答えは彼が見つけるしかないのかもしれない
2020/09/05 08:19
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件も事故も自然災害も毎日のように発生し、過ぎ去っていく。
その時々では大きな関心を集めても、やがて人々の記憶から忘れさられていく。
この本で取り上げられる事件も、またそんな一つかもしれない。
2014年3月、といえば、まだ6年しか経っていない。(ちなみにこの本が出版されたのは2017年6月)
埼玉県川口のアパートで起こった殺人事件。70代の老夫婦が刺されて死亡。犯人は孫の17歳の少年という、痛ましい事件。
痛ましいけれど、子が親を、あるいは親が子を殺してしまうような事件に、私たちはあまり驚かなくなっている。親がわが子を殺してしまう世の中であれば、孫が祖父母を殺してもびっくりしない。
しかし、この事件はそれだけではなかった。
犯人である少年の生い立ちが明らかになっていくと、きっと誰もが我が耳を疑うだろう。
少年は行政が居場所を把握できない「居所不明児童」で、小学5年から学校にも通っていないこともわかってくる。
著者は毎日新聞の記者で、裁判の過程で判明してきた事実を丁寧に追いかけていく。
少年が母と幼い妹を連れ、働いていた会社を訪ねたり、少年たちが2年近くも暮らしたというモーテルの従業員に話を聞いたりして、少年が祖父母殺害までの軌跡を追う。
そして、浮かんでくるのが母親の存在。
働くこともせず、自己の快楽に興ずる母親。
だが、残念ながら記者の追求は母親の闇にまで届いていない。
老夫婦が殺されたという事実。二人を殺したのが17歳の少年という事実。
しかし、何故少年が老夫婦を殺さなければならなかったのか、その理由に私たちはたどり着けない。
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あまりに過酷な生い立ちで驚いた。
人を殺めた事は決して許される事ではないが、原因の全てが彼にあるわけではない。
社会のあり方、コミュニティのあり方を再考させられた。彼にはこれからの人生をしっかり生きてほしい。
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◆東洋経済ONLINE「指示され祖父母刺殺、17歳少年の苛酷な生活 社会に訴える「一歩踏み出す」ということ」 http://toyokeizai.net/articles/-/183010
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このニュースに接したとき、又切れた若者の犯罪かなあと思っていた
なんと過酷な環境
産みの母のすることだろうか?
誰も彼を見ていなかったんだね
今も苦しんでいるのだろう
つらいなあ
彼の描いたイラストが切ない
≪ 籠の鳥 月を見つめて 何想う ≫
≪
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川口市で起きた17歳の少年による祖父母殺害事件。
著書の取材により炙りでるこの事件の本質を描くルポルタージュ。
クロワッサンに紹介されていたのを見て手に取りました。
事件のことはほぼ記憶にないまま。
同世代の息子がいるので、話題にはしていたかもという程度です。
事件の背景を知り、母親に対する嫌悪感を感じ、腹立たしい気持ちになりました。
少年の罪は非常に重い。でも、この母の罪はさらに重いものだと思います。
この母親をどうにかすることは出来なかったのか。
虐待を受けた子供を救う為に行政できることにも限りがあることを知りました。
自分を含め、周囲の人が行動することが救いになることがあることも知りました。
本書にもある『行動を伴わない善意には現実を変える力はない』という言葉が重いです。
たくさんの支援者がいるとのこと。その勇気に脱帽します。
本書の言葉を借りれば「世の中捨てたもんじゃない」と言うことなのかもしれないですが、行動を起こさない自分が言うことではないですね。
とは言え、起こってしまった事件により、人の命が奪われてしまったという事実は否めません。
ご遺族に安らかな日が戻りますように。
母親も遺族のひとりではあると思うと、ホントに複雑。
自分の娘により虐待された孫に手を下されてしまった被害者の無念を思わずにはいられません。
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・行政の人間が怠けているからこのような少年が救われない、のではなく、救えるはずの人を救えるシステムがまだ出来ていない。
面倒見てあげたいと思っても次の日には姿を消す、その行き先はわからない。それでは支援が難しいのは当たり前。
・少年にフォーカスすると話が綺麗なのはわかるが、事件の根本的原因として描かれている母親の背景への考察が薄かったのが残念。
母親の家庭環境にそこまで問題はなかったと描かれているが、あそこまでの浪費癖、他人との接し方を考えると、単なる性格が悪い女、では片付けられない。
・少年は大変賢く頭も切れるので更生に希望を感じるが、肝心の母親をどう短期間で支援するのか気になるところ。
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まーーーーひどい母親がいるもんだ。
自分の両親を息子に殺させるなんて。
それ以前のメチャクチャな生活ぶりを読むと、彼の支援者がたくさんいる気持ちもわかる。
この母親こそ、生きてる価値なし。
もうそろそろ出所するのだろうか?
