PTSD理解の ファーストチョイスに。
2017/10/12 18:09
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じゅ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は心的外傷後ストレス障害の治療をしています。どんな病であれ、専門知識のない人間が病を患ったとき、何かしらの方法で、病について理解しようと思う方が多いかと思います。私もそうでした。治療年数も長いので、様々な本を読んできました。その中でも私は、この本を1番にオススメしたいです。
内容に少し触れます。PTSDの理解のために、赤ずきんちゃんとオオカミさん(2人ともPTSD患者の立場)と、治療にあたる森の賢者。それから、他のPTSDの仲間たちと三びきの子ブタさんなどがでてきます。有名な童話を背景に、PTSDの様々な症状、様々な原因を、わかりやすく理解できます。
もし患者の立場ではない方が読まれるときは、理論的な説明では理解しづらい、主観的な症状のイメージがわいてくる内容だと思います。
患者さんが読む場合、私がそうだったのですが、専門書を読み通すこと自体が苦痛な時期があるかと思います。特にケースが書かれている場合は注意が必要です。自分の原因と似たような内容を読むと、フラッシュバックがおきたり、具合が悪くなったりします。でもこちらの本は、患者さんが読みやすいようにと、配慮されている印象がありました。もちろん誰もが必ずフラッシュバックが起きません、ということではありませんので、恐怖心が強いなら控えてほしいです。
それでも、もしPTSDと診断をされ、病を理解したい方がいらっしゃるなら、まず最初に読む本としてオススメしたいです。
診断されて間もない患者さんがこのレビューを読まれていたら…
これは私の経験からお伝えしたいことですが、
まずは、本やネットなどで理解しようとするよりも、しっかり休んでほしいです。特にPTSDの初期は過覚醒になっていて、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、で、何かやらなきゃ落ち着かない、といった症状がでているかもしれません。過覚醒の時に、本を読まなきゃ!と意気込んで読んでも、あまり良いことありません。まずは、できるだけゆっくり過ごしてもらいたいです。
治療法や技法以前にたいせつなこと
2017/02/11 12:58
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
「わたしたちがエビデンスにもとづいた治療法を行なうとき、クライエントがこれによって必ずよくなると信じ、自信をもって行なう―――そのこと自体もクライエントの中にある回復の力を引き出しているのだよ。問われているのは単に技法の知識だけではなく、治療者としての態度や姿勢なんだ」とは本書に登場するグレート・マスターのことばであるが、このことばこそ本書を貫く背骨として存在する概念でありまた著者である白川さんの基本的な信念なのであろう。様々な治療法や技法に精通し、また様々な臨床の場でそれらを利用して治療にあたってこられた経験の豊富な白川さんからそういった信念が表明されることは非常に意義深いものである。
本書ではトラウマ症状とはどういったものでその原因は何かについての理解を深めること、回復過程ではどのようなステップを踏んで何にどう取り組むとよいか、そして支援者が留意すべき原則は何かについて非常にわかりやすく、そして赤ずきんとオオカミを中心とした登場人物が当事者としてそして支援者として実際にそれらの問題に取り組むという具体的な例を示しながら丁寧にひとつひとつ述べられている。
現在トラウマに苦しみ途方に暮れている、回復の入り口にいるひとにとっても本書は最適であることはもちろん、ある程度回復の道を進んでいる途上の当事者やそしてある程度臨床の経験を積んだ支援者にとっても再度基本に立ち返り、改めて重要なことは何かを再発見する、いや新しく発見することができる素晴らしい一冊である。
された側、した側の両方の視点
2018/10/21 20:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すずき - この投稿者のレビュー一覧を見る
トラウマを抱えることがあった人のための本でもあるし、
そのトラウマを与えた側の問題にもスポットをあてた本。
トラウマを抱えた側のつらさも和らぎ、
トラウマを与えた恐怖の存在も可哀そうな存在にだんだんと
自分の中で変化していった。
トラウマに関わる人のための本
2018/02/16 21:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:吹雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
友人の勧めがあり、クライエントの心理教育に利用できそうかと思い購入。一言では語れないトラウマに関する知識を物語形式で書いている。
しかし、それ以上に、トラウマに関わる支援者が前提として持っているべき姿勢・知識を学ぶことができる本だと感じた。
これからトラウマに関わる方にお勧めしたい一冊。
トラウマに関する必要な基礎知識が得られる。
2024/03/12 14:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あひる2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トラウマについての基礎知識が網羅されていて、分かりやすい。
一口にトラウマと言っても色々な種類があり、深刻さ、回復期間や必要な支援が異なる。場合によっては複数重なることもあり、症状が複雑化する。長時間関わる事で、支援する周囲も代理受傷で心身の不調になることもある。
トラウマをかかえている本人や支援者だけでなく、ボランティアや仕事で関わる必要がある人は読んでおくと良いと思う。正しい知識があるのとないのでは不安や恐怖の大きさが違うし、周囲の支援者も自分自身を守りながらスムーズな援助が出来るようになる。
第1章 単回性トラウマ
第2章 複雑性PTSD
第3章 回復の道程
第4章 災害トラウマ
第5章 支援者が知っておきたいこと、
支援の仕方等
もしトラウマを抱えた本人が自身のトラウマを振り返る余裕が全くなければ、第5章から読んで治療や周囲のサポートの受け方についてだけでも知っておくと自分の状態や希望するサポートを伝え易くなる。見通しが立つと不安も多少は減ると思う。
残りの部分は自分が落ち着いてから読んでもいいし、周りの安心出来る人と一緒に読んで情報共有するのもいい。
詳しい理解や治療が必要になったら他の本や治療者を頼ることになるが、最初に手に取る本の1つとしてお薦めできる。

