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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日清・日露戦争や日英同盟、韓国併合などに深く関わった小村寿太郎の評伝。過剰に持ち上げるわけでもなく、賛否が分かれる点についてはどちらも紹介しつつ、慎重に判断を避け、読者に判断をゆだねている気がする。読みやすさを意識して書かれていながら、外交関係の資料も適宜引用している。
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偉大なる「ねずみ公使」の真実
幕末に結んだ欧米列強との不平等条約の改正を目指し、一九〇〇年代に日英同盟、日露戦争、韓国併合を推進した外相・小村寿太郎。日向国飫肥(おび)藩の下級藩士に生まれた小村は、病弱で一五〇センチに満たない身長、非藩閥出身と恵まれない出自ながら、第一回文部省留学生としてハーバード大学に留学。抜群の語学力と高い交渉能力を身につけ、日本を「一等国」に引き上げた。帝国主義と国際協調の間を巧みに動いた外政家の真実。
序 章 二つの視角
第一章 維新の激動のなかで
第二章 外務省入省 官僚への転身
第三章 日清戦争の勃発 駐清・駐朝公使時代
第四章 「ねずみ公使」として 義和団事件への対応
第五章 日英同盟と日露戦争 一九〇一年、外相就任
第六章 戦時外交と大陸進出 「満州問題」の発生
第七章 同盟国の外交官 駐英大使として
第八章 米中の狭間で 第二次外相時代
終 章 小村外交とは 帝国主義外交下の権力政治
小村寿太郎というとポーツマスの旗。日露戦争の講和条約を結ぶため全権大使として活躍した事が思い出されるが、それ以外は印象が薄い。
日露戦争が終わった後に、あっさりと死んでしまった印象が強いが、本書を読むとその事績がわかる。
アメリカ留学後に、司法省に入省していた事は知らなかった。外務省に転じた後、陸奥宗光に見出され飛躍のきっかけをつかむとするが、本書を読んでもいまいち解りずらい。本書を読んでもさほど優遇されているようにも思えない。本書でも陸奥派三羽ガラスとして、原敬、加藤高明、林董をあげている。小村は翻訳局長から一等書記官を経て駐清臨時代理公使となる。
小村は閑職であることを利用して猛勉強に励むが、朝鮮の甲牛農民戦争をきっかけに清国と対峙することになる。日清開戦により帰国するが、戦地の民政庁長官に就任し、その手腕を山県・桂に評価される。仕事ぶりを評価された小村は、政務局長に就任し出世コースに乗るのである。
本省での活躍に対し公使としての小村は、非社交的生活を続け評判が良くない。小村が本領を発揮するのは乱世にあると言える。
小村の評価が分かれるのは「桂・ハリマン協定」の破棄である。南満州鉄道の日米共同経営が実現していれば、その後の日米対立は避けられたという考え方は大変魅力的であるし、私も小村の失策と考えていたが、著者は協定により満州で対立を避けたとしても朝鮮をめぐって日米衝突を早める危険性があったと指摘している。一考に値する見方だと思う。
小村は日露講和後6年後に病死するが、その間も枢密顧問官、駐英大使、外相として活躍する。日露講和というハイライトからみると地味な晩年であるが、第二次外相時には韓国併合を主導している。
不満な点もある。読み易さを重視したため典拠を示していない事は残念である。また、小村に対する見方が甘い気もする。
本書は小村寿太郎の評伝として貴重な一冊であり、小村を通して日本外交(日英同盟を含めた列強との交渉)を知る事が出来るのが面白い。
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小村は翻訳局で地道に仕事をこなしてきて卓越した語学力や豊かな知識、強い精神力という武器を身に着けた。出世の遅れていた彼がのちに急速な勢いで外相になるのは、この雌伏の時期の遺産が大きかった。
初めての外国勤務が清国だった小村は昼も夜も暇さえあれば本ばかり読んで知識を吸収しようとしていた。
清国の王妃を自国の公使が殺害する事件が起きても小村は冷徹に対応した。リアリストで帝国主義者の王道で小村のポリシーはその後もぶれない。
韓国支配の急先鋒が小村。
小村は読書と勉強熱心だったが、外交官に必要な社交性はなかった。帝国主義外交を徹底していた。
