現実は虚構を超える
2019/01/20 18:15
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投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は様々な方面からホワイトハウスの混乱が眺められる。「トランプ」という一人の男の異常性、時には越権行為とも取れる行動で大統領を制御する秘書官の権能、ホワイトハウスのスタッフに求められる能力等、複眼的な視野からホワイトハウスを眺め、トランプという特異なパーソナリティの齎す災害が活写される。
思い付きと異様なまでの自己顕示欲を持つ一人の男によって超大国アメリカはどこへ向かうのか。「トランプのアメリカ」の行く末を考える上で非常に有益な視座を与えてくれる稀有な一冊である。
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トランプが一国の、しかも超大国の舵取りをするにはまったくふさわしくなく、危険満載な存在であることは改めて理解できた。しかし、この本で注目したいのは、そうしたクレイジーをなだめ、なんとか国家としての正統性を逸脱しないようにと心を砕く周囲の人間たちの姿だ。自分たちが忠誠を尽くすべきは現在の大統領でなく、「より高い忠誠」の対象である米国そのものである、と言うことだろう。ここが、中心人物への忖度を繰り返して恥ずることのないこの国の政権周囲の人間達と決定的に異なることだ。トランプは自分への忠誠を人々に求める。しかし多くの高官は(例外はもちろんいるが)、職務に対して忠誠を尽くすのである。
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本書を読んでいる途中でまたひとり、トランプ政権から人が去って
行くことが発表された。ジョン・ケリー首席補佐官が年末までに
辞任する。
辞任というより更迭かもな。政権発足後から側近の誰もが自分の
考えを大統領に吹き込み、娘のイヴァンカとその婿であるクシュ
ナーは家族であることを特権のように使う。政治経験もないのに。
秩序も規律もなく、カオスと化したホワイトハウスを正常化しよう
としたケリー氏の姿は本書の中でも涙ぐましい努力だった。でも、
結局一番の障害はトランプ大統領本人なんだものな。
こうなって来ると次はマティス国防長官が政権を去る日も近いかも
しれない。ティラーソン前国務長官辞任後、唯一のブレーキ役に
なっていたマティス国防長官が去ってしまったら、もう誰も大統領
の暴走を止められないかもしれない。それどころか、暴走に拍車を
かける人間ばかりが側近として残りそうだ。
マイケル・ウォルフ『炎と怒り』を読んだ時も思ったが、ホワイト
ハウスの上級スタッフは、単なる思い付きを最高のアイデアだと
信じ込んでしまう大統領に相当に振り回されている。
そうして、大統領が軽率な行動を取らないよう、執務デスクから
署名しようとした文書や草稿をこっそり持ち去っていた秘書官の
努力に敬意を表したい。
集中力が持続できない、語彙が貧弱、自分が思い込んだこと以外は
すべて「でたらめ」だと言い切る、政治上の手続きを理解しない、
ブリーフィングの資料にさえ目を通さない、自分の間違いは絶対
に認めないし、過去の発言はその時の気分でなかったことになる。
「あんたはクソッたれの嘘つきだ」。
トランプ大統領の弁護士が辞任する際、本人に向かってこそ言わな
かったが、胸にしまい込んだ言葉。大統領の元を去って行った人
たちの多くが、同じような思いを抱ていたのではないだろうか。
これが世界唯一の強大国の大統領の現実なんだよな。コメディ映画
のあらすじだったらどんなによかっただろう。あ、任期終了後に
映画化したら面白そうだけど、怒るだろうな、大統領。
どうしようもない大統領だけれど、シリアのアサド政権によって
子供たちが殺戮されていることに心を痛めている様子には彼の
違う一面が見られてよかった。
でもな、アメリカ国内では移民親子引き離し政策という愚策を
犯しているんだよな。メラニア夫人からの批判もあって、早々に
停止はしたが、今後のことは分からない。
何しろ政策全般が大統領の思い付きと、イヴァンカやクシュナーに
吹き込まれたことで決まってしまうのだから。
本書では政権発足後の約1年のごたごたを関係者の証言から構成
している。トランプ大統領の任期中、あとどれだけの人事の交代
があるのだろう。
次にアメリカ大統領になる人は、トランプ大統領が引っ掻き回した
ことの尻ぬぐいが大変だろうな。お気の毒な気がする。
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FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実。ボブ・ウッドワード先生の著書。優れたビジネスマン、優れた経営者が、優れた政治家、優れた大統領になるとは限らない。直観的な思いつきや閃きでは政治は上手くいかないし、自信満々なのは良いけれど自信過剰で権力を振りかざした高圧的態度で恐怖政治をしてしまっては庶民の心は掴めない。
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アメリカの政治についてそれほど詳しくないものの、自分の思い込みで政策を決めようとする姿や、政策の話よりゴルフ中継を優先する姿に背筋が凍りついた。
それと同時に、終わった話を何度も蒸し返されることが、どれほどスタッフの精神にダメージを与えているかを考えると、直接関わりはないけれどいたたまれない気持ちになった。
残りの任期が無事に終わること、そして、再選されないことを切に願う。
