『「世界で標準となっている経営理論」を可能な限り網羅・体系的に、そしてわかりやすくまとめて皆さんに紹介する、世界初の書籍である。』
2020/08/17 20:36
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
800ページ超、60万字超、という、写真でお見せした人には伝わると思うが、まさに『辞書』のような本。 すごい本でした。
「世界標準」と判断してよい30程度の経営理論(メインは32章)を「経済学ディシプリン」「マクロ心理学ディシプリン」「ミクロ心理学ディシプリン」「社会学ディシプリン」の4つの体系に整理し、『「世界で標準となっている経営理論」を可能な限り網羅・体系的に、そしてわかりやすくまとめて皆さんに紹介する、世界初の書籍である。』(本書はじめの2行)
いや、すごい本でした。辞書のような本、と書いたが、そうだね、辞書だね、と思って意識して、辞書のように今後何年もこの本にも戻ってきたり、参考文献も探してみたり、そうした『使う本』にしていくのがいいんだなぁと思いながら読み切りました。 当然俯瞰的に記載を行っているため、それぞれの章においては専門の本のほうが詳しいわけで、でもそんな中で、2020年現在での理論の状況をわかりやすく補足してくださり、さらに今後出てくる(実証が期待される)方向性を提示してくださったり、入山先生ならではの見解も章末に記載してくださっているところが、ほんとに今後長い付き合いになる本なんだろうな、と思いました。
個人的には、いくつか20年かけて読んできたビジネス本たちが、あぁこういう位置づけになるのね、と気づかせてもらったり(特に野中先生部分およびEQリーダシップ他)、また自分の生き方にも強いインパクトをあたえてくださっている社会起業家の方々(フローレンス駒崎さんやマザーハウスの山口さん、(働きながら、社会を変える。の)慎泰俊さん)が紹介されていたところもなんかほっとした。
そんな中での超個人的なところの引用としては、自分が大事にしている価値観が入山先生の「知の探索」「知の深化」の真骨頂の部分に記載されていた箇所を抜粋したい。(ほんとはこんなにいい本だからあとがきから抜粋すべきだとは思うが…)
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P244
知の探索・深化の理論に基づけば、ダイバーシティの本質は、知の探索を促すためにある。 だとすれば、先のように「一つの組織に多様な人がいる」(=組織ダイバーシティ)ことも重要だが、「一人の人間が多様な、幅広い知見や経験を持っている」のなら、その人の中で離れた知と知の組み合わせが進み、新しい知が創造できるのだ。 これを経営学ではイントラパーソナル・ダイバーシティ(intrapersonal diversity)と呼ぶ。「個人内多様性」という意味だ。筆者は「一人ダイバーシティ」と呼んでいる。ダイバーシティは、一人でもできるのだ。これが、個人レベルの知の探索である。
イントラパーソナル・ダイバーシティという言葉は、初めて知った方も多いだろう。それもそのはずで、ここ10数年くらいの間で、経営学で注目されている新しい概念だからだ。 近年は実証研究が進んできており、そして多くの研究で「イントラパーソナル・ダイバーシティが高い人は様々な側面でパフォーマンスが高い」という結果が得られている。
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あまりに分厚くお値段もするので、先ずは図書館で試し読み。序章と1つのSCPのみ読んだ感想は読み応えあり、また分かりやすく書かれておりかなり面白い。普段の持ち運び等考えて、kindle版をサクッと購入した。時間をかけてじっくりと読み込みたい。
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経営学者である著者が世界の主要な経営理論30をセレクトし、各理論の概要が実ビジネスにおける示唆をまとめた解説書。
これまでにこうした1冊はなかった、という著者の言葉通り、これは大変な労作であり、かつ極めて内容が整理されており、驚くほどに分かりやすい。800ページを超える大著であるが、あまりに面白くて1日で読み終えてしまった。
本書のアプローチは「個々のビジネス現象にどう経営理論が役立つのか」という現象ドリブンの発想ではなく、「経営理論がどう個々のビジネス現象に役立つのか」という理論ドリブンの発想である点に特徴がある。そもそも経営理論とは、個々のビジネス現象の観察から、一般化/仮説化と科学的な検証のプロセスを経て構築されたものであり、一定の汎用性を持つものである。こうした経営理論は多様なビジネス現象を解き解す際の”思考の補助線”として重要な役割を果たす、というのが著者の主張であるが、実際に読み終えてみると、その主張は非常に納得感がある。
実際、本書を読みながら考えていたのは、自身が5年間の経営コンサルティングの仕事で関わってきた多数のプロジェクトのことであった。現在扱っているプロジェクトについて、このような考え方を援用すると、こういうアプローチがあるのでは?、ということを考えながら読めたのは非常に楽しく有益な体験。ぜひ今後も手元に置いて、定期的に読み返してみたい。
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「世界標準の経営理論」というタイトルで、800ページ以上の大著。
これを読むのは大変だな〜と、1日1章づつ読むか〜という作戦を立てたのだが、面白くて、1日数章づつ読んでしまい、だんだん加速して、最後は1日1部づつという感じで、10日くらいで読了!