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この何とも言えない「平凡さ」が小村寿太郎なのかな。平凡だが優秀な外交官が残した「業績」が日韓併合。小村の伝記はほとんどないと思うので、興味のある人はぜひ。興味のない人にはつまらないと思います……。
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片山慶隆『小村寿太郎』。
日露戦争時の外務大臣でもあった小村寿太郎の伝記的な本です。
名前だけは知ってるし、まあ業績もある程度は知ってるけど実態は知らないという感じの人だったので、新書で出てくれた事はとても嬉しかったです。
内容も読みやすいし…たまに「あれ?」ってなる事もありましたが^^;
特に高宗のところですが…私の勘違いかなあ…
ただ、著者の略歴見ましたが、若いですね…いや、悪い意味ではなく。
ただ、人物史って研究年数重ねただけ愛が増していく感じがするので(笑)、今後が一番楽しみです。
取り敢えず、外交官のくせに引き籠りなところが好きになりました。
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公使、外相として日清戦争、日英同盟、日露戦争、韓国併合に
関わり、指揮した小村寿太郎を分かりやすく描いた良書。
当時の外交方針、国際環境が理解しやすく
1900年前後の外交史を知るにはちょうどいい。
小村自身の生活ぶりにも触れており、興味をそそる。
勉学、読書によって身をたてたものの、
人付き合いがさほど好きではなかったために、
平時の公使としては不人気であった点などは、
小村の人柄を感じさせ面白い。
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日向飫肥藩出身で、明治時代の外交官かつ外相を務めた小村寿太郎。教科書的には関税自主権の回復をした人物だが、外交官として日清戦争、日露戦争、日英同盟、韓国併合等、「坂の上の雲」の時代における日本の近代化と近代史の重要な局面にも関わった。欧米列強に追いつき、帝国主義のもと朝鮮半島や満州に進出する時代だった。
桂太郎内閣での外相就任の他、公使、大使として清国、朝鮮、ロシア、アメリカ、イギリスに赴任。赴任する国についての勉強は欠かさなかった。
祖母の薫陶を受け、幼少期から読書家で勉強家。東大の前身を経てアメリカに留学。英語が得意な一方、伝統的で当時主流だった漢文が苦手。司法省を経て外務省に転籍し、翻訳に従事した。陸奥宗光に引き上げられる。豪胆な一方、人付き合いは不得手だった。一方、酒飲みで父親の会社の破産等副業をしなければならないほど借金があったようだ。出世は遅く、大器晩成の人物だった。民主主義、藩閥、政党、ジャーナリズム嫌い。「ねずみ公使」と呼ばれた小柄な人物で、体が弱く若くして亡くなった。
飫肥で、彼の着用したコートと帽子を拝見したのを思い出しました。
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関西外国語大学国際言語学部専任講師(日本近代史)の片山慶隆(1975-)による、外交官・小村寿太郎(1855-1911)の評伝。
【構成】
序章 二つの視角
第1章 維新の激動のなかで
第2章 外務省入省-官僚への転身
第3章 日清戦争の勃発-駐清・駐朝公使時代
第4章 「ねずみ公使」として-義和団事件への対応
第5章 日英同盟と日露戦争-1901年、外相就任
第6章 戦時外交と大陸進出-「満州問題」の発生
第7章 同盟国の外交官-駐英大使として
第8章 米中の狭間で-第二次外相時代
終章 小村外交とは
小村寿太郎と言えば、ポーツマス条約の全権大使、日米通商航海条約の改正による関税自主権回復といった業績で日本史の教科書に必ず記されている。そのような近代日本史における最重要人物ではあるが、これまで本格的な評伝は無かったとのこと。
小村は飫肥藩出身であり、つまりは薩長藩閥の外からのし上がったことになる。面白いことに、最初から外務省一本で進んだわけでもなく、司法省で平凡な一官吏として過ごしていたところを友人達の推挙で外務省に転じた。
そして、その外務省にあっても長らく閑職にとどまっていた。そこを陸奥宗光に引きあげられて、日清戦争前後から海外に駐箚する外交官としての頭角をあらわすことになった。
