欧州最高峰の知性が徹底的に分析
2020/04/14 11:35
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
紀元前2400年ごろの宰相プタハホテップは、「人間は腹を空かすと文句を述べたがる」と記している。食事は発言ならびに自己主張の場であり、権力者は宴を催した。これが饗宴の先駆けだ。人類の古今東西の「食」の歴史を渉猟した上で、「未来の食」への提言もある。アタリといえども欧州それもフランスが思考の中心であり限界感もある。
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読んでいて何度か笑いを抑えきれなかったのは、フランス人の典型的な”エスプリ”という名のセンスの悪さが露呈している点で、我々の大嫌いなフランス人っぽさが文章全体から滲み出ており、可愛らしさすら覚えてしまう。
”美食家”ということになっているフランス人が食の歴史を書けばどうなるか。大方の予想通り、当然アメリカ流のファーストフードなどへの呪詛の言葉が本書は中心を占める。その点で私が大嫌いなフランス人っぽさが満開であり、内心ほくそえんでしまう。
ところで、やたら昆虫食が食料問題を解決する手法として取り上げられるのだけど、ジャック・アタリに進言したのは誰?腹を切って死ぬべきである。
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人類の誕生以前から生物が何を食べてきたのかを紐解き、現代に至るまで食べることの意味に光を当てる。そうすることで、この先人口が増え続けるこの惑星において我々が何を食べていくのかを見ていくことになるが、未来は明るくない。
肉や魚、農地は足らず、昆虫を食べるにしてもアレルギーへの注意や、そもそも昆虫が足らないということもある。格差によって食べるものが階層化されることになるだろう。今まで食べてこなかったものを食べ、食べる量を減らす必要もあるだろう。あるいは、人間を食べるというカニバリズムを歴史的に復活させるのだろうか?
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GW前に図書館の新着コーナーで見つけた。
とにかく恐ろしいほどの情報量だ。
多くのトリビアがあるが、コンビーフがアイルランドの塩漬け牛肉で、フィッシュアンドチップスが工場労働者用(1860年)のファストフードだったんだ。なるほど。他に「第6章 食産業を支える栄養学(20世紀)」ではアメリカの工業製品としての食品の隆盛についてあれもこれも惜しみなく語られている。のちの章では近未来の色では昆虫の利用までも語られている。
本書でさりげなく使用されている「ノマド」、古くは遊牧民を指すが、現在以降、工業製品を個食で消費する我々を指しているようだ。著者が食のあり様を冷静に予言していることに、より一層の恐ろしさを感じる。
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興味深い話だったが、いかんせん終盤近くまで単調な事実の羅列が続くのが辛かった。歴史を知るのは大事だし、それれに1つ1つの事実は面白くて、例えばフランスが文化的に食事を大事にしてるのとかよく分かったが、箇条書きのような文章には正直辟易してしまった。
ただ、大きな食品会社が食文化(人間にとって必要な行い)を破壊してるのはなるほどその通りだと思ったし、資本主義への批判はハッとさせられた。
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ジャック・アタリ著、林昌宏訳『食の歴史』(プレジデント社、2020年)は食をテーマに歴史を語る書籍である。現代の飽食の傾向に警鐘を鳴らしている。2018年は13億トンのも食糧がゴミとして捨てられた。これは地球で生産された食物の3分の1に相当する。飽食の時代の恐るべき無駄である。フードロスの削減はSDGsでも掲げられている。飽食の時代からの脱却が必要である。
一方でステレオタイプな論調を感じる。先進国の貧困層は、家計費に占める食費の割合を減らすために新鮮な食物よりも、食品業界が工業的に作る安価な食品を食べているとする。この対比は理解できるが、その例として貧困層が赤肉と鶏肉を過剰に食べ、野菜と果物をほとんど食べないとする。これはどうだろうか。肉を食べて野菜を食べないことは値段の問題だろうか。肉よりも野菜の方が安いのか。
処方箋も疑問である。消費者に求められる行動として、家計に占める食費の割合を増やすこととする。フランス人全員がより健康な食生活を送るために1日当たり0.1ユーロ余分に支出すれば、フランスの農民の収入は毎月およそ250ユーロ増えるとする。これでは事業者が豊かな生活を送るために消費者がもっと高価なものを購入してとなってしまう。
そもそも貧困層は食費を節約するために現在の食生活になっているとしたら、家計に占める食費の割合を増やすことは非現実的な要求である。日本では消費者に歓迎される野菜にモヤシがある。モヤシは工場で生産されており、それ故に安価に供給される。野菜の消費を増やしたいならば植物工場による供給という方向性も考えられないか。
