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「迚も恐い」辻斬り犯をそこにもってきましたか。犯人は小柄ってところで、女性だなとは思ったけど、よもやねぇ。しかし、研師の大垣の親爺さん、あんたホントにいい人だし、職人として刀とその持主との相関に関する講釈はお見ごとだったのに、あの刀、鬼の刀の所業を知りつつ研ぎ続けちゃいかんよ。どうみても、今回の悲惨な事件はあなたが抑えられたし、結果としてあなたが加担したのだ。それは置いといて、『ヒトごろし』の土方歳三とお涼さんのエピソードを盛り込んでくれたのは、あの大作ファンとして嬉しかった。
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京極堂シリーズ本編の現時点の最新作『邪魅の雫』が刊行されたのは2006年。スピンオフを含めても、2012年の『定本 百鬼夜行 陽』以来、久々の新刊である。今回は講談社タイガから刊行。3ヵ月連続で、異なる3社から刊行予定という。
京極堂こと中禅寺秋彦は登場しない。探偵役に当たるのは、妹の中禅寺敦子である。「昭和の辻斬り事件」と称された連続通り魔事件。敦子は、7人目の被害者である片倉ハル子の友人、呉美由紀から相談を受け、解明に乗り出す。
文章は比較的平易だが、相変わらず理屈っぽい。京極堂本人が出てきたら、この程度では済まないが。一ファンとしては、読みやすいような物足りないような。ところが、さほど複雑ではなさそうな事件の構図を探っていくと…。
ある家系に不幸な事件が相次いだとする。ネット時代の現代であっても、因縁とか言い出す輩はいる。むしろ、ネット時代だからこそ爆発的に噂は広がるだろう。舞台は戦後間もない昭和29年。「稀譚月報」の記者である敦子は、あくまで偶然と考える。
しかし、当事者が因縁と思い込んでいるのが厄介なところ。そんなときこそ陰陽師の出番…と言いたくなるが、探偵役は敦子。兄ほど弁が立たない彼女にできるのは、関係者に会い、事実を丹念に追っていくこと。それにしても皆饒舌だな。
結局、人が人を殺すのである。刀が血を欲するわけではない。因縁とか何とかは後付けでしかない。その結論に至るのに、随分遠回りした気がしないでもないが、京極堂がやっているように、必要なプロセスであり、読者には醍醐味に違いない。
タイトルにある「鬼」とは、日本人が思い浮かべるステレオタイプの「鬼」ではなく、概念としての「鬼」。本来は見えないものだという。まあ、こんな真相はにわかには信じがたいし、見えないもののせいにしたくもなるか…。
軽めとはいえ、久々に味わったこの感触。続く2作も読んでみよう。
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いわゆる京極堂シリーズは読破してしまったので、京極夏彦からもしばらく足が遠のいていた。本書を手にしたきっかけは、文庫に書かれている紹介文に「中善寺敦子」の名を目にしたからだ。
タイトルにもあるが、テーマは「鬼」である。憑きもの落としで、その能力、つまり言霊の力を使い、難事件を解決してきた京極堂の妹たる中善寺敦子が一体どんな推理を展開するか――興味を持った。日本刀による連続「辻斬り」事件。禍々しくはあるが、昭和という時代に果たして辻斬りなどという事件が起きるのか? 辻斬りと見える事件は、一見明治時代から続く因縁に捕縛されているかのような展開で、物語は進む。ここまでは、タイトルにもある通り「鬼の祟り」とも思える。
敦子と辻斬り事件の最後の被害者であるハル子の友人、呉美由紀の会話を中心に、刑事、刀研ぎ師、被害者片倉ハル子の母親と片倉家の代々の人たちの話が絡みあい、物語は進む。因縁に呪われた一家としか見えなかった片倉家だが、敦子の慧眼により、「因縁」という不合理性の殻は破られ、そこから新たな、合理性に導かれた真実が明らかになる。京極堂ほどの長広舌はないけれども――それが本書を、「読み易い」頁数にしているのかもしれないが――、妹が発する言葉もなかなか力強い。それに畳みかけるように、若さがほとばしる言葉を美由紀が、最後に叫ぶように話す場面はクライマックスにふさわしいだろう。
