電子書籍
グローバリゼーションの神髄を手軽に
2018/07/31 08:19
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投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在話題のグローバリゼーションに関する本格派の新書である。新書という簡単そうな衣をまとっているが、内容はそれなりにある。ナショナリズムとの関係やグローバリゼーションの功罪についても比較的詳しく解説されているため、勉強になる書籍である。
紙の本
現代の明快な見取り図
2002/09/09 22:56
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投稿者:桃屋五郎左衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る
グローバリゼーションは、資本や情報の世界規模の流れだけではなく、途方もない人の移動をもたらしている。同時多発テロで崩壊して間もなく一年となるWTCは、本書の終わり近くに指摘されているように、グローバル資本の流れの担い手であるエリートたちとともに、多くの低賃金移民労働者が働いていた。つまりWTCとは、アメリカ経済の繁栄の象徴ではなく、グローバリゼーションを象徴するものだった。
とはいえ、グローバリゼーションは、経済のみならず、政治、文化、社会といった諸分野の交錯する領域において現に今も進行している。それが指し示す事態は、多岐にわたっているだけでなく、重層的でもある。それゆえ、「グローバリゼーション」をキーワードとして語られる現代社会の諸相の、簡にして要を得た見取り図を示してくれる本書は待望の一冊と言えるだろう。著者はここ数年さまざまな媒体でグローバリゼーションについて論じてきており、それらは多くの部分で本書の内容と重なるのだが、こうして新たに簡便な新書の形で一冊にまとめ直されたことは、それらの多くを読んできた者にとってもありがたい。
本書の内容についても簡単に触れておこう。著者は、グローバリゼーションを帝国主義的な枠組みの再構成ではなく、新しい世界秩序の様式と捉えた上で、グローバリゼーション研究のテーマとして、第一に国境を越えた経済活動の拡大と国民国家に代替する新たなる権力の出現を対象としたポリティカル・エコノミーと、メディアを通じて生産されてきた大衆文化の世界的浸透や消費文化の均質化といったグローバル・カルチャーという二つの分野の接点を解明することによって両者の対話の場を切り開くこと、次に従来の社会科学や人文科学の思考様式における国民国家という枠組みからの脱却を構想することという二点を挙げている。
その上で、サッセンの「世界都市」、ウォーラーステインの「世界システム」論、ネグリ&ハートの「帝国」などについても批判検討を加えつつ、グローバリゼーションによってもたらされた地政学と資本蓄積メカニズムの変容やグローバル資本が新たな格差を生み出す過程を解明しながら、近代の延長にあって、それから区別された「現代」を問い直し、さらにグローバル資本に対抗する場を構想していこうとする。
それゆえ、本書は、時代の波に完全に乗り遅れてしまわないうちに、ビジネス・チャンスを掴むヒントを手っ取り早く手に入れようと考えている読者には失望を与えるかも知れないが、「現代」という時代を多角的に捉える視点を獲得するための、また未来への展望を切り開いくためのさまざまな示唆を与えてくれる一冊であると言えるだろう。
紙の本
一般教養としての「グローバリゼーション」
2003/02/05 01:21
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投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今のキーワードの1つが「グローバリゼーション」であることは間違いない。しかし、この一文が持つ曖昧さ──どの領域におけるキーワードなのか? どういった意味合いで鍵なのか? そもそも「グローバリゼーション」とはどういう意味内容を持つのか?──こそが、逆にこの言葉の使用を過剰に煽っているのが実際ではないだろうか。
もちろん、「グローバリゼーション」という言葉を、何らかの日本語に訳すことは、この際全く意味を持たない。重要なのは、個々の場において「グローバリゼーション」という言葉が用いられた文脈を正しく読みとること、そうした文脈を意識した受容ができるようトレーニングしておくこと、この2点に尽きるだろう。もちろんこれは「グローバリゼーション」という言葉に限らずコミュニケーション一般にも言い得ることだが、その重要性は格別のものがあるだろう。
