「消費」される女性のその後
2019/07/26 23:11
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投稿者:夜メガネ - この投稿者のレビュー一覧を見る
元アイドルの人口は、ちょっと前までは数百人と言われていましたが、今や万単位だそう。
ご存知の通り、主人公のいとのように活動期限は短い。
そうすると、その後就職したとしてもずっと白い目で見られて、
職場で息苦しい思いをしている人が今まさにいる。
男性からも女性からも白い目を向けられて孤立してゆく存在。
それがたった数年後のアイドルの実態だ。
私はこのタイトルに、往年の女優的な第一印象を持ったのだが、
ああ、そっちでしたか、という方向だった。
この作家さんがデビューしたきっかけにある「女による女のためのR-18文学賞」。
ここ出身の作家さんは私は侮りがたい文筆家が多いと思っている。
「花宵道中」でこの賞の存在を知って、何と素晴しい作家と出会えたことか!と感動したのは今でもよく覚えている。
つまり、男性のファンタジーなんて耳かきの先程も一冊の中に入っちゃいないのだ。
そこがいい。
女性という不安定で、ずっと男性に型付けされてきた歴史を持つ性と
真っ正面から向き合えたものだけが書ける文学なのだ。
著者自身も「性産業に携わる女性への偏見が自分の中にあったと自覚」と語るぐらい、
設定がギリギリなところをいっている。
いい大人の男たちがいかにカンタンに、愚かしい犯罪行為に走る日常が描かれているし、
いとの考え方に若い読者はきっと共感する部分があるだろう。
なぜ見られたり触られたり、「興味の対象」「欲望のはけ口」としての女なんだろう。
なぜ、この身一つ、自由にならないのだろう。
なぜ、「最後は体で稼げるんだから女は得だ」と男に蔑まれなければいけないのだろう。
(これは実際に私が言われたこと。
深刻な女性蔑視で、謝罪が必要なレベルなことを男性諸君には覚えておいてほしい。)
なぜ、女であることはいつも危険と隣り合わせなのだろう。
誰も教えてはくれなかった。 一緒に考えてももらえなかった。 …孤独な性だ。
ポルノもアイドルもそういう社会的な問題ともつながりが深いものだと思う。
(私個人の見解では、ポルノ女優もアイドルも似た存在に思える。
ファン層や存在目的などに共通項が多いので。どっちも男が望む「女」を演じている。)
読んで何か得たわーというのではなく、女性性と向き合う準備ができたら、でもいいと思う。
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久しぶりに吉川トリコさんの作品読んだなぁ…面白かったです。女優の娘、とあるけどポルノ女優と知らずに読み始めたのでびっくりしたし、さぞかし霧子は妖艶で美しかったんだろうなと、文字だけで感じた。そう感じさせる吉川トリコさんの筆力に圧倒されつつも、結局父親は誰だったんだろうと邪推してしまうわたしはきっとつまらない人間なんだろな…
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ロマンポルノ女優の娘で、それほど有名ではないアイドル。
第一線でテレビにガンガン出るほど有名ではない、会いに行けるアイドル。しかも年齢制限まであと一年。
本当ならこの先どういう道に進むか悩んだり、少しでも現状を良くしようとあがいたりする状況なのになんともいえずあっさり淡泊な主人公。アイドルに未練はないのか…でも、その主人公いとの母親が自殺とも事故とも思える状況で発見されてから物語は大きく動きだす。
トリコさんの小説にはいつも運命とか環境とかに流されない、自分の足でしっかりと歩いている女性が出てくる。その強さに私たちは共感し惚れこむのである。今回も主人公いとの淡泊だけど折れない立ち姿にいつの間にか心から応援し、応援されている自分に気付く。
女優、だけどロマンポルノ出身のちょっとエキセントリックで、すでに過去の存在となった母親への複雑な思い。それをいったんバラバラにしてから組み立てなおしていく過程に、多分私たちの誰もがどこかで経験する自立の問題が投影される。
そしてこれもまたトリコさんの小説によく登場する「血のつながらない家族」の存在。母と娘の問題をほぐして編み直すには少し離れているけどでも身近な存在が必要なのかもしれない。
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吉川トリコさんの新刊。現役アイドルの母親が死んだ。母親は伝説のポルノ女優だった。この母親の自伝的なノンフィクション映画を有名監督が作ることになる彼女がインタビュアーワーとして抜擢される。作品を通して母親と重なったり離れたりしていく様はとても興味深い。アイドルの生き辛さ。ポルノ女優の辛さが良く表現されていて面白かった。
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この表現は正しくないかもしれないけれど、思っていたより「普通の物語」だった。
ポルノ女優の娘、アイドルとしての自分、埋まらなかった母娘の溝と、溝から溢れた濁ったなにか。
誰もが不完全で、孤独で、身勝手で、それは別に特別なことではなく誰の日常でも起こりうる。だから普通と思えたのかな。
誰かの主役でいることは、幸せなのか、そうじゃないのか。本当に血は水よりも濃いのか。
