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「ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだ。」の一節で始まる。
1巻では香港、マカオでの紀行である。香港の雑踏であるが勢いのある雰囲気、マカオでの大小への熱狂ぶりに読み入ってしまう。
【ピックアップした一節】
なるほど、と私は思った。ここは、やはり、並の旅館ではなかったのだ。連れ込み宿か、それに似た役割の旅館なのだ。だから、必要以上にロビーが暗いのだ。だから、ひとりかと訊いたのだ。なるほど、なるほど・・・・。
泊まるところなんて、現地で決めればいい。必要以上に下調べをして、その調べた情報を確認する旅行なんて、なんて無味乾燥なのだろう。
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騒動の渦中にある香港やマカオは今はこの本にあるような体験はできないだろうな。
むかし読んだような気になっていた「深夜特急」を読み直してみた。
ツアー旅行ではない生の現地を味わえる旅の醍醐味を教えてくれる。
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旅に出たくなる本と昔聞いて、旅に出てもよい時期に読もう読もうとしているうちに数年経っていた。
旅には出られないけれど、旅の想像くらいはしたい時期にようやく読み始めるとやはり旅に出たくなったのだった。
香港にアテられていく様子は、自分がもっと若かったら堪らなかっただろうな、という一歩引いている自分に気づくという寂しさを持ってきてしまった。
そんなスパイスも味わえるようになったのかな、自身に投げかけながら経験値が少したまったようだった。
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・〈さて、これからどうしよう……〉 そう思った瞬間、ふっと体が軽くなったような気がした。 今日一日、予定は一切なかった。せねばならぬ仕事もなければ、人に会う約束もない。すべてが自由だった。そのことは妙に手応えのない頼りなさを感じさせなくもなかったが、それ以上に、自分が縛られている何かから解き放たれていくという快感の方が強かった。今日だけでなく、これから毎日、朝起きれば、さてこれからどうしよう、と考えて決めることができるのだ。それだけでも旅に出てきた甲斐があるように思えた。n718
→旅先で予定がないことの自由さって最高だよね。醍醐味。
・上野のアメ屋横丁に似ていなくもないが、露店に並んでいる品数の豊富さと、そこで買物をしている客の熱心さには、格段の差があるように思えた。しかも客は女性ばかりでなく、男性もまたその日の夕食のための一品一品を、あれこれと比較しながら丹念に買い求めていた。 その一帯は露店だけでなく、店舗を構えた商店の密集地でもあった。薬種問屋のエリアがあるかと思うと、金物屋のエリアが続き、生地屋や乾物屋がかたまっている通りもある。 だが、面白いのはやはり露店だ。坂道を一本移るごとに、さまざまな露店を見つけることができる。古着屋、雑貨屋、印刷屋、古本屋などはどこにでもあるだろうが、屋台のテレビ売りや路上の床屋などもいる。 何を商売にしているのかどうしてもわからない店もある。女が石段の上に布を敷き、ただぼんやりと坐っている。すると、そこに老婆の客がやってくる。女は布の上に老婆を坐らせ、その顔に白粉のようなものを塗りたくる。そして、糸を両手で持ってピンと張り、それで顔中をこすりまくるのだ。客が必ず老婆であるところからすると、老人のための美顔術なのか、あるいは一種のヒゲソリかとも思ったが、ついに判断しかねた。 盥ひとつを道端に置き、樟脳で動くセルロイドの舟を商っている店もあり、あまりのなつかしさに、床屋の順番を待っている少年と一緒に眺めていると、アッという間に三十分もたってしまう。 もうキャット・ストリートなどどうでもよくなってしまった。香港は、恐らくあらゆる通りがキャット・ストリートのようなものなのだろう。あらゆるところに店があり、品物があって、人がいる。そのとてつもない氾濫が、見ているだけの者も興奮させてしまうほどのエネルギーを発散しているのだ。 〈香港って街は、なんて刺激的なんだ〉 私は九龍に戻るフェリーの上で、歩き疲れた脚を投げ出しながら、胸の裡で何度もそう呟いていた。n992
→向こうにとっては日常でも、旅する僕らにとっては刺激的なもの。海外を旅するときの文化の違いに圧倒される感じを、こんなに克明に描きたいなぁ。
・僕は全く逆で、どこへ行くにも地図をもっていかないし、ガイドブックの類もほとんど読まない。空港でも駅でも、到着したら町の中央にはどういったらいいのかを誰かに聞いて、そこに行く。そうすると何か起きるじゃないですか。その「何か」に導かれるようにして泊まるところが決まってくる。そうすれば、あとは歩くこととバスに乗ることで大体の街の感じをつかむことはできるし、自由���動いていくことが可能になる。旅先ではいつもそれを繰り返してきたから、事前に地図が頭に入っているということは全くなかった。n2725
→憧れる。すべてを自分の感覚でとらえるなんて、そりゃ時間がある人の旅の仕方なんだけどさ。
・それに、本当に不思議なことなんだけど、例えば一人旅だった「深夜特急」の時は一年余りの旅で三冊分も書くことがあったわけですよね。ところが、友達と一緒だとあまり書くことがなくなってしまう。以前、友人たちと一か月ほどスペインを回ったことがあったんだけど、その時の経験は、一行だね。「面白かった」と。ただそれだけ。n2738
→一人旅の時は、周りの物事に楽しさを見出すしかないからアンテナが前回になるし、アンテナが拾ってきたことをゆっくり消化しない面に落とし込んでいく余裕もある。
・ワイキキのアワライ運河のほとりにアパートを借りて、朝起きて近所のレストランに行ってパンケーキなんか食べて、次にハワイ大学の図書館に行く。そして風に吹かれながら昼寝をしたり、英語の本をちょっとぱらぱらと見たり、自分で持っていた本を読んだりする。12時になると学生食堂で学生に混じって昼飯を食べる。また1、2時間、図書館で本を読んで、それからアラモアナのショッピングセンターにバスに乗って行く。公園の前の海岸でひと泳ぎして、帰りにスーパーマーケットで肉とか野菜を少し買ってアパートに戻ると、すぐに夕食の下ごしらえに取り掛かる。それを済ましておいてから、おもむろにジョギングに出かけ、帰ってくるとビールなどを飲みながら調理をして、秋から冬にかけてならアメリカンフットボール、春から夏にかけてなら野球をテレビで見つつそれを食べる。そして夜10時ごろに近所の飲み屋で一杯飲んできて寝る。理想の1日だね。n2819
→まじ理想。村上春樹っぽいな。
・ハワイというのは日本人にとって最も抵抗の少ない‘外国’。
同じ海辺のリゾート地でも、マイアミみたいなところだとやはりアメリカ本土が持っている威圧感があるけれども、ハワイは風土にも人にも威圧感がない。言葉が通じる通じないは別にして、日本人にとって最も抵抗感のない異国なのはそのせいじゃないかな。香港は威圧感があるわけじゃないけど、人の数の絶対的な多さみたいなものがあって、通過する時に擦れるような抵抗感を覚えるような気がする。
街にあらがうという面白さはあるけどね。n2838
→スッと肌に馴染む異国の街もあるよね。街にあらがう面白さもわかる。特に初めてロスに行った時はそんな感じがした。
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文章が面白くてスルスル読めます。何気ないシーンをここまで面白く上手く描写できるなんてすごい!と感心しながら読みました。
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約50年前に書かれたとは思えないリアルさ。
今からでもバックパックで世界を旅したくなる。
格安のインド航空が滑走後、いつまでたっても飛び立たないので、陸路で香港まで行くつもりかと疑うところは思わず吹き出しました。香港の安宿の正体、マカオの博打にのめり込んだ先に待っていたものは。。。次に何が起きるかわからない怪しさ満点の紀行小説です。
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面白くて読み進めていたけど最後もいい意味で裏切られたというかさすがというか、自分も旅に出たくなる一冊。沢木氏が旅していた時代を旅してみたかったなぁって思う。
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自分が旅をしているかのような感覚でテンポよく読み進められた。香港の街の活気、マカオのカジノの緊張感が特に印象的。自分も旅に出てみたくなる。次も早く読みたい。
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自身も香港旅をしているかのような気分を味わうことができました。
なかなか海外旅行に行けないのでその土地の雰囲気や風景がわかりやすく伝わってきてワクワクする一冊でした。
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2020/08/17 読み終わった
コロナで旅行に行けないので…という訳でもなかったのだけど、心のどこかでそう思っていたのかも。結果的にユーラシア大陸を横断したかのような、雄大な気分が味わえた。
1970年代に、20代の若者が、香港からロンドンまで乗合いバスで行ってみたという話。バックパッカーのバイブルと言われているらしい。波乱万丈というか、いく先々で色んな人に出会い、体験し、それをそのまま綴ったような、生き生きとした文章で、全6巻なのにどんどん読み進められる。6巻の最後では、ここで旅が終わってしまうのかという喪失感すらあった。
1970年代の体験なので、2020年の今はこんなことは無かろうな…という、時代を反映したグッドオールドな体験も面白い。一番興味深かったのは、各都市、特にインド以西に出てくる「バックパッカーが必ず立ち寄る宿」の存在。宿のロビー?に掲示板があって、「一緒に行く人募集」とか「譲ります、買います」系のメッセージが所狭しと貼られていたそうだ。便利なネット社会では味わえない体験だよね。不便が心の躍動を生む。
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旅に出たくなると、評判で読んで見たが、そこまで奮い立たされるものはなかった。
しかし、1点だけ作中で印象深いのは。
主人公がインド?でやることも無くてただ日々を過ごしている時に、ドミトリーの住人であるフランス人の顔が生気がない姿を見て、行動し出す場面では自分も何か行動し続けなければと感じた。
マカオでは主にカジノでの話となるが、
博奕の面白みと深み、それによる人間の欲深さなどが描写されており、のめり込んで読んでしまった。
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「旅に出たくなる!」という本とは違う。
旅に出たような気になって、読み終わると「あれ、いつの間にか家に帰ってきていた……」という気分になった。
横光利一の『上海』に通ずるアジアの暗さを描写していると感じた。
ただ、たぶん、この本の著者はかなりのエネルギーに満ちた人と思うので、『上海』と違って推進力にあふれている。
マカオの章のカジノをする描写に特に惹きつけられ、まだあたまがぼうっとしている。「バッカやな、いつまでやんねん。ええ加減やめろやー。」と主人公にツッコミながら……自分はどうするか……多分、自分なら……自分も、ありたけの金と時間で賭けるに違いない。「次こそは出る。」
「外国に行くと自分がアジア人に解体される」というあとがきがあり、海外旅行のときに味わうアノ感覚が言語化されていてグッときた。ひどく懐かしい気持ちになった。
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多分、この本を読んだ人は沢山いるので、あんまり私がどうこう…というのは、、と恐縮してしまいますが、仕事など現実に行き詰まった時は旅行が吉!しかも、ノープラン、1人!というものは、有りだよ、、と教えてくれた本です。(理由はなんでもOK)
当時まだ高校生で、恐らくドラマになったあたりでしたが、あんな白シャツバックパッカーは正直存在しないとは思うんですが、なんかあんなイメージでちょっと途中下車が長引いてみたり、住んでる人の美しさに目を奪われたり、物思いにふけったり…なんだかナルシストって言われちゃいそうだけど、自分に酔う時間みたいなもの、それはちょっと現実逃避でもありながら、自分の中身を別のものと捉えて、楽しませてやるみたいな感覚かなぁ…とおもいます。
