘がインフルでした。一方こっちは風邪が酷かった。保育所に復帰する為の治癒証明を貰いに行った小児科で、「一応自分も」と、検査したところ、陽性。(ちなみにその小児科は、人に薦められて行きつけにしているのですが、大変に優秀で親切です。堪らず大人も行きつけにしてしまっているくらい。東横線横浜よりゾーンの方は是非お薦め)
早期発見のおかげか、あまり高熱が出ず、暢気な療養でした。インフル休暇のお陰で、「しばらくは仕事が慌ただしくないのでゆっくり読書もできるな」、と色々考え「カラマーゾフの兄弟」の再読を年末年始の楽しみにすることに。長らく買ったまま手を触れていなかった、光文社古典新訳文庫の亀山訳です。
亀山訳は「罪と罰」の再読で経験済み。嫌いでは無かったです。30年くらい以前に新潮文庫版を読みました。
かなりわくわくしつつ、まずはインフル休暇初日に準備運動として亀山さんの「100分de名著 カラマーゾフの兄弟」を購入し半分くらい読みました。「後半は、カラマーゾフを読み終えてから、読む方が楽しめそう」と、半ばで中断。本丸に入ろうと思ったのですが、ふと。
「司馬遼太郎の”ロシアについて”を買ったまま放置していたな」と思い出し。19世紀ロシア世界にどっぷり遊びに行こうとしている今よりも、良いタイミングは無いのでは。
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「ロシアについて 北方の原形」司馬遼太郎。文春文庫。恐らく1986~7年くらい、あるいはもう一寸以前に、文藝春秋に連載されたものです。
つまり、もう35年くらい前の文章です。
でも、古びないですね。
1985前後のソ連について言及されている部分もありますが、基本は「坂の上の雲」「菜の花の沖」を書きながら、ロシアについて考えたことをまとめておきたい、という意志から書かれたそうなので、目先の政治現象についてではなく、歴史を遡りながらロシアについて考えた、という一冊。
司馬遼太郎さんと言えば「日本史」なんですが、ここ何年か、司馬遼太郎さんが「日本以外の国」について書いたものが、面白くてたまりません。個人的に世界史というのが日本史よりも隔靴掻痒なんですが、司馬さんが解説してくれる世界史は、冷たい肉に忽然と熱い血が流れ迸る如く分かりやすく面白い。
この本は、「ロシアについて」なんですが、実は半ばは「モンゴル草原の騎馬民族だとか匈奴だとか呼ばれる人々について」だったりもします。そして、後半から終盤は、ロシアに対して、日本がどういう顔をしてきたか、という、「ポスト日露戦争の、日本の歩み」という色合いもあります。ちょっと、奇妙な本です。
ただ、ロシアが持っていた特異性、農奴制と日本の封建制の異質さだとか、シベリアという特殊領域の性質が、これでもかと分かりやすく語られ、それはとっても面白かった。つまり、黒貂の毛皮をパリの人が買わなければ、ロシアのシベリア進出は無かった。風が吹けば桶屋が儲かります。
至極簡単に言うと、シベリアでは毛皮が取れる。取った毛皮はパリを筆頭に西欧文明先進国で、高く売れる。ほぼ国策��して、その利を求めてシベリアに進む。ところがシベリアでは、人を養いうる農作物つまり食べ物が栽培できない。食べ物が足らない。毛皮で外貨を稼ぐために、毛皮を採取する人々を送り込む。そしてその人々の食料をひたすらに送り込まなくてはいけない。
その「面倒くささ」が、歴史を動かします。
日本の鎖国の扉をロシアがたたいたのは、「ここで、シベリア用の食料を買えるのでは。あわよくば毛皮も売りさばけるのでは」という欲望。
これ、実はアメリカ(ペリー提督)もほぼ同じなんですね。
当時は鯨の脂っていうのが、ランプなどの照明に大変必要だったそうなんです。アメリカの人々は大いに捕鯨していました。捕鯨船の太平洋での補給基地が欲しかった。そのために、業界団体が、首都ワシントンで政治工作して、政府を動かした。それくらい、捕鯨業界は強く、お金があったんですね。
動かされた政府は、ペリー提督を派遣した。と、いう筋書き。