なんだかいろんなことを一気に考えさせられるけれど、結果的に「答えはひとつじゃないし、誰かの答えは決して自分には当てはまらない」に戻る。同じところをぐるぐる旋回してるような読書体験だった。
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女優、アイドル、芸能界って実際こんな感じなんだろうな〜ととてもリアルな話っぽくて面白かった。最近の若者言葉知らなくて調べながら読んだけど。笑
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親兄弟とは関係ない、と思っていても何かしらの判断材料になっているのかも。
同じような職種なら、なおさら影響を受けてしまうのか。それを逆手に取れたらいいのにね。
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代々木を中心に活動する地下アイドルのいとの元に、母が死んだと言う連絡が入った。
元ポルノ女優だった母とは3年会っていなかった。
アイドルの世界、女優の世界を垣間見ました。
かなり歪んだいとの性格が、亡き母を追うドキュメンタリーの撮影が進むにつれ、変わっていく様が興味深かったです。
霧子の2番目の夫が最悪。
でも、その結果、いとがアイドルになったのだとしたら、きっかけ最悪だったけど良かったのかも。
色々なことがあった最後のヨモギモチ、こんな子達がいたら応援したいな。
霧子の映画のラストシーンにグッときました。
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女はこうしなくてはいけないの?母娘はこうあるべき?アイドルってかわいくてきらきらしてないといけない?そんなことを知らないうちに突きつけられ息苦しくなりまた。お話は突然死んだポルノ女優だった母とアイドルの娘が、自分と母のあり方を見つめ直しながら、母の半生を探すような展開になっていますが、それよりも主人公「いと」の、女性の生き方を問うような疑問や後悔などが、きりきり胸を刺し最後まで気が抜けません。ラストには希望が。彼女が成長した姿をまた見たい気分です。
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母は伝説のポルノ女優。そのことを隠してアイドル活動をしている主人公のもとに、母の訃報が届いたところから物語は始まる。消費される存在として生きる母娘の物語は、押しつけられるものに息苦しい思いをしながら生きている人(特に女性)への救いであり応援歌だ。
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地下アイドルである斉藤いとの母親が亡くなった。
母親は一世を風靡したポルノ女優であり、いとは母親のことを隠して活動していたが、一転時の人になる。
そんな中、著名な映画監督から、母親の半生を追うドキュメンタリー映画の案内人を依頼される。
母と娘の確執というのか、母娘問題というのか。
本当の母親を知り、自分を見直すというほどでもなかったが、面白かった。
(図書館)
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有名なポルノ女優の母親が亡くなり、アイドルをしてる娘がいることが判明し…という設定が面白そうで読んでみた。
ポルノ女優の娘であることの葛藤というより、普通に家族の問題、アイドルが抱える問題(恋愛禁止だとか、消耗されてるだとか)に関する小説って感じだったな。
序盤から登場人物が多くて、しかもあだ名ばかり出てくるから「え、誰だっけ?」って何度かなった。
主人公より10歳ほど年上の私には、全体的に興味がない、ついていけない話だったなぁ。
劇場型アイドルの管理しきれない様は妙に生々しくて、そういうのに興味ある若い人は、楽しく読めるのかな。
表紙は森川葵でふつーにめちゃんこ可愛いですが、主人公はブスキャラって設定なのが…可愛い女の子の写真を表紙にして若い子ウケ狙ってるだけなのかな?って思えちゃって。
ちょっと興醒めた…。
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親から独立する為の手段として始めたせいかグループの人気投票では20位前後をうろうろしている現役アイドル斉藤いと。そんな彼女に母親の訃報が届く。母赤井霧子はかつて一世を風靡したポルノ女優。追悼ドキュメンタリー映画の企画が自分の父親かもしれない監督から上がり、いとは案内役として指名される。撮影が進む中で女優としての母、アイドルとしての自分を見つめ直していく。母娘の葛藤部分より女優とアイドルの対比、光輝く時期を容赦なく搾取され(主に男に)幻想を背負わされる理不尽さ、それでも立ち続けるステージの魔力等芸能世界を垣間見る部分が興味深かった。いとの変化が終始淡々としている中でじわりと熱が発生する形なのが今時かな。劇的じゃなくても気付きはあるのだ。
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表紙の目にひかれた。
森川葵だった。
女優の母をもつアイドルの話。
どの女優が合うか、キャスティングしながら読んだ。
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128芸能界のことはよくわからんけど、TVやステージの向こうではこういうことが起こっているんだろう。女の子の成長のお話ともちょっと違う、生き方のお話かな。