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日本の女性統治者にも影響を与えた
2020/11/30 21:22
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
優柔不断で病弱な李治の、皇后に上りつめてからの武照。
皇后とはいっても、もはや実質的な統治者として、実権を握り、唐帝国の統治に乗り出してゆく。外交や軍事には疎かったが、そこは的確に情勢を把握し、実力ある将軍を見出し全権を与えることで、太宗もできなかった高句麗平定を果たす。白村江の戦を唐側から見られたことは、面白い。
ただ、武照の治世で唐は最大版図に至ったとはいえ、何かが足りない。為政者の仕事は、臣下の能力の見極めと、適材適所の人事がポイントとはいえ、やはり明確なビジョンが見えてこなければ、評価もできにくいというものだ。
思うに、彼女の目指したものとは、男性から切り離された女性の地位向上だったのではないだろうか。上巻のレビューでも述べたように、この時代、女性の立身出世とは力ある男の配偶者となるところから出発するのが常道だ。だが、武照はその先を望んだ。
李氏から独立した評価を得るためには、まず自身より先に自らの出身氏族の格を上げなければならない。そのための『姓氏録』の編纂だったのだ。
だが、一族の格を挙げたからと言って、昔の恨みは忘れないところが女性の限界だった。異母兄や従弟たちを謀略で死に追いやり、自分の地位を危うくするような行動をとる甥、姪も毒殺する。どうも武氏には、彼女とタッグを組めるような逸材は皆無だったようだ。だからこその粛清だろう。
その粛清は、自分の息子たち、李氏の血を引き、次代を担うはずの皇太子にまで及び、二人までも殺害する。特に長男の李弘の殺害方法には、度肝を抜かれた。詳しくは本書を読んでもらいたいが、ほとんど猟奇殺人の域に達している。杓子定規で、正義感が強すぎるからといって、では彼女の求める者とは一体どんな人物なのか。そんな陰惨な粛清が繰り広げられるなか、唯一彼女から逃げおおせた二人の公主の存在が一服の清涼剤のようだ。
やがて、彼女は文字や元号の改革にも乗り出す。このあたりが、彼女の目指すものを幾分垣間見せてくれる政策だ。だが新しい文字は、西夏文字と同じく彼女の死とともに消え去ってゆく。
ところが、驚くようなことが海の彼方の日本で起こっていた。武照が死んで約半世紀後の日本で、彼女が用いていたような四字の元号(天平勝宝、天平宝字など)が突如として登場し、半世紀ほどでやはり歴史から姿を消してしまうのだ。一体これは何なのか。その頃、朝廷に君臨していたのが、光明皇后とその娘の孝謙天皇だったというのは、偶然の一致なのか?おそらく、彼女ら日本の女性統治者たちは、武照を手本としていたのではないか・・・。そして、称徳天皇として重祚した孝謙天皇が世を去ると、再び武照が目指し、光明、孝謙が引き継ごうとしたものは、男たちの世界に取って代わられる。そう考えると、物足りなさのあった上巻とは異なり、武照の意図が大きくクローズアップされた下巻は満足できた。
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