紙の本
血のつながりが持つ意義とは。
2020/12/04 15:05
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は特別養子縁組を通して、家族の在り方を描いている。
と同時に、信頼することの大切さや意味をも描いていると感じた。
不妊治療や未成年者による望まぬ妊娠等の、命を預かることの難しさやそれに伴う苦悩を真正面から描いていた本作。
そこでは社会問題的な要素も浮き彫りになっていくのだが、個人的にそれ以上に問題だと感じたのは、周囲の人々の無神経さや理解不足である。
40歳を目前とした栗原夫婦に無神経な言葉を投げかける夫婦の両親。
片倉ひかりの考えや要望を聞かず、自らの考えを押し付け、臭い物に蓋をするといった対応に必死なひかりの両親。
また、ひかりの叔父がとった態度はあまりにも浅はかで愚かだ。
そんな栗原夫婦は「朝斗」の誕生により、長いトンネルから抜け出すことができ、幸せな日常を掴めた。
しかし一方で片倉ひかりは「朝斗」の誕生により、長いトンネルへと足を踏み入れることになる。
命の誕生がここまで人の人生の明暗を分けることになるとは思いもしなかった。
本作では栗原夫婦と片倉ひかりが徹底して対照的に描かれている。
血が繋がっていても自分の両親に信じられず、両親が掲げた教育方針から逸脱することを許されなかった、ひかり。
血は繋がっていなくとも、友人が怪我を負ったのは自分のせいではないと信じられた、朝斗。
いくら血が繋がっていようとも、そこに相手を信じようとする気持ちや思いやりが無ければ、そこでは望むような家族関係は築けない。
反対に血が繋がっていなくとも、そこに相手を信じようとする気持ちや思いやりがあれば、望むような家族関係を築くことが出来るのでないだろうか。
紙の本
「朝」 昏冥に射す陽光?
2020/10/30 10:56
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投稿者:uruuduki - この投稿者のレビュー一覧を見る
少女の「ひかり」という名前が、生き方の暗さに対して皮肉だ。対して、子供を特別養子縁組という方法で迎えた夫婦の真っ直ぐな生き方が、「暗」と「明」を分ける。
この話は「子供を返せ」と言われた時に「いいですよ」と答えていたら、成り立たない話だ。だが、人の情はそう容易く切れるものではない。
「血」は「水」より濃いと言う。血の繋がりを重視する人がいる一方で、生さぬ仲の子を深い愛情を以て育てる人もいる。ここでは後者だが、作者の辻村美月さんの設定で「それはそうだな」と共感を持てたのが、「子供に事実を告げる」 つまり告知をするということを選択している点だ。
これまで、実の親子ではないといった事情を告げずに脅迫されるといった話を読むたびに、初めから告げていたらと、ずっと考えていたので――。
現実にも、こういった事実はなるべく隠さない方が後のことを考えた時には良いように思う。誰から知らされるかということ、どうやって知ったかということで起こる問題の混乱は、多少なりとも避けられるのではないかと――。
そういった事を考えながら読んだが、子供を迎えた夫婦の話よりも、転落をしていく「ひかり」という少女が、闇を抜ける兆しに出合う方が話が濃かった。
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評価に迷った。☆5でも良かったかも。☆4.5と言ったところか。
幼くして子を授かり、生まれたばかりの我が子を養子縁組に出したひかりと、その子を養子にした佐都子の二人の人生。
特にひかりの章は涙なしでは読めない。
「広島のお母ちゃん」って呼んでもらえたことで、ひかりの人生が少しでも楽になれたのかな。
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一気読みした。最後は泣けてしまった。
育ての親夫婦と、生みの親の両親の対極さから、親になることの責任の重さを改めて感じた。
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ひかりの浅はかさにイライラしたり呆れながらも、朝斗くんの両親の優しさや毅然とした態度に救われました。
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不妊治療の末、「特別養子縁組」の制度によって子どもを迎えた夫婦と、生まれたばかりの我が子を託した少女、二人の視点から語られる物語。
不妊治療や望まない妊娠、養子縁組制度についてなど、社会問題にフォーカスした話だった。女性の生き方、母親になる、ということについて考えさせられる。
難局を乗り切って心温まる結末……なのだろうけど、実際にいまの社会が抱えている問題だけに、完璧なハッピーエンドとはいかない。自分のいる場所のすぐ傍にある社会の暗部が描かれていると思うと、とても怖かった。
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辻村深月だし、本屋大賞ノミネート作品だし、ってことで早速ゲット。本書のタイトルでもある最終章がもたらすカタルシスは、さすがって感じの納得の結末。ただ、色んな制度とかを説明したに過ぎないと思えてしまう第2章が、個人的にはどうしても蛇足に感じられてしまい、作品全体の評価に若干影響してしまった。
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この本を手に取る直前に、『特別』養子縁組という制度を知った事もあり、物凄い勢いで読み終えた。
離れているにせよ、一緒に暮らしているにせよ、どれだけの形の親子がいるんだろうなと改めて思った。
私にとって大切な本になりました。
結末は肩を撫で下ろしましたが、この先が読みたくてたまりません!
