紙の本
のび太君が成長し、ドラえもんの元から旅立った感覚の本
2013/05/11 21:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:minomonta - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず著者のウルドと聞いてヒゲ面の熊男を思い浮かべた。
相当たくましい男なのだろうとイメージして読んでみると、まるでダメ夫君の様相。
しかし大のバッタ好きであることは本書を読めばわかる。
師匠に頼りっぱなしになりながらもサバクトビバッタの相変異の秘密を解明していく。
やがて師匠の元からモーリタニアに旅立つのだが、まるで著者の成長物語を読んでいるようで感動的ですらある。
新知見も多数書かれているので昆虫好きには当然読む価値はあるし、そうでない方にもこの面白さを味わって欲しい。
電子書籍
アカデミックな世界のお話。
2021/09/23 22:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般の人にはわからない、大学とか研究とか学界のお話。そして、本人の情熱のお話。各方面に好評なのもいいですね。
投稿元:
レビューを見る
虫系の本と読むと、それまでに自分が抱いていたイメージが音を立てて崩れていくことも多いのだが、本書はその中でも群を抜いている。
サバクトビバッタ。その名の通り、サハラ砂漠などの砂漠や半砂漠地帯に生息しているバッタで、西アフリカから中東、東南アジアにかけて広く分布している。見た目は馴染みのあるトノサマバッタに似ているのだが、しばしば大発生して次々と農作物に破壊的な被害を及ぼす恐ろしい害虫なのだ。
そもそもバッタとは、ラテン語の「焼野原」を意味する言葉に語源を持つそうだ。バッタの卵は「時限爆弾」、農薬は「ケミカルウェポン」と呼ばれるくらい物々しい世界なのである。
人類とは長い付き合いがあり、聖書にも記述が残されているこの「黒い悪魔」。その最大の謎は、大発生の時に遅いかかってくる黒いバッタが、普段どこにいるのかということである。平和な時には忽然と姿を消しており、いっこうに見つからないのだ。
だがある日、ロシアの昆虫学者が衝撃の発見をする。複数のトノサマバッタの幼虫を一つの容器に押し込めて飼育すると、あの黒い悪魔に豹変するというのだ。そして、その変身は「混み合い」すなわちバッタ同士が互い一緒にいることが引き金になっていることまで明らかになる。
姿形のみならず動きまでも違う2種のバッタを、一体誰が同種だと想像できただろうか。これが相変異と呼ばれる現象であり、低密度で育った個体は孤独相、高密度化で育った個体は群生相と名付けられているそうだ。
ここまでで充分に面白いのだが、本書はここからが出発点である。著者は、このメカニズムを解明しようとする若き研究者、前野ウルド浩太郎氏。
「混みあい」とは大きく3つの刺激情報に分けられる。1つ目は視覚的な情報、2つ目は匂いの情報、3つ目は接触による情報、つまりぶつかり合いだ。この3つのうち、バッタはどれを混み合いの情報として認識しているのか?
