長年の名著のようです。
2021/12/07 17:08
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投稿者:まお - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近になりweb上のインタビューで、東日本大震災当時の自衛隊の
統合幕僚長であった折木良一氏が本書を読まれていたとお話しなさっており、
読みたくなって購入。自分は国際政治にも疎いので理解は浅いです。
本書以外にも数冊書名を挙げておられたので、読んでいこうと思っています。
国際平和実現のためには
2022/05/20 16:55
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1966年の初版以来改訂版も含め54版。2022年に政界中を巻き込んで起こっている事実を目のあたりにし、国際政治を考えさせられる。もはや対立国だけで国際平和は訪れない。そのため人はなにをして行くべきかを思想家・哲学者・外交官・政治家の言葉を交えながら表わされている。印象的文章は「抽象的な平和などありえない。存在する具体的な平和はすべて但し書きを必要とする」「国内政治においてはきわめて権力政治的な人間である日本人が国際政治においては権力政治に適応する能力に不足している」と。理想論だけでも軍事力だけでも平和はもたらされないことを考えさせられた。最後の「われわれは懐疑的にならざるをえないが絶望してはならない。それは医師と外交官と人間のつとめなのである。」何ができるかを考えなければ。
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P27〜28
勢力均衡は「自国に有利な均衡であってはじめて安心する」
→均衡が保たれるのはより有利な立場にあるものがその立場を濫用して有利さを優越に変えようとせず、不利な立場にあるものがあえて挑戦しないという場合にほぼ限られるのである。
イギリスの原子物理学者ブラケットの「道徳的不均衡」
P82
ドイツの優れた経済学者かつ民族主義者であるリスト(1789〜1846)は、国家は統一と独立をまず重んじなければならない。それなくしては、国民個人の安全も福祉も進歩も文化もありえないからである。そして、この目的を達成するためには、国家の生産力を多くの側面において発達させることが必要であると論じた。
→自由貿易よりも保護主義による国内の生産力を多方面に発展させることを目指した。
P83
アダム・スミス(1723〜1790)
「隣国の富は、戦争もしくは政略上の交渉においてはわが国に危険を与えるけれども、通商貿易においては利益を与えるのである。」国富論
→富の二面性
終わり方も非常に良い、良書だった。
われわれは懐疑的にならざるを得ないが、絶望してはならない。それは医師と外交官と、そして人間のつとめなのである。
こうした書籍は、平和への答えを教えてくれるわけではない。
しかし、平和に向けた先人達のたゆまぬ努力を振り返らせ、ともすればその複雑さゆえに絶望して単純な二元論で処理しがちな国際情勢に対し、粘り強くそして謙虚に向き合わなければならないことを教えてくれる。
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平和と権力争いは同時に発生するもの。平和実現の中で権力争いは起こる。
国際政治で重視すべきことの一つの世論がある。
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国際政治の基本的な視座を学べる。
理想論ではなく地に足ついた国際政治論。これを読むだけでニュースとかの見方が変わるかな。
軍事・経済・国際機関の3つに分けて、国際政治を紐解く。
軍事に関しては、力による支配も、完全なる軍備放棄も不可能。
経済に関しては、軍事並みに重要なアクターであり、かつそれが暴走しないように取り組む必要がある。
国際機関に関しては、過度な期待は禁物で、あくまで権威による支配の状態が続きやすい。結局は各国家の動向で平和が実現される。
結局国際政治は、今できることをやりながら、すぐにはできないことをできると信じることが大切というのは確かにと思った。
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戦争という人類の「不治の病」を克服するにはどうしたらよいのか。国際政治の入門書として読み継がれる古典的名著が読みやすい改版に
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「国際政治論」の参考文献。
1966年の初版発行から52年を経た今も、大学で参考文献に指定される名著。
