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認知心理学の中で、人間の認知過程、推論に焦点をあてた入門者向けの本。
私たちが推論する過程において、どのような処理があるのか、またどのような誤りをおかしやすいのかということを、論理てきにわかりやすい文章で説明してくれる。
私たちが普段している「考える」という行為に興味がある方にはおすすめの一冊。
おもしろかったです。
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[ 内容 ]
日常生活での思考は推論の連続といえる。
その多くは論理形式に従うより、文脈情報に応じた知識を使ったり、心の中のモデルを操作してなされる。
現実世界はまた、不確定要素に満ちているので、可能性の高さを直観的に判断して行動を決めている。
推論はさらに、その人の信念や感情、他者にも影響される。
推論の認知心理学は、これら人間の知的能力の長所と短所とをみつめ直すことによって、それを改善するためのヒントを与えてくれる。
[ 目次 ]
1 人間は論理的に推論するか(形式論理と日常的推論 論理的推論の認知モデル 帰納的推論―一を聞いて、十を知って、三誤る)
2 確率的な世界の推論(確率・統計的な現象に対する理解と誤解 ベイズの定理をめぐる難問・奇問 確率・統計問題での推論のしくみと学習)
3 推論を方向づける知識、感情、他者(推論は知識に誘導される 因果関係を推論する 自己の感情と他者の圧力)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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人は何か先のことを考えるとき、自分の持っている知識なり経験なりに、またそのときの状況などに基づいて推論をする。そんなふつう無意識にしていることを改めて考えてみようという本である。自分はコンピュータにおけるヒューマンインターフェースをちょっと講義で聞いてから、心理学の分野に興味を持つようになり、この本を読んだ。
率直に思うことは、考えさせられることを多く教えてくれたことである。人は何かを推論するときに、論理学のように順序立てて導出をするわけでもないのに、論理学と同じ結果を答えとして推論することができる。一方で、まったく根拠もないようなことをいきなり推論してしまうこともある。推論なんていう日常ではあまりしっかりと考えないような事柄を人にわかるように説明している。
本は三部から成っており、
一部 論理的推論
二部 確率的推論
三部 日常場面における推論
である。著者が言うようにある程度独立して読めるようになっているので、数理的な話に慣れてない人は三部から読んでもいい。自分はそうした。
何回読んでも勉強になるだろうなぁと自分は思った。人口知能をやっている人で心理学にさわったことのない人はぜひ読んでみるべき。必ずヒントがあるような気がした。
より洗練された思考をするためにはまずそのプロセスを知らなければならない。どこかで聞いた言葉だが、まさにその通りであると思った。
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確率とか回帰とか帰納とかの色んな「推論」を、数学っぽく無く日常の事象に当てはめて解説した本。回帰は特に、なるほどねーと思った。でも全体に難しい。もっかい読もうかな?
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定期的に読み返したい。
頭の中でうすぼんやりとしていたことに名前がつくとすっきりする、ことがわかった。
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人間の推論について、心理学の立場から眺める書。推論に関しては、論理学、確率論、推測統計学という規範的な科学と呼ばれる領域からの見方と、心理学は、実際に人間がどのように推論しているかについての知見や理論を提供することから記述的な科学ということになっている。
本書は、人間は論理的に推論するのか、確率的な世界に対する推論、推論を方向付ける知識、感情、他者といった、それぞれ論理、確立、日常推論とある程度独立した角度からの”人の推論”に対する考察がなされている。
全般的に、それぞれの推論、思考過程に対する実例に基づいて記されており非常にわかりやすい。人の思考過程について探索するには、領域を広くカバーしているようでもあり、良書であると感じた。また、本書を読むことにより、人間の思考は種々の状況、知識に左右され、それを模倣することの難しさを改めて実感した。
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認知心理学関連本3冊目。「心と脳」「問題解決の心理学」とつながるところが多く、私たち人間が、如何に確率・統計的な世界を生きているか、「問題解決」と意識しなくとも、瞬間瞬間推論しているかを改めて学んだ。学術用語もふんだんに使われて、夜読むとうつらうつらしそうにもなるが、読んでいてしっくりきた。
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頭の中での推論がどんな風に行われているか、ということを、各種事例をもとに、くだいて解説しています。どんなところで推論にバイアスがかかるのか(人間がいかに適当か)、ということも興味深いものです。そして、そういう研究を通じて人間がより合理性を獲得できるように、という心理学者からの答弁に拍手。
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人が物事を推察する仕方(推論)を論理、確率、感情の点から傾向と落とし穴について述べた本。人の持つ認識のバイアスについてとても良くまとまっている。特にベイズの定理についてはこれ以上分かり易いのは今まで読んだことがなかった。
論理的推論では、そのときにあった「スキーマ」を呼び出して当てはめている。帰納的推論では、論理の飛躍がおきがち(ホセは陽気である。メキシコ人は陽気な人が多い、ホセはメキシコ人である)である。
確率的推論では、分かりにくいベイズの定理(事前確率、条件付き確率を使って事後確率を出す)を分かり易く説明し、なおかつパイチャートを使って事前確率をイメージするやり方を記載している。
第三節では、社会的な事情や感情が推論に影響を与える事例が出ている。