(話は逸れますがそういう過去を持つ人々が、「鯨を捕って食べるなんて、なんて野蛮なんだ」って言っていたりするんですね。おかしい、と思わない方が不思議)
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司馬さんは、北方領土の問題にも触れています。
さすがのリアリズムと客観性。
要するに、「北方領土は日本の領土である」と主張は大いに続けるべきである、と。だけど、実際問題、「そうかそうか、返します」となるわけが無い。そうなるわけはないけど、主張は続けた方が良い。
ただ、国際政治と領土問題のリアリズムで言うと、返還を実際的に求めても、意味が無いんです。だから、北方領土の問題を、国内のナショナリズムを煽ることに使うのは、絶対に良くないよ、と。
「それはそれ、これはこれ」で、北方領土問題で、対外的な経済や親睦に水を差しては、元も子もない訳です。
これは確かに、世界の領土問題の歴史を見るにつけ、そうなんだろうな、と思います。
さて、いよいよ、カラマーゾフ。
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司馬さんのロシア感は深いです!ウクライナとの戦争も歴史的な背景があるようです。タタールのくびき、とか
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ウクライナ情勢に関連して増刷され平積みになっている司馬遼太郎の作品。坂の上の雲、菜の花の沖でロシアについて書いた司馬遼太郎がその時に触れたロシアの一側面をまとめている。
司馬遼太郎といえばモンゴルというイメージが私にはあるのだけれど、そのモンゴルという大地、草原地帯の遊牧民との関係性からロシアの国家観を描いている。
クリミアから中央アジア、シベリアへと続く草原地帯における遊牧民から圧迫を受け続け、次第に克服し内部に取り込んでいく過程が、ロシアの非ヨーロッパ的なアイデンティティとして通奏していて、ロシアのユーラシア主義はここから続いているということがわかる。ロシアのシベリアへの進出はアメリカにおける西部開拓と似ているところがあって原住民を野蛮に蹴散らしていくようなところもあったという。しかしながら、ロシアの遊牧民への扱いもだいぶ酷いのだけれど、中国はさらに酷いのも驚く。本来なら距離的に近い中国がこの草原の支配を確立していてもおかしくないのだけれど、清朝が漢族の国家でなかったゆえに、漢族の優位性を押し出す政策を強く押し進めた結果、シベリア・モンゴルの取り込みは失敗してロシアの大地となった。
日本はそのロシア人がシベリアまで進出してきた毛皮業者が食料を求めてやってきたころからの接点が生まれていて、鎖国政策ゆえにけんもほろろに断っている。ただ千島列島あたりに漂流した日本人がロシア人に匿われ、サンクトペトロブルクまでつれていかれて皇帝に会ってもいたりする。それほど当時のロシアは日本と交易がしたかったということのようだ。
それにしてもロシアはモスクワ、サンクトペトロブルクというヨーロッパ的な顔を西側社会にはみせているけれど、実際にはシベリアまで東側に大きくウイングを広げているのであって、その内実はシベリア進出、遊牧民との戦いの感性が強く残っている国家なのだとも思う。その意味でロシア人の感覚を我々(特に日本人)の感覚で安易に測ってはいけないのであって、中国だけでも厄介なのに、もう一つ厄介な国が隣国にいることを日本人は忘れてはいけないとも思った(ただ気軽に煽ることは避けた方がいいとも)。
その点、朝鮮半島・韓国とは上手くやっておいた方がいいとは思うのだけど、亀裂は深く悩ましい。
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ロシア関係の本を探していたら、高校生の頃にはまった司馬遼太郎氏が、ロシアについて考察した本を書いているのを見つけて驚きました。
氏の解釈を踏まえながら丁寧にロシアについての考察を展開していて、興味深く読みました。そして、さすが作家だけあって読みやすい!
