紙の本
明治は爽やかのち晴れ?
2022/03/31 21:04
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
鹿鳴館華やかなりしころの高等師範学校女子部を舞台にした青春ミステリー、と紹介されるのかもしれないが、本作の底には21世紀の今も日本社会に根強く残る男尊女卑の考えや個より公けを優先する体質がいかに人を傷つけ生きにくくするのか、というテーマがはっきり貫かれている。
この面からいえば、令和の現代も未だに試行錯誤を続けているのが今の日本なんだといやでも考え込まされる。
登場人物では、ヒロイン二人や時代に翻弄された久蔵、厳格な二葉先生など魅力的な面々だったが、最近読んだ『辛夷開花』でも取り上げられていた森有礼文部大臣の業績、目的はさておき女子教育に大きな未来を見ていたという先見性など、その存在感に魅了された。英国から帰国後に離婚した広瀬常子との関係など、『辛夷開花』と比較してかなり興味深く、森有礼の理念やその背景をもっと探ってみたくなった。
以前は明治時代が、封建的な幕藩体制から脱却して西洋列強と伍していくきっかけとなったとして肯定的に捉えられていたが、最近はその時代の様々な軋轢や矛盾にも注目して、もっと大きな視野で捉えなおそうとする動きが出ている。
咲と夏のその後は、彼女たちが実際の社会に出てからの考え方の変化は?と想像が膨らむラストだった。
紙の本
時代を感じるには。
2019/12/15 11:30
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投稿者:氷狼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治の世になり、女性教育を推し進める森有礼大臣により、再編により設立された女高師。
その女高師で学ぶ野原咲、駒井夏の二人と車引きの久蔵を中心に進むストーリー。
女性教育に理解を示さない世の中、異人の血が入った人々への差別が当たり前の世の中を彼女たちは駆け抜ける...
一部明確にされない部分があり、少々スッキリしませんが、それと信仰に関する部分を除けば、生きにくい時代を精一杯生きようとする女性たちの力強さ、逆に理不尽がまかり通る世の中で抵抗虚しく消え去るしかない人々の儚さが感じ取れました。
本当に宗教だけは相容れない。 その分、咲よりも夏の方が魅力的に感じます。
ストーリーはミステリと言うよりは、明治の世で起こった混乱と次世代への伊吹を描写した内容と言った方が良いのかもしれません。
動機が薄いのも気になるところですが。
かの藤田警部も登場します。 牙突は出しませんが。
様々な信念がぶつかり合い、そして訪れる結末とは...?
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【選考会で圧倒的支持! 松本清張賞受賞作】男尊女卑の風潮が強い明治。高等師範学校の女学生が、華麗な鹿鳴館の舞踏会に招かれるが、大事件に巻きこまれ…。青春ミステリー。
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ここにいる少女も女性も、令和という新しい元号に変わって変わらない私たち女性と同じだ。
学問に秀でること、美しくあること、変えることの出来ない生まれ、性別。
恵まれた環境にいるはずの彼女たちが、コンパニオンのように鹿鳴館に呼びつけられて、あろうことか総理大臣の伊藤博文にセクハラをされる理不尽。
それなのに、自分に隙があったと、己を責め、男に生まれたかったと嘆く女性。
上質なミステリーであると同時に鏡写しのように現代も写し出しているこの作品。
素晴らしい一作です。
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あらすじも何も見ずにただただジャケ買いした本作。すごい!想像していた以上に硬派。全ての「乙女」に薦めたい。
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西洋文化華やかなりし鹿鳴館時代に、女高師で起こった爆発事件をめぐるミステリー。どこまでフィクションなのか分からないけど、史実がうまく織り込まれていて面白かった。警部の人、作中でははっきり書いてなかったけど!あの人じゃんね?!
