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文学史なら、この人のもので理解するのが一番かな、って思います。無論、そこでとどまっていても一般常識としては十分。でも、本格的に興味をもったら原典にあたる。で、とっかかりの一冊としてはいい選択です、清水文学史
2009/12/25 19:16
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
齋藤美奈子は認めていないようですが、私は清水義範の文章論や文学史が大好きです。それは現在浪人中の次女についても言えて、あまりの面白さについついそれが真実だと思い込んで受験に臨み、大失敗をやらかしてしまいました。ま、清水本については危険なところもあるわけで、手足れでないと大火傷をしてしまう、そういうものではあります、ホンマカイナ?
清水の本のいいのは文章に凝っていないこと。いえいえ、推敲に推敲を重ねた結果、こういう癖の無い読みやすい文になった、ということは認めた上で、パスティーシュでもないときは、ともかく難しいところが微塵もないユーモアを交えた文章は、自然体と言う点では椎名誠に遠く及びませんが、でも、気取らずに読むことができて大好きです。
奇想ぶりでもシーナさんには遠く及びませんが、その分、リアルというか絵空事にならないよさがあります。或る意味、常識というせんを数歩越えたあたりにいるという清水のポジションは、それを大きく逸脱したシーナさんとは異なり、それこそ受験生や常識人を肯かせずにはおかない説得力があるわけです。
ただし、その分、有り難味がないということにもなります。大声で「清水義範が言ってたんだけどね」とは言いがたい。多分、女性のファンの数を見ても、清水と椎名では大きな差がある気がします。でも、です、大声では「好き」だと言わない「隠れファン」はかなりいると思うんです、ワタシ・・・
で、この内容も私たちの感覚と近いところがあると思うんです。ま、私は自分が読んでもいない『源氏物語』を奇跡のように褒め称える気はサラサラありませんけど。早速、カバー折り返しの内容案内です。
*
日本人がエッセイを書く時、女は清少納言に、男
は兼好になる。「枕草子」のように自らのセンスを
誇り、「徒然草」のように世の中を叱って己を自
慢するのだ。伝統の力の、何と偉大なことよ!
希代のパスティーシュ作家が、現代まで連なる日本
文学の伝統と、名作の凄さやつまらなさをざっ
くばらんに語る。「源氏物語」の世界文学史上稀
な文体はなぜ生まれたのか。なぜ芭蕉は田舎の
悪口を書くのか。なぜ漱石の小説は現代人が読
んでもスラスラ読めるのか……。
日本文学史の「背骨」をわし掴みにする快作。
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となっていて、目次と主な項目を写しておけば
まえがき
雑談1 「源氏物語」のどこが奇跡か:「源氏物語」千年紀/華麗から悲哀までのさまざまの恋/中国文学に学んでいるに違いない ほか
雑談2 短歌のやりとりはメールである:短歌は恋の駆引き/短歌を処理するさまざまな方法/パロディにした「源氏物語」 ほか
雑談3 エッセイは自慢話だ:「枕草子」はセンス自慢/「方丈記」には主題がある/「徒然草」はエッセイの見本 ほか
雑談4 「平家物語」と「太平記」:滅びの美に日本人は弱い/軍記物語の名作/南北朝時代は大混乱期 ほか
雑談5 紀行文学は悪口文学:日本の紀行文学は陰/西行といえば漂泊の人/さすらう歌人の元祖は紀貫之 ほか
雑談6 西鶴と近松―大衆文学の誕生:「好色一代男」はパロディだった/町人文学を創始/庶民を描く最初の戯曲 ほか
雑談7 「浮世風呂」はケータイ小説?:言葉遊びの名人、十返舎一九/庶民の旅への憧れもすくい取る/式亭三馬は会話を書かせて当代一 ほか
雑談8 漱石の文章は英語力のたまもの:世界に出せる日本文学は?/漱石は現代の文章を創った/新時代の文学を模索 ほか
雑談9 みんな自分にしか興味がない:自然主義文学が曲がり角だった/白樺派も自分のことを書く/芥川と荷風と谷崎 ほか
雑談10 エンターテインメントも文学の華:時代小説とは何か/キラ星の如き時代小説家たち/江戸川乱歩は二面性の人 ほか
となります。私は長い間、エッセイと随筆の違いが分からずにいたんですが、テーマがあるのがエッセイ、自由気ままに筆を運ぶのが随筆、というのは肯けます。総じて、有名な作品や著名な作家ばかり登場するので、親しみ易いし、たとえを現代に、しかも身近なものにとるので、理解しやすいのはいつも通り。
問題があるとすれば内容が殆ど頭に残らない点。それが、平易な文章の持つ欠点でしょう。とくにそれに微温的なユーモアが加わると、折角の論が、読み物としてしか受け取られないことになります。どうでしょう、たまには大谷崎のような華麗で濃厚な文体で文学を語る、っていうパスティーシュ文学論を書かれては?
最後になりましたが、データ篇。イラストは原子高志、装幀者は芹澤泰偉+児崎雅淑、初出は月刊文庫『文蔵』2008年6月~2009年3月だそうです。
言われてみれば
2022/03/26 21:58
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
なるほどね…エッセイが、自慢話の集まりだとか、女性は清少納言、男性が兼好法師みたいな……とか。探偵小説が推理小説と呼ばれるようになったのは「偵」の字が常用漢字に入ってなかったからだというのには、大変驚きました