紙の本
恐怖を感じない男
2020/07/07 08:06
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
極道者でアルコール依存性の、及川頼也の奇妙な入院生活を描いています。大学病院の暗部にメスを入れつつ、難病の少女との触れ合いで心を取り戻していく姿が感動的です。
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
入り込めなかったなあというのが、正直なところ。
萩原さんのほかの作品が好きな人には、意外な作品になってるかと。
救いはあるのかな?ないのかな?
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二度目の務めを終えた及川頼也は、その酒乱を見るに見かねた若頭に、アルコール依存症を治すよう命じられる。検査の結果、「良心がない」とまで言われた男がどのように変わっていくのか。名著『明日の記憶』の著者が、再び「脳」に挑む。
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ちょっと期待はずれ。。。
「明日の記憶」的な話を期待しすぎたか。
んー!?何とも言えませんが、梨帆ちゃんは可愛かった。
けどかわいそうだったな。
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普通ってなんだろうって思った。普通を取り戻して行く主人公は、やっぱり最後までどこか普通じゃない。ざらっとした。
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主人公の及川は暴力団員。ひとたびスイッチが入れば暴力に歯止めがきかず、何度もやりすぎて組の立場を微妙にし、しだいに組から疎まれはじめる。やりすぎてしまう原因の一端でもあるアルコール依存症の治療のため、病院に行くよう若頭から命じられていた及川だったが、そこで脳の画像を撮られ、反社会性パーソナリティ障害との診断を受ける。最初は治療を受けるつもりなどなかった彼だが、いつもの悪い癖が出て敵対組織の組長を殺してしまったことで命を狙われるようになり、しばらく身を隠すために山奥の病院で治療プログラムを受けることを選ぶ。共感能力が著しく欠如していると言われ、良心を持たず、他人の痛みや恐怖をまったく理解できなかった及川だが、投与された新薬の効果と、同じ病院で治療を受けている少女に懐かれてふれあうようになったことで、少しずつ変化を見せていく。
舞台は少しだけ未来の日本。二年前に原発テロが起こって大勢の犠牲者が出、人々はその傷跡からまだ立ち直りきれないでいる。自衛隊は自国防衛隊と名前を変えてテロリストの活動地域に派兵され、武力衝突という名の戦争が始まっている。序盤はヤクザ社会の暴力・アクションのスリル描写から読み進めたけれど、精神病院の隔離病棟に舞台を移した後半は登場人物の味とプロット展開にページを捲らされ、ラストシーンを読み終えたときにはもう胸が詰まって言葉がでなかった……
荻原作品の最大の魅力は、人の弱さ、情けなさ、愚かしさに向けられる作者のまなざしの温度にあると思っている。荻原作品の主人公はヒーローではない。及川は凶暴で前科者で人殺しのヤクザで、善良でないどころか悪の魅力にも欠け、無頼でもハードボイルドでもない。自尊心、虚勢、子供の頃に受けた虐待から世間に仕返しをしてやりたいという復讐心に振り回され、弱いものに暴力を振るって安心し、自分が得するためなら他人を蹴落としても何とも思わない。"俺のほんの気まぐれで、そいつが病院送りになる。一生後遺症が残る怪我を負わせられるかもしれない。そう考えることは俺には快感だった。生きている爪痕が残せたってことだから。他の奴は違うのか? 力が弱いからびくびくしているだけで、俺みたいな腕っぷしと度胸があれば、同じことをするんじゃないのか?" 性格か? 脳機能の欠如か? どちらでもいい、むしろ良心が欠如しているくらいがいまの稼業に向いていると思っていたはずの及川が、少しずつ、本当に少しずつ変わっていく姿を単なる「感動」で終わらせないのは、作者のそうしたまなざしのなせるわざだと思う。いい本だった!