これを数々の実験を通して明らかにしていくのだが、実験手法や向き合う姿勢に、研究者の人となりがオーバーラップして、ぐいぐい引きこまれていく。若さゆえの勢い、不安やとまどい、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう。」という強い熱意。とにかく読み出したら止まらない一冊。
投稿元:
レビューを見る
サバクトビバッタの興味深い生態についてだけでなく、科学における仮説検証アプローチのプロセスや、著者の研究者としての成長過程を楽しめる。
投稿元:
レビューを見る
20130615読了
バッタ愛が炸裂している。理系で生き物を相手にする研究がどんなものか、その一端に触れられる本。幼い頃はバッタを捕まえて遊んでいたけれど、今となってはもう無理かもしれない・・・リアルなバッタの写真が突然出てくると本を取り落とす危険もあったが、おそるおそるでもページをめくるのを止められなかった。おもしろいから。●専門的な論文を読みなれていないせいか、私が文系だからなのか、分かりやすく書いてくれているであろう研究内容に関する記述をちょっと難しく感じることもあった。でも、小さな疑問をとらえてそれを解明できるような研究計画を練りバッタを育ててデータを取り解析しまとめる、そのおもしろさにはまっている著者のわくわく感にのせられて読み通せた。●聞きかじったことのあるカマキリの積雪量予想(カマキリは雪が積もらない高さに卵を産む)。これは夢物語である(卵はほとんどが雪に埋もれている、4か月雪に埋まっても羽化する)ことが、昆虫学者によって論理的に証明されていると知れてよかった。●著者のブログによれば2013年4月現在は帰国して無収入だそう。バッタの研究が継続できるよう、そしてまたモーリタニアへ行ってサバクトビバッタを愛でることができるよう、ひそかに応援しています。
投稿元:
レビューを見る
バッタに「食べられたい」と熱望した少年がサバクトビバッタの研究者になり、アフリカのバッタ研究の先導者になろうと決意するまでが描かれた少年の成長譚。笑える学術書。真に面白いと思える対象を得ることのできた、得るための才能に恵まれた著者の胸熱くなる物語。いや~、面白かった。ぜひ、モーリタニアでの続編を期待。今後ともブログを楽しみにしていきたい。
投稿元:
レビューを見る
サバクトビバッタの研究を始めたばかりの修士学生の頃から始まって、博士課程、そしてフィールドワーカーとして旅立っていくまでのエッセイ・・・とも読めるし、どんなリサーチクエスチョンのもと、どんな実験計画を立てて、どう調べたのか、という「研究計画」の勉強にも良い。
冒頭は読みづらかったのだが、これは著者の書き癖のせいか、私が虫嫌いだからなのか・・・。後半はわくわくしながら読んだ。
著者とともに、研究への情熱とわくわく感を共有した。
投稿元:
レビューを見る
節足動物や甲殻類など手足系の生き物が苦手で、中でも1,2を争う苦手度の生物、バッタ。
なのに本書を手にしてしまったのは、新聞の書評で川端裕人氏がおススメ本として挙げていたこと、また著者が新聞欄で紹介されていたこと、そして生き物の生態のなぞ解きに滅法弱い(いい意味で)私が、ついタイトルにひきつけられてしまったからである。
冒頭の口絵写真や、途中に挟まれるその他もろもろの研究写真に、手にしたことを後悔したのは言うまでもない。
データの解析など、著者が丁寧に説明してくれているものの、それなりに専門的な箇所はちょっとナナメ読みだったことも白状しよう。
それでも、著者のテンポの良い、研究者然としていないフランクな語り口に乗せられて、いつしかバッタが苦手だったことも忘れ(本当は忘れてないが)時にぷっと吹き出しながら、楽しく読了。
著者は小さいころから虫が大好きで、ファーブルにあこがれ、「虫に食べられたい!」という思いを胸に昆虫学者を目指したという。
頓挫しそうになりながらも思いがけない出会いに救われ、この道に進むことができたそうだが、著者だけでなく、たとえばこの前読んだ星野道夫氏とか、小さいころからの夢をかなえて何かをやっている人は、ほとんど例外なく、どこかで自分の人生を転換してくれる人や物に出会っている気がする。
でもそれは運が良かったと片づけるよりは、夢をあきらめずに常にその方向へ向かい続ける、自分自身でそのアンテナをいつも張り続けている、発信し続けている、その結果に他ならないのではないか。
自分にそんな情熱を傾け続けられる何かがあるだろうか。
情熱に突き動かされ、研究生活に没頭する著者を応援したくなる一冊。
余談ですが。
・研究室で雇われているパートのおばさん、彼女の仕事として飼育しているバッタ群のエサ換えというのがあるそうで写真が載っていた。
うーむ、恐ろしい。想像だにしたくない、そんな仕事を与えられる自分。研究室のパートって怖いとこなのね…。
・以前読んだ『邪悪な虫』で取り上げられていた3.5兆匹発生したというロッキートビバッタではなく、サバクトビバッタという種類だった。
トビバッタの仲間はみな似たような生態なのかな…?