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親を選べないとはいえ、何でこの母親を選んでしまったのか…。救いようがない厳しい現実に、少年が哀れすぎて何も言えない
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同じ埼玉県内の事件だったのでよく覚えている。17歳の少年が金品
目当てに祖父母を殺害した。事件発生当初は「また身内による殺人
か」と思って気にも留めなかった。
だが、事件の背景が報道されるにつれ、少年が送って来た過酷な生活
を知り、「なんでこんなことになったのか」といたたまれない気持ち
になった。
少年はいわゆる居所不明児童だった。両親の離婚、浪費癖があり
経済観念ゼロ、生活能力のない母と生活が徐々に少年を追い詰めて
行く。
学校に通ったのは小学校の5年生まで。その後は一時、生活保護を
受けてフリースクールに通うようになるのだが、お金が必要である
にも拘わらず「行政に監視されているようで嫌だ」という母の主張
で用意された簡易宿泊所から突然姿を消してしまう。
母、義父、義父との間に生まれた13歳離れた妹と一緒にホームレスの
日々を送ることもあったし、義父の日雇い仕事を唯一の収入源として
ラブホテルに泊まり続けたこともあった。
生活を立て直す機会は何度かあった。ただ、この母親自体に精神的な
欠陥があったのではないかと思う。生活が困窮しても働こうとする気
は一向にない。一方で、少年に嘘を吐かせて親戚に金の無心をして
いくばくかの現金を手にしてもパチンコやゲームセンターですぐに
使い果たしてしまう。
こんな生活で家族がうまく行くはずもなく、ある日、義父が行方を
くらますと一家の生活は少年一人にのしかかって来た。
少年は完全に母親のコントロール下に置かれていた。そして、少年も
母親を唯一の拠り所としていた。極度の共依存が、悲しい事件の引き金
になったではないだろうか。
事件を起こすまで、少年の周りには救えたはずの人物もいた。どうにか
見つけた勤め先には、少年を一人前にしようと考えていた人もいた。
だが、すべては母親がぶち壊して行った。
本書では少年の生い立ちや事件に至るまでの経過、その後の裁判の様子、
この少年のような体験をしてきた子供たちを、どのようにすれば救う
ことが出来るのかを記されている。
祖父母を殺害した少年の罪は消えない。この点に関しては少年は明らか
に加害者だ。しかし、加害者になる以前、少年はセーフティネットから
こぼれ落ちた被害者でもあったのだ。
「決して(あなたに対する)非難ではないのですが、誰か少年を助け
られなかったのか。こんなになるまで放っておいて。これだけ大人た
ちがそっていて」
一審のさいたま地裁で裁判長が被害者遺族(少年の母の姉)に問うた
言葉が胸に突き刺さる。親としての責任を放棄した母親から少年を
引き離すことが出来ていたら、懲役15年という更なる日々の喪失も
防げたのかもしれない。
願わくばこの少年のような子供が増えませんように。そうして、出所後
の少年が今度こそ、自分の居場所を確保できますように。
尚、少年の供述では祖父母殺害は母親の指示だったそうだが、裁判では
共謀は認められなかった。埼玉県警は共謀で起訴したかったらしい。
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以前ニュースで報道された時も、印象に残っていたが、
去年の末頃にその背景を報道番組で特集されてて、
少年の過酷だった17年という時間を知って強烈に衝撃的だった。
こんな事ってあるんだ。こんな親がいるんだと。
ただ救いなのは、この少年が妹を思いやれていた事。
学校に通わなくなっていても、彼の私記はしっかりとしたまともな文章だ。
のちに支援もしたいという声も多いという。
彼のその先の人生が少しでも明るくなる事を願っていたい。
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2014年に起きた、17才少年の祖父母 強盗殺害事件についj書かれたルポ。
