システムと脆弱性
2021/11/15 14:20
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
システムの設計に関わったことがある人なら、著者の言わんとしていることは「当たり前」に聞こえると思う。コンピュータを使うシステムでも、使わないシステムでも、誤差や例外の取り扱いはキモなのだ。初歩的あるほど見落とされやすく、致命的になりうるのに外の人に理解されにくい。ああ、もどかしい、と思ったことがある人なら、本書を読んできっと溜飲が下がるに違いない。
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4年ぶりに再読。
将来の事は誰も予測できないので、将来を予想して計画を立てて安定するよう管理するよりも、ある程度の変動はある物と考え、変化に耐えられるよう備えていく方が結果的に良くなる事を、種々事例をあげつつ、前者を実践している実在の人物を批判している本。
ボリュームは多く、事例説明が多いので中々読みにくい感はあるが、自分が実際に感じ取っている事と似通っているので、この本の主張は正しいと私は思います。
この後ようやく下巻に入るが、時間をかけて読み進めていきたいと思う。
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「反脆弱性って?」って質問されて、スラスラと説明できる自信はないけど、フワッと理解しつつ、ふんふんと面白く読み進んだ。
若い時分には、理屈が(自分なりに)完全に消化できないと先に読み進めなかったが、もうそんなにヒマじゃないしな。個人的にはこのくらいで満足、下巻も読む。
第6章後半にある、ランダム性の必要性の話が面白かった。ビュリダンのロバ、確率共鳴、冶金の「焼きなまし」…果てはカオス系の安定に繋がるとは。そう言えばマニキュアを塗ってる最中、擦れたり引っ掻いたりしちゃった時にはヘタに触らないで放置すると、均されたりしてるよな…って、ん?アレは表面張力か。
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p71 ホルミシス
p79 「人生がレモンだらけなら、それでレモネードを作りゃいい」
p94 「嫉妬されないのは無能の証」
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タレブ氏は奇しくも金融危機直前に『ブラック・スワン』を著しその発生を予見(そして大儲け)したわけであるが、本書『反脆弱性』は黒鳥どもの扱い方を記した本である。テーマは「反脆さ(anti-fragile)」である。例えば氷は物質的安定さを持つ一方固体としての脆さがあり気体は流動性ゆえ反脆さがある。少量の毒やストレスはむしろ体に良い、などは現実的感覚に近いだろう。タレブ氏の語る「反脆さ」は至るところに見られる。生物、経済、政治、国家などなど。変化や死を前提にしたシステムの強さ(≒反脆さ)はなかなかの哲学的な事を語っており、シリコンバレーのエコシステム然り、量子論や遺伝子工学にも共通する概念である。
タレブ氏のシニカルなジョークが冴え渡っているものの時々度を越して差別的発言になっているのはいただけないが、抽象的で難解な概念を独自の視点と忌憚なき批評で極めて具体的事象まで昇華して書かれており非常に興味深い本だ。タレブ氏自身、レバノン出身の傍流の人であるからこその反脆さがあるのかもしれない。とりあえず上巻でわかったことは氏がグリーンスパン嫌いであるということであろうか。
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私たちは過剰補償する力を持っているだけでなく、雑音を必要とするときもあるのだ。作家の習性というやつだが、私はよくカフェに座り、(みんなに言わせれば)障害と闘いながら仕事をする。私たちは、木の葉のそよぐ音や波の音を聴きながら、眠りにつくのが好きだ。(p.83)
