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投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
頻繁に読む私の座右の新書のひとつです。とりあげられているのはいわゆる名作文学が多いので、私の未読のものも多く、次の読書へのモチベーションにもなります。
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投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
『小説家の四季』を読んでいたらこれも読んでみたくなった。川端康成『雪国』、志賀直哉『暗夜行路』などの近代日本文学の大家たちの作品を取り上げて、結構細かいことに拘った読みを展開している。幸田文の回では、ひどい勘違いをしてしまい、読者から指摘の手紙を山ほどもらったようで、その謝罪や言い訳が追記として載っている。他にも追記があるのがあって、それらも結構面白かった。
随所に著者の鋭い見解が光る優れた小説論!
2006/08/14 18:21
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投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、もともと岩波書店のPR誌『図書』に連載された文章が基になっており、近代の文豪とよばれる作家を中心として、戦後に活躍して物故した現代作家も若干含んで二十三作品と著者の自作を加えた計二十四作品が論じられている。
それぞれの作品論の分量はそれほど長くはないが、随所に佐藤正午氏の鋭い見解が展開されており、中々読み応えのある小説論となっている。
例えば、谷崎潤一郎の『痴人の恋』を論じている章では、谷崎のこの初期作品はエロティクな作品としてこれまで読まれて来たが、仔細に読むとセクシュアルな描写は「潔癖にさけられており」それが故に「この小説は悦楽をむさぼりつくした直後に忍び寄るもの、幻滅の手前で踏みとどまっている。永遠の恋愛もしくは婚約期間とでもいった状態に保たれている」としている。これは、一見驚くべき指摘であるように思われるが、この作品の隠れた一面を明らかにした優れた見解と言えよう。
また、芥川の『鼻』については、いささか辛辣な見方をしている。著者によれば、芥川の作品は、確かに文学好きな読者を惹き付ける魅力を有しているが、「不思議なことに何度読んでもこの人の作品を充分読み上げたという達成感なく」、それは「芥川の小説は文体で保っているものが大半で、特に文才に恵まれた作家であれば誰にでも書けるという書き方になっている。これが私だという言葉の傷がない」としている。誰にでも書けるという指摘はともかく、「言葉の傷がない」という指摘は芥川文学の本質を衝く鋭い指摘であろう。
本書は、この他にも新鮮な指摘が散りばめられており、教えられることの多い小説論となっている。ただ、残念なのは、著者が作品を論じる姿勢はどこか性急でぶっきらぼうなところがあり、小説を論じる際に伴う愉悦感に乏しいことである。著者は、五十歳を越えた中年と自らを呼んでいるが、その割には文体が年齢を感じさせないドライなものとなっており、もう少し知情意を兼ね添えて小説論を展開しても良かったのではないと思われる。また、終章で、自作を論じているのもいただけない。編集者の要請があったからと著者は言うが、他の作家をあれほど辛辣に論じておきながら、自作を他の大作家とともに論じるなど余りにも厚顔過ぎるのではないか。類書には見られない鋭い見解や思い切った考察がなされてユニークな小説論となっているだけに、惜しまれるところである。
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日本の文豪の小説を読み、その「書き方」に主に光を当てながら「読書」を「エッセイ」したような本。最後の著者自身の本を合わせると25の小説が扱われており、一つ一つは数ページずつという読みやすい長さになっているのだが、この文章はいくつか国語の試験問題にも使われているよう。実際に読み進めていると、現代文の「評論」「エッセイ」分野などでいかにも使われそうな文章なので、国語は得意だったけれどもヘドが出るほど嫌いだった私は時として食傷気味になった。
が、一つの有名な小説を、内容や技巧というよりは「書き方」に焦点をあて、ともすれば退屈になりがちないわゆる「評論」を、非常に楽しく読み進ませてくれる面白みがあちこちに見え隠れする。
そうか、文豪というものは句読点の置き方にまで神経を使い、そしてそれが必ずしも「正しい日本語」や「あるべき文章」であることを拒み、独特の言葉遣い、独特のリズム、を追求して書いているのだなぁ・・・とただただ感心させられる。
小説というものは、とにかく奥が深いのだ。
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山本昌代か誰かが書評で褒めてたのを見て購入。実際面白かった。扱われている作品はどれも有名で、読んだことのある(そして既に忘れてる)ものが多かったのだが、なるほどなるほどと思いながら読んだ。小説の内容よりも形式に注目しての読みというものをここまで分かりやすく、面白く書くことはなかなか容易ではないと思う。
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「無頼という言葉の対義語は何かといえば、それは独身である。」
小説家っていうのはこういうふうに他の作家の小説を読むのかぁ…!選ばれた言葉、文体、表記について、言われてみればなるほど確かに!な指摘ばかり。ときどき吹き出しつつ、著者を含む「文芸」する人たちへの敬意を新たにした。ぜひこの評論は続刊を出してほしい。佐藤正午の小説ももっと読みたくなった。
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夏目、芥川、太宰、三島など近代日本文学の層々たる大家の名作を読みほぐし、文体を細かく分析。何気ない一文に徹底的に拘り、なぜ作者がそう書く必然性があったのか、どこに推敲の後が見受けられるかをユーモアたっぷりに解き明かす小説読本。
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文章を書く方には激しくおすすめします!!