出版年は古いですが、現状を理解するための本としてはまったくもって問題ないかと思います。
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ロシア、アメリカ双方にとって日本の地理的重要性は高く、日本という小さ島国が経済的に成長し、今のところ平和を保っているのはある意味奇跡と言えるかもしれない。
ただ、それはもちろん日本自力で成し遂げた訳ではないが。
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書店の本棚でちょっと気になって読もうと取ってみたら、元に戻すときにバサバサっと何冊も床に落としてしまい、慌てて片付けながら少し申し訳なく、何かの縁だからと一冊購入。
持ち帰って読み始めて、「ん?この本家にあったかも」と本棚の奥に全く同じ文庫本がありました。
内容は古来、ロシアの西欧に対する思いとシベリアへ翼を伸ばした歴史的経緯。そしてその先にある日本とのかかわり方について。
すっかり忘れていたけど面白かった。
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時節柄、ロシアの本質に迫るような本を読みたいなと思って手に取った。
副題の通り、ウラルより東の話が主なので、ウクライナの話は(クリミアの話が少々登場するする以外は)出てこないし、なんと言ってもまだソ連がある時の本なのだが、約二百年に渡るロシアと日本の外交関係を俯瞰するには大変な良書。
1945年ヤルタ協定の僅か3条の内容が、1条モンゴルの現状維持(ソ連勢力圏)、3条千島列島のロシアへの引渡(2条は日露戦争による日本の権益のロシアへの返還)、で、北方領土返還が即、モンゴルの中国返還(清朝時代の版図を正とすれば)に繋がり得るため、中国が注視している、ということは全然知らなかった。
パリの貴婦人が黒貂の毛皮を珍重しなければ、ロシアのシベリアへの進出の動機が無くなり、世界史が大きく変わっていたかもしれない、と考えると不思議な気持ちになる。
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いつもながら作者の深い洞察力と理路整然とした筆致に唸らされる。近くの大国でありながらその歴史やシベリアへの進出の背景など、知らないことばかりで興味深かった。騎馬民族の盛衰の背景もなるほどと思わせる。
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動物農場でもはやかなり直喩的に描かれたというロシア、歴史も背景もけっこうぜんぜん知らない…と思って読んだ。ロシアの原型を、日本とシベリア地方の関係を主な視点にモンゴルなど周辺地域も含めた深い洞察で紐解く。最後のページに地図あるけど最初に載せてくれ…
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今この時期だから
読んでおきたいな...
と思っていたら
偶然リユース文庫で入手
そして
ロシアの成り立ちについて
対日関係の歴史について
全く無知だった自分
目から鱗がぼろぼろ
読んで良かった一冊
政治家がマストで読んで
勉強してくれ
と思う
市のリユース文庫にて入手
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ロシアというよりもモンゴルやシベリアの遊牧民族についての記述が多く勉強になった。遊牧、民族にとっての草原の大切さや中華民族が濃厚することによって、その草原が失われるので、彼らにとっても防御反応として中華帝国を進行せざるを得なかったと言う考え方は画期的だった。
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ロシアの発展と隣国(モンゴル、中国、そして日本)との関係史について紐解いていく流れ。
ロシアが、未知の世界を開拓したいとシベリアへ乗り出したことは自然な流れ。でもいわゆるこれが運の尽きか、手を出したことがきっかけで、隣国との関係が悪い方に動き出してしまったのかなと感じた。だからと言ってロシアを嫌うでもなく、あくまで歴史の流れに沿ってロシアという国を浮かび上がらせる書き方に感動した。むしろ大正〜昭和にかけ、ロシアに反発するように膨張してしまった日本を恥じているのも伝わる。
最後に。読み終わった2023年、出版の1989年から30年以上経つのに今のことを話しているかのようなリアル感。芯をとらえた本は長生きだなあと感じた。
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こんな時期だから読んでみた。ロシアを巨人の左腕と右腕に例えていた。そこに生きている人と牽制者はきっと違う。
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ロシアと中国とモンゴルとチンギス・ハーン。
千島列島。
ロシア人の気質の成り立ちが、地理的に歴史的に理解できました。
この本は、高校時代に読みたかったです。
今まで司馬遼太郎さんを敬遠していたこと反省しました。
あらためて『坂の上の雲』を読みたいと思います。
図書館で借りましたが、文庫本を購入しました。読み返したい本です。
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どっかのおすすめで出てきたので読みました。意外と国としてのロシアの歴史はそんなに長くなく、モンゴルなどにいた遊牧民に支配される時期が長かったんだなと。シベリアという土地を併合してからロシアという国は始まり、シベリア経由で日本に接近してきて今日に至る流れはわかりやすかった。雑談に書いてあったが北方領土をロシアが手放さない理由がヤルタ会談にあり、外蒙古を中国に間接的に返さなきゃいけなくなるからっていうのは納得した。