私の考える歯医者というのは、失敗を犯しても反省せず、教訓も学ばず、失敗を恥ととらえる人たちだ。新しい情報を活かすのではなく、保身に回り、前進する代わりに失敗の言い訳をする人たちだ。そういう連中はたいがい、自分を大掛かりな陰謀、卑劣な上司、悪天候の”被害者”だと考えている。
最後にもうひとつ。いちども罪を犯したことのない人間は、いちどだけ罪を犯した人間よりも信頼できない。そして、何度も間違いを犯した人間のほうが、いちども
間違いを犯したことのない人間よりはまだ信頼できる。ただし、同じ間違いを2回以上犯していなければの話だが。(p.131)
七面鳥の話から、質の悪い間違いの根本原因がわかる。「(有害性の)証拠がないこと」を「(有害性が)ないことの証拠」と勘違いしてしまうことだ。あとで説明するように、この種の間違いは知識人の間で蔓延していて、社会科学の分野にもすっかり根を下ろしている。
したがって、私たちの人生の目標は「七面鳥にならないこと」であり、欲を言えば七面鳥の逆になること、つまり反脆くなることだ。「七面鳥にならない」ためには、まず真の安定と作り物の安定を見分けられるようにならなければならない。(p.164)
私は、何かをしなかったことで名声を得た英雄がいないものかと歴史を調べてみたが、何もしなかったというのは探すのが難しい。結局、なかなか見つからなかった。(お金のかかる)腰の手術をする代わりに、自然治癒に任せた医者は、いかにも手術が必要であるかのように見せかけ、患者を手術のリスクにさらしつつ治療を施し、莫大な金銭的報酬を得る医者と比べれば、報われないし、名声も得にくい。ピンクのロールスロイスを乗り回すのは、たいてい後者のような医者だ。(p.206)
ラテン語には、「ゆっくりと急げ(festina lente)」という表現がある。わざと送らせる行為を尊重していたのは古代ローマの人々だけではない。中国の思想家である老師は、「無為」という原理を掲げていた。これは“何もすることなく成し遂げる”ことを意味する。
ほとんどの人々が理解していないことだ、が、先延ばしは、物事を自然の成り行きに任せ、反脆さを働かせる、人間の本能的な防衛手段なのだ。これは、何らかの生態的で自然主義的な知恵から生まれるもので、必ずしも悪いものではない。実存的なレベルで、私の身体が束縛に抵抗しているのである理、私の魂が現代性という名のプロクルステスのベッドと戦っているわけだ。(p.208)
1 脆さや反脆さを見きわめるのは、事象の構造を予測したり理解するよりもずっと簡単だ。したがって、私たちがしなければならないのは、予測ミスによる損失を最小化し、利得を最大化する方法を考えることだけだ。つまり、私たちが間違いを犯しても崩壊しないシステムを築くことが大事だ。
2 さしあたっては世界を変えようと思ってはいけない(そんなにはソビエト=ハーバード流の理想主義者やフラジリスタに任せておけばいい)。私たちがすべきなのは、問題や予測ミスに対して頑健な(さらにはミスを逆手に取るような)システムを作り、レモンでレモネードを作ることだ。
3 レモネードといえば、レモンからレモネードを作るのが歴史の役目のようだ。反脆さとは、あらゆるストレスの生みの親である時の流れの元で、物事が前進していく仕組みなのである。(When life gives you lemons, make lemonade)(pp.228-229)
フクシマの事故を受けて、賢明な原子力会社は、事故の発生や確率を予測するよりも。むしろ事故に対するエクスポージャーに注目するべきだと気付いた。そうすれば、事故を予測できるかできないかなんてあまり関係なくなる。たとえば、十分に小さな原子炉を建設し、地中深くに埋め、周囲に幾層もの保護を講じる。そうすれば、たとえ事故が起きても私たちに悪影響は及ばない。コストはかかるが何もしないよりはずっといい。(p.230)