ルポを読むのは初めてだが、事実が多く書かれていることと、少年の手記が残されていること、そして事件や少年と接するにあたり、著者の過剰な意見や推測が書かれていないことを含め、読みやすくかつ心に残る一冊だった。
少年とわたしの年齢は2歳差。たった2歳、そして生まれ育った環境が違うだけで、わたしは幸福に生き、彼は生きることすら嫌になるような人生を送っている。そして15年の時を、孤独と共に刑務所で過ごす。
虐待ときくと、つい暴力を想像してしまうが、本書の少年が受けていたのは、主に精神的な虐待で、母親と少年が共依存な関係となるよう(意図的か無意識かは分からない)、ずっと母親にコントロールされていた。
こうした状態にある少年をみていると、なぜそうなってしまうのか、世界はもっと広く、そして母親から逃れ幸せに暮らせる人生があることを、どうして分からないのかと考えてしまう。でもそれは当然のことで、まず世界の広さなんて、教えられない限り分からないものだ。そしてそれを教えるのは、通常では親の役目なのだろうと思う。少年はそこを放棄されていたために、世界の広さや人間の多様さを知る機会がなかった。
小学五年生から教育を受けていないながらも、論理的思考力が人並み以上にあることに驚く。そのかわりに感情的な部分から何かを考えるのは困難なようだが、彼は学力ではない部分で頭が良い少年なんだろうな。こうした人間が大きな罪を犯してしまったこと、ほんとうに悲しい出来事であると思う。
この事件から言えるのは、これは単なる一家族、一親子の問題などではなく、社会やそのシステム、そしてそのシステムで生きるわたしたちの無関心さや、臆病な心、そして余裕のなさにあるのだと思う。明日からの自分が、世界をより良くしたいと願うだけではなく、自分の周りの小さな世界だけでもより良いものしていけるよう、小さくても一歩を行動できますように。彼の思いを無駄にすることなく、世界を変える、小さくても一つの台風となっていこう。
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埼玉県で起こった祖父母を殺害した孫の事件。
事件を聞いたときは、家庭内暴力なのかなと勝手に想像していたのを思い出した。
私自身は、特に事件の詳細を知らないまま、時が過ぎていった。
他の方のブクログのレビューコメントをみて、孫の境遇や事件の複雑さを知った。
幼少期から過酷な境遇にあり、自分を認められるという状況にない。母親は浪費癖だけがあり、働かず、家庭は壊れている。それでいて唯一の肉親である親に対する飢餓感はあり、愛をもとに脅迫してくる親の闇を感じる。
戦争などでも、人として絶対に行ってはならないようなことが平然と行われている異常さがあるが、この事件にもそれと似たような感覚を受ける。
何故、祖父母を殺さなければいけないのか、まったくロジカルには説明できない。人としてやってはいけない行為、それが判断つかなくなっている状況、実はそれは、マインドコントロールほどでもないとしても狭い社会、(この事件の場合は母親と息子という狭い人間関係)、そしてそれが異常なかけひき、人にたいする圧迫により、発生してしまっている。倫理観や並行感覚のある考えは、そんな中崩れ去っていた。
冤罪事件などで、長い期間拘留され、刑事に脅され続け、嘘の自白をしてしまうのも、この種の問題と類似するのではないかと思う。
また、パワハラに耐える社員、組織ぐるみの不正。
家庭内暴力における家族の関係、アルコール依存症の家族に対するイネーブラーの補助による悪循環。
"正常”な感覚では理解できないことが、極限状態の場、小さな世界での限界の中で容易に起こる。基本的に一人の人間の精神はもろく弱いものだと思う。
そして、家族の中で、子供は一番弱い存在で、絶対に守られなければならないはずだが、犠牲になっている。
本来守るべき親などが、自分自身もどうにもならない状況の時は、本来家族を引き離すのが一番良いのではないか。
が、外から言うほど、問題は簡単ではないと思う。
家族という複雑な関係、繋がり、尊重されるべき関係性、その関係がおかしくなっている場合、社会がどの程度介入できるのか、介入すべきなのか。課題は複雑で、深い。