正直、得るものと考えると「センスや海外の知識、」とか実用的なものにはなりそうですが時々やってくるピンチさえも、楽しんでいるのがいいです。旅ってそれも含まれますよね。
今は飛行機で早く、速くがスタンダードだけど、列車の旅とても好きです。寝台に乗って星や朝焼けを眺めたり。早く旅行が再開される時が訪れますように。
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「ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだ。」
1ページ目ではタイトルの由来を書いている。逃避行というよりは解放を意味で用いているのだろう。
沢木の覚悟はあるもののそこまで全てを投げ出すことはできないような、旅への姿勢には親近感が湧く。今まで読んだ紀行の中でも一番自分に近い。
読むと旅をしている気分になるかと言うと、もう50年ほど前の旅なのでそれは難しい。もう無い場所というのはある種のファンタジーだ。しかし、旅に出たくなるというのは間違いない。
好きな文章
・だが、そのユーラシアを陸路で行こうと決めたのには、僅かながら理由らしきものがないではなかった。日本を離れるにしても、少しずつ、可能なかぎり陸地をつたい、この地球の大きさを知覚するための手がかりのようなものを得たいと思ったのだ。
・もしかしたら、私は「真剣に酔狂なことをする」という甚だしい矛盾を犯したかったのかもしれない。
・人が狭い空間に密集し、叫び、笑い、泣き、食べ、飲み、そこで生じた熱が湯気を立てて天空に立ち昇っていくかのような喧噪の中にある香港で、この海上のフェリーにだけは不思議な静謐さがある。それは宗教的にも政治的にも絶対の領域を持たない香港の人々にとって、ほとんど唯一の聖なる場所なのではないかと思えるほどだった。
・綴りはやはりDICEだった。しかし意外だったのはそれが複数形で、賽の単数はDIEであると記されていたことだった。DIE、つまり死だ。〜中略〜いや、賽を投げるとは、結局死を投ずることだと言われているような気がしてくる。DICEはDIE、賽は死と......。その瞬間、私は得体の知れない荒々しい感情に突き動かされそうになった。私は慌ててベッドから跳び起き、バッグを持って部屋を出た。
・たとえば一人旅だった『深夜特急』の時は一年余りの旅で三冊分も書くことがあったわけですよね。ところが、友達と一緒だとあまり書くことがなくなってしまう。以前、友人たちと一ヵ月ほどスペインを回ったことがあったんだけど、そのときの経験は、一行だね。「面白かったな」と。ただそれだけ。(巻末対談より)
・同じ顔したひとのいる外国のほうが、文化のちがいがきわだつからいいんです。
(巻末対談より)
特に好きなところはデリーの安宿のフランス人・ピエールの虚ろさを見て、早くここから出て行かなければならないと決意した場面だ。「刺激もないかわりに奇妙な安らぎがあった」デリーにこのままいては、ピエールのように動く意欲すら失って天井を見つめるだけの廃人になってしまう。この焦燥感が、「旅に出る理由」として大きいよなと思った。
あと、ユーラシア大陸を陸路(バス)で横断したい理由には胸が踊った。一昨年、青春18きっぷで9時間かけて東京→大阪に移動した時ですら、日本の大きさに感動したが、ユーラシア大陸ともなると自分の中にあるモノサシがどうなってしまうのか予想ができない。
また、巻末の沢木耕太郎と山口文憲の対談はかなり勇気づけられる。二人とも26歳で旅に出��おり、最善のタイミングは26歳だと語っている。20代になったばかりは、10代にやるべきだった事ができずに後悔ばかりしていたが、若ければいいという訳ではないと最近は身に染みて分かる。彼らが旅に出た頃は1度ドロップアウトしたらドロップインはできない環境だったそうだが、今はある程度環境が整っている。ここ5年のうちに長旅に出る決心ができた。
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気を抜くとノンフィクションということを忘れてしまうぐらい面白かった。特にカジノのシーンは自分が体験しているかのような興奮を覚えた。旅にでたい。