寒いのは嫌いだが
2018/12/08 16:43
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔の捕鯨船の過酷さとサスペンスを、全編背景が真っ暗な三流映画を見ているような感覚で読み進んでいける、非日常の刺激を味わいたいときに読みたい本。
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汚くて不快で登場人物も入れ込めないようなキャラばかりで何度か巻を置こうとしたが、100ページあたりから一気に面白くなってきた。殺人事件、大きな企て、活劇…。なかなかの冒険小説だった。
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何人かの人が指摘てるが、本当に残忍でエグく、これでもかというくらい欲の皮の突っ張った男がたくさん登場する。
久し振りに冒険小説を読めると期待して読みはじめたがはぐらかされた。感情移入出来る人物がいなく、主人公とシロクマの交流、後半部の別の?シロクマの追跡行くらいしか読みどころがなかった。
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時代と社会の持つ背景がよくわからず、主な乗組員のひと癖ふた癖も雰囲気くらいしか理解できず、あまりのめり込めなかった。
帯のあおりにはそうなの?と思い、カバーのあらすじ後半はそう言えるかもと思ったくらい。
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3.5
全編を通して「これでもか」と繰り返される
あらゆる形の暴力。
それは犯罪であり、時に文化であり、時に生存の為の連鎖、そして正義だったりする。
主人公・サムナーの、人として生きて行く事への葛藤はまだ理解が及ぶものの、その底に横たわる人生観は今ひとつ掴みきれなかった。
座右の書がホメーロスと聞いても、ホォーと言えるだけの知識もなく、その詩の一節を読んでもあまり琴線に触れる事のない私の感性が問題なのか?
そういえば、暴力描写を比較してみても、そのエグさは共に相当なものだけれど、日本のバイオレンス小説のそれとは明らかに異なるものを感じるのは、民族性の差なのだろうか。
叙事詩なるものは「韻文」とある。
その国の言葉のリズムそのものが最も重要なポイントなのだろうから、響かないのも当然かな・・?
時はエネルギーが鯨油から石油へと変わりゆく19世紀中頃。
インドの戦闘で負傷を負った上、上官の裏切りにより汚名を着せられ解雇された医師・サムナーは、北氷洋で操業する捕鯨船・ヴォランティア号に船医として乗り込む。
PTSDに苦しみ、日常的にアヘンを摂取するサムナー。
ある日、医務室を訪れた給仕係の少年・ハンナを診察すると、肛門周辺に明らかな暴行の痕跡を発見する。
ハンナの黙秘により犯人の捜索が難航する中、樽の中からハンナの惨殺死体が発見される。
船員達の猜疑心が生み出す不穏な空気の中、一人の犯人が特定されるが・・
真犯人の確保に伴い、北へ北へと不可思議な操船を続けた船長のブラウンリー が殺され、一等航海士のキャベンディッシュが後を引き継ぐが、頑として北上を止めない。
やがて氷に行く手を阻まれたヴォランティア号は・・
パトリック・サムナー
アイルランド出身の元・軍医
ヘンリー・ドラックス
凶暴な銛打ち
オットー ドイツ人の銛打ち
思索好き
バクスター 船主
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「北極海を目指す捕鯨船、アヘン中毒の船医、いわくつきの船長、凶暴な銛打ちなどの曲者ぞろい」という状況から想像した展開は裏切られ、「サバイバルサスペンス」から予想される結果からどんどん離れて行く。
出来過ぎの感もあるが、あれよあれよの一気読みでした。
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かなり、エグいです。暴力と性描写と血みどろの狩猟が数回あり。サバイバル好きで、それらにあるていど免疫あるかたなら、じゅうぶん楽しめると思います。
おびに「現代の白鯨」と書いてあり、「白鯨」読んだことないのですが、問題なくおもしろかった。読んだことあるかたなら、比べたりしてもっと楽しめるのかも。
読みどころは、主人公たちの状況がどんどん悪くなるあたり。そして圧倒的な自然にかこまれたなかでの動物との命がけの闘い。描写が迫真でゾクゾクした!