加害者が手記でいっているように、周りが、社会が、抑圧された子供たちに感心を持つこと、まずはここからだとは思う。
孤立した人間に対して、周りがいかにサポートし、社会と関わり合いを持つようにできるか。
この本は少年へのインタビューを基に構成されているので、当然少年の目線になっている。
本当にかわいそうな状況だと思うし、空疎な存在となってしまった少年の悲劇を感じる。
ただ、やはり主観的な印象は否めず、母親の視点、被害者の視点での深堀や、一人の加害者としての存在を少し多角的に記載してもらえると良かったと思う。
犯した犯罪自体はやはり罪深く、償うべきものだから。
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この少年(当時)は結局、懲役15年の刑で服役しているのだという。
確かに殺人という行為は許されるものではないし、それに見合った刑罰を受けて罪を償わなければならないことに異論はない。だがしかし、それでこの事件は一件落着として済まされていいのだろうか。
遺族(ある意味、この少年自身も遺族でもあるのだけれど)の心情も無理はない。二人もの親族の命を奪われたとあれば、処罰感情が強くあって当然だと思う。それでも、その責任をこの少年一人に負わせることが正しいとは、私には到底思えない。おそらくパーソナリティに何らかの障害を抱えている母親の責任が、かなりを占めている。この母親自身が、実は最も支援を必要とする人物であったのだろう。
子供の人格形成の段階で、その成育にふさわしい環境が保障されていない状態が日常であった場合、社会で生きていく人として辿るべき発達過程に問題が生じてしまう。環境が提供されなかったことは、果たして本人の責任なのだろうか。
その周囲の大人、社会システムの問題であると言っていいのではないか。
納得できないことに、母親の責任はかなり限定されたものとしてしか認定されなかったようだ。親として不適任な母親のもとで育たざるを得なかった彼も、ある意味被害者である。罪に対する罰、量刑判断云々もいいが、そこに至ってしまった背景を捉え、なぜ起きてしまったのか、起こさないためにはどうすればよかったのか、同じような悲劇を起こさないためにも、その部分の分析と対応を踏まえた社会の体制づくりをを考えていかなければならないのではないかと思う。
こんな不遇な環境の中でも人間としての温かさを保ち続け、きちんと学ぶ環境があればおそらく人並み以上の成果を示したであろう知性を持った彼が、心のケアをしっかり受け、ふさわしい発達段階を踏んで、刑期を終えて社会に戻って彼なりの人生を歩んでくれたら、と願わずにいられない。
蛇足。とても示唆に富む内容で読みごたえはあったのだが、一つのルポルタージュとしては、その構成や話の展開の仕方に少々難を感じた。途中でテーマが若干ずれた話題が挿入されたりして、少しまとまりに欠ける印象ではあった。
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母親や継父から虐待を受けていた少年。家もなく、お金もなく、学校にも行けない。母は浪費家で、親戚じゅうから借金を繰り返し、少しでもお金が入ればホテルに宿泊したり、ゲームセンターで競馬ゲームに興じたりとすぐに使い果たしてしまう。そんな母を見ながら育った少年は生まれたばかりの妹の面倒を献身的に見たり、学習することを望んだり、働けるようになると肉体労働に勤しんだり、真面目で責任感が強い。しかし裏では、母が彼を操る。「じいちゃんとばあちゃん殺したら、金が手に入るかなあ…」
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「なぜ」がたくさん湧いてくる事件。
なぜ、少年はずっと社会から助けられなかったのか。
なぜ、あんなにもひどい母親を慕って側にいたのか。
なぜ、少年だけが長い刑期を言い渡されたのか。
なぜ、なぜ、なぜ、、、
その答えが、この本の中にあった。
そして驚いたのが、義務教育さえきちんと受けられなかった少年の、しっかりとした考察と文書。
とても賢い。
少年がきちんと語ったのだろう。この本がとても読みやすく、内容が濃かったのは。
読んで損はない。私は一気に読んでしまった。