ストア哲学とは感情をなくすことではなく、手なずけることだ。人間を植物に変えることではない。私は、現代の真のストア哲学者とは、恐怖を思慮深さに、苦しみを教訓に、過ちをきっかけに、そして欲望を実行に変えられる人だと考えている。(p.239)
物事を理屈でとらえると失敗するという以外にもうひとつ教訓がある。頭にまやかしの知識や複雑な手法をいっぱい詰め込んでいる連中ほど、ごくごく初歩的な物事を見落とすということだ。実世界に生きる人々には、見落としている余裕などない。さもなければ、飛行機が墜落してしまう。研究者とは違って、彼らは複雑に考えるためではなく、生き残るために淘汰されてきた。つまり、少ないほど豊かなのだ。お勉強をすればするほど、初歩的だが根本的な物事が見えなくなっていく。一方、行動は物事の核心だけを浮かび上がらせるのだ。(p.345)
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12315989950.html
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名著『ブラック・スワン』で「一度発生すればカタストロフィをもたらすが、人間には決して予測できない」事象を「ブラック・スワン」と名付け、不確実性の高い世界を予測・コントロールしたいという人間の取り組みがムダであることを暴いた著者が、その後に実際に発生した2つのブラック・スワンである、リーマンショックと東日本大震災による福島原発問題を踏まえながら、不確実な世界を生き延びるための唯一の考え方・方法論をまとめたのが本作となる。
上巻では、本書のキーコンセプトである反脆弱性という概念の説明と、半脆弱性を持つことがブラック・スワンのような事象に対する唯一の対策であることを示しながら、その具体的な考え方が示される。我々はつい「脆弱さ」に対して、その対義的な概念である「頑健さ」を志向してしまいがちであるが、ブラックスワンのような事象に対して、いくら頑健さを誇ったところで、崩壊のスピードを僅かに遅くする程度の効果しか得られない。むしろ、衝撃を自らの進化のために利用してしまうような「反脆弱さ」こそが重要であり、その例として、適度なストレスにより成長するような人体組織などが挙げられる。
購入してから読むまでにだいぶ時間が空いてしまったが、いったんページを開いてしまえば400ページの上巻を一気に読み通してしまった。衒学的かつブラックユーモア溢れる文体は顕在。引き続き下巻が楽しみでならない。
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ひょっとすると、バイブルになるかもしれない書。世の中論理的に判っていることは少なくて、ほとんどは実践的に体系つけられてきた。論理的なシステムは論理が破綻したら脆く(脆弱)、論理が破綻しても壊れないぐらい強いもの(頑強)を対義語と考える人が多いが、本当の対義語は論理が破綻したとき(ブラックスワンがが舞い降りた時)さらに飛躍する(反脆弱)システムを指す。ブラックマンデーで儲かった人たちこそ反脆弱である。ある予想に対して実際は非対称な分布を持つものを探し(ほとんどがそうだ!正規分布なんてそれほどない)確率は低いが 論理学者が思っているほどは低くない事象に賭ける(もちろん全額ではなく、一部)と将来安泰になるかもしれない みたいな主張である。
いろいろなオプションを考え、バーベル戦略:オプションの両極端に両方投資するを行う。片方は上限なく儲かり、片方は損失の上限が限定される。
ちょっと違った角度で言うと、論理的にみえるビジネスプランに投資するのではなく、人に投資しろ
医者の論理は、合理的なものだが、経験によるものを否定することもある。現代医学が新しい病気を産む(医源病)こともるのだ
等が 上巻での結論かな?
