- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
紙の本
歴史という“合せ鏡たる過去”に人は「真実」を求めたがるのか
2020/11/07 12:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「記憶」は生き証人が絶えると消えゆく運命にあった。だが、文字の創造は文献「記録」をもって、故事来歴や国家形成の歩みを後世に伝承する「歴史」へと変貌させた。
著者は、人々の「記憶にとどまっていない」歴史の出来事や人物を「探しだし、ながめていこうという意図のもとに」執筆したと明言する。
人物の好悪は、小説や映画、TVドラマでの題材(心躍る英雄物語やロマンス)、役割(主人公か、脇役か、悪役や敵役か)、印象(演じる俳優の顔ぶれ)などの主観的要素に左右されやすい。
僅か150年と時代の篩(ふるい)の期間が短いが故に、日本の近現代史は却って「教科書でとりあげられ」ない歴史の「こぼれ話」が少なくないと著者はいう。
例えば、明治天皇の皇子皇女は正室(皇后)ではなく入内した公家華族の娘が産んだこと、その多くが早逝したことを、私は[1]章により初めて知った。
欧米列強に範をとった明治新国家の君主像を明治帝は身をもって呈した峻厳な人物とばかり思っていたが、成長を遂げた娘の婚儀に喜色満面、相好を崩したという逸話に人間性の温もりを感じた。
女優の入江たか子(溝口健二追悼ドキュメンタリーや黒澤明の「椿三十郎」でお馴染み)が、元公家の東坊城子爵家の出身だとは往年の銀幕ファンには結構有名だが、[6]章にあるとおり、粗末な弁当に女学生が人目を避けて箸をつけていた没落の悲哀を思うと、改めて暗然とさせられる。
戦前の特高警察に検挙されながらも深窓の令嬢らしからぬ志操堅固さで転向を拒み、保釈後に自殺した二十歳の娘が岩倉公爵家にいたとの記述には驚かされた。
文字に残らぬものは初めから存在せず、「無」に等しいというのか? 記録の空白は、不都合な「真実」の隠匿痕なのか。[12]章で著者は、個人的な日記・日誌さえも都合よく削除や加筆が施され、資料価値を失う危険性に警鐘を鳴らす。
「事実」と「真実」は必ずしも一致しないからこそ、歴史という“合せ鏡たる過去”に人は「真実」を求めたがるのか。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |