本当に終わってしまった…
2020/08/01 01:59
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投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ大滝詠一なのか、なぜ青に重きを置いてそれをモチーフとしたのか。それらの断片をきれいにお話の核としてまとめてくれた。
めくるめくダジャレ、掛詞、縁語、類語、誤読、同音、それに派生するボケ、音韻の世界で多重構造の世界を作り、最後は松本隆の本歌取りで締める妙技。
このあたり『君は天然色』の制作当時の挿話に触れてみても面白いかも知れない(そんな有名な話とツッコまれそうだけれど、)。
永井博・わたせせいぞう・鈴木英人(えいじん)のように見えて、南国の雰囲気や陽気さを感じさせない、意図的に廃したようにも見えるカラーページ。
この後の嵐や波乱を告げているようで実に落ち着かない、そして白黒の本編はオチつかない。
(オタク層がメインの消費者となったいま市場がその価値を理解できるか…)
後天の疾患で色覚を、光をも失いつつあった姫の母。
視神経の機能不全が始まる大変な難病であり原理も機序も不明、予後も非常に悪い。
これを書いている私も異常3色覚で明度が鈍く視力も悪い。赤緑の区別は付きにくくその代わりに青系が一色多いヘンな色覚である。
(なおネットにあふれる「補正できる」「治療できる」「こう見えている」は全てウソです)
線描しか出来なかった私でもPC上ならCMYK/RGBに色を分解して適切に着色できるようになった。技術と文明の賜だ。
作中作『きんたましまし』はもちろん『風のタイツ』がどうゴルフマンガなのか、どう完結したのか非常に興味がある。
できればどこかでお目に掛かりたいものである。
連載は終了し晴れて「むしょく」(1巻・5号「あとがき」)の身になった久米田康治。
目下の新型コロナウイルス禍で仕事がないのは私も同じ(だいぶ怠けたので「久米田康治ワールド wikiサイト」でも更新しまくってやろうかw)。
妻を支え続けた可久士、その当人も事故の昏睡から目が覚め多くの人に支えられ復帰を果たしている。
過去作にも難病や寛解しない疾患は幾度も登場しており、人の支えと言葉も含めた縁は共通するテーマなのかもしれない。
「グレースケールでも色なんかいくらでも出せる」あらゆるジャンルの作家に影響を与えた熊倉祐一がかつてそんな事を述べていた。
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投稿者:ひなの - この投稿者のレビュー一覧を見る
という感想を作者さんが喜んでくださるかは分かりませんが、ほんと、「なるほどっ」と思いました。
『かくしごと』最終巻。
アニメから入って、どうしても続きが読みたくて、こちらの電子書籍でセットで出てるのを全巻買いした上で待ちに待った最終巻。
アニメとはちょっと違って、でも現代編がカラーじゃなきゃいけない理由も分かって、ほんと、「なるほどっ!」という感想。読んでよかったです。
私は電子書籍で買ってしまいましたが、作者氏は紙の本を読んでほしいようなので、どっちでもいい方には紙の本おすすめです。
(でも電子書籍のセット買いも満足感ありますよ)
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投稿者:saku_ai - この投稿者のレビュー一覧を見る
アニメも好きで見てました。パパの意識が戻ってよかった!久米田先生のユーモア好きです。
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投稿者:Aki - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み手を選びぶかな、年齢的にいっていないと刺さりにくく感じます。
個人的には共感できました。
「推しの子」のラストにイラつき、キレイな終わり方の作品で検索して、まとめて読みました。
確かに締め方がすごく良かったです。原作者様に読ませたい…
アニメも見ておいた方が良いかな?最後に頭の中で音楽が聞こえてきます。
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とんでもない作品に出会ってしまった気になる最終巻。ほぼ同時期に最終回を迎えたアニメとは同じ展開なんだけど、どこか印象が違ったものになったような
前半はいつものノリ。違うと言えば、冒頭のカラーページが無くなったくらい
『風のタイツ』アニメ化に揺れる後藤プロ。全権を委任された十丸院の酷さはいつもの事として、その次の話で色についてクローズアップしていた点は印象深い
漫画がアニメ化されれば、これまでモノクロで表現されていたものがカラーになる。多くの作家はそれを世界観の広がりとして喜ぶのだけど……。可久士はきっとその点に関してはそれ程喜ばないんだろうなぁ
「白黒原稿でもカラーに見せる事が出来る」と豪語する可久士。そこにはプロとしての矜持が感じられる
まあ、そんな矜持も無垢な姫の前では全く歯が立たなかった点には思わず微笑ましい気持ちになってしまったけど
この巻では他にも「色なんて目じゃなくて脳で見てるんだよ」などと、いつにも増して可久士は意味深な発言を繰り返す
それは作者がこの物語を閉じに来ているのだから有る種当然でありつつ、もう一つの意味として物語に読者を更にのめり込ませる意図があったのではないかと思えてしまう
特に姫の誕生会では時系列を入れ替えるトリックが使われており、「今どのような状況なのだ?」と疑問符を浮かべずに居られない構成になっている。その為に読者はより作品へ集中するような作りになっていたのではないだろうか?