下巻に期待
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・失敗への過剰反応がイノベーションをおこす。
・複雑系の世界では原因を突き止めるのは不可能。物事の原因をかき立て続ける新聞をあてにしないほうがいい。
・部分的な失敗は反脆さをつかむ
・真実を叫ぶのに名誉はない
・新聞は紙面を埋めるためにノイズをいれる
・もろさ、反脆さが選択の鍵。オプション制(リスクとリターンの非対称性)を考える
・予測は出来ないが、脆さの相対比較はできる
・絶対にないところから探し、残存部位の確率をどんどんあげていく
・オプション性のある人は、自分の目的にあう話だけを報告する
鉄則
オプション性を探す
ビジネスプランではなく、人に投資する
バーベル戦略をとること
(中庸だけではなく、第2の選択肢を常にもつこと)
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やはり複雑系や一神教の人たちは結局のところ、確実性を最も求めているからこそ「不確実性」と自分に呪文のように唱えなきゃいけないような人たちな気がして、本当の意味で不確実性を受け入れられている人たちではないきがするのよね。
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反脆弱性=失うものよりも得るもののほうが多い=ダウンサイドよりもアップサイドのほうが多い=(よい意味での)非対称性=変動性を好む。289p
オプション=非対称性+理性 300p
【7プラスマイナス2回、失敗する】p389
鉄則をまとめる
①オプション性を探すこと。もっといえば、オプション性に従って物事をランクづけすること。
②できればペイオフに上限があるものではなく、ないものを探すこと。
③ビジネス・プランではなく人間に投資すること。つまり、キャリアを通じて6〜7回(またはそれ以上)方向転換できる人を探すこと(ベンチャー・キャピタリストのマーク・アンドリーセンの手法のひとつ)。人間に投資すれば、ビジネス・プランのような後付けのつじつま合わせにだまされずにすむ。それに、そのほうが単純に頑健だ。
④バーベル戦略を取ること(その意味は各自のビジネスによる)。
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むちゃくちゃに面白い。金融関係に限定された話かと思っていたが、極めて広く応用が効く認知の歪みに関する話であり、また各種の戦略の立て方に関する話でもある。リスクマネジメント本として長くそばに置きたい。
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グイグイくるタレブ節は病みつきになる。移り変わりの激しい不確実な現代を渡り歩くには頑健だけでは不十分で逆境を成長の糧にする反脆さが重要であると説く。ブラックスワンやまぐれに魅了されタレブの新作を読み始めたが、期待以上だった。
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反脆いという概念って何だろ?と手にとってみた。冒頭、「衝撃を利益に変えるものがある。変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。そして、冒険、リスク、不確実性を愛する。」って、ドラゴンボールの孫悟空みたいなものかと。
「第1部の反脆さとは」、「第2部 現代性と、反脆さの否定」、「第3部 予測無用の世界観」と、例えば進化、例えば歴史、例えば医療と、他にも様々なエピソードを用いて、反脆い状況の説明と素晴らしさが書かれている。本の半分くらいまでは、これは、良い本なんじゃないか?という期待のもと読み進めたが、後半から、自説に対する批判的な人への攻撃的な物言い(たぶん、デブのトニーは筆者の事なんだろう)が鼻に付く。そして、どんどん、株の取引をやった人なら知っているであろうオプション取引のロングポジションが筆者の思考のベースにあって、前半のエピソードは、それを展開した物なんだなと思ってしまい、反脆いの概念が筆者が言うように分からなくなってしまった… 情報の非対称性の連呼とか、トレーダー目線丸出しに思えるのだ。
この本やエピソードのそれぞれは成る程と思ったのは、これまでの既成事実を疑ってみる視点。ただ、反脆いというのかそれは?と。
概念理解なんてどうでも良くて、うまいことやれや!って言うのが、デブのトニーのスタイルなんだし、まあ、読んだ人が、良いとこどり出来れば筆者の主張の通りなんだろう。
筆者は、ナシーム・ニコラス・タレブ氏で、肩書きは、哲学者と名乗っている模様。もとはトレーダー。
文書から滲み出る自己中心的な性格から、編集者のアドバイスも聞かなかったんだろうし、翻訳者も大変だったんだろうと推察されます。
善か悪か、右か左か、白か黒かみたいな概念がベースになっていると、一旦悪い方に倒れたんだけど、結果、良い方向になった的な、ダイナミックな概念として”反脆い”という言葉で定義してエピソード満載にしたところがこの本の価値?
この「反脆い」、日本語だと、「雨降って地固まる」、「転ばぬ先の杖」、「七転び八起き」などいくつもの表現があるように思える。
下巻に入り始めたが、同じ事を他の章で書いてるから読まなくて良いと筆者が言う第5部は、エピソードを読んでみると、それって運動量の考え方だと自明すぎない?と思ったり、なんか違和感あったけど、ページ数も上巻より少ないので、一応最後まで読んでみるつもり。