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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦時中の警察の状況については、興味が前からあり、その意味で本書は私の知的好奇心を少しは満たせてくれた。矢張り特高警察という機関は相当酷いことをしていたんだと認識をした。
この小説は、その特高警察の刑事であるアイヌの血を引く八尋を通して、国家や民族の本質に迫る作品であった。
また、原子爆弾の製造を巡ってその開発費を横領しようとする軍人もいてこの作品でも書かれていたが、挙国一致とはいいつつも日本は一枚岩ではなかったことがよく分かった。それをミステリーに仕立てているのもいいアイディアと思った。
あらゆる意味で面白く読めた作品。
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社会派ミステリーを得意とする作者の今作は終戦間近の北海道が舞台。
主人公の日崎は北海道警で特高として勤務していたが、ある日、殺人事件の犯人として逮捕されてしまう。明らかな冤罪だったが、その裏には敗戦濃厚な日本で最後まで抗おうとした国の策略と、「お国のため」と玉砕した兵士の日本への疑惑の念など、いろいろな思いが交錯し、大きな陰謀が動き出していた…
他の作品でも書いた気がするが、終戦後73年経ち、昭和天皇も亡くなり、平成が終わりを告げるせいか、最近は戦争責任に触れる作品が多くなって来た気がする。
今作でも、戦争を続けた日本に対する批判的な表現が登場する。完全なフィクションではあるが、ガダルタカル島で必死に生き延びるようとする兵士たちの様子などは、読んでいて心が痛くなり、これまで読んできた作者の作品とは、全然違う読後感。
戦時中を扱い、そして、北海道と言う土地柄なので、当時あった人種問題なども取り込まれており、いろいろ考えさせられた一冊。
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北海道、金塊、クマ、アイヌの神話体系、網走刑務所…どうしてもモチーフが共通する漫画『ゴールデンカムイ』を読んだ後なので、すべてゴールデンカムイ的絵で脳内再生されてしまうが、マイノリティ側に思い入れがあるので、楽しめた。
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終戦間近の北海道を舞台にしたミステリ。時代背景と特高警察をテーマにした作品ということがあって、やや硬くてとっつきにくいような先入観を持っていましたが。……いやいや、すんごく面白い! 密室トリックあり、脱獄トリックありではらはらどきどきが止まりません。連続殺人を巡る謎にもわくわくさせられたし。テーマは重いしシリアスなものだけれど、作品としてはこれぞエンターテインメント!
主人公の日崎が好感の持てるキャラだというのは当然にせよ。拷問王・三影も嫌な奴ではあるのだけれどキャラとしては魅力的です。特高警察というと本当に怖くて悪役そのもの、というイメージでしたが。彼らにも彼らなりの正義や護るものがあったのかなあ、という気にさせられました。
機密である「カンナカムイ」を巡る陰謀には背筋が寒くなる思いでした。本当に、こんな戦争は二度と繰り返してはいけませんね。そして当然ながら日本は負けたわけですが。そこで終わったわけではなく、そこから始まったのだというように考えることもできるかな。読後感は清々しい印象でした。
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戦時中の北海道でアイヌの血を引く特高刑事の数奇な
運命を描く、ドラマティックなストーリーです。
ボリュームたっぷりで読み応えあります。
なんとなく映像として使われることを意識したような
ラストは、福井晴敏氏の小説に通じるものがあります。
読んでいて映像が飛び込んでくるような感覚が好きな
人にはたまらない一冊です。
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図書館で借りる.
一晩で読み切る.
網走刑務所の鉄格子を,味噌汁の塩分で錆びさせて脱走する話などは,同じNHKの歴史特集からヒントを得たことが伝わってくる.
舞台は戦時中であるが,そういう感じが全くしないのが,不思議.
それを考えると,手塚治虫のアドルフに告ぐは名作であろう.
