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『貞観政要』から読み取る「修己治人」の理想の君主(リーダー)像
2020/11/15 15:40
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投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の歴代王朝は、周辺諸国の一つ、海を隔てた隣国日本に重大な影響を与えてきた。「漢」によって統一された漢字。黎明期の日本(倭)が記述された「魏」の歴史書(魏志)。日本で着物(呉服)に発展した「呉」由来の服装など枚挙に暇がない。
「唐」からは都長安など城郭都市の造営が、平城京や平安京に活かされた。唐の律令制度は天皇中心の集権国家を目指す手本となり、先進大国「唐」の文化芸術、宗教習俗などが遣唐使派遣の官吏や学僧などを通じ、日本に流入した。
中国伝来の文物は後々「唐物」と総称されたが、唐辛子、唐黍、唐三彩などは音読みで、唐揚げ、唐手(空手)などは訓読みで、今日まで残っている。
本書は、太宗李世民とその側近たちの君臣問答を後代の歴史家が纏めた『貞観政要』から、中国古典の造詣が深い著者がリーダー学(帝王学)のエッセンスを引用解説した入門書、現代社会の組織リーダーに向けた人心掌握と組織運営のための手引書だと言える。
太宗の善政は偶然がもたらしたものではない。民衆の安心を願った君主(リーダー)が国政を担う人材を発掘、登用することを意欲し、補佐役の重臣たちが君主の威令を懼れずに諌言や進言をおこない、君主がこれを容れる度量を示し続けて初めて実現したのだ。
部下からの「諌言」を疎んじ、「甘言」に耳くすぐられるだけの上司(リーダー)では、組織は機能しない。信頼関係の欠けた組織は、国だろうが会社だろうが、人材活用の仕組みや用意がなく、有為の人材が見過ごされ、早晩瓦解する。
君主(リーダー)たる者は、まず己の身を慎み、家臣(部下)の意見を謙虚に聴き、理があれば採り入れる。考え方や経験値が異なっても、有能な者たちを選り好みせずに側近に登用すべきであるとの「修己治人」の理想的リーダー像を著者は説く。
玄武門の変の敵(廃太子)側に仕えていた魏徴らを自らの側近に招いた太宗李世民の大度も然ることながら、自問自答しながら政務に努めたこの君主(リーダー)には、時に剛直な諌言で、時に風諌で諭して太宗の治政を支えた王佐の臣に恵まれたことは、必然にして当然な幸運(天運)だった。
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中国史上、最も繁栄を謳歌し安定した政治が実現
2008/08/17 23:02
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国史上、最も繁栄を謳歌し安定した政治が実現できたとされる唐の李世民の時代。彼の言葉と彼の側近との間で交わされた会話から、政治とは?皇帝とは?家臣とは?などの道を示されています。
いまも昔も真理は変わらない、ということなのでしょう。
一番印象に残っている言葉
「守成と創業いずれかが難き?」
要するに創業者と二代目のどちらが大変かということについての問答。
結論、創業には創業の苦労があり二代目には二代目の苦労があるということ。ただし、創業は創業者が持っているバイタリティが大切だが、二代目は理論に裏打ちされた行動が求められるということ。
最近は、事業承継ブームですが、二代目社長にはありがたーいお言葉です。なぜなら、勉強すればそこそこうまくやれるということだからです。
http://blog.livedoor.jp/c12484000/?p=3
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貞観政要とは、貞観の治で知られる唐の太宗の政治の要綱である。この太宗は、中国の歴史上、特出した知性を行った皇帝の一人である。過信からの諫言を奨励したことでも良く知られる。家康の言った通り、諫言は難しい。部下からの正しい指摘をあるべき姿勢で聞くことが出来る人は少ない。言い訳や、無視はまだいいほうで、逆恨みさえされる。自分はそうでないと言い切れるマネージメントをしようと心に深く刻み込みました。
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感想は、こちら → http://mdef.blog29.fc2.com/blog-entry-81.html
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この本は組織のリーダや政治を志す者にとって、とても参考になる。繰り返し同じ教えが出てくる。「民は水、君主は船」、民のことを考え決して民を欺くことや疲弊させることなく、民のおかげで君主は船を浮かべることができるのだと思うことである。それ以外にも多くの教えがあるが、今の日本の政治を見ると逆の状況になっていることも多い。天皇や徳川将軍が歴代読んできた、論語、書経などの四書五経と、この貞観政要。それだけ価値のある本だと思う。一つずつでも自分の生活で心がけていこう。
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・きっかけ
トップの紹介
・感想
4年前に読んだ本。
当時は読書習慣がなかった時期であった。
読書習慣が身に付いた今読み返すと、現代の名著に記されている内容と同じことが述べられていることに驚かされる。
時代が変わっていくなかでも、リーダーに求められる態度は変わらないものであると知った。
心に残ったフレーズはこれ。
知ることの難きに非ず、行うこと惟れ難し。
