紙の本
お母さんの仕合せ
2011/11/03 08:56
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
娘たちが小さい頃、そのころようやく庶民の手にも届くようになったホームビデオでさかんに撮影したものですが、その彼女たちもすっかり大きくなって、その時のビデオは引出しの奥にひっそりと眠ったままです。
でも、ビデオを見るまでもなく、鮮明に覚えていることがいくつかあって、それはそれで私と小さい娘たちの、ある意味蜜月であったと思い出されます。
そのひとつが、小学一年生になった年の長女の誕生日のことです。
友だち数人を招いてのささやかな誕生パーティー。妹を無視して友だちと遊んでばかりいる長女に腹が立って、つい長女を投げ飛ばしたこと。
今から思えば、なんともひどい父親です。まだ小さい長女の、軽すぎた身体の重さまでが私の腕の記憶となって残っていますから、きっと長女も、これは直接彼女に聞いてはいないのでわかりませんが、父親への恨みとして残っているのではないかと、あれか何十年もたってまだびくびくしています。
やはりそういうことは記憶から消えないのではないかしらん。
本作は、『ルリユールおじさん』『大きな木のような人』などを描いた絵本作家いせひでこさんの児童文学ですが、マキちゃんというのは、いせさんの娘さんがモデルになっています。
だから、マキちゃんのおかあさんは、いせさん自身がモデルになっていて、絵本を描く仕事をしているいそがしい母親として描かれています。
目線は娘のマキちゃんですが、子育ての頃の自身への反省がはいった物語になっています。
「おかあさんやっているより、おしごとをやっているときの方が多すぎるからいけないよ」と、マキちゃんは心の中で思うのですが、それはいせさん自身がマキちゃんが大きくなってから、母親として反省している文章だと思います。
子育てをしている時は、母親は夢中だと思います。私は男ですから父親も夢中だといいたいところですが、やはり子育ては妻にまかせていた部分がたくさんあります、そんな母親だからこそ、その当時のことを思い出すことがいろいろあるのでしょう。
病気をしたり、学校にいくのをいやがったり、おねしょをしたり、ねむらなかったり。子どもたちの生活の一つひとつが、母親の思い出とつながっています。
でも、そんな子どもたちの小さい頃の思い出をいっぱい持っているお母さんこそ、一番仕合せなような気がします。
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マキちゃんの子どもらしい考えに
癒されたり、いろんなことに気付かされたりしました。
マキちゃんは
おかあさんをやっているよりも
仕事をやっているほうが多い。
と言います。
普通、仕事をやる(する)とは言いますが、
おかあさんを「やる」とは言いませんよね。
でも、マキちゃんはおかあさんを「やる」と言いました。
その時のマキちゃんの気持ちを想像すると悲しくなりました。
本の中には挿絵もたくさん描かれていて、
可愛いマキちゃんの成長も見ることができます。
大きくなったマキちゃんは写真家になったようですね。
写真=写心「心を映す」
なるほど。
増補の「マキちゃんとチェロ」では、
チェロのケースに入ったまま昼寝してしまった
マキちゃんが可愛らしいです。
「チェロになりたい」
ここからもマキちゃんの寂しさがわかる気がします。
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マキちゃんが、むちゃくちゃかわいくって、
そうだよね〜。って共感できるとこ、いろいろあって(保育園児に共感ってのは、どうか。というのは置いといて。)
マキちゃんに会いたくなりました。
新編で収録された「マキちゃんとチェロ」が、すごく好き。
大きくなったマキちゃんからの手紙もイイです。
本を閉じて、しばらくして。
あれ? これは、おかあさんである伊勢英子さんが書かれたんだよね。
マキちゃんからすると、絵とチェロとに夢中で、背中ばっかり……だったはずのおかあさん。
でも。
ほら、こんなにも見ていてくれたんだよ。
おかあさんのいっぱいの愛が、じんわり、じんわりしみてきて……
それから。文字通り「身を削って」「全身全霊で」絵を描かれてる伊勢英子さんの姿が、垣間見えるんです。
もともと伊勢英子さんの絵本は大好きなんですけど、読み終わって、本棚にある『おおきな木のような人』『ルリユールおじさん』を開いてみたら、ちょっと涙が…。
大事に読もう。なんども読もう。と思いました。
ところで。
この本は、ジャンル分けすると、どうなるのだろう。
児童文学?
子どもたちは、わたしが思ったとことちがうものに♪と思うのだかなぁ。
お母さんたちに、オススメしたくなるけど。
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1987年に講談社から出た本を増補・改編した新編。マキちゃんのがんばり・わがまま・成長に涙がうるうるします。「マキちゃんとチェロ」なんて「大きくなったのねー」と親戚のおばさん気分に。でも、マエちゃん(お姉ちゃん)は? マエちゃんの本はないのかしら? 自分がマエちゃんだったら……ちょっと淋しいかなぁ。
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いせひでこの子育て奮闘記。
仕事を持つ母なら誰もが経験するだろうことを素敵な絵を入れてスケッチする。この小さな嬢ちゃんももう仕事を持っている。
自分を飾らず見ているところが好き。
学校バザーに絵を出すところがあるが、ほしかった。
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マキちゃんが、自分の次女とオーバーラップ。
でも、この本って児童文学なんだよね…59の辺りに入っていても、おかしくないが…。
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本編の「マキちゃん」の考え方や行動は、現実のお子さんを自由研究しているような感じで、フィクション感の全くないリアルさがすごいと思いました。
そのリアルさは、序盤のマキちゃんの幼いながらの、おもらしの気の遣い方にも現れていて、切ない絵柄と共に思わず笑ってしまいました。
でも、それもそのはず。実際にお母さんが娘さんを見ていて絵日記にしたのだから、それもそうかと思ったのですが、それでもマキちゃんの心の中を見透かしたかのような、そうだよねと共感できるような文章には、娘さんへの理解が込められており、いせひでこさんの麻木さんへの愛情の深さを感じました。
また、「いせひでこ」さんの「新編に寄せて」のすぐ後のページに、「石井麻木」さんの「おおきくなったマキちゃんからのてがみ」が載っている構成には、心動かされるものがあって、
お母さんは娘さんを、
「風のように通り過ぎていって、とおいむかしの残り香が漂っていた」
と表現し、娘さんはお母さんの、
「絵筆と紙をにぎりしめ、風を追いかけ雲を追いかけ雪を追いかけ夕焼けを追いかけ どこまでも飛んでいってしまう背中を」
不思議に思い、自らもカメラをにぎりしめ、光と影を追いかけ、飛び続けていると表現し、そんな二人の思いは、とてもよく似ていると感じました。