小村という人物について、これまで傲岸なイメージがあったが、それは小村自身が叩き上げで出世したという点、そして刻苦勉励によって身につけた豊富な国際情勢についての知識に裏付けられた自信があるのだろう。
いわゆる社交性や個々人からの情報収集という点では劣るものの、ハードな交渉においては抜群の実力を発揮する外交官。それが小村だったのだろう。
だからこそ、陸奥の三羽ガラスと呼ばれた林董、加藤高明、原敬という錚々たるメンバーを差し置いて、外務大臣のイスに座り、史上3番目の在職期間を全うすることができたのだろう。
本書は小村のパーソナリティに焦点をあてる部分(特に前半)は多いが、後半にあっては日清戦争から韓国併合、条約改正まで、朝鮮半島・満洲をめぐる日本の近代外交史のエッセンスを描いている。
とくに、第1次日英同盟協約(1902)、露清満洲還付条約(1902)、第1次日韓議定書(1904)、第2次日英同盟協約(1905)、第1次日露協商(1907)の流れの整理は見事なものである。韓国の保護国化を確実なものとするための帝国主義外交を貫く小村の姿勢とともに、日本、ロシア、韓国、清、イギリス、アメリカといった利害関係国の思惑が浮かび上がっている。
本格的な外交史研究であれば、条約交渉の政治過程や個々の修正案の意図の緻密な分析が入るのであろうが、本書はそこまでは踏み込まない。初心者向けの新書であるので、それによって読みやすくはなっていはいるが、反面、小村の意図と小村以外人物・組織の意図が十分区別されずに論が進められてしまっているように感じた。この点はより詳細な研究書の出版を計画されているとのことなので、期待したい。
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小村の業績を中心に紹介しつつ、
不器用ながら勤勉だった「人間・小村寿太郎」の片鱗がしのばれる構成。
初学者向けの外交史を意識したとあって、割合読みやすかったです。
社交ベタなことがかえって、どの国に対しても冷静かつ適度な距離感を保てたことに一役買ってたって見方もできるのかなあー?という想像をかきたてられました。
(※小村について、この新書一冊の解釈しか知らない時点でです)
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伝記的資料の乏しいと言われる小村の一生を、わかりやすくまとめた一冊。
彼が生涯を通じてどのような思想を持ち、どのような外交政策を行ったのかを知るには良著だと思う。
とりわけ、小村の社交性の無さ、徹底した帝国主義者の一面などは興味深かった。
外交は時として人物に帰結するといわれる。その意味においても、日清・日露期の外交政策に携わった小村の人物像を知る意義は大きいだろう。
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本書は、明治後期の「小村寿太郎」という近代日本を代表する外交官の本であるが、読みやすい上に、この時代をよく理解できるものである。
本書は、「小村寿太郎」の紹介を通して、その時代の日本についてもよくわかる構成となっており、この時代の歴史書としても高く評価できるが、この時代をよく知ろうと思うと、これでもまだ粗いのではないかとも思えた。
この時代の日本は、現在から見るとまったく別の世界の国のようなもので、知らなければならないことは数多い。
著者はあとがきに「本書は概説書であり、大学生などの初学者を読者に想定する入門書として執筆した」とあるが、まさにこの時代を知ろうとすると次々に疑問が湧いてくる。
この時代はむき出しの「帝国主義」が激突する激動の時代である。1895年(明治28年)「隣国の王妃を自国の公使が暗殺する閔妃暗殺事件」後の「駐朝公使」時代の詳細な活動は、あまりにも暴力的・衝撃的である。
また、「日英同盟」内容の両国の交渉経過詳細な経過を読むと、国益をかけて両者が実に緻密なせめぎあいを行っていることがよくわかる。
「韓国併合」が「ロシア・イギリス」の同意を得て行われたことなども初めて知ったが、一国の外交とはこのように行われているのかと驚嘆する思いを持った。
しかし、この時代に推し進められた「朝鮮・大陸政策」は現在の視点から見て、どう評価されるべきなのだろうか。