そこで、トレーニングである。しかし「グローバリゼーション」について、何をどうトレーニング(勉強)したらいいのだろうか? そこで、実用的かつ応用にも対応可能で、もちろん現代社会の問題としての哲学的思考の土台になるたいへん便利な書物が本書である。類書は多くあろうが、本書の特徴は、その新書というスタイルのメリットを最大限に生かした点にある。つまり、専門家が、専門領域についての知識を、一般読者にわかりやすくかつ議論のレベルを落とさずに書く、ということである。本書は、一読すれば明らかなように、まずこの手の書物にしては異例なほどに読みやすい。だからといって、問題が問題なだけに、政治・経済・文化・国民国家・ITといった複数の問題系が複雑に交錯してくる。経済や国民に関する理論的なフォローも欠かせないのだが、本書はそれらを避けるのではなく、議論に組み込みながらも具体例を生かしながら明快に解説して見せてくれる。
本書は、単に本書の内容を理解するだけでも十分有益だが、今後「グローバリゼーション」という言葉を、読者が読者自身の文脈で考える際の重要な土台となるだろう。
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尊敬する(!)、伊豫谷先生が書かれた本。
え〜と、いつもゼミでお世話になってます。
僕が国際社会学やグローバリゼーション研究といったものに関心を向けさせてくれたきっかけの本です。これを読んでこの伊豫谷ゼミに入ろうと思った、ある意味とても思い入れのある本です。
ただ、内容的にはやはり詰め込みすぎな感は否めないです。もちろんそれだけ課題・テーマが山積しているということですが。グローバリゼーションを単なる経済学的タームに矮小化してしまったり、いわゆるアメリカナイゼーションと置き換えてしまう言説というのが昨今多く見られますが、そのように考えてる人にぜひ読んでほしい。そんな単純なもんじゃないです。もちろんこの本を読んで「グローバリゼーションとは何か」がわかることはないと思います。それだけは誤解しない方がいいと思います。ただ、グローバリゼーション研究という分野を包括的に紹介しているので、具体的なテーマに関心を持ったらそこから先は自分でがんばってね、という入門書的な本です。
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薄いがとても濃厚に内容が詰まったグローバリゼーションの入門書。たぶん、内容的にはしっかり読めば為になるんだろうが、伊豫谷さんの語り口調が少し堅いので、少し退屈な問題に思えてしまった。けど、内容の果てにあるのは、スリリングな現在のグローバリゼーションだから、我慢して読むといいかも。
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書き方にやや冗長なところはあるけれど、新書としてはそれなりにレベルも高い。経済分野と社会・文化分野との関係性を説明しているところがよかったのだが、全体を通して抽象論に終始しており、定量的なイメージしやすい記述がないので、筆者の言う「具体的な場」とやらをイメージしながら読める人には向いていると思う。
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研究ということはこういうものであるかと感心させられるくらい、ひとつのの現象を多面的にかつデータを使って客観的に分析していた。著者にはこの議論を考慮して、現状に行われている国際経済・政治政策について論じてほしい。
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ゼミの課題図書。
グローバリゼーションという言葉は多用するけれども、使う文脈によって意味も用途もかわるしその定義も様々。グローバリゼーションの発展は日本にとって幸か不幸か
以下アマゾンより引用⇒
一九七〇年代以降、近代世界は新しい世界秩序への解体と統合の時代に入った。国民国家に編成されてきた資本と労働と商品は、国境を越え、ジェンダーや家族の枠組みを壊し、文化と政治・経済の領域性や時空間の制約すら越境し、新たな貧富の格差の分断線を引き始めている。あらゆる領域を越え、社会の再編を迫るグローバル資本。その新たな世界経済の編成原理とは何か。
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政治学、経済学、社会学・・・すべての社会科学を学ぶ人が一度は触れるグローバリゼーション。その導入本としてはベスト。
グローバリゼーションは単に、ヒト・モノ・カネの国境を超える移動ではない。もしそうだとしたら、20世紀初頭の帝国時代の英国の植民地化政策のよほど「グローバリゼーション」だと言える。
現代のグローバリゼーションとは、多国籍企業とそこで働く人々の目的を最大化するイデオロギー的なものである。彼らに取って自分達の行動を抑制しようとする規制は妨げ以外のなにものでもない。あらゆる手段で、規制や自分達にとって不利な政策を排除する。その力は、最大の力を持っていた国家権力よりも強大だ。