西洋にまだ慣れない時代だから、という描写になってるけど、ニッポンジンの排他性は今も変わってねーなっていう感想…。
鹿鳴館時代の西欧化の反動から国粋主義が起こり戦争の時代に突入していく、という歴史の流れがよくわかった。なるほどなぁ。
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途中まで読んだんですが…
封建的な時代に生きる健気な少女…みたいな帯の解説でなんとなく、うん、ちょっと今これ読む気にならないかも…と脇にのけてしまいました。そのうちよもう
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第24回松本清張賞を受賞した滝沢志郎が2017年に発表した作品の文庫版。欧化主義が広まった鹿鳴館時代を舞台に御茶ノ水の高等師範学校女子部に通う女学生 夏と咲の2人を中心に、明治政府を揺るがす大事件に立ち向かう青春ミステリです。事件の真相を追いかけるのも本筋ですが、もっと大きな時代の波へと立ち向かった当時の女性たちに敬意を。本作は虚構と現実が非常にうまく組み合わさり説得力があります。ところで、作者さんもモデルにしましたって明言しているので、本作を「しましまコンビ」で映像化してみて欲しい。
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つい先ごろ、『先生と僕』のところで、ミステリーは嫌い、人の死ぬのは怖くて読めない、と言った舌の根も乾かぬうちに、読んだ本書は、…ミステリーだった。
いや、時代小説だと思ったんだもん。
とは言え、わりとさわやかな読後感だった。
女子高等師範学校の生徒たちも、人力車夫の久蔵も、みな懸命に生きている感じがするからだろうか。
森有礼の存在感が大きい。
これまであまりいい印象がなかった人だった。
留学経験があって、物腰が洗練されている上に、弁舌が巧みで、伊藤博文とも渡り合い、豪胆な一面もあった。
これがこの本での有礼像だ。
有礼が明治の光の部分だとすれば、久蔵は闇の部分を体現する。
「らしゃめん」といわれた女性とか、混血児に対する差別は話には聞いていたが、いままでピンとこなかった。
が、本書の描写で、少し感覚的に分かった気がする。
そしてそういう視線にさらされた人のつらさが、少し感じられた気がする。
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明治という欧米化が進んでいく時代。
鹿鳴館、舞踏会、女子教育、洋装、、、
そんな時代を舞台にした小説でした。
教師になることを志す女学生が、テロ事件に巻き込まれていくストーリー。
フィクションですが、主人公の咲と夏にはモデルとなった人物がいるようです。また、伊藤博文や大山捨松など実在した人物も出てきます。
明治時代になって暗殺された人達って実際けっこういるもんね。時代が変わるときは色んな人色んな想いがぶつかり合うんだろうね。
そんな人の想いをテーマにした小説だなと感じました。
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これは良作!
明治乙女、高等師範学校の生徒たちと、彼女らを支える大人たち、そして時代の中で悲しい思いをして生きた人たちの話。
ミステリーやサスペンスの要素もあり、楽しめた。
登場する女生徒達が賢く爽やかで、元気をもらえる。
明治といえば、まだ女性の権利などなく、馬鹿にされていた時代。高等教育を受ける女生徒には世間も冷たい。
そんな中で学問をして、身を修め、生き方に悩む女生徒達が健気で、心から応援したくなった。
そんな女生徒に、当たり前のようにセクハラ行為をして、女性に人間性を認めない古い頭のおっさん達の醜いこと! あんたらクソだよ。
時代がら、多様性とは程遠い。
閉鎖的な意識の人たちから、境界に生きる人達への差別的な言動ときたら、まったくとんでもない。が、これが悲しいかな、明治のころから令和の今でも通底する。
健気な女生徒達の賢さ爽やかさはとても快い。時代物ではあるものの、登場人物たちが被る理不尽さは、令和の人でも共感できて楽しめる作品だと思う。
戊辰戦争の敗者である旧会津藩出身者が、とても良い。凄惨な籠城戦を生き抜いた山川家の人々の言動には凄みがあり、どこまでもかっこいい。
藤田警部……。知る人ぞ知るあのお方。
幕末の会津や新選組が好きな人なら、二重に楽しめること請け合いの、おすすめ作品。
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文明開化して間もない、明治時代の女学生達の青春とミステリー。
横浜生まれの野原咲は、女高師の舞踏会で爆弾事件に遭遇したことに端を発し、事件に巻き込まれていくのだが……。
ミステリとしては薄味だが、時代や世間に負けまいと踏ん張る女性達は力強い。
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時代の狭間で、自分の足で立ち始めた乙女たちの物語。そして、時代の狭間に生まれその大波に翻弄されてしまった者たちの物語。
何かあるとすぐバットを振り回す咲ちゃんが可愛かった。久蔵さんには本当に幸せになって欲しかった。つらすぎ。あと最初話のわかるやつかと思った森有礼が、国家の未来を見据える代わりに、激動の時代に翻弄される、小さき者たちへの視線に欠けていたことにガッカリだった。
個人的に会津藩には思い入れがあるのでフタ婆、藤田警部、桂あたりの葛藤に涙。
時々時系列と、あえて隠そうとする風景を描写する書き方のせいでよく分からなくなったとこもあるけど、全体的に好感触でした。
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会津の英雄、山川浩さんも姉の二葉さんも麗しき捨松さんもカッコイイ…
明治の少女たちが必死で生きて、世の中に抗っていく姿に感動。
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割とサラッと読めた。ミステリーとあるけれど、ミステリーより明治期の女学生の葛藤物語、という感じ。史実とフィクションを織り交ぜていて「もしかしたらこういうことがあったかもしれない」と思わせる雰囲気がある。洋妾はどこまで行っても洋妾なのだ…