過酷なものがたりですが、後味はけっして悪くない。全体のトーンが暗くなく、力強い。骨太のエンタメ小説です。
星一つ減らしたのは、もうひとひねり、サプライズがあればなあというのと、主人公が読んでいる本〔ギリシア神話か?〕と主人公の文化的背景が、いまひとつピンとこなかったので。
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暴力描写が多いがもう一歩踏み込んでほしかったともおもう、けど獣との闘いなんかはわりと細かく書き込まれてて読んでてたのしかった。
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不穏で波乱に満ちた流れにのって一気に読んだ。
面白かったけど登場人物の半数が下劣で下品。もう少し酷かったら読むのを諦めていたと思う。
軍役によって道徳を踏みにじられたサムナー医師の、それでもちらちら顔を覗かせる同情心が唯一の救い。
この先もクマに食べられませんように。
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120ページほどまで何度読むのをやめようとおもったことか。
それでもそこからが面白くって。
彼らが命を懸けた捕鯨。捕鯨が反対される現代ですが、捕鯨にも歴史があり乱獲や密猟を除いては、頭ごなしに否定することも無いのかなと思ったりもしました。
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イギリスの作家「イアン・マグワイア」の長篇ミステリ作品『北氷洋―The North Water―(原題:The North Water)』を読みました。
ここのところ、イギリスの作家の作品が続いていますね。
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呪われた航海で生き残るのは誰だ!?
圧倒的な筆力で描かれるサバイバル・サスペンス。
19世紀半ば、英国。
北極海を目指し捕鯨船ヴォランティア号が出港した。
乗組員は、アヘン中毒の船医「サムナー」、かつて航海で大勢の船員を犠牲にした船長「ブラウンリー」、そして凶暴な銛打ちの「ドラックス」ら曲者揃い。
やがて船内で猟奇殺人が起きるが、それは過酷な運命の序章に過ぎなかった――。
想像を超える展開と圧倒的な筆力で、人間の本性と自然の脅威を描き尽くすサバイバル・サスペンス。
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2016年(平成28年)に発表された作品、、、
19世紀の北極圏の海上で鯨油採集を業務としていた捕鯨船を物語の舞台とした、海洋冒険小説であり、船内での殺人事件を巡るサスペンスと謎解き、生き残りをかけたサバイバル小説の要素が混然一体となった作品でした。
1859年春のラーウィック港、北極圏の海上で鯨油採集を業務としている捕鯨船ヴォランティア号の出港前、乗組員で腕利き銛打ち「ヘンリー・ドラックス」は、泥酔し、港町の酒場でたまたま出会った男や奇妙な色気を放つ少年を、いずれも大した理由もないのに殺害する、、、
彼は何の屈託もなく機械のように生身の人間を殺すことができる男だった… 一方、船医として雇われた「パトリック・サムナー」は、英国領インドでの戦争引揚者で何か秘密を抱え、しばしば阿片チンキを吸っては現実から逃避し、忘我の境地をさまよう。
インテリである「サムナー」は気の荒い船員と一定の距離をたもち、時折船室で自分だけの世界に閉じこもる… 他の乗員たちも、いわくありげな人物が顔を連ねていた、、、
船長は3年前の航海でパーシヴァル号を沈没させてしまった不運な男「ブラウンリー」で、船主「ジェイコブ・バクスター」は、ある密約のもとにツキに見放された呪われた男を雇用する… 航海士も評判の悪い男で、航海中に「ドラックス」とともに「サムナー」の秘密を握り、機会をうかがって亡き者にしようとする。
こうしてそれぞれの思惑をかかえながら捕鯨船は鯨をもとめて北上するが、嵐に遭遇し、氷塊の圧力で船が沈没してしまう… そして、人智を超えた自然の猛威が、この航海に対して抱えていた船員たちの各々の思惑を押しつぶし、彼らを無力な単なる一人の人間に差し戻し、北極の氷原の上に投げ出す、、、