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認知心理学、統計学、行動学、論理学を学んでいれば探している情報が見つかるに違いないと思う。かなり難しい。「問題解決」のヒントを探している場合は、一般的なヒントは望めないか。第3章(最終章)は、推論を方向づけるもの、という切り口で「考える」ということが、何に影響されやすいか、それを知った上で考えることを行うという視点がある。
「(中略)推論というのは、さまざまなバイアスをもっている。こうしたバイアスが生まれるのは、私たち人間が、基本的に自分の自尊感情を満たしたいとい思っているからではないだろうか。私たちは自分が愚かであるとは思いたくない。」
一方では、情報を「受け取る」ときに、感情や他人の存在が「自分の考える」ことにどう影響するか論じている。他方、さらに「自分が情報を他者に伝える」というときのバイアスについても論じている。
「(中略)聞いた話をできるだけ正確に次の人に伝えたいと思っているが、記憶容量の限界や人間の情報処理の制約のために内容が変化してしまうのである。(中略)私たちが人に話をするというときには、人にどのように受け取られるかということを無意識的にでも気にしているからである。」
話す内容だけでなく、話す「自分」がどのように受け取られるか。これが「考える」ことに影響を与え、話す内容にさえゆがみをもたらすものである。これは「自己を守る、高めたい、よい価値を得たい」という方向付けがあるからだという。意図的でないにせよ、かような要素が働いていると著者は述べる。これを知っておくのとおかないのとでは、「考えた」結果の質に違いがでると、思う。
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市川先生の本・論文には色々とお世話になりました。
この本は、ほんとに初心者にも分かり易くて、しかも面白かったです。つい、読んだことを誰かに言いたくなったり、実験してみたくなったりしました。
人間の「思考」が科学で紐解けるようになる日はまだまだ先のことになりそうです。
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本書のメインテーマは、人間の推論について心理学的な立場から眺めてみることです。認知心理学や社会心理学の推論研究に基づいているので、確率論や統計学が苦手でも理解できるでしょう。読み返す度に違った気づきを与えてくれるでしょう。折々、再読したい一冊です。
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日々おこなう思考は「推論」の連続である。
推論に関して、3部構成で説明しています。
まず、第1部は「人間は論理的に推論するか」
人がおこなう論理的思考は、よほど訓練されていない限り論理式を操作するような思考はおよそできず、視覚的なイメージを操作しながら吟味していくやり方をとる。
つまり、イメージ的に考える図式表現を使うと、私たちの思考は随分改善される可能性があるということです。
小さい頃から言われていますね。図を書いて考えろと。
第2部「確率的な世界の推論」
第2部はこの本の一番おもしろいところです。事前確率を無視する傾向はなるほどと思いつつ、でも事前確率を無視しないようにするには、どれほどの注意力と訓練がいるんだとうかと思います。
では事前確率を無視する傾向の例題を一つ
感染者問題:
ある国では、男性1000人に1人の割合で、ある病気に感染しているという。検査薬によって、感染していれば、0.98の確率で陽性反応が出る。ただし、感染していない場合にも、0.01の確率で陽性反応が出るという。さて、今1人の男性に陽性反応が出たとして、この男性が感染者である確率はどれだけか。
答えは、0.98(98%)ではありません。なんと、0.089(8.9%)です。 本当?って感じですが、何故と思う方は是非一読ください。ベイズの定理を使って計算してください。
第3部「推論を方向づける知識、感情、他者」
この中の一節の紹介ですが、問題解決をどれくらいの知識量に頼るのか?
できる限り知識量は少なく、応用できる範囲は広いことが望まれますが、実際、物理学の問題をスラスラと解く研究者などの解決過程を見ると、実に多くの問題スキーマや解法の手続きをもっていることが分かる。
単なる知識をマル暗記するだけではだめで、問題を解くためのスキーマ(解法パターン)やヒューリスティックス(常に正解に至るわけではないが、多くの場合、楽に早く正解を見つけられるうまいやり方)が必要である。
問題を解いた経験が他の問題の解決を促進することは、心理学で「転移」と言われます。学習でこの転移を期待しますが、転移がうまく起こることは稀だそうです。
筆者が実際に、小中高を対象とした学習相談を実施しています。一日に何時間勉強したか、どれだけ問題を解いたかだけに注目するのではなく、「なぜはじめはうまく解けなかったのかを考えて、一般的な教訓として引き出す」ことを強調している。こうすることで、次の機会の転移を促す重要な要因になるとしている。
学習アドバイスにするときに参考になることばかりでした。
ただ、これを理解しても、事前確率の考慮など実践できるのか。。。。という印象ももちました。
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「人間の推論はどう行われているか?」にフォーカスを合わせた、認知心理学の入門書。
その手の分野に興味がある素人(自分)であれば5割程度、専門に学んでいる学生であればおそらく9割程度は知っている類の事が書かれた本だと思う。
広く簡潔に纏められて居て、読み返してジャンル全体の概要をとらえ直すにはピッタリの、良い本。
刊行が20年近く前でだいぶ古いので、最近の研究成果も含めたバージョンも読んでみたいかも。
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自分は、邪推することが多い、いい意味でも悪い意味でも。
人と会話している時も、その相手から発せられた言葉の裏側にある見えない部分にピントを合わせてしまう。
だが、当然ながら、その時のレンズは、絞りも露出も自分というマニュアル操作なもんだから、いかんせん、たいがいはピンぼけとなる。
そんなもやもやをいつも抱いているのだが、本書を読んだら、なるほどその辺が、実に明快に書かれており、なるほどとばかり、溜飲が下がりまくった。
著者も書いているとおり、全3部構成の1部と2部は、実証的な見地からの記述のため、理数が苦手な方はとっつきにくいかもしれないので、3部から読み始めてもよいかもしれない。
「科学」と銘打っているが、どちらかと言えば、人の心の機微を感じるためのエッセイのような臭いもする。
とはいえ、理科系の脳みそによるエッセイであるが。
そんな感じで読むと、面白いと思います。
タイトルだけで借りたけど、意外と楽しめた。