そして読者の集中が最大限に高まった状態で突入する未来編。第1巻の冒頭から展開されていた最終話であり、読者を長いことヤキモキさせていたエピソード
これまでは姫の視点で描かれることが多かったこの未来編がようやく可久士の視点で描かれる事で海難事故に至る経緯や母親が抱えた事情について描かれている
それによってもう本当に様々な伏線が繋がっていく瞬間には思わず感嘆の声を上げてしまったよ…
可久士がモノクロに拘る理由、そして可久士がずっと抱えていた後悔。特に後悔の感情や母親遭難の悲劇が世間に知られてしまった辺りの事情を考えると、可久士にとって姫が10歳だった頃が一番楽しかったというのは充分に頷ける話であるように思えた
だからって目が覚めたのに目の前にいる姫を認識せず記憶を隠してしまうのは宜しくないのだけれど
姫に拠って突きつけられる隠されていた倉庫の原稿
これが呼び水となって可久士の記憶が蘇る描写がもう最高過ぎる!これまでの表紙になぞらえて再生されていく姫との思い出、その先に有る姫成長の記憶!
そうして全てを思い出した可久士の最初に一言には思わず笑ってしまったけどね(笑)
こうして「隠し事」は詳らかになり姫に父の仕事は筒抜けになってしまった
こうして親子の間に隠し事はなくなるのかと言えば、そうはならないのが面白い!
これまで可久士は姫に「描く仕事」を隠してきた。一方姫の方には「秘め事」があったという驚愕の展開!
本作では「かくしごと」という単語を使ったダブルミーニング、トリプルミーニングがずっと展開されてきて、それは後藤可久士という名前にも現れていたのだけど、まさか後藤姫という名前にもダブルミーニングが有ったとは全く予想していなかったよ!
いやぁ、これは驚かされた
「かくしごと」は娘に明かされたけど、「ひめごと」は父に明かされないまま
そんな二人を優しく繋げるかのように母親が遺した暗号が「つまらない漫画」を色付け、存在しないはずの家族風景を形にするラストには温かい気持ちになってしまった
久米田康治先生らしい風刺描写を持ちつつも漫画家の父親と無垢な娘の交流を優しいタッチで描き出した本作
何の迷いもなく「この作品を読めて本当に良かった!」と心から言えるような作品でした
久米田康治先生には心から御礼を言いたくなるね
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"「だから 私は必ずこの家に帰ってくるよ
だからお父さんも 必ず帰ってくるんだよ」
「当たり前だろ 必ず帰ってくるさ 姫の所へ」
「うん」"[p.123]
完結。
本巻を読む前にアニメのEDを一度は見ておいた方が良いのでは、という気持ち。
最後の「想い出はモノクローム 色を点けてくれ」で呻いた。
漫画ってモノクロなのが普通で、18歳パートの色付きの方が珍しいな〜豪華だな〜って認識だったけど、最後の最後で想い出はモノクロームを持って来られたせいで、10歳パートの方は想い出だからモノクロだったのだっていう捉え方が急にできちゃうんですよねずるい……。
今までの表紙やカラーパートを読み返したくなる終わり。
かくしごと ノンテロップED
https://www.youtube.com/watch?v=tOv4k7wmzoE
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この巻の扉絵が5枚中4枚が姫ちゃんだけの絵で、寂しそうな表情のものだった。
なんとなく姫ちゃんの一瞬の表情を見逃さずに撮った写真のようにも見えた。
表情とか風景とかまじまじと見てしまう。
アニメになったエピソードも読みたかったと思う。
オルゴールのトライメライには後藤先生のそんな思いが込められていたとは。
それを18才の姫ちゃんが1人のアパート(ロクがいるから1人ではないか?)で聞いているのが切ない。
父の日エピソードの色の話は、お母さんの話にも繋がっていくんですね。
姫ちゃんがキャンバスに向かい描く様子が良かったです。
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"隠し事は描く仕事でした"
漫画家であることを隠している父と娘の日常コメディ最終第十二巻。
記憶を失った可久士に姫が突き付けたものとは?描く仕事は隠し事ではなくなり、悲劇・喜劇のお仕舞へと。
モノクロへのこだわりや、オルゴールの選曲など、終わりに向けて用意したネタのセンスがいい。最後のあえて語調を変えて使われるきめ台詞もヤラレた。姫が語る箱の役目なども含蓄があるしね。
でも、最後ちょっと端折った感じがして、やっぱり少し物足りなかったかな。作品構成上仕方ない面もあるけれど。
久米田先生の次の作品にも期待します。