しもきたの本屋さん
2019/03/24 21:31
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さな本屋さんに集まる一癖二癖ある常連さんたちが常連の一人久美ちゃんの幸せのために奮闘。
ちょっと話がどこに向かってるのかわからない展開ですが、予想しにくいだけに一気に読んでしまいました。
言葉の選び方やセリフ回しが凄く面白くて笑ってしまいました。
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下北沢の本屋の不思議な常連さんを中心に様々な人間模様が描かれる。
後半桃子さんの運転とオペラと獅子虎さんと…混乱を極めるところはなかなかスピード感があって引き込まれた。
獅子虎さんの生い立ちに納得させられたり、由良さんの悪趣味がスパイスを効かせていたり、なかなか面白い作品だと思った。
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タイトルがどこで効いてくるのかと思っていると、殆ど最後だった。
あんずよ
花着け
地ぞ早やに輝やけ
あんずよ花着け
あんずよ燃えよ
ああ あんずよ花着け ー室生犀星
「わしはなんの報告があるとも、思てへんかった。久美子がふらーと遊びに来てくれただけで嬉しいんや」
久美子の義父の言葉を読んだ時、朝日新聞で紹介されていたのを思い出した。
温かさが滲み出したような、想いが隠せないようなフレーズ。
私なら由良は許せないし、事故を起こしそうな桃子に運転はさせないだろうし、ましてや初対面の父親を結婚相手に会わせること(人物としても普通じゃないし)も断固やらないけど、それを少しずつ許容することで想定外の幸せも運ばれてくる。そしてクスっという笑いも。
、、フィクションとはいえ、考えさせられるなぁ。
でもこんな温かみに溢れた人が多いのに、みんな、自分は友達が少ない、という。何だろうな。
最後の獅子虎のセリフは、予想はしてたものの締めとしてイイ重しになっている。
久美子との出会いとその成長を追う書店店主の目線を中心に書かれた物語。途中、会話形式で進む箇所は冗長に感じられたけど、人の温かさがじんわり伝わってくる本だった。
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オサムさんと桃子さん夫妻のやりとりに何度も笑ってしまった。
最後のある人物の人生についての部分を読み始めて、これはいるのだろうか、と思いつつ読み進めていって最後まで読み終わるとこれがあるかないかだとまったく違うものになるんだ、と思った。
「父性」によって子どもたちが右往左往し、悩みを抱えてそれをどう昇華するか受け止めていくの話でもあるし、書店・フィクショネスという場がコミュニティとして機能することで血縁でもないなんとなくの顔見知りの関係が、誰かにとっての居場所だったり交流の場所になるというのも作品の中に描かれていた。
場所というのは本当に大事だし、そこでできるコミュニティというものも誰かにとっては大事なもの。ただ、場所はいつかなくなるし、ずっと同じということはない。コミュニティも続きながらも変化しいつか終わる。
この小説を読むと自分が前にいた居場所のことや、今いる居場所について考えたり思ったりすると思う。そこには誰がいて、どういうことがあったのか、なんていうことも。
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ほのぼのとした、まるでおとぎ話でも語るような物語が大団円を迎えたあとの裏話。
この物語があることですべてがビシッと締まる。
懸命に幸せになろうとする人たちの物語だ。
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著者らしい良い話。この著者は実生活に寄り添った話の方が良く、本作も自信が経営する書店が舞台のモデルになっている。面白いのだけれど、不思議な人々がたくさん出てきて、やや消化不良との感じもある。最終章はちょっと余計か?他の人の分もあっても良かったかも。
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藤谷さんの小説を読むと、「こんな生き方をしたいな」とか「こんな人になりたいな」と思うことがある。
それは、人生においてのいわゆる勝ち組であったり、絶対的な権力の持ち主であったり、絶世の美女であったり、なんてのとは全く違う、なんていうか、とても丁寧な生き方というか、自分のそばにいる大切な人をきちんと大切にする人生、というか。
ちょっと不器用で、ちょっと変わり者で、でも自分の足でしっかり歩いている、その自分の近くにいる誰かをきちんと受け入れる、そんな登場人物たちにこっそりとあこがれてしまう。
今作も小さな世界でちいさな幸せのために一生懸命になっている人たちの小さなおせっかいと小さな思いやりに読後こころが茜色に染まった。明日きっといい日になる。そんな思いでページを閉じた。
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下北沢の書店を営むオサムは小説を書く。お店に来てくれている久美ちゃんについて。久美ちゃんは結婚をするがまもなく不幸にあい姿を消す。お店の別の客とともに10年後、お店に訪れる。久美ちゃんがマサキくんという男性と結ばれるまでを描きます。そしてマサキくんのお父さんについての章もあり。オサムさんの語り口調もおかしく、楽しく読めました。登場人物はどれも癖のある人たちで物語を盛り上げています。みんな久美ちゃんを応援しているんだという暖かさが伝わってきました。なんだろなあ、本全体で温かさを感じた。お父さんの獅子虎は良かったなあ。カルメンが素敵です。藤谷さんの他の本読みたくなった。
