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時代小説を久しぶりに読んだ。
ザ・人情物!!という感じ。全てにおいて物語のキーとなるのは人情だ。
理不尽が横行する社会で人の善意がキラリと光っている。だから、バッドエンドでもさほど苦痛ではない。
第一話:大福餅売りの美女と野獣夫婦の裏にある事情とは。
第二話:女装して縁切り寺に駆け込んできた坊主。彼の抱えていた悲劇とは。
第三話:妻に若干DVっぽい職人と彼から逃げてきた妻……のはずが、それは演技で。妻の抱える複雑な事情が明らかに。
第四話:主人公十四郎が助けたのは元許嫁の今の夫……!?
読者の空気感を読み取るのが作者は得意のようだ。十四郎や金五の言動の中で「ちょっと行き過ぎなんじゃないか」と思うセリフにはそれ相応の罰を与えている。
縁切り寺を主眼に置いているため女性の悲哀というのをこれでもかと書ききっている。その縁切り寺に駆け込んでくる女性の悲鳴が、武士たちにはたわいもないことに見えるかもしれないが、とてつもなくしんどいことを、同じ女性としてつよく共感できた。
十四郎や金五が逃してしまうその悲鳴をすくい取るお登勢さんがいて良かったと思う。あなたがヒーローです。
でも十四郎がいないと、お登勢さんは本領を発揮できない。