行うことの難きに非ず、終うること斯れ難し。
知ることはむずかしくない。実行することがむずかしいのである。
実行することはまだやさしい。最後までやり通すことがむずかしい。
その通り。
原理原則を学んだ人でも、実践し続けられている人はどれほどいるだろう。
プロフェッショナルを目指すものとして、心に留めておきたい。
・アクション
今までの”アクション”を振り返り、一つ実行する。
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前にも書いたが、貞観政要とは、貞観の治で知られる唐の太宗の政治の要綱である。この太宗は、中国の歴史上、特出した治世を行った皇帝の一人である。家臣からの諫言を奨励したことでも良く知られる。家康の言った通り、諫言は難しい。部下からの正しい指摘をあるべき姿勢で聞くことが出来る人は少ない。言い訳や、無視はまだいいほうで、逆恨みさえされる。それが元で、地方や、子会社へ...なんてことも。自分はそうでないと言い切れるマネージメントをしようと心に深く刻み込みました。
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貞観政要は、唐王朝の二代目 太宗李世民626〜649年のお話。帝王学、トップの心得をまとめたもの。
この本は、遣唐使で伝えられて、明治天皇、昭和天皇や尼将軍の北条政子、徳川家康も愛読していたほど。歴史ロマンがある。
いつの時代にも、トップやリーダーは重い責任を背負っており、それなりの覚悟が必要で、本書から学んできた歴史がある。
本編は、全十巻もあるそうで、それを筆者が編集してくれた親切な本となっている。
いずれもシンプルなメッセージで、事柄ではなく人に向けた教訓で、心に響く。
◇創業か守勢か。
創業、守勢とも、それぞれで大変であるが、築き上げたものを、守りながら繁栄させていくことは、難しい。
その心得となるのが貞観政要。
◇我が身を正す。
トップは部下の手本、信頼を得て説得力を持つには正しく自分を戒めなければならない。
これを維持するためには、手本となる人を見つけたり、古典に学んだり、緩んだ時に諫言をくれる部下との信頼関係を築くことが必要。
またトップの信頼がないと部下は、従っているように見えて、心服していない。これでは長続きしない。
そして、どんなに名君であっても、人間なので失敗、緩む時がある。部下、周りから諫言されても、我が身を正すという観点で受け入れることも大事。これはわかっていても難しいこと。
◇緊張感を持続する。
政治が安定している時にこそ油断なく、緊張感を持って臨むことが重要。
気付いた事があれば、心の中に思っている事があれば、遠慮なく口に出さなければいけない。
このことは、トップだけがではなく、組織全体でその覚悟・意識を持っていなければならない。
全ては、小事から大事に至る。
少しの気の緩みで、これくらいはいいだろうということがいけない。
将来の大事に至る小事を見極めるのが、トップの仕事。
◇諫言に耳を傾ける。
トップも人で暴走する事がある。
おべんちゃらを言う部下は可愛いが、気がつけば周りは全て茶坊主という事態となる。
本当の情報があがってこなくなり、判断を誤ることになる。
そういう意味で外部からの経営幹部を受け入れることは、腐敗を排する有効な手段なのだろう。
◇自己コントロール。
欲は、何かを成し遂げるには良いが、制限が効かないという特性がある。また無欲だと発展が無い。
名君と暴君は、自己コントロールにかかっている。
私利私欲に向かない、無私、自己犠牲の精神で人民を引っ張る。公の心を持つ。
上杉鷹山が領内より罪を犯した罪人が死刑執行の際、自身の反省として自室にこもる。法を犯す者を出したのは上の責任だとして、自分の罪と捉えている。
すごい。
◇謙虚にそして慎重に。
リーダーは責任がある。皆の生活に責任があるのだから、慎重に判断し、負けない判断が必要となる。
そして謙虚でないと、部下も聞いて��らえないと思い諫言はしてくれない。
◇初心忘れるべからず。
はじめは熱意を持って取り組むが、無私を何年も続けると、緊張感が緩んでくる。
自身の心の状態を知ることが大事。
太宗が完璧ではなく、少しゆるんだり人間的な面を見せることも、親しみやすく、この本の守勢の難しさに説得力を持たせている。
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貞観政要は唐の二代皇帝大宗が治めていた時代の家臣と皇帝のやり取りをまとめたもの。トップの心構えを学ぶのにこれ程の名著はない。
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帝王学を学べる
徳川家康や明治天皇、北条政子が学んだと言われる中国古典の「貞観政要」を解説した本。
物事には大きく、創業と守成があり、創業は何かを立ち上げること、守成はそれを守り発展させていくことを指す。
中国の古典の多くは帝王学(リーダー学)であり、この本も帝王学の一種。
大きく三つのポイントを学んだ。
・率先垂範、わが身を正す
・臣下の諫言に耳を傾ける
・人材を育成し、登用し、活用する
「率先垂範、わが身を正す」に関しては、自分自身が一番気を引き締める必要があるということ。このマインドが帝王学の出発点。
「臣下の諫言に耳を傾ける」に関しては、諫める人間の言うことは耳を傾けるべきということ。中国では忠臣であることより、良臣であることが美徳とされるのは面白かった。
「人材を育成し、登用し、活用する」に関しては、人材を求め、適所に配置し、能力を引き出すのが重要ということ。人へのこだわりの重要性を実感させられた。
中国の古典を読んでみたいが、少しハードルが高いという方にオススメ
徐々に重めの古典にも手を出していきたい。