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ストーリーの魅せ方が上手い作家さんだなぁ、と思いました。少しだけ読むつもりが、どうしてこうなってしまったのか、気になって気になって、一気に全部読んでしまいました。
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本屋大賞2016年5位。特別養子縁組で子どもを授かった夫婦と子供を手放した母親の話。それぞれの人生の苦悩を丹念に描いていく。特に実の母親が出産後追い込まれていくのが辛すぎて途中でいやになる。イノセントデイズもこんな感じだったけど、辻村さんの方がさらにリアリティがあって感情移入のさせ方がうますぎる。断然きつい。同じシーンをそれぞれの女性の一人称視点で描き分けるのも、ありそうであんまりない手法。個性の書き分けだけでなく、感情をくっきり書き分ける技術が必要だけど、違和感なく鮮やかに描き切ってる。すごい。ラストシーンはびっくりするけど、なんだか救われた感がある。うまいと思う。
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人生って、思い通りにいかないよなぁ。
ひかりの人生がやるせなくて切なくて・・・
どうしようもなく堕ちてしまうのが悲しい。
佐都子は、いい「母」だな。
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こんなに人の気持ちや情景に寄り添える作家さんがいらっしゃったとは、、、伝える才能に嫉妬しました。未経験の想いがたくさんでしたが、共感し、涙があふれました。
たくさん女性に読んでもらいたい一冊です。
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読書の秋、ランキングと皆さんの評価を見て買ってみたが…。
子どもが出来ずに特別養子縁組制度を活用して子供を授かった夫婦の今と、意図せぬ妊娠で出来た子供を他人の手に渡さざるを得なかった女子中生・ひかりのその後。
子宝に恵まれず不妊治療まで行った夫婦の、縁組制度のことを知り養子を引き取るまでの過程や幼稚園に行くまで成長した子供との暮らしが描かれる前半。
調べたことを小説の型に嵌めていったようなところは感じるが、子供が出来ない夫婦の苦しみ、不妊治療の辛さや養子を引き取ってからの子育ての苦労が丁寧に描かれて、これはまあいい。
辛苦の果ての幸福の時に、突然産みの母が現れ、そして警察が訪ねて来る段になって、話はミステリーっぽくなっていくのかとも思ったが、豈図らんや。
ひかりを描くパートになると、彼女が妊娠してから堕ちていく過程や嘆き狂う家族の姿は、なんだかそこらから引っ張ってきた感じでありきたりと言うか陳腐と言うか…。
途中で読むの止めようか思いながらなんとか読んだが、最後のほうは斜め読み。
ラストで無理やり佳い話風に収まっちゃったけど、なんの捻りもないお話で、何を伝えたかったのでしょうという感じ。
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特別養子縁組で関わった、養母と実母を描いた物語。
実母であるひかりの生き様が後半を占めるのだが、本当に痛々しい。
彼女やその彼氏のあまりに無知な言動と思考に、正しい性教育の重要さを考えてしまう。
そのため、年齢設定もあるが、養母である佐都子の大人な対応がまるで聖母のように映る。
そして、二人の子供である朝斗は、文字通り太陽の光のように眩しい。
ラストはタイトルどおり、朝焼けに包まれ、希望に満ち溢れて終わる。おすすめ。
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比較的高齢で授かった一人息子の朝斗を含め、理想的な親子三人で日々を送る佐都子。トラブルにも親子の絆は揺るがず、前半の物語は収まる。
そんな佐都子のもとに一本の脅迫電話が入り、後半、もう一人の主人公ひかりの物語へとつながる。
最近、この著者が書く作品に性的な話題を扱う割合が増えて来ている。日常の感覚をうまくすくって感動的な物語に仕上げてきた作品群が好きだったので、安易(ではないのはわかっているが、頻度として)に性問題を絡めるのは「そうしないとドラマが作れない」ようになってしまったのか。
少々残念。