紙の本
利にさとい経済学者の肖像
2020/09/27 15:59
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、経済学者・国会議員・企業経営者として20年にわたり活躍(?)している竹中平蔵の評伝である。日本経済新聞に4年在籍後フリーランスのジャーナリストとして活動している著者の筆致はあくまで冷静に竹中に迫っている。通常、評伝を読み終わると、世の中にかくも立派な人物がいるものかと感動することが多いが、この評伝はその対極にある。著者が強い嫌悪感を示している竹中の主義主張については、各人様々な考え方があり差し置くとしても、利にさとく猛烈な野心、時として法の網をかいくぐることもいとわない経済学者には、一抹の爽やかさも感じられない。利にさとい一例(あくまで一例)として、次の事例がある。◆90年代前半、アメリカと日本を股にかけて生活していた4年間、住民税を払っていなかった。地方自治体は、1月1日時点で住民登録している住民から住民税を徴収する。したがって、1月1日時点で住民登録していなければ、住民税は支払わなくて住む。竹中はこれに目をつけ、住民登録を抹消しては再登録する操作を繰り返し、住民税の支払いから合法的に逃れていた。この節税の方法を『週刊朝日』誌上における女性小説家との対談で臆面もなく披露している。◆産業競争力会議には、慶應大学教授として参加、労働市場の規制緩和を主張、これは非正規雇用者の急増につながる政策である。一方で竹中はちゃっかりと、この非正規雇用者の急増が業容の拡大につながる人材派遣業パソナグループの会長に収まっていた。現時点でも会長職にある。
菅内閣が9月16日に発足、首相は早速18日に竹中と朝食をともにして面会している。かくも胡散臭き(?)経済学者がいつまでも重用されるのはなぜか。もっとまともな経済学者が日本にいないわけはないと思うのだが・・・。
紙の本
この国を超格差社会に作り変えてしまった「経済学者」の虚実に迫った評伝。
2021/09/08 15:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「フェイク(偽物)の時代」に先駆けた「改革家」の等身大の姿とは。経済学者、国会議員、企業経営者の顔を使い分け、外圧を利用して郵政民営化など「改革」路線を推し進めた竹中平蔵がつぎに狙うものは?猛烈な野心と虚実相半ばする人生を、徹底した取材で描き切る。2013年に第45回大宅壮一ノンフィクション賞と第12回新潮ドキュメント賞をダブル受賞した『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の実像』の文庫版。
電子書籍
この男、超危険
2021/03/04 23:02
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名無し - この投稿者のレビュー一覧を見る
この男に、これ以上日本の政策を好きなようにさせてはいけない。極めて危険である。
一橋大学では教職に就けず、政商の道を選んだのは、どこかに日本を自分の手で支配してやろうという野心があるからで、今ではもはや、それを隠そうともしない。
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引き込まれて読了。『経済ってそういうことだったのか会議』の頃から、いや、本書によればもっと前からなのか、竹中平蔵は日本の中心に座り続けているような気がする。よく言われるように、昭和の頃よりも収入が伸びなくなったことを、格差社会を誘導する政策プロモーター・竹中の暴走のせいにしたい気持ちもある。だが、多少なりとも竹中の言うようなアメリカナイズされた社会制度に近づいていなかったら、今頃はもっとひどい状態になっていたのだろう、とも思う。竹中が非常に政治的な人物というのは、たぶん、そのとおりなのだろう。
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ある意味すごい人。こんなに貪欲に自己利益を追求しながらも、世直しの装いをしっかりとかぶり続け、人々を欺かせ続けられている人はいるだろうか。著者は次書で宇沢弘文の評伝を書いているが、竹中平蔵はあらゆる意味において真逆の存在。
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竹中平蔵について、ぼんやりとしたイメージしかなかったけれど、ほぼ時系列でその活動をまとめてみるとようやくわかる。ある種の平成金融史としても読める本。もう少しパソナとの関係も深堀してもらいたかった。自分で調べないと。
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日本経済の改革の立役者か、破壊者か。構造改革の旗手、今も政治のブレーンとして活躍する竹中平蔵氏の半生を追った作品。
郵政民営化ほか構造改革の向うに残ったのは格差社会、外資系企業の進出だけだったようにも思える。日本社会の持っていた古き良きものが、経済の効率化、新自由主義の元で失われてしまった。
竹中平蔵氏の果たした役割がどこまでかは本書だけでは分からないが、労働者派遣の見直しと農業改革、氏が顧問を務める人材派遣会社のパソナとの関係など注視していきたい。
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金融界の不良債権処理にあたっての繰延資産税金資産算入を厳格化、監査法人を指図して銀行を破綻させ、公的資金投入を実現、郵政マネーに目をつけたアメリカになびくような郵政民営化の推進、オリックス宮内社長と組んで規制改革利権に手を染めるなど、竹中氏の利にさとい戦略的な手法に切り込む。
