紙の本
一人一人の人生
2023/02/13 03:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争で奪われた命、思い、未来。
遺品が届いたことで前を向ける人も、大切な人を追いかける人も、本当にそれぞれ在り方は自由で、綺麗事だけでまとめてない感じがとても好きでした。
物語を進めるキャラが、キャスケットというのもこの作品の雰囲気にぴったりでした。
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『今日は何人撃ち殺した、キャスケット』
統合歴六四二年、クゼの丘。一万五千人以上の自国兵を犠牲にして、ペリドット国は森鉄戦争に勝利した。
そして終戦から二年、狙撃兵・キャスケットは陸軍遺品返還部の一人として、戦死した兵士の遺品や遺言をその家族等に届ける任務を担っていた。
兄の代わりに家を支える少女、
恋人を待ち続ける娼婦、
戦争から生き還った兵士。
遺された人々と出会う度に、キャスケットは静かに思い返す――
死んでいった友を、
仲間を、
家族を。
そして、亡くなった兵士たちの“最期の慟哭”を届ける任務の果て、キャスケットは自身の過去に隠された真実を知る。
選考会に波紋を広げ、第26回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》を受賞した、読む人全ての心揺さぶる圧倒的衝撃作。
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キャスケットが届ける戦死者の遺品、それに関わる人たちの話のパターンが実に多種多様だった。
ストレートに泣ける死者の遺言。
死神なんぞに引き裂かれてたまるかと最期まで互いの想いを信じていた恋人たち。
捻じれた父子の関係性のその先は?
そして……キャスケットと彼の兄官の絆の物語。
最初はキャスケットが届けた戦死者とその家族や恋人の話の方に主軸が置かれていたけれど、後半は後書きにもあったようにキャスケット自身の話へシフトしていく。
戦時中のあることで「変わってしまった」兄官。
死という概念がその人をその人たらしめていたものの消失だというのであれば、今の兄官は果たして生きていると言えるのか。
そんな苦悩の中、「死神」と呼ばれ忌み嫌われる仕事を続けるキャスケットが見出したのは。
身体も心も壊された筈の兄官が守りたかったものが見えた時、作中の世界ががらりと色を変える。
あの瞬間の衝撃は忘れられないものとなった。
キャスケットは生まれ育ちが訳ありで文字も碌に読み書きできないほどだった。
そんな彼は愚直なまでに素直。
一方で作中で描かれる世界は決してやさしくない。
醜い部分、残酷な部分も敢えて遠慮せず描いているので、死者の想いやキャスケットの素直な部分がより輝いて見える。
影が濃くなればなるほど、光もまた眩しくなる。
その光を守りたかったのだろう、あの兄官は。
キャラクターノベルでありながら、死について、絆について、家族の在り方について、様々なことを考えさせらる奥深い作品。
「胸が震える衝撃の一冊」の謳い文句は伊達ではない。
最後まで読み切った時、改めてタイトルの『遺骸が嘶く』の意味が一段と奥深いものになる。
その驚きを是非読んで体感してほしい。
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蔑称としてのライトノベル?ヘビーノベルですよ本作は。
主人公のベテラン兵士が、遺品を遺族に届ける亡くなった兵士4人の遺族へ遺品を届ける小説。死を遺族だけでなく、死んだ本人の両方の視線で捉えてており、登場人物達への描写が深い。
無駄のない計算された構成、設定、描写、最高の小説。
兵士本人だけでなく、銃後の家族を不幸に巻き込むも戦争の悲惨さを訴えつつ、亡くなった人の魂は影響を与えるというメッセージも鋭い作品であった。
女子受けする表紙からは想像以上のできない絶対に読むべき作品。
デーヴ・グロスマンの名作「戦争における人殺しの心理学」も参考にしているところがシブい。
著者の作品は今後もマークせねばならない。
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本当に新人作家さんが書いたの⁇
兵士の遺品を家族に届けるお話が複数。それぞれ少しずつ絡まっている。
戦争の惨たらしさ、残された遺族、色々な心情が丁寧に書かれていると思う。
続きが出るのかな?
ぜひ次の作品も読んでみたい作家さんです。
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少し想像しにくい部分もあったが、面白い作品だった。戦争により歪んでしまった価値観、歪になってしまった人間関係が、修復、とまではいかなくても、死者が、そして当人たちが望んだ方向に少しずつ戻っていく。
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凄惨なる戦いで狙撃兵として活躍したキャスケットは、戦後遺品を遺族に届ける任に着く。
遺品を受け取った遺族のそれまでとその後、戦死した者のその時の状況が交互に展開する。
遺族へ手紙を届けながら文字が読めない彼は自身に届いた手紙が読めなかった。
それを読めるようになった時、彼がどんな生い立ちだったのかが分かる。
誰もが大きな傷を負いながら未来へ、または違う世界へと歩んでいく姿に合わせ、その生い立ちから人間味が欠落していたキャスケットが徐々に人らしくなっていく。
でもその時には最も大切にしていた人たちがいない。それが悲しい。
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最初はよくある話。
途中からオリジナル感のある話になったなと感じられた。連作短編が、最後に長編になるのがよかった。
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これまたAmazonのレビューが酷評で、どうかなと思ったけど新人賞ってこうだよねーーー!!という感じでした。確かに文章を拙く感じる部分もあったけど、荒削り上等。それなりに集中して読めました。