10年くらい前に経営学は「もうわかった」つもりになったのだが、それは合理性をベースとした経済学ディシプリンのものであったことに気づき、人や組織関係、つまり心理学ベースのディシプリンを読み始めた。
で、最近、心理学ベースのものも「わかった」つもりになり、経営学の本を読むのはもうやめようと思っていたところに、この本がやってきた。
この本は、経済学ディシプリン、心理学ディシプリンに加え、社会学ディシプリンの研究が紹介してあるところが新鮮。
そしてなにより、共著ではなくて、単著でさまざまなディシプリンの理論が紹介されているので、単なる寄せ集めではなくて、理論相互の関係性がとてもクリアに書いてある。
一つひとつの理論の解説は短いのだが、とても本質的だし、知的で、かつ読みやすい。もう経営学の本は、これだけあればいいんじゃないと思うほど。
ここで、「標準理論」と認定されている以外にも、コッターの変革理論とか、結構、有名な「理論」はある気がするのだが、一般的な認知と経営学会での認知には差があるんだな〜と思う。
(いろいろなディシプリンが扱われているといっても、実証科学の範疇で、「社会構成主義」とか、「ディスコース」みたいな話はさすがに入ってない)
さんざん理論を紹介したあげく、最後は、経営理論を信じてはいけないという話に展開するところが、なんだか素敵!
そうそう!
理論に当てはめれば正解がでるわけではない。が、なんにも知らないと結局のところ自分の狭い経験のなかでしか考えられなくなるわけで、理論は、より先を考えるために必要な思考の軸なのだ。
ちなみに、なぜか「ティール組織」の話が途中ででてきて、当然、この本ではそれは「理論ではない」のだが、結構、好意的に取り上げられているのが意外だった。
「ティール組織」の要約には、やや誤解がある気もするのだが、細かいところは置いといて、「ゴーイング・コンサーン」としての企業ではなくて、「死ぬことが前提」という企業というあり方もあるのではないかという話に繋がっていくところは、とても共感した。
その企業が果たそうとしているミッションが達成されれば、その企業はなくなってもいい。
企業という組織中心ではなく、ミッション、プロジェクトをベースとした人間中心のあり方を考えれば、そうなるよね。
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経営理論をどのように実践に活かすかということを考える思考の軸を与えてくれる。
例えば、昨今のオープンイノベーションやコンソーシアム化の流れもTCE理論で説明できるのだろうか?なら旧態依然とした企業は取り残されてしまうのも必然か。
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掛け値の名著
今年のビジネス書No.1は確定でしょう
特にp.41のポーターの戦略を経済学の完全競争と完全独占で表し直したところから一気に引き込まれた
ポーターの競争戦略は古い経済学の焼き直し
と言われているのがよくわからなかったのだがスッキリわかった
また、
経営理論とビジネスフレームワークの違い
経営理論に経済学、心理学、社会学が土台となっている
など分厚い本なのに一気に読めた
蛇足
全ビジネスマン必読、なんて書評書く人が出てくるだろうけどこんなの読もうとする人、読んで理解できる人なんて1割りもいないよ、、、
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まさにStart with Why!