京極堂シリーズのスピンオフということで、本流のシリーズと比べて、テーマをひたすら深く掘り下げることはしない。深い洞察の結果、「この世に不思議なことなど一つもない」とうそぶく京極堂がいないのは、このシリーズの愛読者からすれば、やや物足りなさを感じるかもしれない。しかし、読み易い長さで、かつ小難しい歴史にまで分け入ることなく事件を解決する「今昔百鬼拾遺」シリーズは、京極夏彦の魅力を手軽に味わいたい読者の入門書として推奨されるべきであろう。これまで、あの千頁を超える物語の長さに敬遠していた者は、本書と続くシリーズで京極夏彦という作家の魅力を知ることになるだろう。
すっかり京極堂シリーズに、つまり中善寺夏彦という拝み屋に魅了された人にとっては薄味であろうが、妹・敦子もなかなか理屈っぽい。しかしその「理屈」が徐々に、絡みあい混沌さを増す事件を解きほぐし、事件の構図を詳らかにしていく過程こそ、京極堂シリーズの真骨頂なのだ。これらのシリーズを通して、読者は言葉が持つ力の強さを知ることになる。
「今昔百鬼拾遺」シリーズは河童、天狗と続くらしい。第一弾の「鬼」を手にした以上、近いうちにこれらも読むことになる。兄の周りほどは癖のある人たちはいないが、本書ではまだ女子高生という美由紀のキャラクターが、新境地を切り開いたように思う。残りのシリーズを読むのが、今から待ち遠しい。
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三京祭で鉄鼠の檻と虚談とヒトごろしの三つの話をうまいこと織り交ぜた短編を作って欲しいということで、その三冊集めると特典として読むことができた短編(といっていいのか?)が出版されたものが今作。
見事に要素を取り入れてきてたのでやはりすごいなぁと。
ヒトごろしの要素が一番強かったので、ヒトごろしを先に読んでいたほうが楽しめると思う。
もちろん読んでなくても楽しめるようにはなってるけど。
中禅寺敦子と呉美由紀のコンビもよかった。
もともと好きなふたりだし。
お互い影響をうけたあるふたりに似てきちゃってるのがなんだか微笑ましい。
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久しぶりに百鬼夜行シリーズ。京極本のこの年代設定というか百鬼夜行シリーズの文章は本当に読みやすくて相性が良い。あまりに久しぶりで最初誰がなにやらピンとこなかったが、京極堂の妹の中禅寺敦子が主役で「昭和の辻斬り事件」を解く。いや別に読み手にもわからないような犯人でもなく、普通に読めば見える筋でどんでん返しもないが、やっぱり面白い。ミステリは謎が面白いのではなくて、答えがわかっていようがいまいが、解き方が面白いというのがツボなのだと思う。いや、人それぞれだろうが、私のツボはそこにある。京極堂が〆るシリーズよりも短く軽くサクっと娯楽。そういえば、かなり前にボストン郊外にあった流石書店というところの店主さんに勧められて、姑獲鳥、魍魎、狂骨と3冊読んだのがミステリにハマるきっかけ。シャーロックホームズとか横溝正史とかは小学校の頃に読んでいたが、、いや、松本清張、半村良も読んでたな、、。ともかく、20代になってからミステリを読まなくなっていたので、ミステリ再発見とでもいいますか、娯楽にはほんまにええですねぇ。
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ある人物が突然「ヒトごろし」のあの人に繋がった時、おおっ!と思った。
つまり、
「ヒトごろし」を先に読んでいると、さらに面白く読める。
そこだけではないのだが、よくここまで全作品を読んできたものだ、と振り返ると、費やした時間やあれやこれやで気が遠くなる…
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久しぶりに読んだ京極夏彦さんの作品。
京極堂の妹、敦子を中心に物語が進んでいく。
あっちゃん、なんとなく親近感があって好きだから、読んでて楽しかった。
"虚無こそが鬼" それゆえ、人は恐いのだろう。
"刀を手にしたら斬りたくなる"という大垣の言葉は他のことにも当てはまる。
そんな気がなくったって、手にすれば、手の届くところにあれば、行動が変わってしまう。
短編でサクッと読める作品。
絡新婦をもう一度じっくり読み返したくなった!