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高坂正堯 「国際政治」国際政治から 世界平和を考察した名著。
著者のスタンスは「今は出来る事をしながら、いつかは出来るようになる事を希望する」というもの。国家間の力、利害、正義の関係から平和の問題を捉えている。哲学者、文学者、科学者が語る世界平和との違いは 「国家は 力の体系であり、利益の体系でもある。各国家の利益を抜きに平和は語れない」ということ。
著者の言葉は信頼できる
国家は 力の体系であり、利益の体系であり、価値の体系である〜国家間の関係は これらが 絡み合った複雑な関係である
*国家は単なる力の単位ではない〜世界連邦は 国家が力の単位であり、国際政治が力の単位が並立する場所なら 正しいが
*日本と外国を分けているのは〜言語や習慣に体現された行動基準と価値体系の相違→日本と外国では常識が違う
リップマンが語った第二大戦後の世界「われわれは〜戦争と平和の中間〜戦っても勝負のつかない戦争 と 実現されない平和 の中間に生きていく」は 印象的
力による平和が〜恐怖の均衡(恐怖による平和)を意味
*信頼や善意に基づかなくても軍備の使用を減らせる→軍備の使用が相互の損失であることがはっきりすればよい
*対立する国の間にコミュニケーションの成立が必要
ルソー「エミール」の有名な言葉「子供の泣き声は〜願いから命令に変化し終には服従を要求する」に国家間の相互依存の危険性を見出している点に驚いた
国連は 紛争を解決することはできないが、武力衝突を遅らせ〜拡大を阻止するため中立化し 局地化できる
平和な国家
*独立を守るだけの力を持ってなくてはならない
*軍備によって国家が軍国主義化してはならない
*軍備を規制することができなくてはならない
*経済的に、他国に支配される国家、他国を支配する国家は平和な国家ではない
*国家の権力は制約されなければならない
*言論の自由の欠如、多数の専制など 国家権力の制約を困難にするものは退けられなければならない
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1966年に書かれた国際政治についての入門的書籍
平易なことばで冷戦下における軍備のありようと
平和の実現へのとるべき方策が解説されている
2度の大戦を経て勢力均衡から自由貿易という形に
理想の平和は移行したが
自由貿易という概念が隅々まで行き渡ることで
自動的に平和が達成されるわけではないことは
本書が書かれ半世紀を経て
いよいよ庶民にも明らかになっている
どこの誰もが同等の情報を得られるようになっても
経済と民族の制約から諸国民が自由であることは
かぎりなく難しい
現在の全ての軍事的な戦いの原因は
あるいは企業単位の枠組みを超えた争いのすべては
無能な責任者や宗教や経済的利益のせいなのだろうか
核による抑止力は前提として
国際社会からの孤立だけが
国際政治における互いの利益均衡のための手段なのか
全体利益の最大化のため
どこまで自分自身の少なくない損害に目をつぶるか
お上の判断にふんいきで乗るのでなく
無名のいち庶民であっても目先の正義にとらわれず
よりよき「正しい」判断をかさねること
まず「正しさ」について判断しようとすることが
遠大な道の先に軍事的争いのない状態という
おおむね全員の理想とする目標に近づくこととなる
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国際政治学の権威である高坂先生の著書。国際政治の入門としては最適の本であろう。国際政治において最大のテーマである平和について既存の理論等の歴史を概観して、高坂先生の考えを知ることができた。
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まさしく入門書、という感じの本。
国際政治学の大家である高坂正堯が徹底的なリアリズムに基づいて書いた、国際政治を論ずる上での羅針盤となる不朽の名著である、と称賛すべき一冊だろう。
一方で新たな視座の提供には乏しく、本書を通して著者が伝えていることは、極端に言えば「平和な世界を作るのは難しい」の一言に尽きる。
考えうる政策の例示と批判、ものごとの二面性といった、読んでいてあまり面白くはない著述が続くため人によっては退屈に感じるかもしれない。
このあたりは著者の現実主義ゆえか、それとも国際政治それ自体がもつ複雑さゆえだろうか。
自分としては第1章の後半、第3章あたりは面白かったものの、全体としては読書コストの割には満足感は高くはないかな、という印象。
しかしそのことは著者が熱意に欠けることを意味せず、むしろ著者の切実な平和希求の願いは随所に現れている。