890ページ、「60万字という、とてつもない大著」と著者自身が述べているように、数日レベルで読める本ではないが、単に理論を概説するにとどまらず、そうした理論が生まれた背景を説くスタイルは学びの役に立つ。
「世界標準の経営理論」ダイヤモンド社、入山章栄著
1日1冊番外編
https://amzn.to/2S9szNZ
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経営学部の学部3年次という立場で読みました。
この本を読んで「経営」を勉強していたつもりが、経営学の立ち位置や理論やその理論同士の関係性について全く知らなかったのだと気づくことになりました。その意味では、「高い視座から経営学を勉強できるようになった」というのが1番の収穫です。
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■序章
・理論とは下記3つに応えていることが条件。
①因果関係(how)
②理論が通用する範囲が明示(when)
③なぜそうなるか(why)
・ビジネスで経営理論が求められる理由は
①whyの説明がないと人は納得しないから(人を束ねて同じ船に乗せるため)
②汎用性が高い。つまり考え方を理解すれば応用が利く
③時代を超えて不変(一時の流行で変わる考え方ではなく本質)
・3つのディシプリンがある
①経済学ディシプリン
②心理学ディシプリン
③社会学ディシプリン
・理論とフレームワーク(fw)の違い
fwは分類・整理だけだったりパターン化を提示するので、思考停止する。
理論はwhy,how,whenから思考を促す。
■1章 SCP(理論)
・SCP理論は利益が出やすい業界とそうじゃない業界があることを教えてくれる。
利益率を左右する要素として
①市場価格のコントロールし易さ(価格競争に陥らない)
②参入障壁、撤退し難さ
③価値のある差別化(コモディティ化しない)
の3つが変数として考えられる。だから独占・寡占が儲かる。
・さらに業界だけでなく一つの産業での企業間のポジショニングの「移動障壁」がある。無茶するとstuck in the middleに陥る。
・こうした考えからポーターの基本戦略の一つ、「差別化戦略」が導かれる。
・最近のプラットフォーマーも同じ理論で説明がつく。
GAFAなどはユーザーが増えるほどに効用が高まる(ネットワーク効果)ビジネスモデルを持ち、ティッピング・ポイントを超えるとますますユーザーが増えて参入障壁は非常に高くなる。
■2章 ファイブフォース(fw)
・独占に近づくほど収益性が高くなるというのがSCP理論の含意だが、ファイブフォームも産業の収益性は5つの要因で説明できると考えている。
・5F分析は産業単位だけでなく、よりミクロな視点で行うことで実質的なポジションを示唆してくれる。
・ただしこうした産業構造だけが企業の競争力と収益性を規定していると考えるのは早計で、企業固有の要因も影響しているとの論文も多数ある。
■3章 リソース・ベースド・ビュー(理論)
・企業固有の要因に着目したのがRBV。しかしSCPと同じ点は完全競争の条件から離れることで独占に近づけて収益性を高めるために何をしたらいいのかという考え方。
完全競争の条件として「企業のリソースはコストなしで移動できる」というものに着目し、RBVは価値のあるリソースを独占することで収益性(競争力)を高めるというアプローチに立つ。
・バーニーが提示した命題
命題1:企業リソースに価値があり(valuable)、稀少な(rare)時、その企業は競争優位を実現する。
命題2:さらにそのリソースが、模倣困難で(inimitable)で、代替が難しい(non-substitutable)時、その企業は持続的な競争優位性を実現する。その時のリソースの模倣困難性は、蓄積経緯の独自性、因果曖昧性、社会的複雑性で特徴づけられる。
・一方でRBVの課題としてはfwが少なく使いづらい、行動に移しにくいという意見も多い。その���処法としてはアクティビティ・システムで複雑性を図式化することが有効(システム思考)。
■4章 競争の型
バーニーは企業の競争の型には3つある、と主張する。
①IO型の競争
産業組織論(Industrial organization)に基づく競争で、産業などの構造的な要因が企業に大きな影響を及ぼしていると考える。
そのため、市場構造・競争構造に障壁を作って、「ライバルとの激しい競争を避ける」ような戦い方を取る。差別化はそのための一手段。
②チェンバレン型の競争
一方でこちらは「競争したうえで勝つ。そのためには自社のリソースを鍛える」という考え方。
③シュンペーター型の競争
不確実性が高いので事前の予測や計画通りにうまくいくことは少ない。「試行錯誤して色々なアイデアを試し、環境の変化に柔軟に対応する」というスタイル。
そして業界ごとにどの型の競争に近いのか、という視点を持つと示唆が得られる。
例えば、IO型の競争例ではアメリカのコーラ業界は大手が多額の広告費を支出し、小売業者とも密な関係を持ち、多くのシェルフスペースを押さえることで他社が参入しにくくしていた。チェンバレン型では自動車などが挙げられる。シュンペーター型はハイエンドの家電メーカーなど。
■5・6章 情報の経済学 エージェンシー理論(理論)
・この理論ではすべての人が同じ情報を持つという「完備情報」の仮定を疑うところから「情報の非対称性」を考える。
・情報の非対称性がある場合「アドバース・セレクション」(逆選択)が発生しうる。
