- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
翻訳にとどまらず言語や言葉に対する深い洞察が。
2011/11/02 17:57
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁ〜、おもしろかった、村上春樹と柴田元幸の『翻訳夜話』。も
ちろん皆さんご存知でしょうが、村上春樹はレイモンド・カーヴァーや
ジョン・アーヴィングなどの翻訳家としても有名。柴田さんは特にポー
ル・オースターの翻訳家として高い評価を受けている人だ。そして、こ
の本、翻訳の話ではあるのだが、そこにとどまらずに「言語」や「言葉」
などさらに広がりのある話になっていて読み応えがある。
例えば、村上さんのこんな言葉。「ビートとうねりがない文章って、
人はなかなか読まないんですよ。いくら綺麗な言葉を綺麗に並べてみて
も、ビートとうねりがないと、文章がうまく呼吸しないから、かなり読
みづらいです」。さらに、柴田さんのこんな言葉、「(翻訳の勉強とし
て)日本語を磨きましょうという言い方をよく目にするんですけど、ど
うも何か違和感があるんですね、僕は。何でなのかなあ、所詮自分の使
える日本語しか上手く文章にはのらないということを痛感するんです」。
本当にそうですよね。それにしてもこの二人、翻訳が好きで好きでたま
らないらしい。村上さんは小説で疲れた心をリハビリする、癒しの意味
もあるようなのだが…。
内容的には村上×柴田の対談、翻訳学校の生徒たちとのやり取り、若
い翻訳者たちとのフォーラム(何と参加者に岸本佐知子がいる!)の3
部構成。若者たちの質問に2人が非常にていねいに応えているのが印象
的だ。間に2人が同じ短篇を訳すという趣向でカーヴァーの「収集」、
オースターの「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の各々の訳
文が掲載されている。どう違うか?…う〜む。この比較の話も結構深く
ていい。言葉を使う仕事をしている人、読書好きな人にもぜひ読んでも
らいたい一冊だ。
紙の本
幸福な競演
2000/11/24 04:52
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスマスプレゼントを一ヶ月前にいただいたような、そんな喜びに浸りつつ、じんわりと読んだ。
アメリカ現代文学の翻訳者として絶対に外せない二人が、思い入れたっぷりに語る翻訳テクニック。オースターとカーヴァーの競訳に若手翻訳家を交えての解釈論議までついて、こんな贅沢な企画、年を越す前に何か罰が当たるんじゃないだろうか。
本書全体に溢れる二人の翻訳への、そして文学への愛情。物語が好きで好きでたまらないからこそ、忙しい最中にもついちょこちょこっと訳してしまう。そんな想いに乗せられて、こちらまでわくわくと嬉しくなってくる。彼らに愛され、訳された作品は、本当に幸せだ。
私個人は柴田氏のファンだが、本書全体としては創作と翻訳の違いを丁寧に解説していることもあって、村上氏の発言に印象深いものが多かった。文学の好きな、全ての人に読んでほしい。
紙の本
翻訳家をめざしてなくても、村上春樹小説のファンなら満足できる一冊
2004/07/23 01:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ミケ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は村上春樹の小説が好きで、実はこの本も数年前から手元にあった。
でも小説じゃないから、すぐに読む気になれず、そうこうしているうちに
存在を忘れてしまっていた。
何か読むものないかな〜と、本棚を物色していて「あ、こんな本があったのを
忘れていたわ。」と思って読み始めたのだけれど、これが面白い。
今まで、村上春樹の小説は読んできたけれど、翻訳の方はほとんど読んでいない。
レイモンド・カーヴァーも1,2冊本棚にあるけれど読んでいない。
村上氏が翻訳した絵本『急行「北極号」』『魔法のホウキ』『西風号の遭難』や
山本容子さんの銅版画のカポーティの『あるクリスマス』『クリスマスの思い出』
『おじいさんの思い出』は大好きな本たちだ。しかし、どれも子どもの本屋で
見つけて買ったもので、いわゆる大人を対象とした一般小説の翻訳物は、どうも
違和感があって今まで読めなかった。
この「翻訳夜話」を読んでみると、う〜ん、これは彼が翻訳したものも読んでみたいゾ、
と思ってしまう。夕方、この本を読み終わって夕刊を開いたら、タイムリーにも
<「社会の手触りを」を描く 『レイモンド・カーヴァー全集』完結>
という見出しが大きく出ているではないか。村上春樹氏の写真つきで、大きく
取り上げられていて柴田元幸氏のコメントまでついている。