特に終章の「絶望と希望」にある「できることをしながら、すぐにはできないことが、いつかはできるようになることを希望」するという文言には著者のリアリズムの内にある平和への飽くなき思いが凝縮されていると感じた。
暇潰しやビジネス教養目的ならばもっと華やかに国際政治を語る本はいくらでもあり、この本を選ぶメリットは少ないかもしれない。だが真に国際政治を理解したいと思うならば、早いうちに一度読んでおいて損のない本だと思う。
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60年代、まだ冷戦に差し掛かった頃にかかれたものだが、現在にも大いに通じる部分がある。
政治とはその国だけのものではもはや無く、他国との関わり合いの中で、いくら方向性や思想が違い、恐怖が訪れようとも、人間の務めとして「希望」を捨ててはならない、と強く語る。
正義は一つではない。あらゆる価値体系の中で、自己の理念と利益を守りながら、国際連合の権威を高めていかねばならない。
「自己の問題は自国の中で解決すること、他国を羨望しないことは、平和な国家の重要な条件である。」
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人は利己的で、国家はその集まり。その国家が複数あつまって構成される世界において平和を実現しよう、或いは平和を妨害する要因を排除しようと考えること自体が無謀であり、非現実的。それでは人は、または国は、世界は、どうすれば争いを"小さく"していけるか。本書の主眼はここに尽きると思う。
どっかの野党みたく真の世界平和が実現される日を夢みるような理想主義者には全く以て無益な本だが、少しでも冷静に現実的に物事を考察できる人には共感できるところが多いはず。国際政治を学ぶ人にとっての入門書と言われている(らしい)のも頷ける。
過去の戦争を多数例に引いて、裏でどういう動きがあったのかを詳しく説明しているので、教科書や下手な解説書を読むよりずっとわかりやすい。
後半は国際連合がどのような役割を果たしているかに可也のページを割いて説明を加えている。
面白いのは、明治の日本人政治家たちは国際政治の本質を理解していたのに、時代がくだるにつれそこがわからなくなり、果ては国家を転覆させたということ。今の政治家はどうだろう。
もう一つ興味深く思ったのは、世論はあてにならないということ。産業革命で交通や技術が発展してことで、民衆が政治に参加するようになり、その力をして国家は大規模化し、やがて帝国主義にもつながっていく。民衆が政治を動かせば正しい方向に発展していくはずだと大見得きって起こしたフランス革命も結局は史上初の徴兵制を設けた末にナポレオンの快進撃に酔いしれたというから皮肉すぎる。老子は庶民に政治を語らせるな、拘らせるなと説いたらしいが、紀元前後のあの頃にすでにこのような達観をもっていたというのもすごい。反対に、あれから二千年経ち、まったく進歩していない中国というのもすごい。
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■要約
国家は力(軍事力)の体系であり、利益(経済活動)の体系であり、価値(イデオロギー=正義)の体系である。国家間は、この3つのレベルの関係が複雑に絡み合った関係で成り立つ。この関係性を秩序立てるために権力闘争が行われるのが国際政治である。
この権力闘争に対して平和的な国家であるためには、独立を維持できるだけの軍備や経済力を持ちながら、同時に国家権力が十分に制約されていることが必要条件となる。
現代においては、国家が多様化するにつれ、国家の行動準則(=国際法)が弱まり、他国の行動を予測・信用することが難しくなってきている。このような状況下で平和を維持するためには、平和への希望を持ちながら、国家の行動準則の権威・規制力を強める行動をとることが必要である。
■感想
ウクライナやパレスチナ、台湾の問題に対して、自分なりに考えを深めたいと思い読んだ。
軍縮や国際機関による恒久的な平和という理想主義者の主張が真っ向から論理的に批判されており、とても勉強になるとともに、自身の考えの浅さを思い知った。平和を維持していくためには、国家が独立を維持できるだけの軍備や経済力を持ちながら、同時にその権力が十分に制約されていることが最低限必要というのは、現実から目を背けない答えだろう。
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「名著」と呼ばれるにふさわしい、濃密な本でした。
大学時代に読みたかった…。
サラッとすごいことが書かれていて驚いてマーカーを引く箇所が高頻度で出現するので、疲れましたが、充実した読書体験でした。