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紙の本
テレワークはイノベーションを生まない(多分)
2022/08/20 13:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
一読、筆を抑えたところもあるでしょうし、また記者の原稿に手を入れたのかもしれませんが、叙述においては若々しい口吻、内容においては著者の高い熱量の迸りを感じ、元気とヤル気をもらいました。ビジネスの世界において、若い方、ベテランなど、立場により世代によりそれぞれに得るところの多い素晴らしい一冊。ちなみに、評者の印象に残った箇所を幾つか挙げれば、以下のようなあたりです。
「猫の手の一人として、若いうちから能力以上の仕事を与えられ、何でもチャレンジを許された。しかも社長ではないから責任はなく、居心地のいいところで、好きなようにあれやこれやと思いついて、会社を動かした。私の55年間の会社人生で一番楽しかったのがこの時期で・・・」(3頁、同旨113頁)
>>> 評者の個人的体験に照らしてもまったく同感でした。若いうちにこういう「下剋上」的な経験を積めるかどうか(自発的であると非自発的であるとを問わず、積ませてもらえるか否か)は、人生において決定的に重要だと思いますね。
「優秀なやつは自然と上に上がっていく。取り巻きだから偉くなったと思われるのは本人にも損や」(46頁、大歳元TDK社長の言葉)
>>> 確率的にはその通り。但し、そういった機微を理解して配慮できるいわば「名伯楽」の有無もまたクリティカル。
「経営者が結果を出せるかどうかの7割は運ではないか。私の場合、8割以上が運だったというのが実感だ」(157頁、同旨162頁)
>>> 至言。
概して云えば、いかにも昭和世代サラリーマン(?)の生きざまという感じの一書でしたが、その「発現形態」はどうあれ、時と所を超えて最後は氏のような真っ当な頑張りと人と人とのぶつかり合いの総量が日本経済の最後の拠り所だと感ずる今日此頃です。本書からは若干離れますが、昨今はやりのテレワークなんかで日本にイノベーションが起こるとはとても思えない、と本書を読んで改めて愚考した次第です。
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