ますます、彼の翻訳物も読んでみようという気になってきた。
この本の中に、柴田元幸氏と村上春樹氏が同じテキストを翻訳しているものが載っていて
とても興味深かった。もうこれは完全に好みの問題だと思うけれど、私はやはり村上氏の
訳のほうに惹きつけられる。本書の中で、訳者が違うことによって作品から受けるイメージが
違ってしまうということについて、それは音楽と同じで、たとえばベートーベンの曲を
いろいろな指揮者や演奏者が演奏して、その中で自分の肌に合う解釈を選ぶということが
できるといいと書いてあったけれど、なるほどそういうことかと腑に落ちた。
実は「ライ麦畑でつかまえて」も、村上訳はまだ読んでいない。学生の頃読んだものと
イメージが違ったら、なんだかうろたえてしまいそうな気がして。でも音楽と同じだと
言われたら気が楽になった。今度「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も読んでみよう。
紙の本
どちらのファンにもたまらない一冊
2001/11/13 11:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東大教養学部での、バベル外語学院での、そして既に活躍している6人の翻訳家との3つのフォーラムは、創作秘話とも呼べるものでとても読みごたえがあり、小説読みの人もそうだが、翻訳家を目指す人にとっても意義深い本に仕上がっている。
何より素敵なのは柴田氏と村上氏によるカーヴァ—とオースターの訳し合いで、柴田元幸訳のカーヴァーや村上春樹訳のオースターを読む喜びはどんなミステリを読むよりも大きいものがあった。
紙の本
翻訳の原点
2001/08/17 12:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Mihi - この投稿者のレビュー一覧を見る
英語を使った仕事をしたいと思った人がまず最初に思いつくのが、翻訳ではないだろうか。私もそうだった。通訳などしゃべることが必要な仕事に比べて、翻訳なら辞書などを駆使し、時間の制約がなければどうにかしてできる。根性でどうにかなると思ってしまうのだ。だがそれは裏を返せば、「誰でもできるのではないのだろうか」「翻訳することに何か意味があるのだろうか」という思いにもなる。これが私の翻訳に対する長年の「愛憎」だった。
この本は、私のこの混沌とした思いに光を与えてくれた。誰でも皆、同じようなことを思っているのだ。それでも「翻訳は愛だ」といって翻訳に励む。「訳したい」ただそれだけの思いで。
「英語を使いたいから翻訳したい」のか。そうではないはずだ。「英語を訳したいから翻訳する」のではないのか。その出発点を忘れてしまうところであった。それを再び気づかせてくれたこの本に感謝したい。
見習い翻訳家
紙の本
翻訳の2つの形
2001/04/23 14:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ダメ太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の文学界で最も売れる作家であり、翻訳もかなりの量をこなす村上春樹と、有名な翻訳家といえばこの人の名が必ず挙がるであろう柴田元幸が各々の翻訳観を語る、とても興味深い一冊である。翻訳理論に関する本は数多く出版されているが、このように著名な2人が翻訳の実践について語るというようなものは珍しい。一方の村上は本職が小説家であるからいわば彼一流の翻訳をしており、他方の柴田は大学で翻訳を教えるくらいであるから、基本に忠実な翻訳をする。そのように方向性が全く逆である2人であるから、実践における考え方の違いが顕著にあらわれてくるのだが、結論としては意見の一致を見ることもあって、翻訳というものの奥の深さを感じたりもする。
2人が同じテキストを訳して、それを比較するという試みもなされている。それを見る限り、やはり2人の翻訳は根本的に違うものであるという印象を受けるが、翻訳には正解というものはなく、クラシック音楽が指揮者によってその印象を変えるように、翻訳というものも訳者によって異なるものであっていいという両者の一致した見解に対しては、そのとおりだと感じた。
翻訳書をよく読む人、翻訳に興味のある人、翻訳家を目指す人、実際に翻訳家として活躍している人、そのような人々すべてに読んでもらいたい一冊だ。
紙の本
村上訳のライ麦畑〜は読みたいなぁ
2000/11/12 23:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人のてだれの翻訳者による翻訳の本。翻訳について動機、訳し方のテクニックなど非常に率直に語られていると思う。同じ作品を2人が訳しているものも収録されていて興味深い。中にライ麦畑〜には別訳があってもいいって話がでてくるけど、やっぱり