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あるヤクザがアル中と反社会性パーソナリティ障害で診療、入院することとなるが、病院の裏事情に気づき…というもの。ヤクザといえども本格的(?)ヤクザ小説でもなく、ほか登場人物もやわらかめ、反社会性パーソナリティー障害など、脳の解説、原因、人は変われるかといったことが大きな流れ。原発事故による云々はまあ、無理に作らなくてもよかったんじゃないかなあ。それにまつわる人の動きはあるけれど、少しぼやけている感じ。まあ、誰もが折り合いをつけて生きていくっていうことでしょう。
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二度目の務めを終えた及川頼也は、その酒乱を見るに見かねた若頭に、アルコール依存症を治すよう命じられる。検査の結果、「良心がない」とまで言われた男がどのように変わっていくのか。名著『明日の記憶』の著者が、再び「脳」に挑む。
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読み始めて間もなく、荻原作品を読んでいるつもりだったのに、これは誉田作品だったか、と表紙を見直してしまうほど、これまでとはがらっと趣の違う物語である。主人公は反社会的勢力の構成員で、良心をもたず、恐怖の概念が抜け落ちている及川頼也。舞台はとある医療機関。アルコール依存症の治療のために8週間入院するという名目で入ってみれば、そこは隔離病棟なのだった。治験と称する人体実験による人格の変化や、想定外の人間関係による症状の改善など、興味深い要素がたくさんある。患者側はもちろんのこと、医師をはじめとする医療機関側の人間たちの人格にも興味を惹かれる。まさにバイオレンスの日々を生きてきた及川だったが、彼にはここの治療が合ったのか、少しずつ人間的な感情を取り戻し始めると、さまざまなことに気づき、わかってくることがある。その様子も注目に値する。どの登場人物も細部まで丁寧に描かれていて、目の前で動いているような気にさえなってくるのも見事である。ここで起こっていることは、大変なことだが、描かれていない部分にもっと深い根っこがあるのが透かし見られて、空恐ろしくなってくる。ハッピーエンドを想像するのは難しいラストではあるが、及川にはなんとしてでも逃げ切って、梨帆たちと再会してほしいと心から願ってしまう一冊である。
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恐怖心をほぼ感じることなく、良心すらないかと思えるヤクザの及川。反社会性パーソナリティ障害と診断され、その治療のためのプログラムに参加することになった彼が、徐々に変化していく様を描いた小説。
シリアスながらもどこかしらコミカルな読み心地で、心温まる物語になるのかと思いきや。それだけでもありませんでした。少女と交流することによる及川の変化は微笑ましく思える部分もあって、「人間は変わることができる」という美しいお題目を讃えたくなってしまう部分もありますが。プログラムの裏側にある真相は……ああ、こんなことじゃないかと思いましたが。やっぱりそうかあ。
ただ、この日本の設定があまりに恐ろしくって。「二度目の原発事故」が全くの絵空事である保証などどこにもないのですから。本当にこんな事態が起こったら、危惧されるような状況も起こりうるのだろうし。だとしたらこんな研究を考える誰かがいないとも限らなくて。そのことに非常な恐怖を感じさせられました。
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大変申し訳ありません。こんなに素晴らしい作家さんとは知りませんでした。傑作です。今年の読書の中では「十三階の女」と肩を並べてベスト作と言えます。
兎に角、登場人物の描写力は圧倒的です。有り得そうな近未来での非人道的研究と昔ながらなヤクザな生き方のコントラストを背景にして、人間とは何かをするどく抉っていきます。暴力描写も全く気にならないのは圧倒的に人間を書き切っているから。500頁弱の長編ですが全く時間を感じませんでした。個人的にはここで終わり?という最後が少し物足りなかったですが、それも些末なことに思えます。今後、他作品も読んでみたいと思います。
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主人公は親方の命令でアルコール依存症の治療を受けに病院に行く事になった。検査をすると死をも恐れない恐怖を感じない珍しい脳の持ち主であった。治療プログラムを受けていくにつれ顔見知りになった人や小さな女の子とも知り合いになる。欠けていた脳波が正常になってきていた頃、色々な事に気付く。単なる治療ではなくもしかしてハメられたのでは、と。何かがおかしいと気がついた時に治療している人たちと一緒に脱走するも、途中で邪魔が入ってしまう。その先は自由か絶望か・・・一気に読了しました。穏やかな内容が多い荻原さんですが、今回はスリリングでいつもと違った文章に幅広さを感じました。
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暴力描写にびびりながらも何とか我慢して読み進んだが、折角主人公が人に共感することや人との関わりに変化がみられたのにこんな最後なのが切なくて辛い。
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https://twitter.com/product1954/status/981341585735524352
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原発事故が再度起こり、PTSDが蔓延し国力の低下した近未来の日本が舞台。アルコール依存症と反社会性パーソナリティ障害で入院した暴力団員の男が、病院で非人道的な人体実験が行われていることに気づく。
大脳の一部を意味するユニークな印象のタイトルとは裏腹に、作者には珍しく情け容赦のない暴力シーンが繰り返される。時折のぞく軽妙な文体に、ハードボイルドを気取りながらもくすりと笑えるいつもの展開を予想していたため、暴力的なものが苦手な私にはなおさらつらい読書だった。
ただ、そんな部分を差し引いても、子どもとの交流に人間的な心を取り戻していく主人公をはじめ、脇を固める人物の描きかたは見事で引き込まれた。終盤は、どう転んでも救われない主人公の行く末も見通せるからこそ、絶望的な緊迫感に拍車がかかる。幕引きも、映画のワンシーンのように鮮やかで素晴らしかった。
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前半と後半で別人のように変わっていく主人公。
それが薬や入院のせいだけではなく
一人の少女と出会った為であるのが
胸にきた。
同じ部屋の患者たちも巻き込んでの大脱出
切ないラストだったけど、
一本の映画を見たような読後感だった。