紙の本
共同作業の問題
2012/01/22 22:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
けっこう話題になった本だったから、本屋の店頭で眺めてみたが、そのときは迷ったものの買うのはやめた。その後、複数の友人たちがほめるのを聞いて、またまたぐらつき、結局買って読んでみた。が、読み終わってみると、やはり店頭の勘は正しく、自分にとっては買うほどのことはなかった、というのが個人的な結論。
企画としては面白いと思う。小説家である村上春樹と、アメリカ文学者である柴田元幸は、それぞれ翻訳が好きで経歴も長い。友人でもあるその二人が、柴田の東大での授業や、若手翻訳家たちの集会などで、縦横に翻訳について語り合うというものである。それぞれが得意とする作家を二人で訳し比べてみる、という内容も含まれている。
だからまあそれなりに面白かったのだが、それはいわば雑誌の読み物程度の魅力で、二人のそれぞれの著書を既にけっこう読んでいる私としては、期待はずれだった。期待が大きすぎたのかもしれない。しかし、二人はそれぞれ個人の著書では、翻訳についてももっといいこと、深いことを書いていると思う。たとえば村上の素晴らしい紀行文である『遠い太鼓』では、翻訳についてのより切実な声が聞こえる。それなのに対談し、大勢で話し合っている二人は、それを深め掘り下げるよりも、肝心のところを互いに消し合ってしまっているように見える。
思うに、彼らの翻訳観には(特に村上)単に技術的ではない哲学のようなものがあって、それはどうも対談のような形では十分には出てこないのだ。何よりもそれは、彼らが最終的に語り部ではなく、物書きだからだと思う。
電子書籍
作家であり
2021/08/02 23:46
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
翻訳もする村上春樹と、アメリカ文学の研究者の対談を本におこしたものです。お二人ご、なかなか、深いお話をなさってますね。でも、読んだことの無い本についての部分は、あまり、興味を持てませんでした
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村上春樹さんと柴田元幸さんの翻訳についての対談集
翻訳における愛情と偏見について。
お二人が同じ作品を各々で訳したり、翻訳学校の生徒や若い翻訳者たちとのやり取りも。
翻訳はもっとも深く作品を読み込む手段、納得。
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村上春樹と柴田元幸の同一小説の競訳の読み比べは、なかなか面白いです。
他にも翻訳者と原作家さんとの距離の取り方とか、ドキドキします。
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翻訳された外国の書籍を手に取る機会が多い方なら興味深い内容になっていると思う。普段気にも留めないが目にしている翻訳という作業が様々な思惑と配慮でなされていることが分かるはず。ただ、読み物としては今一つといった印象。企画は面白いが内容上会話形式なので読みづらい。基本的に両氏の翻訳した作品を補完する意味合いが強いので、作品を先ず読んでから手に取ったほうが吉
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翻訳者の柴田元幸と作家である村上春樹による翻訳談義である。村上春樹もカーヴァーを始めとして、翻訳書が多いが、私は柴田元幸氏の翻訳のファンである。大学に行っても、何一つ、自慢できることはないが、柴田元幸の授業を生で受けていたということだけは鼻高々である。だから、柴田元幸などと呼び捨てで書くと、非常に、心苦しい。未だに、私の中では、柴田先生である。ただ、学生時代は、柴田先生のありがたみに気づかず、面白い授業だなぁとおもいつつ、出席率50%ほどだったのが心残りである。他の科目は、推して知るべし。出ていなかった…。本題に戻って、この本であるが、柴田先生の話が聞きたい私にとっては、村上春樹、話しすぎ。よって、星ひとつ減点。
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内容:東大駒場、翻訳学校、若手翻訳陣との対談をまとめたもの。
感想:こないだまた村上春樹をこき下ろしたので、バランスを取るために(読めば「あ、いいかも」って気になれる。で、「・・・いや騙されるな、結局ここには何も書かれてないぞ」のエンドレス)、読んでみた。何人かの友達に柴田元幸の授業は厳しいと聞いていて、少し厳しそうなイメージがあったけど村上に腰が低くて面白かった。対談は基本的に村上節。結局愛情が大事だよね、みたいなことを村上節で言われるから気持ちよく聞いていられるんだけど、でも安心とか心地よさでしかない。問いやエネルギーを作らない非生産的な話だよね、とこれもエンドレス。だけど、「競訳」ってのは面白いと思う。もっとこれを徹底的に細かく話していたら読みたい。でもカーヴァーとか読んだことないから分からんけど。
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村上さんのはむしろ翻訳物が好きで先に読んでいた関係上 柴田さんはオースターの映画を好んでみていた関係上買ったはいいが。。。
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私自身翻訳に興味があるので。いろいろ面白い意見が聞けました。両氏が仰るとおり、翻訳マニュアルではないので、一意見として。
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翻訳に関することより、「良い文章というのは、人を感心させる文章ではなくて、人の襟首をつかんで物理的に中に引きずり込めるような文章だと僕は思っています。」という言葉が心に残っている。
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村上さんも柴田さんもどっちも好きなので読んでみた。技術的なことではなく、翻訳に対する二人の情熱のようなものを感じられる本です。
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外国の小説は、読みにくいことが多い。きっと、翻訳という過程を通ってきているから、実際に作者が意図した世界とは微妙に違ったものになってしまうからだろう。けど、翻訳者によっては違和感なく読めるものもある。それがこの二人の翻訳したもの。文体の捉え方と、その流れの表現が上手だからかな。私も翻訳したいと思える作品に出会いたい。
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このひと、本当に翻訳が好きなんだな、って思わせる対談。
ご本人がおっしゃっている通り、翻訳をやってるひとにタメになるかどうかは不明。
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おもしろかった。英語(語学)嫌いの私としては、「翻訳」なんてもっとも面倒なことのひとつなんだけれども。彼らは翻訳、好きなんだね。村上春樹は、小説家なのにどうしてこんなに翻訳してるんだろう…と不思議に思っていたけど、納得した。趣味なんだ。そして、自分の好きな作家が変な訳なんかで紹介されたくないんだろう。なんとなく、わかる。彼らの翻訳をめぐる話もおもしろいが、それは翻訳にのみ留まらず、文学や日本語についても考えさせられるもので興味深い。そしてなんといっても、二人によるカーヴァーとオースター作品の競作は非常におもしろい。そうか、こんなに違うのか。そして、原文を読んでさらに納得。世界の中でもマイナー言語を母語とする日本人の宿命でもある「翻訳」。かなり奥深い世界だ…。 (2003 Sep)
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東京大学の柴田教室と翻訳学校の生徒、さらに6人の中堅翻訳家という、
異なる聴衆(参加者)に向けて行った3回のフォーラムの記録。
カーヴァーとオースターの同一の小品(巻末に原文がある)の競訳が
掲載されており、プロ翻訳家たちとの最後のフォーラムでは、これを
巡った質疑が展開する。