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紙の本
食の文化的垣根を飛び越えることでまた新しい何かが生まれてくることを教えてくれる書
2006/01/22 10:12
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の職場にインターンとしてやってきたオランダ人大学院生は白米を醤油に浸して「味つけ」しながら食べていました。彼女の舌には、白米は全く味のしない不思議な食物だったのです。
また、私のアメリカ人の元同僚は焼肉店で牛タンが食べられませんでした。「牛の舌」と想像しただけで食欲が減退するというのです。
私自身、16年前にニューヨークのチベット料理店で炊きたてのご飯にプレーンヨーグルトをかけたデザートを試したことがあります。口に入れる前には大変勇気の要る食べ物に見えましたが、レーズンのほどよい甘味が利いていて大変おいしく感じられたことをよく覚えています。
「食」が「生きる上で必要な栄養を体内に摂取する」行為だけを意味するなら、味のしない白米も牛の舌も十分栄養を含んでいて、「食すにふさわしい」食べ物です。しかし人間は頑なに「食べ物かくあるべし」と考え、ある文化にとっての食物は他の文化にとっては奇妙奇天烈な物体でしかありません。
本書はまさに「食」を、栄養学や生物学の視点ではなく、文化人類学的、つまり記号論の視点から読み解く、実に平易で興味深い一冊です。
本書を読むと、私たちは「食」によって様々な形で縛られていることに気づかされます。本書はその縛りの意味について説きながら、同時に人間にはその縛りを、ゆっくりとではあるけれども解きほどいていく可能性をもった存在であることも示してくれます。
ほんの20年ほど前の日本では妙齢の女性が一人で立ち食いそば屋に入ることは奇異に思われましたし、お金を出してボトル入りの水を買うことなどありえなかったのですが、今ではそんなことは珍しくなくなりました。
そうしたかつては見られなかった現象を生み出す余地のことを本書は食の「空地」と呼びます。その「空地」が埋められることによって、日本では女性だけが集まって酒場でビールを飲むという行為も認知されるようになったというのです。
今後日本の食文化の「空地」がどのように埋められ、新たに何が生みだされるのか。とても楽しみです。
*韓国語で日本料理を意味する「イル・シク」を漢字表記すれば「日食」となるとあります(138頁)が、これは誤り。「イル・シク」の漢字表記は「日式」です。
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