紙の本
平成のある時ある場所を写し取った一作
2024/01/31 23:49
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投稿者:トマー - この投稿者のレビュー一覧を見る
牧歌的な雰囲気の小学校で繰り広げられた凄惨ないじめ。そして起きてしまった破滅的な事故。
何故事故は起きたのか。いつから戯曲(シナリオ)は始まっていたのか。事故の後遺症で身動きできない坪手くんを情報の波が襲う。
平成中期の小学校という舞台は令和を生きる我々には別世界のように見えるものだと認識させられた。
紙の本
互いの思惑を上回ろうとした上で築かれる不思議な信頼関係
2010/10/16 10:53
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
非ウィルス性嗜眠性脳炎により引き起こされる全身痙攣で指一本動かせず、瞬きすらもできない身体となった坪手明の病床を、今では習志野菜々子という仮名で呼ばれる少女が訪れる。それは、三年前、彼らが小学六年生だったあの事故から、平日は欠かされる事なく続けられてきた儀式だった。
その儀式が途切れた金曜日の翌月曜日。菜々子さんは突然、あの事故の出来事を蒸し返し始める。彼女が氏名連想誘発性心神喪失症候群と名付けられた、自分の本名を呼ばれると発作を起こす病気となった出来事が、誰かの故意で引き起こされた事件だったというのだ。
それをきっかけに、考えることしかできない坪手明は当時の出来事を思い起こす。自分と菜々子さん、そしてもう一人のNに起こった出来事を。
現在の二人の病室での出来事と、三年前の出来事を、交互に描写しながら、主人公の思考の軌跡をたどっていく形式の作品。そして最後に、菜々子さんの思考で真相が明かされる。主人公は現在全く意思表示ができないのだが、菜々子さんの一方的な語りと彼の思考が、まるで会話が成立しているように作り上げられている。
そして、三年前の回想では、主人公の思考方法と、菜々子さんの性格や行動が段階的に明らかにされ、それに基づいて事件が解き明かされていく。ラプラスの悪魔という、初期条件を適切に与えることで全ての未来を自在に操る仮想の悪魔の存在のように、前提が変わるたびに主人公の頭の中で仮説がコロコロと変わっていくのが面白い。そしてそこには、事態を全て掌握しようという菜々子さんの思惑も見え隠れする。
意図したことかどうかは分からないけれど、本当に小学生が背伸びをした表現を使ったように感じる文章のところもあったりして、ちょっと戸惑う表現のところもある気がする。だけど、ほとんど二人の登場人物だけで、互いに会話を成立させず、しかし意思疎通は出来ているように組みあがっているという、少し不思議な感じは面白いと思う。
紙の本
菜々子さんは、可愛くて、そして怖い。この小説もまた、よくできたミステリで、同時に怖い。
2016/07/12 18:37
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年は、早川書房や角川書店の一般レーベルからミステリー作品を発表している著者のデビュー作。
ライトノベルではありますが、『本格ミステリ・ディケイド300』にも選出された、堂々たるミステリです。
“菜々子さん”は、病院のベッドで身動きできない、言葉も発せられない僕に言う。
「三年前の事故は、事件だと思うの」
コケティッシュで悪魔的な“菜々子さん”の魅力と、丁寧な推理が楽しめます。ライトノベルとミステリのいいところ取りと言ったらほめ過ぎでしょうか。
最後に、本作を読み終わって、さほどミステリとして上等ではないなと思った方へ。それでも、お願いですから、続く『“菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人』を読んでみてください。本作の趣向をはるかに上回る、切れ味抜群の本格ミステリなのですから。そして、次作を百パーセント楽しむためには、本作の読了が不可欠でもあるのです。
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無料全文公開中だったので読んでみる。
まず本編よりフォーマットについて。
WEB読書読み辛い。フォント荒いからかなぁ……10数ページ読むのはいいけど100ページ越えるときつい。
よかったのは挿絵がないこと。内容からしても、この本って表紙からラストまで絵がないほうが効果的な気がする。WEBも表紙がなければなぁ。(絵は綺麗なのであくまでも好みの話)
本文の内容について。
ミステリとしては微妙だった。話の展開というか構成事態は面白いので、もう少し時間を掛けるなり担当さんがしっかり見るなりして、整えたほうがいいのにもったいない。
発想は面白いけど、各個人の性格や、細かい描写や構成がとっちらかっている。(図や表にすれば整頓できるのではないかなと)
個人的にはラストが残念だった。
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発売前web全文無料公開で読みました。
まず、web版小説?電子書籍?というのが初体験だったのですが、とても読み難いものでした。Readerが悪いのかな?