その帰結として瓦解した国家のセーフティーネット機能(たとえば失業保険、健康保険、年金)や資本の再配分機能も弱体化する。格差が世界全体に蔓延しはじめる。
この現状をどう生きるべきか?ここから先は一人ひとりが向きあい、考えなければならない問題。
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[ 内容 ]
一九七〇年代以降、近代世界は新しい世界秩序への解体と統合の時代に入った。
国民国家に編成されてきた資本と労働と商品は、国境を越え、ジェンダーや家族の枠組みを壊し、文化と政治・経済の領域性や時空間の制約すら越境し、新たな貧富の格差の分断線を引き始めている。
あらゆる領域を越え、社会の再編を迫るグローバル資本。
その新たな世界経済の編成原理とは何か。
[ 目次 ]
はじめに(時代を切り取るキーワード 二〇世紀という時代 ほか)
第1章 グローバリゼーションの課題は何か(用語としてのグローバリゼーション 「インターナショナル」から「グローバル」へ ほか)
第2章 時代としてのグローバリゼーション―空間と時間(グローバリゼーションのタイムスパン グローバル―近代のメダルの表と裏 ほか)
第3章 グローバリゼーションをマッピングする(グローバリゼーションの場と対抗 グローバリゼーションを具体化する「場」 ほか)
第4章 グローバル資本の世界経済秩序―資本のフレキシビリティの回復(転換期としての一九六〇年代 多国籍企業の台頭 ほか)
第5章 グローバル化の脱統合と再統合(排除による新しい貧困 グローバル化によるローカルな空間の崩壊 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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非常に刺激的な本で驚倒した。
国家よりも強力な力を持つに至るであろうグローバリゼーションの流れが、弱肉強食の世界を招く。格差は拡大し底辺の人々は貧困に喘ぐ他なくなる。
人間が人間社会の維持を図るためにも考え対策を打つ必要がある。
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脱領域性、脱中心性、
外からの恐怖によって生み出された共通の敵に対する集団意識が、国家ネーションを生んだ。 画定された境界を超えてゆく活動がグローバリゼーション。
無国籍な文化は、地域を超え世界的な共通経験を創り出すが、場の共通感覚の解体としても機能する。
価値観、生活様式を共有するものは場所よりも、職業、貧富の差により影響される。
モノの生産が記号を生むのではなく、記号の生産がモノを作る。
現代の製造業は、生産部門を持つマーケティング会社。
発展途上国と多国籍企業の関係
発展途上国の工業化は、経済自立を目指した内向きの輸入代替戦略ではなく、輸出志向型の開発戦略を採ることでしか経済成長は出来なくなっている。
発展途上国の政府は、税制の優遇措置や、労働者の権利の制限をし、輸出加工区を建設し、企業の低賃金の下請け部門となる。
経済成長はより多くの雇用 を作り出せない。
移民労働者とwtc
グローバリゼーションを批判しつつナショナリズムに陥らないために
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半分くらいまで流し読みして積読ことに。でも読み返すことはきっとないな。流し読みだからってのもあるかもしらんけど、内容にイマイチ引き込まれなかった。漠然とした題材だから、どうしてもそういう筆致になってしまうものなのかもしれないけど。
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3章の地図を土台にしたグローバル論はとても面白かった。グローバル化の実践される舞台は、政策などといった具体的な場を通じて、であって決して空中の抽象的な場で為されているわけではない。
他にも5章において、生命の再生産過程に市場が侵入してきているため資本がナショナルな制約を受けることがなくなった。確かにこの「生命」という分野にまで完全に市場が入ってきたことによって、功罪はあるだろう。けど、何が問題かというとこの人が指摘しているように「グローバル化時代の新しい貧困の形は排除」である、ということ。
そしてその排除、アクセスできないことの原因は個人に帰する。
生命の再生産過程によって利益を得る人もいる一方、そこにアクセスができない人は「生命」分野において排除がなされる。さらにこの実践は政策を通じて具体的な場であらわされる。だからこそ、対抗論はそこにヒントがある。としている。
いや、面白かった。
地図の話も面白かった。
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[配架場所]2F展示 [請求記号]080/H-2 [資料番号]2003107196、2006110360