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下北沢にあるこだわりの本屋「フィクショネス」を舞台に本屋の主人オサムさん、妻の桃子さんと、一癖も二癖もある常連たちの織りなす優しさ溢れるそれでいて、結構ディープな物語。
ーーありふれているように見える出来事には、それを支える長い年月と、幾人かの人間がいて、その人間というのは一人ひとりが、独自の心やおもむき、過去や精神の疵、喜びや歪みを抱えているのだーー
という「前口上」どおり、みんなのアイドルだった「久美ちゃん」を中心に、彼女が長い苦労の末に結ばれる「マサキくん」、子供の頃マサキくんを棄てた父「獅子虎」、そして彼らを取り巻くすべての「ぽんこつたち」の「独自の心」を描く群像劇でもある。
中心にいるきれいな心を持った人物を取り巻く、優しい人たちの物語という意味で「世界で一番美しい」を彷彿とさせる。「世界で・・・」で雪駄くんに対してひたすら悪意をぶつけた津々見に匹敵する由良さんは、相当嫌な人物だけど、この物語では彼が最後に改心する場面にグッとくる。
笑って、やきもきして、ホロリと涙して、最後に来る大団円。よかったね~と思った後に「え、まだあるの?」といった風情で書かれたエピソードも「何これ、必要?」と思いながらも読み進めると、最後の最後で「そうだったのか~!」とじわっと涙が・・・
とにもかくにも、藤谷さんの明るくて、楽しくて、それでいて文学的な物語は年始に読むにピッタリの作品でした。
あ~楽しかった。
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下北沢。本屋。死別。家族。結婚。
下北沢の書店主が綴った物語。
久美ちゃん達に対する由良の仕打ちとか、久美ちゃんと父親の関係とか、カッとなって切って捨ててしまいたくなるけど、決してそうしないのすごいな。
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メロドラマ的で浪花節的で、コメディー要素も十分盛り込まれていて。最近では非常に珍しいタイプの小説だった気がします。そして、そこがこの小説のとてもいいところで、心惹かれる部分でありました。
天真爛漫二十歳そこそこの少女が、悲しい出来事を乗り越えようともがく十数年。いつしか年を重ね気がつけば一人ぼっちで。でも、そこで筆者がメタ的手法で登場する下北沢の冴えない書店「フィクショニア」で、出会った癖とアクの強い人々の支えで次第に人生の勢いを取り戻していく物語であります。
悪意を悪意として書きながら、人間賛歌へ昇華していくあたりは僕にとっては胸のすくような読書でした。嫌な奴がぎっちり嫌な奴に書かれているのに誰も憎めない。うーんなんとも味わい深い。
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これをどんな小説だと言ったらいいんだろうか。
終章の方に「ぽんこつたち」という表現があるが、出てくる人物すべてがぽんこつであるといっても過言ではない。というか、人間ってすべてぽんこつなのかもしれない。
小さな本屋にやってくる本を買わない久美ちゃんが主軸となっているのだが、久美ちゃんかわいい。最後までかわいい。
ぽんこつたちが織り成す、日常ドラマ……のはずなんだけれども、どうしてこんなにハラハラどきどきさせられるのだろう。胸が躍る。
最初から最後まで、語り手の言葉ににやにやさせられる本だった。おススメ。
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なぜこの本をブクログの本棚に加えたのか、忘れてしまったが、タイトルに惹かれ(文学的知識が浅過ぎる為、これが室生犀星の詩からとったものだと全く知らなかった)読んでみたが、正直、予想外に面白かったし、深く心に刺さった。
初めて読んだ作家さんだったが、自分の読書の幅の狭さを改めて思い知った。
ちょっと西加奈子さんの描く人間像を思い出した。割とボリュームのある話だと思うが、一気に読んでしまい、家のことはほったらかし…。2019.8.3
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いやあ、面白かった。
簡単に言えば個性的でかわいい女の子が悲しい出来事を経験して中年になり、苦労してきた若者と恋愛して結ばれるって話で、あらすじだけならごく普通で、なんでこんなに長い小説になるの?と言われそうだけど、必要にして十分な長さなのだ。読み出したら止まらない。
登場人物全てが生き生きとして魅力的な上、語りが巧み。本当に上手い。読んでいて、登場人物たち、特に久美ちゃんとマサキくんを応援せずにはいられない。
二人が人間としてちゃんとしていながら、過去のせいで必要以上に世間に冷遇されるのが切ない。そんな中でも二人がおずおずとお互いを知り合い、好きになっていく様子が歯がゆいくらい純情。恋愛小説に特に興味はない私でもグッときた。
そして何度も言うがキャラクター造形の巧さね。特に獅子虎。こんなに汚くてとんでもない、それでいて愛すべきじいさんは滅多にいないよ。
中年になって初めて会社勤めした久美ちゃんがエクセルと格闘するシーン、みんながミラ・ジーノに乗り込んで獅子虎に会いに行くシーンは笑える。
上手い脚本で映画にならないかな。
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下北沢の本屋「フィクショネス」に集う個性豊かな面々の人生模様が描かれる。
久美ちゃんが幸せを模索する人生が中心となる話だけど、その裏には見えない物語がいくつも同時進行している。
最終章の獅子虎のエピソードがよかった。ウェルニッケ脳症を患っていたとは。そんな彼でも世界を背負っていた。人は誰でも世界の一部を背負って何か役割を持ってるんだとこの本に教えられたようで、自分の人生について前向きな気持ちになった。