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コーラスの先輩、H木さんから勧められた一冊。
民族とは何か、国家とは何か、人間とは何か。
様々な伏線を持った、特高警察が表に出て来る警察小説。
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最初の話は導入だと思いましたが、最後まで展開していく話でした。
どうなることかと、はらはらしながら読みましたが、最後は見事な終焉を迎えます。
巧みなストーリー展開です。
重厚なミステリです。
読ませる作家ですね。
一気読みしました。
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背表紙に書かれている通り本当に骨太のエンターテイメント。ミステリー、冒険、警察、民族、戦争、色々な要素満点で最高に面白い!
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うううーむ、またしても葉真中さんにやられたね、うむやられた。
終戦間際の北海道が舞台の、とてつもない「機密」をめぐる公安、憲兵、「スルク」の戦い。
ガダルカナル、アイヌ、朝鮮、そして国賊。平和な世であれば陥ることもない憎悪の嵐。けれどその憎悪の源がなんであるのか、それを思うと、これは過去の話でもフィクションでもなく、明日の日本なのかも、と薄らさむくなる。
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大戦末期の雰囲気、主人公初め登場人物の設定、日本軍のいい加減さ、展開、人間模様、謎解き、結末のどれも穴がない。
重層的な構成でいろいろな読み方ができ、読後も複雑な余韻が残る。
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途中でだれることなく、熱量をもったまま最後のページまで一気読み。ラストのページでは鳥肌が立った。冒険小説でありエンタメ。アイヌ出身の特高という特殊な立場も、どこか作られたようなキャラ設定だが、うまくマッチしていて、物語に引き込まれた。アイヌの文化にも興味を持った。
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終戦間際の北海道・室蘭。「北の特高」として恐れられた
北海道庁警察部特別警察課のアイヌ出身の刑事・日高八尋の周りで軍需工場の関係者が次々と不審な死を遂げる。捜査に加わった八尋は、「拷問王」の異名をとる先輩刑事・三影に濡れ衣を着せられ、網走刑務所に投獄される。
逼迫した戦況を一変させる軍事機密の兵器「カンナカムイ」を巡る謀略に巻き込まれた八尋は、「己の使命」を全うできるのか。
殺人事件をとっかかりに、戦争、強制連行、脱獄、アイヌの文化や風習を描いて、国家とは、民族とは、豊かさとはを問いかける重厚なエンターテインメント作品。
主人公の八尋を始め、同じアイヌの利市、朝鮮人の友・ヨンチュン、憲兵の御子柴、拷問王の三影に至るまで人物造形がうまくて、嫌な人物さえも印象深く、三影が自ら抱えた劣等感ゆえに拷問王になって行った過程すらも泣ける。
ラストの意外な展開、逃亡のハラハラドキドキ、国家・民族についての深い考察とバランスのよい作品でした
「案外、服みてえなもんかもしれねえよ、国だの民族だのってのはーー俺たちは服に着られてるわけじゃねえし、服のために生きてるわけじゃねえ。」
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1月-10。4.0点。
戦時中の北海道。アイヌ出身の特高刑事が主人公。
連続殺人事件が発生するが、軍が捜査し、警察を排除しようとする。
主人公も同じ特高の人間に、陥れられ網走刑務所へ。
面白かった。アイヌ・在日朝鮮人、終戦間近の日本と、テーマはてんこ盛りだが、ストーリーは無理なく一本道。
500頁超、一気読みした。
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満喫!テンポ良く、都合よく、予想を裏切りながら、あるいは予定調和に添いながら、猛スピードで物語は進行していきます。タイムラインの終点が1945年8月15日とわかっているので最後の加速度に興奮しました。ストーリー自体は軽やかな圧倒的なエンタテインメントなのですが、ただ物語のエレメントはアイヌ民族や朝鮮民族に対する差別とか、過酷な北海道の自然とか、特高とか憲兵とかの陰湿性とか、あるいは全体に溢れる暴力性とか、重いテーマばっかり。実は、この本を勧めてくれたのが「宝島」をリコメンドしてくれた友人なので、沖縄と対比される北海道固有の問題がモチーフかな、と身構えていたのですが、そういった粘度が高い読後感ではなく、サラッと読み終えることが出来ました。いい意味で裏切られましたし、物足りなくも感じました。読んだことはないけど、急にマンガ「ゴールデンカムイ」読みたくなりました。