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紙の本
福島第一原発事故による土壌汚染の対策にまつわる不正の数々を暴くノンフィクション
2021/06/17 14:48
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
福島第一原発の事故で放出されたセシウムなどの放射性物質は、その折に吹いていた南東からの風に乗り、北西方向へ運ばれて風下の地域に降り注ぎました。
福島県南相馬市や、飯館町などは計画的避難区域となり、自治体単位で避難を余儀なくされるケースが続出しました。ところが、その地域に隣接する伊達市では計画的避難区域は設定されず、除染によってその地での生活を継続するという判断がなされました。一見、建設的な判断を下したような印象を受けますが、その実態は本書を読むと180度覆ります。
放射線の強度が強い場所が面的ではなく、点として偏在するからということで住民の自宅毎に放射線を測定して「特定避難勧奨地点(以後、”地点”と表記します)」という概念が設定されました。すると、お隣さん宅は地点に指定されるのに、我が家は指定から外れるという状況が発生します。しかもその測定は”わざわざ”測定値が小さくなるような場所を選んで測定されました。地点に指定されれば、各種税金や医療費などの公共サービスの支援が受けられますが、指定から外れるとそれは受けられません。たった数か所の測定地で指定となるか、外れるかで住民間に修復し難い不公平感が残りました。
”除染によって放射線のレベルを下げる”と謳いながら、その地域の子供たちを避難させることもなく、どんどん普通の学校生活への復帰を進める行政。「除染が必要な程の地域を子供たちに通学させ、生活させる前に、まず避難させてから除染して欲しい」という親たちの願いは聞き届けられませんでした。
やがて、伊達市の子供たちの甲状腺異常が見つかりますが、それも「ただちに危険はない」等という決まり文句で片づけられ、それでも行政に子供たちの避難を求める親たちは「過剰に心配性の親」とレッテルを張られて地域からも孤立してゆきます。
伊達市は全市民に個人線量測定計を配付しており、いかにも市民の健康に配慮しているという印象を与えますが、その測定結果は市民の大半の了解も得られないままに除染の基準設定をより緩い基準へと見直す際のデータとして供与されていたという事実も判明します。これらの一連の伊達市行政の暴挙ともいえる行為を、地元出身の著者が子供を持つ地元住民からの聞き取りから丹念に浮かび上がらせたノンフィクションです。
本書の「心の除染」は子供の避難を繰り返し求める親たちに対して伊達市長の「過剰な不安感を拭い去り、”心の除染”に取り組む事で、安心して生活をしてもらうための活動を進める」との発言から採られたものです。
原子力を取り巻く各種団体や、行政の向かう方向が一致してしまうと”結論ありき”で暴挙に走りだし、ここまで酷いことをやってのけるという恐ろしい事実を浮かびあがらせています。
紙の本
見えない恐怖
2020/06/28 11:36
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
故郷を奪われた人たちの苦悩が痛切です。住民に真実を伝えようとしない行政に、根強い不信感を抱いてしまいます。
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