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率直に言えば、本書を読んで何かドナルド・トランプという人間について新たな洞察が得られたかといういえば、答えはNoである。ただし、いわゆる”鳥頭”であるドナルド
・トランプの狂気の沙汰を食い止めるために、周囲が繰り広げた官僚的反逆は、究極のスラップスティックとして映る。
例えば、韓国との軍事同盟を破棄しようとするドナルド・トランプを止めるために、こっそりと草案の文書を捨てようとする周囲の努力は涙ぐましい。”鳥頭”たなるドナルド・トランプにとって、目につく書類がなければ、その問題を思い出すことはないからだ。
そういう点で関心したのは、就任後、初の軍事作戦で亡くなった兵士の家族に向けた言葉であった。周囲が作成した兵士のプロファイルには書かれていない内容を彼は家族に向かって話す。それは、その兵士の活躍や勇敢さを示すフェイクエピソードであり、家族が聞きたかった内容そのものである。どんな場面であろうと、聴衆が聞きたいと思っていることを即興的に語れること。この一転に彼の唯一の政治的才能が宿っている。
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全編ブラックジョークのような一冊。けれども、対象が対象なだけにさすがに笑えない(笑うしかない)。この人は何のために大統領になろうと思ったのだろうか?理解不能。
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腹心をクビにしたり、様々なことが日々起こっているかの国の政情であるが、うちらの国と大きく違うのが、権力に対する反対意見も、かなり自由に奔放に発信されているということだと、さいきんとみに感じる。
日本だと、かなり特殊な人や組織でないと発しないような意見を、御腹痛の人であったり、メジャーな一般紙の記者であったり、芸能人であったりスポーツ選手が真剣に表明したりする。
それはやっぱり健全で素晴らしいことやと思う。
そして、それは誰かが作ってくれた環境ではなくて、自分たちで勝ち取り守ってきたものなんだろうとも。
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「くそったれの嘘つき」という表現で本編が終わっているので、著者が一番書きたかったのはそれなのだろうと思う。
一方で、本書は、米国におけるエスタブリッシュメントと異端児との相克とも読めるし、これまでになく混乱を極める米国行政府とも読める。
トランプ政権に対する評価はおそらく十年以上先に決まるのだろうが、その部分を横に置けば、政界のプロたちに囲まれながら孤軍奮闘するトランプ氏という構図が際立ってしまうのも確かだ。
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米国のトランプ政権の舞台裏を綿密なインタヴューで赤裸々に明らかにした。ウォーターゲート事件をスクープした若手記者の一人だった著者は現在もワシントン・ポスト紙で副編集長をしている。トランプ政権とはなんという政権なのだろうか。これは一人トランプ大統領の資質によっているのだろう。世界の超大国の大統領がこのような勘による政権操縦をしているなんて!
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トランプ大統領の発言や行動は、本当は深い思慮や意図があってのことなのだろと、少しは期待していたのだが・・・。
こういう人物が国のトップになれるなんてどうなってるんだと思ったが、よく考えてみると色々なところのトップってこんな感じの人ですね。
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就任以来、様々な政治・経済・外交問題などに対するトランプ大統領の言動を、直接関わったり目撃した人々への数百時間のインタビューをもとに再現。大統領令に署名するから命令書を作成しろとトランプがいい、秘書官や側近が法的権限がありませんといさめる場面が繰り返されている。
個人の暴走を抑える側近多数による仕組みと捉えるべきか、簡単には変えられない盤石のシステムというべきなのか、何が良くて何が悪いのか、わからないです。
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こういう人材でもアメリカ合衆国大統領を務められることがよくわかった。その下のスタッフの苦労は半端ないと思うが。
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大統領の陰謀の作者でもあるワシントンポスト記者・ボブ・ウッドワードのトランプ政権内幕本。
よくこんな政権内部のやりとりとかが克明に描けなるなと感心してしまう。この本に出てくる閣僚はその後もどんどん変わっていってあまり残ってはいない。混乱した状況は続いていて貿易戦争まっただなか。でもトランプじゃなかったら起きなかった事象で怖いものみたさ的には楽しみな面もある。なんだかんだトランプを軌道修正している人たちもアメリカにはたくさんいるんじゃなかいかと思っている
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徹底的なインタビュー取材からそこにいるかのように書かれている。
おそらくほぼ事実だろうとした上で、
今のアメリカ政府の政策決定がこんなひどい状況だというのが恐ろしい。
従来の政策決定が何も決められない何も変わらないと言うのはその通りかもしれないが、世界最強の最大の影響力を持った核を持っている国が大失敗をしない大損害を与えないと言う点で防波堤にもなっていた。
いまや何をしてかすか分からないどんな大惨事が起こるか分からないと言う状況になっている。
ここに書かれているような状況は本当に恐ろしいと思う。