紙の本
私たちの世代はやっぱり「ナショナル」
2019/12/21 08:56
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今や「ナショナル」というブランド名も「松下電器産業」という会社名も知らない世代が増えているに違いない。
現在の「パナソニック」のことだ。
それでも、もしかしたら「経営の神様」の名前を問われたら、松下幸之助氏の名があがるかもしれない。それほど彼の名前は揺るぎない。
多くの著名人は毀誉褒貶にまみれるものだが、松下幸之助氏はそういう地平から遠いところにあるとずっと思ってきた。
実家が破産し、わずか9歳で大阪へ丁稚奉公に出る少年。そこで才知に長けた才能を発揮し、大実業家となる。
そして、多くの言葉を残した。小学校さえ満足に出ていないのに。
しかし、そんな松下幸之助氏にも負の顔があった。
ノンフィクション作家岩瀬多達哉さんがそれを暴いたというよりも、実際には多くの関係者には周知であった事実をきちんと正伝として描いたということだろう。
特に第二夫人とその子供の存在は、表の幸之助氏しか知らない読者には驚きだろうし、自身の孫を後継者とすべく画策する姿は、晩節を汚す経営者にありがちなものである。
松下氏はそういうことから遠い存在であると思っていたから、その事実はかなり衝撃的だった。
松下幸之助氏は1989年に94歳で亡くなったが、さすがのそれだけの人生であるから、いかに大部な労作であってもすべてを描くことは難しい。
起業後事業を拡大していくあたりが表現として手薄の一方で、戦後公職追放を受けたあたりのことは盟友野村吉三郎の手帳などを参考に詳しく描かれている。
いずれにしても「パナソニック」の源流は松下幸之助氏をたどるしかないのだから、日本の経営の歴史から消えることはないだろう。
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唯一神松下幸之助ではない部分を書いた稀有な本。コンプレックスに突き動かされる形の起業家で、そのことによる弊害は必ず起きるのだが、PHP教徒はそこを見ない… 揶揄しているのは私の感想であり、この本自体は非常に足を使った労作であり、一読の価値ある本。しかし相変わらず、販売網を築いた以外の松下幸之助の凄さがわからない。コカコーラと同じ、何を開発してもとりあえず売り場を確保してるんで勝ちますスキームに見える。
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自己啓発的な本ではなく、いわゆる松下の伝記といったところか。
経営の神も人間。
人間くさいところが見れて面白かった。
晩年は少々見苦しい場面も。引き際(引退)って難しいですね。
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よく調べてあるように感じました。松下幸之助翁とGHQの関係とか、こんなに根深かったのか、とあの戦後の混乱を切り抜けるための努力と、そらから生まれる必然の運、、、そして晩年の思いなど、楽しませていただきました。
これらから何を私たちが受け止めるのかが、重要ですね。
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経営の神様と言われた松下幸之助。三洋、シャープ、ソニー、東芝と日本を代表する家電メーカーが不振にあえぐ現在、彼が存命していたら、この状況に何を思うか?と思いつつ、購入。まず間違いなくなり自分とは相性の最悪な上司になる人物。むしろ同郷の元軍人、外交官である野村吉三郎の方に興味がひかれる。
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松下幸之助の伝記。不遇の幼少時代を過ごし、貧困からの脱出を目指した人生だった。苦労しながらも若い頃からの努力とアイデアでチャンスを掴み、ナショナルブランドで成功する。本田宗一郎と並ぶベンチャー企業だったが、会社の雰囲気は家族的であり、彼は「家長」として君臨していたようだ。読んでみて、正直なところ自分はこの会社では勤まらないと思った。幸之助は自分に厳しい人だったが、他人にはもっと厳しかったようだ。当時は権力を誇示しても問題無かったと思うが、もし現代だったらパワハラと言われることも多かったかも。昔の会社がどういうものだったかを知るには、良い本だと思う。
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言うまでもなく、松下幸之助は、日本における不世出の企業家の一人だろう。
しかし、少なくとも前半部分からは、なぜ、松下幸之助が日本を代表する企業を作ることができたのかが理解できなかった。
典型的なワンマン経営者、というよりもほぼ独裁、無茶なことをしては路頭に迷う寸前まで資金繰りに苦しくなる、とても優れた経営者とはいえないエピソードが多い。
おそらく、松下幸之助があれだけの企業に育て上げたのは、幸之助の異常なまでに鋭敏なビジネスに対する嗅覚があるのだということは、本書からはっきりと読み取れた。
やれAIだビッグデータだともてはやされている現在に松下幸之助がいたら何をしただろうかということには興味がある。
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松下幸之助の歴史というより、特に戦後の日本の歴史というにふさわしいかも。盛田昭夫もすごいと思ったが、やはりこの人もすごい。やっていることのスケールと次元が違う。野村吉三郎が日本ビクターの社長をやっていたとは知らなかった。しかし、愛人との間に4人も子供がいたとは。。。
「正治さんは、頭はいいが、物づくりの経験や商売の苦労をしていない。人使いも下手。何か問題が発生すると、ただ怒るだけで、しかも居たたまれんぐらい理詰めでやりますからね、重役陣からも事業部長からもいまひとつ信用がなかった。」
<どんなに苦しくても、打つべき手はある。それが発展に結びつくわけです。艱難汝を玉にす、という言葉がありましょう。そのとおりです。投げたらおしまいです。最後の最後までがんばらないといけません>
「幸之助さんの天才たる所以は、いったん取り組んだ仕事は、結果が出るまでやめない。結果が出るまで続けるので、失敗もないというわけです。」
「いまにして思えば、ふたつの理由から怒ったんでしょうな。ひとつは、そんな『金儲け』にもならんことに熱をあげるな。そんな暇があるなら仕事せい、ということでしょう。そしてもうひとつは、幸之助さんの本心は、社員を金太郎飴のように育てたかったんですなあ。個性的な社員がバラバラに動くのではなく、会社が示した方向に向かって結束して働く社員を理想としていた。まさに、松下電器の総合力は、金太郎飴にあると信じていたということです」
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「経営の神様」松下幸之助を取り上げた本。
著者は竹下登・元首相を取り上げた『ドキュメント 竹下登』の著者。
著者の出身・和歌山県が生み出した一大経営者の足跡を追う。それは戦後のナショナル・パナソニック史でもある。
評者自身ナショナル・パナソニック製品は使っていたので、やはり身近な製品を辿っていくのは面白い。
この本の後、著者は講談社現代文庫+αでパナソニックの内情本も書いているみたいなので、そちらも読みたくなった。
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松下幸之助氏の素晴らしさ、飽く無き事業熱、その裏にある家名復興への思いと泥臭さ、業を感じ取りました。