本書で読む「明治後期」の歴史は、日本の朝鮮・満州への進出が、「侵略」という単純な帝国主義的思想によって進められたわけではないことがよくわかるが、 「明治日本」の苦闘と選択の中で、その時点の国家の力関係を考えると当時としては最善の方向を目指そうとしたということなのだろうか。
歴史の後知恵であるが「1945年の帝国の瓦解」がこの時代の選択の結果として起きたことを考えると・・・。
日本のその後の「大陸政策」の進行における「ポイント・オブ・ノーリターン」は、1900年(明治33年)の「義和団事件」であったように思えるがどうだろうか。
本書は、明治後期の「坂の上の雲」の時代の日本がどのような課題を持ち、どのような選択をしていったのかがよくわかる良書であると思うが、司馬遼太郎の小説のようなロマンは感じない。現実とは、こういうものなのだろう。
本書のリアルな現実の歴史を読むと、「小村寿太郎」は、「歴史上の人物」であっても「時代のヒーロー」ではないとも思えた。
本書は、読者にもっとこの時代をもっとよく知りたいと思わせる本であるが、「日清戦争「日露戦争」を含む激動の時代全体を扱うにはちょっと紙数が足りないとも思えた。
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【大きな、それは大きな鼠でした】外務次官、そして外務大臣を務め、さらには主要国の公使や大使を歴任するなど、近代日本の外交を考えるにあたって避けては通れない人物、小村寿太郎。近代日本の悲願であった不平等条約改正や日英同盟等の小村が携わった外交案件をたどることにより、その時代の日本の外交の輪郭をも浮かび上がらせる力作です。著者は、関西外国語大学の専任講師等を務められた片山慶隆。
睦奥宗光があまりに大きな存在なので、どうしてもその影に隠れてしまいがちなのですが、改めて本書で小村寿太郎の足跡を考えると、小村が果たした役割というのもとんでもなく大きいものであることに気づかされます。そしてその役割の大きさの裏にある不遇の時代がしっかりと描かれることにより、本書の中での小村に非常に立体感が出ているように思います。
国際社会をとことんパワー・ゲームとしてとらえることから生ずる小村の外交スタイルは決して人気が出るものではないと思いますが、現下の外交政策を考える上で、否が応でも念頭に置かなければならないことなのかも。果たして小村が「新時代」の外交に適応できたかは当然知る術もありませんが、時代に合致したスタイルを貫き通した人物として小村をとらえることができるのではないでしょうか。
〜超人的な英雄ではなく、多くの苦しみや悩みを経験した小村の姿が伝われば幸いである。〜
伝記でありながらさらっと読めるところがイイネ☆5つ
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日清、日露の激動の帝国主義の中に生まれた豪腕外務官僚。この時代だからこそ活きた人間だったと思うのだけど、政党に左右されずに一貫してポリティカルパワーのみで動いた姿勢は今でも参考になるに違いない。
朝鮮を確信的利益の土地としてロシア、英国とも渡り合い、最後は併合してしまったという事は朝鮮人からすると憎くてたまらない人間なんだろうね。
しかし、携帯電話がないこの頃の(今もそうかもしれないけど)外務大臣って本当に全権を委任されて条件を譲歩しながら交渉して妥結まで持って行ってるんだねとシミジミ思った。個人の力量が国を左右していたのだなと。いゃぁ、すごいね。
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歴史に名を残している本を頑張って読みなさいとの言葉が印象的でした。
また、著者の経歴からくる説得力の凄まじさを感じました。
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陸奥宗光と並ぶ大日本帝国の傑出した外交官、小村の活動を本人、周囲の言動、歴史的事象をもとに記載している。
現代の価値観では帝国主義の申し子のように批判を受けることもあるが、
当時の価値観では至極まっとうな現実主義者であった。
列強がそれぞれの勢力範囲を主張し合い、外交戦を繰り広げ、それに負ければ没落し、弱小国として一流国の風下に追いやられ、独立すらも危ぶまれる情勢下において、
小村の活躍は、三流国であった当時の日本を一流国へ押し上げる一助になったのは間違いがない。
小村の活躍、考え、また当時の情勢をも理解するのに役に立つ一冊だった