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厳しい直言が並ぶが、それも後世のためを思ってのことだという
2010/05/03 19:38
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は今年で80歳になる。第一線を退いている人の舌鋒は鋭い。書名は『経済学は死んだのか』とあるが、200頁で「経済学は死んだのである」と言い切っている。
各方面に気を使って生きていかなくてはならない世代には言えないことを、こんな風に言ってもらえるとありがたい。ただし、耳が痛くなる同業者も多そうだ。何しろ”直言”がここには並んでいるから。
著者の論旨は明快だ。経済学が現実から離れ、理論をもてあそぶ学問になりさがってしまっていると指摘する。それは、日本における経済学が、輸入学問にすぎず、現実を見ないことを意味する。日本では、マルクスにせよ、ケインズにせよ、新自由主義にせよ、どれも海外で生み出された経済学を、「解釈する学問」に終始してしまっているからだと著者は言う。
マルクスは『資本論』を著す前にジャーナリストとして研鑽しているし、ケインズもまた学問の現場と英国政府の役人を行き来しながら、現実と向き合った。
日本の経済学者、それは著者の言うところでは大学教授なのだが、社会経験を積まないまま大学院に進み、海外留学し、海外の経済学をそのまま輸入することを仕事にしてしまっていると手厳しい。このような経済学者のことを「輸入業者」とまで断じている。
著者の批判は著名な経済学者にまでおよぶ。リーマン・ショック後に自ら反省した中谷氏はもちろんのこと、宇野弘蔵や都留重人も対象となる。
こうした経済学者の留学先は異なるが、いずれにしても、海外の経済学の著書を学び、それを日本に導入するだけで、日本経済の現状分析にまで至っていないではないかと言う。あるいは、あったとしてもわずかであり、現状分析から理論を作り出す作業をしていないと。
たとえば、マルクスは現状分析からはじまって、理論の構築をしていったが、日本の経済学者にはそれができていないと言う。日本には経済学のための学問があるだけで、経済学はないと繰り返す。これが200頁の「経済学は死んだのである」という言葉につながる。
著者には9年間の新聞記者経験がある。その後、経済研究所で研究員として働き、そうして大学教授として日本の経済を見てきたという自負がある。過去の自分の著作にも幾度も言及している。その都度、必要な指摘をしてきたが、今の経済学のあり方にとうとう我慢がならなくなったようだ。
あまりに批判が厳しすぎて、正直なところ読んでいてつらくなった。しかし、最終章にきて、危機のときこそ新しい経済学が生まれてくると期待している。これにはほっとした。
齢80にして、後世のために直言を残そうという思いなのだと受け止めて、ようやく本を閉じることができた。
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