まぁ、内容の方は、うむ、イマイチという感じですわ。
序盤は、いじめられっこの話で暗気味だし、web版の読みにくさもあって、評価は「よくない」でした。
中盤以降の、「犯人がいる?」ってあたりから、少しは面白くなってきました。
後半の騙し合いは好きですが、もっとクレバーな感じが欲しいと思いつつも、中学生という設定だし、こんなものかなと思いました。
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買って読んだのでなんともいえませんが、ちらっとみたweb版は読みづらそうでした。やっぱり紙媒体がいいな!(笑)
伏線は概ね回収されてすっきりしたんだけど、設定が整頓されてない感じはあったきがする。あとわざわざ考えなくてもいい場所で考えさせられたような(いやすぐわかるんだけど!なんていうか、久美子らへんがちょっとまわりくどかった気がする)。
結局昔の話だし、現在の登場人物が菜々子さんと主人公(と、久美子)しかいないから曖昧ですよね。妄想の範囲内すぎる。
でも久しぶりに興奮したから高評価つけてみまる。一気に読んだのも久しぶり!続編が出る雰囲気じゃないなと思ってたらなんか出るんですね。
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菜々子さんの性質に惹かれる。ありがちな腹黒ではなく、陰険さとして現れてる独特なポリシーが、ピリっとしたいい味付けになってる。語り口も舞台も状況も独特な設定でワクワクしながら読めた。
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うーん
寝たきりで動きが取れなくて思考しか出来ない主人公とか
斬新だと思うけどー
刺激が足りないと思ってしまうのは、年ですかそうですか
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なんか・・・不思議な感じだった。小学生の特性?が良く表されてたのがスゲェーと思いました。
完結したっぽかったけど、続くのかな?続くなら読みたいです。なんか気になる。
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評価が難しいです。でも面白かったのは事実。
最初くどいんですけどw
だんだんと登場人物の内面が分かってきて
それに伴って過去何が起こったのか
今、なにが起きているのかが判明してくると
読み進めやすくなります。
それにしても菜々子さんは可愛いし、動機もわかるんだけど、手段がこえぇw
あと主人公がちょっと自分には合わなかった。
階段のシーンは良かったなぁ。
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予測できそうで予測できない展開でぐいぐいひっぱられる。あと菜々子さんが陰険かわいい。そして瀬戸くんが意外といい奴なので次巻が出るならばぜひ活躍の場を
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一風変わったライトノベル。
「菜々子」さんと呼ばれ(名無しのななこが由来)るのは
その本名を連想させる言葉を聞くと、極度のパニックに
陥る彼女と、全身不随の少年との不思議な繋がりが
描かれています。読んでいて息苦しさを
覚えるのは作品自体に緊張感と閉塞感を伴っている
からか? ぐるぐる、グルグルと同じところを
歩かされる騙し絵の螺旋階段を登っているようなイメージ。
一見、心理的な推理もののミステリ作品の皮を
被ってますが、核は歪んでるけど、実は直球な
恋愛ものなのですね。
細かい会話に散りばめた伏線も最終的には
きっちり回収したりするなど細かい芸当を見せ、
着地してるのですが、意図的に長く、ループ展開を
するストーリーが少々疲れるかも。
それにしても肝心の「菜々子」さんの本名って?何?