文章の書き方について書いてある本じゃなくて、
佐藤正午さんの読書感想文なのですが、
本当に勉強になりました。
書くことが楽しくなりました。
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もとは岩波の「図書」に連載されていたもの。
小説家と云う人間が,小説をどう読むか,ということで、近現代の小説家の作品を俎上にあげ、最後に自作を解説して見せた。
ということで、これは作品評ではない。あくまで小説家と云う職業柄、作品の気になる一節を、何故気になるのか,それはどうしてか等という切り口で語ったものだ。一種の文章(文体)読本。
勿論,小説を書いている人間には随分ヒントになるものだろうし、また並みの書評じゃないとみても、なるほどこういうこだわりもアリか、と興味深いことだろう。
しかしまた、酒間の歓談としてもこういうことをやる場合が多いことだろう。どうにでも読め,どうにでも考えられる面白さがある。
取り上げた小説は次のとおり。
川端康成「雪国」志賀直哉「暗夜行路」森鴎外「雁」永井荷風「つゆのあととさき」夏目漱石「こころ」中勘助「銀の匙」樋口一葉「たけくらべ」三島由紀夫「豊穣の海」山本周五郎「青べか物語」林芙美子「放浪記」井伏鱒二「山椒魚」太宰治「人間失格」横光利一「機械」織田作之助「夫婦善哉」芥川龍之介「鼻」菊池寛「形」谷崎潤一郎「痴人の愛」松本清張「潜在光景」武者小路実篤「友情」田山花袋「蒲団」幸田文「流れる」結城昌治「夜の終わる時」開高健「夏の闇」吉行淳之介「技巧的生活」佐藤正午「取り扱い注意」
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小説家の読書コラム。本人の小説は未読。
重箱の隅をつつくような話が多いけど、書いてる方もそれに意識的だし、個人的にも読み方として共感するところがあるから楽しめた。
あとがきで、現在活躍中の作家についても書く構想があったけど、ヤバイからやめたという様なことを語っていた。とすると、評論家ってのは絶対小説書けない仕事なんだな。
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[ 内容 ]
小説家はどんなふうに読み、また書くのか。
近代日本文学を代表する小説家たちの作品を書き写すように読み解きながら、「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を、小説家の視点から考えるユニークな文章読本。
読むことは書くことに近づき、読者の数だけ小説は書かれる。
こんなふうに読めば、まだまだ小説だっておもしろい。
[ 目次 ]
川端康成『雪国』
志賀直哉『暗夜行路』
森鴎外『雁』
永井荷風『つゆのあとさき』
夏目漱石『こころ』
中勘助『銀の匙』
樋口一葉『たけくらべ』
三島由紀夫『豊饒の海』
山本周五郎『青ベか物語』
林芙美子『放浪記』
井伏鱒二『山椒魚』
太宰治『人間失格』
横光利一『機械』
織田作之助『夫婦善哉』
芥川龍之介『鼻』
菊池寛『形』
谷崎潤一郎『痴人の愛』
松本清張『潜在光景』
武者小路実篤『友情』
田山花袋『蒲団』
幸田文『流れる』
結城昌治『夜の終る時』
開高健『夏の闇』
吉行淳之介『技巧的生活』
佐藤正午『取り扱い注意』
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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日本近代文学の基本を押さえておかなくても小説が書けるということがよくよくわかる一冊。誤読もあったりして、それを追記でフォローしたりしていておもしろい。感想文エッセイ集といった雰囲気で読みやすい。ちょこちょこクスクス笑いもできるし、いい本だと思います。まあ、選ばれている作品や作家にを多少なじみがあれば、きっと楽しめるはず。
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佐藤正午という小説家が読んだ本について小説家的に語るというものだが、評論家ではなく小説家だというところに面白さがある。取り上げられている小説は歴史的な著名作家の小説ばかりだが、佐藤正午はある意味自分勝手に好き勝手にこれを題材として書いている。本の解説でもないので、これを読んだからといってその小説がわかるわけでもなく、私自身はこれらの小説をほとんど読んでいないか忘れてしまっているが、佐藤正午という作家の面白さがよく出た本になっていると思う。
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小説や文章の解説、というよりは現役作家による感想文、という印象を受けた。
堅苦しさもなく、話題にされているのは有名な小説ばかりなので楽しんで読めた。
筆者のユーモア溢れる感想文の数々を面白がりながら読むのがこの本の正しい読み方だと思う。
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佐藤正午「小説の読み書き」読んだ、可笑しかった http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0606/sin_k308.html … 小説というより文体の評本。主語が途中で入れ替わるねじれ文や文末に主語がくる自意識過剰文とか熟語多用の文とか、いちいち評が可笑しくてかつ評文がパロディみたいになっているのも可笑しい(つづく
あと連載当時の事実認識の間違いや版違いによる引用文の差異への言い訳がいやにくどくどしているし、担当編集者とのやりとりも可笑しい。古典名作ばかりを扱うことになった経緯もとっても可笑しい。初佐藤正午(近所のバーの常連さんから借り読み)だったけどこの人の他の本を読んでみようっと(おわり