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欧州最高峰の知性が徹底的に分析!食に関する歴史、未来を知れば、政治、社会、テクノロジー、地政学、イデオロギー、文化、快楽等も一挙にわかる。(e-honより)
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人類の歴史は、食の歴史。文明の発展は食にまつわることから。そして、人間関係から生まれる円滑な社会も。人類の初期から中世ヨーロッパの食の歴史が面白い。
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第5章辺りまでは延々と「食の歴史」の羅列で辟易したが、近現代以降の話は示唆に富む。
糖質の過剰摂取や過食、水質汚染や土壌破壊を含む地球環境の変化による生物多様性の喪失、なんかは「言うまでもない」だが、大手食品会社のえげつなさは昆虫食より過激…(-_-;)
インドのダッバーワーラー紹介とか、イタリア人よりフランス人のほうがピザ消費枚数は多いとか、人口に占めるヴィーガンの割合が多いのが英国(10%)とか、小ネタも抜かりない。
でも、今後の展望として、昆虫食の懸念(キチンが甲殻類由来のキトサン同様にアレルゲンとなる可能性とか、ポリネータとしての役割とか)を真剣に検討しているのは、あー、生理的にナンでして……(-_-;)
結局のところ、健全な食習慣は私とあなたと同胞と地球を守る。考えて行動しよう。
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欧州最高峰の知性などと呼ばれている作者のことは恥ずかしながら名前だけ聞いたことがある、程度だったのだけど凄い人なんですな…「政治・経済・文化に精通することから、ソ連の崩壊、金融危機の勃発やテロの脅威などを予測し、2016年の米大統領選挙におけるトランプの勝利など的中させた」んだそうで欧州のエリートって桁違いだったりするしね。そんな人が語る食の歴史はいかなるものか、という興味だったのだけど…確かに食の歴史、については語っているがそれは前置きに過ぎず極論すればいろんな歴史家の言ってることをサマライズしただけであって本当に作者が言いたいことは後半の三分の一くらいにある。つまりこのままでは人類の食は保たなくなる、ということでつらつらと来し方を述べたあとに現時点の欧米スタイルの食~個人で短時間に工業製品的な食を大量に摂取する~がいかに劣悪であるかがかなり暗いトーンで述べられている。作者によると近い将来の我々は食に関しては次の5つに分類されるようになるのだという。1つ目は裕福な美食家、2つ目は健康に気を使ったものを食べる食通、3つ目は美食家や食通を真似ようとする上位の中産階級、4つ目は工業的に生産される食品を主に食べる下位の中産階級でこの層が多数派、そして5つ目が最貧層でこの層は工業製品的な食品と良い言い方をすると伝統的な食品を食べる層、になる。資源は限られている上に減っていくが人口、特に後半の層が増えていくために食の未来は惨憺たるものと予想されておりそこには異論はない。そして作者の提言は地産地消でありいわゆる地中海的な食へのシフトであったりするのだけど残念ながら自分の読解力ではそれは全体の解決にはならんだろう…ということで正直なところ少し期待はずれかなと思ったのは作者のバックグラウンドにびびって期待が大き過ぎたからかもしれない。俯瞰で欧米の食の歴史を知るには良い作品だとは思った。
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食というか人間の歴史を読んでる感じ。食だとわかるけれど。人間になる前の言葉を使っていないときの話に興味が湧いた。最初はノマドが当たり前なのに驚いた。当然なのかもしれないけれど、食べ物が足りなくなるのが理由で定住化が進んだ。そういう内容がボクには面白かった!
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#flier
世界の人が栄養のある食事をとれるためにはどのようにすればよいか…
アフリカの人々は、肥満の人が多いが、栄養不足の食べ物を多くとっているからときいたことがある
今後の世界の重要なテーマだと思う
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人類と社会の発展の中で食が果たして来た役割を辿る一冊。事細かにデータが列挙されていて広範かつ詳細な下調べを行った上で書いていることが窺える。全体的にやや情報量が多いが、最終章で語られる「すべての人々ができる限りよい食事を楽しめるようにすることが急務だ」というメッセージが印象に残る。資本主義社会の中で徐々に食を粗末に扱うようになった現代人は、かつて食と同体であった会話をほとんど失ってしまった。コロナ禍でより難しくなってしまった会食の意義が説かれている。健康や環境への負の連鎖を断ち、人びとの紐帯を取り戻す一助として「食」を考え直す機会を与えてくれた。
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食の歴史を淡々と描くと言うよりは、食育の要素が大きい。
食べるものではなく、食べることとは何なのか、と言うアプローチは考えさせられる良い機会となった。
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===qte===