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【レビュー】
小学五年で起きたとある事故。そこに居合わせた三人はそれぞれ一つずつ失った。
その事故で身体の自由を失った少年は全身麻痺患者として三年間の入院生活を強いられる。
事故以来、本名を呼ばれると発作として重度のパニックを起こす少女は”菜々子”という仮名で三年間を過ごし、そのほとんどを少年への見舞いに費やす。
発端は少女のある日の発作。半年ぶりのその発作をきっかけに、少女は少年へある疑念を抱く。
やがてその疑念は少年から少女のそれへ。
きっかけは疑念。
結末は呪い。
その過程にあるのは、少女の推理と少年の思考。
***
読んでいて少しつらい。
しかし、展開的な不安、いわゆる鬱展開は特にない。
たぶん、書き方か編集の問題。おそらく後者。
前者としては、少年の回想部分が個人的にきつかった。なんだか『この道を通れ』と歩き方を指定されているような窮屈感がある。もっと抽象的でもよかった気がするけれど、読者が作者のリード(といえるレベルかすらわからない何か)の先に到達すること前提の結末なので、たぶん仕方がないだろう。
悪く言えば中途半端。ミステリとはいわないと思う。
良く言えばそんなことがどうでもよくなるくらい魅力的な会話が多い。
ほかのタグにあるミステリとして読んだら損をする気がする。良い意味でストーリー展開が素直なので、馬鹿みたいに疑ってかかるとかえって損をするパターン。まあ、こんな読み方をするのは中毒者だけだと思うけど。素直に読むべき。
普通に面白かった。
繰り返すが、個人的には会話がとても魅力的だった。
【感想】
完全にタイトル/ジャケ買い。後悔しないレベルで面白かった。
途中、『埒外』という言葉をつかう小学生に違和感。まあ、小説へのこんな感想は最低レベルの指摘なんだけれど。
”菜々子さん”の特異性を表す目的としても、さすがに……。
続刊が出るらしい。期待したいが不安もある。自分はこれをシュガーダークでも感じた。
いったい、どんな続編を書くのだろうか?
最近、こういった『とりあえず続編』が多い気がする。おそらく、気のせいだと思うが……。
イラストの菜々子さんが可愛い。だからジャケ買い。
こういうイラストからのインパクトの強さが、ラノベの良いところだろう。
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そういえばスニーカーはひさしぶりだな、とか意味不明のことをおもいながら読んだ。電子書籍でもでてたらしいけど、、、。これは時間かけて読んでしまったから電子書籍は、、、ちょっと、、、とおもいました。
この文章は読んでからだいぶ時間をあけているのでちゃんとかけてないのでご注意を。
読んでいたときにけっこう眠い状態だったためにそんない覚えてないのですが(おいっ)、もっとおもしろいものかとおもったら、意外と普通でした、ということ。
主人公が眼がみえなくて体が動かなくって耳だけ使える、みたいな状態でずっと病院のベットで生活、それで平日に菜々子さんがきてくれる、というわけなのですが、、、。
主人公をベットにしばりつけているというのが斬新だった、とおもいましたが、まったく喋ることはないのでずっと菜々子さんが話かけたり主人公の思考とか回想ぐらいしかなかったので斬新だったちゃあ斬新だったけど、正直それほどでもなかったようなきがした。
推理自体もそれほどでもなかったような、、、というかんじですかね。菜々子さんのキャラとしてはだいぶいいかんじにはなってましてたけどんね、はい。
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この作品にとっての幸運はこの絵師さんがついてくれたことだと思う。それによって「菜々子さん」の魅力は何倍にも跳ね上がっており、それがこの作品の評価を上げることにも繋がっている。特に175Pと219P、255Pの挿絵は秀逸の一言で彼女の魅力である「陰険」で「一途」で「頑張り屋」なところが見事に表現されている。
物語はミステリ調で「事故」は「事件」だったのではという菜々子さんの語りが騙りではないか、彼女が真犯人ではないかと主人公が考える過程はぞくぞくさせられた。やや論理が飛躍してないかなと思う部分もあるけれど、気になるほどではなかった。
そして、真相には思わず膝を打った……と同時に菜々子さんへの好感度が突き抜けるのを感じた。複雑な脚本を練るだけの知性があり、その通りに人物を動かさんとする意志の力もあり、機転も利き、判断力も度胸も一級のものを備えているのに、肝心要なところで絶対的に「間違って」しまっている。それも全力で。それを愛らしいと思ってしまう辺り、僕は手遅れかもしれません。