紙の本
タイムカプセルを開けた人
2021/01/13 16:19
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
書くことを生業としている人にとって、書くということは自分の中にある思いの発露とともにそれを読んでくれる「読者」という存在は意識するものだろう。
企業の多くが「お客様第一主義」を唱えると同じようにである。
しかし、もしかしたらその「読者」は書く人本人だとしたら、書く人もそうだが、それを読む本人もまたなんと幸福なことだろう。
2020年1月13日に急逝した坪内祐三さんの遺作となった、そして未完で終わったこの作品を読みながら、そんなことを思った。
書いた坪内さんも、読んだ坪内さんも、幸福な時間をともに過ごしたのではないだろうか。
巻末にある吉田篤弘氏の寄稿の中にもこうある、「おそらく坪内さんも、忘れつつあったものと、この本を書くことでひとつひとつ再会していたのではないか」と。
坪内祐三さんは昭和33年(1958年)東京に生まれた。
この自伝風エッセイの舞台となった世田谷赤堤で育った。
最寄りの駅が東急玉川線、通称玉電の松原駅。つまり、これは坪内さんの幼少期から青春期の物語なのだ。
同時に、その頃の時間を共にした同世代の人たちの物語でもある。
当時黄緑色で箱に入っていた「旺文社文庫」のことやお米屋さんでしか買えなかった「プラッシー」というジュースのことなど、懐かしさで胸がこみ上げてくる。
坪内さんはそんなタイムカプセルで開けてどんな思いであったのだろう。
まだまだこれからだよ、とも思ったかもしれない。
あるいは、町への深い感謝だったかもしれない。
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昭和の世田谷。坪内さんが元気いっぱい遊びまわっていた雰囲気が伝わってきた。最後がタマムシで終わるのも良かったけれど、続きが読めないのがなにより残念。
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自分自身が今住んでいる世田谷の戦後すぐあたりから
今までの風景や文化が書かれている本。
私は、世田谷出身でも東京出身でもなく
この物語の記載されている著者の年代と
同じころの自分は、もっと田舎にいたので
逆に、風景が似通った部分があるような
気がしました。
やはり数十年というのは、あっという間のような
気もするし、それなりの年数であり、物事が
大きくかわっているのだということを
改めて感じました。
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玉電という響きに懐かしさを感じて読了はしたが、大量の括弧書きが、確信犯的な内輪ネタの羅列で辟易した。坪内祐三ファンだと楽しめるのだろうか。
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昭和33年生まれ。出身の世田谷の松原を回想する。下町でも山手でもない玉電の沿線風景。
松原に縁があるわけではないがどこか懐かしさを感じる作品。玉電の支線だった世田谷線の駅。近くには三軒茶屋や経堂、下高井戸などの町。
昭和40年代、個人商店が溢れていた時代。
「小説新潮」に連載されていたエッセイ。筆者の急逝により唐突に終わる。62歳、急性心不全。
人の死というのはその人の持つ記憶、経験、知識。ほとんどが断絶するものであることを痛感する。
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昨年(2020年)亡くなった著者が直前まで雑誌に連載していたエッセイ。小中学校時代を過ごした世田谷区松原辺りを、ゆるく回想している。昭和の世田谷は、のどかだった。
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急逝した評論家の「遺作」は、私小説のごとき昭和文化論だった。その町にはチンチン電車が走り、牧場には牛が群れる。そして駅前の商店街には、様々な人びとがいた―。自らのすべてを育んだかつての世田谷を卓越した記憶力で再現し、令和が喪った町と文化を瑞々しく甦らせる。
以前にも書いたが、私は著者の四つ下の学年である。小学校は違うが、生活圏が結構重なっていた。四谷軒牧場をはじめ、懐かしい記述がたくさん。もっともっと読みたかった。
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現在の世田谷線の松原駅とその界隈のことを回想するエッセイ。
現在の勤め先が近いので、とても興味深く読めた。
「オオゼキ」の1号店があそこだったなんて新発見。
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表紙でおおと思った。そうそう、松原駅。話からするとわりと後の方の絵。自分の知っていた町の話。牧場の後のあたりからは記憶にある。猫の集会を除きに行く話とか、風景が区画整理前で泣きたくなった。
坪内祐三さんなくなられていたのを知らなかった。
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1958年生まれの著者が、育った世田谷・松原界隈を語る。商店街の本屋、おもちゃ屋、駄菓子屋、喫茶店、レコード屋。この地域を知らなくても、次第に個人商店がなくなり、小さな川が暗渠になり、たき火をしなくなり、本屋がTSUTAYAになるという昭和から現代までの風景の変化は、多かれ少なかれ近い世代なら共有、共感できることも多いかもしれない。