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〇手がかりなしのシー・ミステリーに若き十津川警部が挑む
油壷を出港したシャークⅠ世号はタヒチに向かっていたが、スコールが止んだ小笠原諸島付近で遭難が伝えられたアベンジャーII世号と出会ったのがこの物語の始まりだ。
アベンジャーII世号には人は乗っておらず、しかしさっきまで誰かいたようなそんな形跡が残る。そう、それはまるで1872年に起こった「マリー・セレスト号事件」と全く類似していたのである。
「マリー・セレスト号事件」は、フィクションでなく本当にあった事件であり、いったんウィキペディアのアドレスを貼り付けておくので参照されたい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/メアリー・セレスト
漂流する船から忽然と消える乗員、沸き立つマスコミ。
そして、海難審判が行われることになったものの、その発見者たちが自殺、もしくは何者かの手によって殺害されてしまう。
ヨット経験者の十津川警部が呼び出され、真相に向かおうとするも、なかなか進んで行かない。手がかりは、発見者たちの殺害現場に残された「血染めの召喚状」そして、指輪の跡だったが―――。
***
とてもスケールの大きい事件であり、謎解きだ。
↑これは、わたしがこの本を読み終えたときの素直な感想である。
実際に起こった事件になぞらえて起こされたと思われるこの事件は、海難審判でも推理に困難を極めるが、日高理事官もまたかっこよく映るのも見逃せないところだ。
油壷や都内で起こる殺人事件、十津川は能登まで足を延ばして犯人を追うものの、それでもタッチの差で逃げられてしまう。しかしそこで見つけるのが女性の指に見つけた指輪をはめていた跡だった。この指輪は、女性のものだったのだろうか。それが意外とこの事件の糸口になっていたりする。
結末は想像以上に遠く(いろんな意味で)、しかし十津川が解ききった瞬間の爽快感は読者も一緒に体感できるだろう!