猛烈な野心を持ち学者と称しながら政治的、柔軟ではあるが節操がない、効率性のみを追求し、公正、平等性を無視する・・・竹中氏の真の姿が著者によって鋭くえぐり出される。
テレビなどで見る穏和な表情と柔らかいしゃべり方から自分が持っていた竹中像が音をたてて崩れおちた。
「改革派」という聞こえの良さとは裏腹に多くの敵を作っているようで、何よりも自己利益を強く追求するところが汚ならしく感じた。
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新自由主義的政策を導入してきた竹中平蔵氏の人物像を詳細に描いた書。公共事業拡大派から一転して緊縮財政派に鞍替えするなど、氏の言説は度々変節しているが、それは日本の国益や学問上の正しさを追求した結果などではなく、単に自らの利益最大化のためだったということが、関係者の数々の証言から明らかになる。同僚と共同で研究した内容を独り占めして発表してしまうなど、自分の利益のために他人を利用してはばからない性格は、若い頃から一貫しているようだ。その面の皮の厚さに驚くばかりである。
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もはや平成日本の金融史と言っていいのでは。
これはほんとに読んだほうがいい。
20世紀末から21世紀現在の日本経済、金融の変遷を
巨悪竹中平蔵を主人公に描いてます。
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ここに出てくる人物の反論も聞いてみたいところです。
この内容が真実であるならば、竹中平蔵さんは一体何がしたかったのだろうか。どれだけ日本のことを思い考えてくれていたのだろうかと思ってしまいます。
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よく理解してないのになぜか悪い意味で気になる存在
だったので、よく知りもしないでそういうイメージを持つのは良くないと思い読んでみた。
実は途中からは少しイメージが変化した(さらには麻生さんに対しても変化した)したのだが権力を持ってから行った改革が結果、彼と彼のお友達をより富ませ、そのかわりに(元々あった)格差はより拡大され、その結果が今日の日本なのだとしたらやはり好きになることはできないな
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端的言ってこの20年間で竹中のやった構造改革は、目立って評価できる結果は残しているのだろうか? 確かに彼と彼らの改革は、抵抗勢力たちの既得権益との戦いであったことは間違いないが、同時に抵抗勢力から奪った利益を自分のものにし、自分が新しい既得権益者の座についているだけではないか? 労働市場の規制緩和を打ち出す政策実行者が人材派遣会社の会長を兼務しているのは公正さを欠いているのではないだろうか? 企業の内部留保が爆上がりし株価も高いが、そのかわりに非正規労働者や低所得者や福祉を受けるべき対象者が負っている負荷はつり合いがとれないくらい不公平な状況になっている。当然国内消費は伸びないからGDPは上がらない。この人はいったいどんな社会を目指して改革を行っているのか? この人に政治理念や倫理なんてないのではないだろうか? そんな疑問から本書を読んだのだが、ほぼそういうことだったという感想。そもそも経済学には「ある目的を達成するために」「手段を考える」学問であって、「目的が何かを考える」学問だという考えがあるらしい。これはまさに竹中の人物像そのもので、戦争目的の技術開発で「科学者の道徳観・倫理観」が厳しく批判されるようになったのに経済学者にはそれは問われていないように思う。これからは経済学者のこのような態度も批判される必要があるだろう。学者が政治に関与するなら応分の結果責任を負うべきだし、政策を出す側の人間が利害に関係する企業とかかわりを持つことは厳しく規制すべきだと思う。本書の触れている時代のあとにも、国家戦略特区諮問会議で加計学園への学部新設承認や、コロナの持続化給付金事業の受託に電通と組んでサービスデザイン推進協議会なるトンネル会社を作ってみたり相変わらず利権に勤しんでいる。彼の口にする「改革」の最終目的地は、自分の自己実現と金儲けでなければどこにあるのか、もっと議論されるべきだという筆者の意見に同感。
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よく言えば「積極的」?悪く言えば…
竹中氏の経済学的な見地は正直よくわからないので、恥ずかしながら、最初の本の出版時のエピソードや博士号の話、笹川良一さんの財団との関係、住民税不払い方などの「?」的な部分に引き込まれてしまった。
また、どうして氏がそれほどアメリカ的社会に魅力を感じているかがこれまた「?」だった。アメリカというよりは宮内氏の影響も感じられた。
あとがきで作者の方も書かれていたが、ご本人の話が載っているとさらに興味深かったのかもなぁ…
(追記)
小泉元首相が「自民党をぶっ壊す!」といって郵政民営化を実行しようとしていた当時、「何かがかわる」と思って期待していた自分に言いたいのは、「竹中さんのキャンペーンにまんまと踊らされたんだ!?」ということ…
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全く中身のない本だと思った。
竹中氏の過去が詳細に書かれてるが、全くどうでも良いことばかりで面白くない。