逆選択とは、プレーヤー間での情報の非対称性から片方が嘘をつき、結果として望ましい取引ができなくなること。例として、就職活動、保険ビジネス、中古車取引など。
・さらに例えば保険に入った後は「前みたいに注意する必要はない」と考える可能性もある。そのことをモラルハザードという。
・モラルハザードの対処法を考えるのがプリンシパル=エージェント理論。
・モラルハザードが高まる条件は2つある
①「目的の不一致」(プリンシパルとエージェントの目的)
②「情報の非対称性」
それぞれの解決方法も提示されている。
①「インセンティブ」の提供 → 「目的の不一致」に対するソリューション
②「モニタリング」の強化 → 「情報の非対称性」に対するソリューション
この理論の使い方としては
「誰がこの問題のプリンシパルとエージェントなのか」
「何が目的の不一致になっているのか」
「目的の不一致を解消するインセンティブはないか」
「情報の非対称性の原因は何か」
「情報の非対称性を解消する無理のないモニタリングの仕組みは?」
などと理論の考え方に基づく問いを立ててみること。
■7章 取引費用理論(TCE)
TCEでよく紹介される例にGMとフィッシャーボディの取引が挙げられる。
あの例をホールドアップ問題と呼ぶ。ホールドアップを引き起こす要因は4つ
①不測事態の予見困難性
②取引の複雑性
③資産特殊性(技術やリソースが特定企業に占有されている)
④機会主義(チャンスがあれば儲けようとする姿勢)
TCEは企業の範囲をどこまで内部化すべきか教えてくれる。
■8章 ゲーム理論
クールノー競争:数量ゲーム、かつ同時ゲーム
ベルトラン競争:価格ゲーム、かつ同時ゲーム
クールノー競争の時はナッシュ均衡は安定的だが、ベルトラン競争だと不確定。
ベルトラン・パラドックス(ナッシュ均衡が不安定のため、結果として両者最悪の選択肢を選んでしまうこと)を避けるための経済学的な視点
①差別化すること
②ビジネスの特性(初期投資が多い業界はクールノー競争に陥りやすい)
そして競争の種類は移行する。例えば多額の初期投資が必要で規模の経済が働く半導体業界はクールノー競争(数量ゲーム)が起き供給過剰になりうる。その後旧製品は価格競争(ベルトラン競争)へと移行する。
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経営理論が網羅的かつ俯瞰的に説明されており、これを一通り読んだ後に別の本などで細部に入ると、どこの勉強をしているかが迷わないので、腹落ちしやすい。
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経営学素人にとってはちょうどいい内容の深さ。思考の枠組みを学ぶという目的においては適切な説明であり、図が多く理解しやすい。800ページ近くあるが、それほど苦もなく読了した。筆者の意図に適う書籍になっている。
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経済学の出発点である「完全競争」の概念の説明に始まり、時代とともに進歩してきた経営理論を時系列・段階的に学ぶことができる。
経営理論の特に重要な目的は、即ち経済学、心理学、社会学のいずれかの人間・組織の思考・行動の根本原理をもって、経営・ビジネスにおける「なぜそうなるのか(why)」を説明することであると、筆者は述べている。
まさに本書で述べられている理論はその通りで、日々のビジネスを思い浮かべながら読み進める中で、所属する組織の状態や自分の思考を客観的に捉えることが出来たことは有意義だった。
特に、イノベーションを起こすためには、「(未知の領域ねな)知の探索」を進める必要があるが、企業・組織は「(既知の)知の深化」に傾斜する傾向がある、という内容は、自分が行動したいと思っていることの後押しともなった。
800ページ超の大作ながら個人的にはその内200ページ程(特に後半)はパラパラ読みで良かったと感じる内容もあったこともあり、星は4つ。
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世界の主要な経営理論30を完全網羅との表紙記載の通り、膨大な量の文字数、ページ数であるが、素人にもわかり易い言葉で解説されている為、思った以上に、スムーズに読み進める事が出来た。
経営者と対話するときなど、経営理論を幅広く理解して、会話についていく事が必要な場面もある為、その観点で自身の仕事にも役立つのではないかと感じた。
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最高の書。5段階評価で10をつけたいくらい。この本で経営学の面白さを知った。様々な思考に視座を与えてくれる。経済学、心理学、社会学と、さらに深掘りして学びたくなった。
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史上初の世界の主要経営理論30を完全網羅した解説書です。
ビジネスパーソンが考え抜くための羅針盤になること必至。
とにかく分かりやすく、面白いです。
800ページの大著ですが、一気に読めてしまいます。
世界の最高レベルの経営学者の英知の結集が、初めて完全に体系化された本です。
経営理論の教科書となる本です。
本書の最後の方にある、「現代の経営理論はビジネスを説明できない」という事実には衝撃でした。
超お勧めです。
面白かった!