航海中にも殺人に手を染め地下倉に幽閉されていた「ドラックス」は、これを機会に氷の向こうに姿を消す… 一方、「サムナー」らほかの船員は生き残りをかけて別の捕鯨船を探すが、それもうまくいかず、やがて死の影が忍び寄ってくる………。
色んな要素が入り混じっていましたが、生き残りをかけたサバイバル小説、冒険小説… という要素が強い印象でしたね、、、
最も印象に残ったのは「サムナー」が生きるた���に北極熊を狩るシーン… その迫力には思わず息を呑みましたね。
そして、クライマックスは、北極圏から脱出してイギリスに帰国した「サムナー」が「バクスター」や「ドラックス」との決着をつける終盤の展開… 大自然との闘いから、人と人との闘い、、、
まっ、納得できる幕引きだったので良かった… 淡々とした描写なのですが、ぐいぐいと引き込まれる魅力があって、集中して読めましたね。
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1859年、イングランド。船医のサムナーが乗り込んだ捕鯨船ヴォランティア号には、いわくつきのクルーが集まっていた。前の船を沈没させた船長、野心家の航海士、スウェーデンボリ崇拝者のドイツ人、そして得体の知れない銛打ちの男。実はサムナー自身も、従軍したインドでの苦い過去を隠していた。そして遂に、北氷洋を目指す船上で殺人が起こる。捕鯨ビジネスの斜陽期を舞台にした骨太なサバイバル小説。
前半はまっすぐ『白鯨』にオマージュを捧げた海洋ハードボイルドだと思って読んだ。露悪的なまでに血と排泄物と硝煙の匂いまみれでザラついた文体が魅力的(ヘミングウェイ訳者に依頼したのが大正解だと思う)だが、殺人の真相は読者には最初から明らかだし、さほど引っ張りもしない。サムナーが戦争と捕鯨船の地獄ぶりを比較する辺りが面白く、このパートが終わってしばらく中弛みを感じた。
船が沈み、船員たちが流氷の上に取り残されてからは展開の予想がつかなくなり、俄然面白い。特にドラックスの悪運の強さにはつい惚れ惚れしてしまう。この小説、「この男を見よ」という一行目と共に最初に登場するのがドラックスなのもあり、正直サムナーよりドラックスが主人公のピカレスクロマンという性格が強い。
だがドラックスが犬橇で去ってしまうと、不思議なかたちでサムナーが主人公の座に舞い戻ってくる。白熊との奇妙な追走劇の末、サムナーは死骸の腹を裂いて内臓に手を差し入れ、温かな血を飲み、最後には着ぐるみのようにその体内に入っていく。なぜ彼がそんなことをするのかは一切説明されない。この熊狩りの場面は幻想的で、文章にも張り詰めた美しさがある。
その後は司祭も登場し、宗教小説っぽくなってくる(そういえば先に引いた冒頭の「この男を見よ」は聖書の「エッケ・ホモ」の引用だろうけど、なぜそれをドラックスの紹介に使ったんだろう)。けれど、司祭館でそこそこにハートフルな日々を過ごした"何者でもない"サムナーがもう一度イングランドに戻ったとき、ドラックスにも劣らない残酷な復讐鬼へと変貌を遂げるのである。
ここがこの小説の面白いところだ。サムナーは独白のなかで自己正当化をしないので、行動原理がはっきりしないところもある。繰り返し見た過去の夢や、パニーとの行為に対する罪悪感が彼をドラックスに近づけたように思える。普通、終盤に聖職者との心の交流を描いておいてこんなラストスパートかけないと思う(笑)。それだけに、深淵を覗いてしまった人の不可逆性がどうしようもなく寂しいラストだ。
そして本書が捕鯨船を描きながらも、鯨ではなく白熊をど真ん中に据えた小説だったということも最後にはっきりする。序盤から振り返ってみれば、薬屋との会話にでてくる白熊の剥製。北氷洋でドラックスたちが捕らえた白熊の親子。サムナーが血を飲み、皮を着た白熊。最後に動物園の白熊。しかも、サムナーが行き着いたベルリンは熊が語源という伝説があり、紋章にも熊を掲げている都市である。ということは、やはりサムナーは白熊の代理として、流氷の世界の均衡を壊してしまった西洋の資本主義に復讐したのだ、というエコロジー小説として読み解くこともできる作品なのかもしれない。