農林中央金庫理事長 奥和登氏
人の未来へ思いはせる
2023/6/17付日本経済新聞 朝刊
大分県の山村で育った。
子どものころは魚釣りなど自然の中で遊んでいました。活字への関心は薄く、父の本棚に「レーニン全集」などもありましたが、装飾品のたぐいぐらいにしか思っていませんでした。
大学受験で浪人していたころ、予備校の講師が授業そっちのけで中原中也やランボーの詩を読み上げ、ギリシャ神話や太宰治について熱っぽく語っていました。「こういう世界があるのか」と刺激を受け、自分でも読んでみました。浪人時代の微妙な心理の影響があったのかもしれません。
本当の意味で読書に親しむようになったのは就職した後、30~40代のころのことです。職場まで電車で往復3時間半、主に山崎豊子や司馬遼太郎、池波正太郎の小説を読みました。いったん気に入ると、その人の作品をたくさん読み進める読書スタイルです。
とくに印象に残っている作品の一つつが山崎豊子の『沈まぬ太陽』です。どんなことがあっても負けず、自分の信念を貫き通す。ちょうど自分が管理職になった時期で、大いに励まされました。仕事が難しくなるほど信念を崩さず、心を強く持たなければならないと自分に言い聞かせました。
東日本大震災が起きたとき、復興対策の担当役員になった。
震災の後、被災地の暮らしと農業をいかに再開するかが大きな課題になりました。そのとき改めて勉強したいと思ったのが、江戸時代後期に荒廃した農村の復興に取り組んだ二宮尊徳です。関連書をいろいろ探し、読んでみたのが『怠れば、廃る』です。著者の八幡正則さんはJAグループの県組織に勤め、破綻したある地域農協の処理に尽力した人です。
協同組合運動には様々な理念がありますが、この本を読んで再確認したのは現場での実践が大切だという点です。組合員が何に困っているのかを徹底して聞く。絶対に東京の机の上だけで考えてはいけない。そう自分を戒めました。福島と宮城、岩手の各県に週2日のペースで通い続けました。
理事長になる前の3カ月間は、明確な目的をもって読書をしました。様々な知識をもとに懸案に対処しなければならないのは当然ですが、もっと必要だと思ったのは心の状態を整えることです。すべての責任が自分にかかってくると考えると、いかに平常心を保つかが重要だと思ったのです。
そのころ読んだのが、ニクソン元米大統領の『指導者とは』です。ウォーターゲート事件のイメージぐらいしかなかったのですが、チャーチルや吉田茂など各国の指導者のどこが優れているのかが紹介されていて、引き込まれました。「ビジョンを持って周囲を納得させ、人々を動かす」というメッセージが心に響きました。
こうしてふり返ってみると、何か仕事のヒントにならないかと思い、どこかで関連する分野の本を読んできたように思います。それが書物へのアプローチの仕方の中心でした。
新型コロナウイルスで以前とは違う本も読むようになった。
コロナで会食の機会がなくなり、読書にあてることができる時間がぐっと増えました。「世の中はこの先ど��なるんだろう」と考えても、答えはなかなか見つかりません。そうした中で読んでみたのがユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』です。
どうしてホモサピエンスは食物連鎖の頂点に立つことができたのか。そんなテーマについて、著者一流の切り口で整理してくれています。非常に刺激を受け、『ホモ・デウス』や『21Lessons』へと読み進めました。私にとって現在進行形の読書でいろいろなことを考えさせられます。
これをきっかけに手塚治虫の『火の鳥』シリーズも電子書籍で読み直してみました。高校時代から好きな作品ですが、改めて読むと「自分の知らないことはこんなにたくさんあるのか」と気づきます。物語の表面的な部分ではなく、哲学的な視点や宇宙観に驚かされます。
コロナでデジタル社会の行方や人類の未来に思いをはせるようになり、読書の楽しさが増えました。
(聞き手は編集委員 吉田忠則)
【私の読書遍歴】
《座右の書》
『サピエンス全史(上・下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、河出書房新社)
《その他愛読書など》
(1)『火の鳥』(手塚治虫著、手塚プロダクション、全16巻、電子書籍)
(2)『沈まぬ太陽』(山崎豊子著、新潮文庫、全5巻)
(3)『怠れば、廃る――二宮尊徳に学ぶ協同の魂と幸せの条件』(八幡正則著、22世紀アート)
(4)『指導者とは』(リチャード・ニクソン著、徳岡孝夫訳、文春学芸ライブラリー)
(5)『貞観政要』(呉兢著、道添進編訳、日本能率協会マネジメントセンター)。リーダーには厳しいことを言ってくれる人が周囲にいることが重要だと学んだ。
(6)『天佑なり(上・下)』(幸田真音著、角川文庫)。財政問題に信念を持って取り組んだ高橋是清の物語。
(7)『食の歴史』(ジャック・アタリ著、林昌宏訳、プレジデント社)。食に関する本は手当たり次第に読んできた。
おく・かずと 1983年東京大学農学部卒、農林中央金庫へ。リーマン・ショック時の危機対応や東日本大震災の復興などを担当し、2018年から理事長。
===unqte===
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/220325_pr106_05.pdf