・初めて知るバッタとイナゴの違い。相変異するのがバッタ(Locust)、しないのがイナゴ(Grasshopper)。ショウリョウバッタやオンブバッタも本当はイナゴの仲間なのだそう。へ~、グラスホッパーは日本語ではバッタだけど、分類上はイナゴなんだね。
・著者は研究成果をサバクトビバッタの撲滅には使いたくない、数をコントロールする方策に利用したいと言っている。バッタの大量発生に悩まされる農家の方々はそれこそ死活問題なのかもしれないが、彼らも自然の生態系をつくりあげている生き物の一つ。うまく折り合いをつけながらバランスを取りながら、守っていけるのが一番なのだろう。
昆虫学者の桐谷圭司氏の言葉として著者が挙げている。
「害虫も数を減らせば、ただの虫」
そうなんだろうな~。うう��でも苦手だよ~。
投稿元:
レビューを見る
バッタの中でもサバクトビバッタに限定した本です。
サバクトビバッタが大発生して農作物にダメージを与えるので、その防除を最終目的として、生態の研究や実験の記録になっています。
難しい単語も良く出てくるのですが、著者のユニークな性格があらわれている面白い話も随所に挟まれていて最後まで素人の私でも楽しく読むことが出来ました。
この方のブログは力の抜ける面白さなので一読あれ。
投稿元:
レビューを見る
孤独相と群体相でこんなに差がでる、ということも驚きだけど、それを立証するために行われるさまざまな実験。科学とは、研究とはいかに面白いのか、という一般的な面白さもさることながら、その研究テーマと実践方法、そして著者の人間味も含めた面白さにあふれた本。
そういえば、思い出すことはあまりないけれど、僕も虫の生態が好きだった。もっと若いころに出会っていたら、進路を左右したであろうとも思える本。
投稿元:
レビューを見る
こちらでの書評を見て図書館で予約してようやく借りることができました。
http://nedwlt.exblog.jp/19639533
おもしろい、あっという間に読み終えてしまいました。
気の遠くなるような実験と結果の積み重ねの裏づけも興味深いし
著者の試行錯誤や成長の過程も楽しく書かれていますが、
何よりも、サバクトビバッタに対しての飽くなき好奇心に感動します。
投稿元:
レビューを見る
「はじめに」を読んで、このまま仕事にまぎれながら読むのはもったいないと思った。週末にじっくり味わおうと我慢していたが、無理。止まらない。
投稿元:
レビューを見る
なぜ「読みたい」なのに5つ星なのかといえば、読めば抱腹絶倒面白くて止まらないに決まっていることが著者のブログから分かっているからなのです。もう序文の「だ・である」と「です・ます」が入り混じった文体からやられまくってます。こういう文章を書ける博士になりたい。
投稿元:
レビューを見る
サバクトビバッタの孤独相 / 群生相の話。サイエンスとしても、著者の研究者としての成長物語としても非常におもしろい。研究を志す学生さんにぜひ読んでもらいたいです。
投稿元:
レビューを見る
サバクトビバッタの研究者の、学生時代から現在に至るまでの記録。生物学の知識がまったくなくても楽しめる。研究者がどのように研究するのか、どのように物を考えるのかがなんとなくわかった。この著者はなぜこんなにバッタに熱中できるんだろう?ひとつのものに集中し、長く継続して取り込めるのは、純粋にすごいと思う。この本は、そんなちょっと変態的なバッタ愛が面白い。
修士の頃の試行錯誤やアフリカに行くあたりのエピソードが面白かった。後半になると、更に熱くなる。
バッタが混み合いによって孤独相・群生相へと相変化し、見た目もまったく別の物になることはこの本で知った。昔テレビでバッタ大量発生の映像を見たが、そのバッタは茶色だった。外国のバッタは日本のものと色が違うんだなと思っていたことを思い出した。あれは群生相のバッタだったのかもしれない。