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京極にしては何だか文章も薄め、3代にわたる不幸なところなど少しばかり怖さはあったけどスカスカな感じであっという間に読了。タイガ文庫に合わせたの?このシリーズラノベ風なの?と思ったほど。読み始めてすぐ犯人の見当はついてしまったし。美由紀はまだ前の学校での事件を引きずっているようなのにまた身近に事件が起こって気の毒。敦子はなぞは解けても兄のように理も弁も立つわけでなくまだまだこれからといった感じ。「ヒトごろし」読んでおかないとダメかしら。
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今までの百鬼夜行シリーズに比べたらすごく薄いのに、内容はやっぱり濃ゆかった。
百鬼夜行シリーズのどれかで出たましたけど、魔がさすっていうくだりの話を思い出して今回のお話にも通じるところがあって妙に納得しました。
虚無はとても怖いものです。
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京極堂の妹敦子を主人公にした、シリーズのスピンオフ作品にして、大著(文字通り)「ヒトごろし」の後日譚も垣間見えるという、異色作。弔堂の影もちらっと?。
印象的だったのは、浅草十二階こと凌雲閣。ちょうど大河ドラマいだてんで、関東大震災の悲劇を描く象徴としてクローズアップされていたので、在りし日の凌雲閣は、モダンな明るいイメージしかなかったけど、こういう歴史もあるんかと。前近代と近代のはざまにあって新旧どちらの時代からも爪はじきにされた虚無の塔って、凄い表現。
でも、そう言われて、いだてんを振り返ると確かに、凌雲閣下の界隈って、治安悪い、いかがわしい感じにちゃんと描かれてる。やっぱり、いだてんって、実はすごくしっかり時代を描いてるいいドラマだと思います。と、本書とは関係ないところに着地。
スピンオフシリーズは、この後版元を変えて河童、天狗と続くそう。非常に楽しみ。
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この作者にしてはあっさりとした作品だったのであっさりと読了。刀にまつわる因縁とそこに見え隠れする鬼の話だったのだけれど辻斬り事件の犯人は予想通りだったな。古本屋も探偵も名前しか出なかったけど古本屋の影響力半端ない。
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中禅寺敦子さんが主人公です。
京極堂シリーズの、ちょっとしたその後+同時進行みたいな感じで、あの事件のうらで、敦子さんたらこんなことしてたのね、みたいな。
京極堂がでてこないので、凄い読みやすいです。
美由紀ちゃんの最後の啖呵がよかった!
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京極夏彦さん「百鬼夜行」敦子&美由紀シリーズ第1弾「鬼」講談社→「河童」角川→「天狗」新潮社 まさかの3社3カ月連続発刊。流石 日本推理協会新会長さまの気配りです。呪われた一族の女性が斬り殺される。鬼の刀の仕業なのか久々の京極ワールド。
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京極堂の妹、あっちゃんが主役だ!(*゚Д゚*)ということで、京極堂ほど話は濃くはない(^-^;)でも刀が出て、お涼が出て「ヒトごろし」に繋がった時はゾクッとしたヽ(ill゚д゚)ノ最後はきっと京極堂のように、あっちゃんが決めてくれるに違いないと思っていたけれど、決めてくれたのは事件を持ち込んだ呉美由紀(^^;)それにしても、思い込みって怖いわー((゚□゚;))
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まず薄い!物足りないかしら?と、思いつつ手に取りましたが、要らぬ心配でした。
京極堂の憑き物落としと違い、厳戒は躍動感のある爽やか!?な憑き物落としでした。